第141話:大里先輩のクラスのステージ
舞台の幕が、上がる。
開演。
ぱっつん子先輩のクラスの、合唱。
幕の上がり方につられて、拍手の大きさも、上がり。
中央、ひな壇に、前後三列に並ぶメンバー。
その中央手前には、指揮棒を持った、指揮者。
そこから左に少し離れて、キーボード。
逆側には、あれは……バイオリン、かな?
そして、ちょうどキーボードの前あたりに。
(サクオ、ソロか?)
(みたいだなー)
ぱっつん男先輩。
スラックスの、男装姿。
髪は、あえて、ぱっつんロングの、まま。
これは、これで、ちょっと凛々しい感じ?
盛大な拍手の後。
指揮者がおじぎをしてから、手を広げ。
百八十度向きを変えて。
指揮を、はじめる。
ピアノの前奏に、バイオリンが重なって。
指揮棒が大きく振られると。
歌が、はじまる。
突拍子もない歌ではなく。
定番中の、定番。
誰もが知っている、合唱曲。
中央最前列から歌い出し、中段、上段へと、繋げて。
サビで全員がハーモニーを奏で、盛り上げた、後。
二番の歌詞を終えて。
一度、ピアノとバイオリンの伴奏も、静やかなものへとトーンダウン、そして、テンポダウンしたかと思えば。
ぱっつん男先輩が……大里先輩が、一歩、二歩、前へ歩み。
アカペラに近い状態で。
歌い始める。
ぞわっ。
鳥肌。
静まり返った講堂に、大里先輩の重厚な歌声が響き渡り。
徐々に、テンポとトーンが上がるのに合わせて。
伴奏のピアノとバイオリンも重なり合い。
そして、全員の歌声が重なり。
フィナーレを迎え。
全員が、お辞儀。
割れんばかりの、拍手、歓声。
あたしも。
まわりの先輩たちも。
みんな。
感動に感謝の拍手を送る。
拍手と歓声に送られ、緞帳が下がり。
やがて。
ざわめきの支配する、講堂で。
しばし、呆然。
その後。
舞台から戻ったぱっつん男先輩と合流して。
あたしのクラスへと戻る。
クラスメイトから頼まれてたし、ね。
「なんかすごかったな、サクヤ」
「マジ、パ、ねぇ?」
「ふっ、よせ」
なんか、男子言葉とも違う方向に行ってる気もしなくはないけど。
まぁ、楽しそうだから、いっか。




