第131話:絵画のモデルは
「全員戻ってるわね? 企画を考える、と、言っても時間もほとんどないから、細かいところはテスト明けに決めるとして」
教室に戻ると、クラス委員がささっとクラス全体をまとめる。
この人、すごいな……。
カリスマ?
って、やつ?
一年生で、まだ半年なのに。
「みんな、園田さんにどんな衣装を着てもらえばいいか、考えておいてね」
え?
「はーい」
「はいっ!」
ぱちぱちぱち。
異議もなく、クラスメイト全員が、納得の拍手。
担任の先生も、教室の隅で同じように拍手されてます、ね。
「ちょ、ちょ、ちょとおおおお」
叫ぶも。
「やっぱり、このゴスロリドレスで決まりでしょ」
「えんぴつ画なら、白黒でも表現できるし、ちょうどいいよね」
「うんうん」
ぇー……。
「あたしがモデルなのは決定なの!?」
「当たり前じゃない」
「なんたって、この学校でただ一人の男子なんだし」
「これ以上の集客ネタは、ないよー」
「うんうん」
ぉぅ……。
まぁ。
なんか。
これまで、ほとんど接触なかったのに。
体育大会で少しイヤな予感が漂い始めてたけど。
完全に、イジられキャラ。
一気に来ましたね、ぉぃっ!
かと言って。
自分が描く方になって、貢献できるかと言えば、微妙。
お絵描き……美術とか特に才能あるって訳でもなし。
「作品はクラス人数の三分の一以上、つまり十枚以上だから、描く方の希望者はぜひ考えておいてね。あと、描かない人の役割とかも考えておかないとだけど……」
クラス委員の子が、壇上で少し思案顔をしていたら、別の子が。
「ねーね、委員ちょ、鉛筆って、黒だけ? 色鉛筆は使っちゃだめ?」
って、質問。
「あー……そういえば、鉛筆って言うだけで、色鉛筆はダメとは言われてないね」
「色鉛筆も使えるなら、衣装の方もカラフルなものでもいいよね」
「そっか、その手があったかっ」
「でも、純粋にこの制服って言うのもアリな気もしなくはない」
「いや、これ、あえてって言う意味だと、男装もよくない?」
「おぉ、その発想は無かった!」
クラス中。
なんか盛り上がってるんですけどおおおおおおお。
置いてけぼられてる、あたし……。
ひぃん。
と、嘆いていたらば。
きーんこーん、かーんこーん、と。
LHRの終了を継げる、チャイム。
「じゃ、そういう事で、とりあえずは目の前の中間テストに注力しつつ、テスト明けのLHRで、ね」
はーい、と、皆さん。
「はいはい、じゃあこれで終了ね」
クラス委員と先生が入れ替わって。
「きりーつ」
日直さんの、号令。
そもそも立ち上がっていたあたしは、そのまま……。
「礼」
お辞儀すると、最後に先生が。
「はい、散開、おつかれさま」
って。
これが、この学校の、と、言うか、このクラスの。
一日の、終わり。
「お疲れ様でしたー」
「お疲れ様ぁ」
「終わったぁ」
席を片付けて帰宅するもの、教室の掃除に残るもの。
えと、せと、ら。
そして、あたしは。
しばし、放心。
くじ引きで緊張してたのもあるけど。
「絵画のモデルまでとは……」
ぼそっと、ひとり言。
ある意味、この間の写真モデルと同じようなものと考えれば……。
いや、でも、写真だと一瞬だけど、絵のモデルとなると、じーっとしておかないとだし、なんか、大変そう?
今さら、イヤだとも言えないしなぁ。
うぅ。
なんか、ずるずると流されているような気もしなくは、無い。
いいのかな、これで……。