第123話:体育大会の前にカタログが届きました
当たり障りなく、平和に静かに始まった、二学期。
夏休み前に準備していた『お料理教室』は。
夏休み中に合宿である程度の実績をあげたので無くなるかと思ったけど。
レパートリーを増やしたい、との意向もあって。
あたしが作れる料理を、簡単なものから順次ってことで。
家庭科部とのスケジュールを調整して、家庭科室を使わせてもらって、八時間目の授業の時間に実施することに。
それとは別で、先輩たちの『男装』も強化したいと言いつつ。
夏場はやっぱり暑くていろいろ不便。
なので、もう少し涼しくなってからウィッグとかも含めて検討しよう、ってことになって、一時保留。
そして、二学期は学校行事もメジロ押し。
十月には体育大会、十一月には、文化芸術祭。
九月も半ばになれば、体育大会の準備が始まる。
あたしは、準備委員なんて役を仰せつかってしまい。
作業そのものは、体育大会で使用する備品の確認だとか、あとは大会当日の運営とかなんだけど。
委員会の最初の顔合わせの時。
他のクラスの人が多いので、直接話すのは初めての人ばかり。
「園田……さん? って、男子、なんだよね?」
「うん、そうだよ」
「確かに、声聞くと男子だわ」
「ぱっと見ただけだと、わからないわねぇ」
「でも、よぉく見ると、確かに男子的な面影もあるかな」
なんて、声をかけられつつも。
幸い、あたしの事は各クラスの担任の先生から説明されてるから。
それほど大きな騒ぎになることも、無く。
どうにか、溶け込ませてもらえて助かり。
みんな優しい人ばかりで、よかった……。
ただ。
内心はどうだかわからないけど、ね……。
『なんで男が?』
とか。
『男のクセに』
とか。
『男となんて』
とか、とか。
思われてないかって、ちょっと不安もありはするけど。
できるだけ平静に、平静に。
出しゃばらず、引きすぎず。
無難に、地道に、作業をこなして。
十月に入ってすぐ。
もう、週末には体育大会本番、って日。
学校が終わって、家に帰ると。
ポストに、かなり大きめの、封筒。
宛名は、あたし。
「なんだろ?」
差出人を見ると『株式会社レディ・スノウ』ってなってるけど、封筒のデザインに『YUKI』のロゴマーク。
雪人さんと言うか、雪人さんのお母さんの会社から、ってことは……。
自室に戻って、着替えてから、その封筒を開けてみると。
予想の通り、数冊の薄い冊子。
その冊子の表紙を飾る写真は……。
「うわぁ、レイちゃんとあたし!?」
例の、白黒ゴスロリ姉妹。
椅子に座ったレイちゃんの斜め後ろに立ってるあたし。
ふわぁ、なんか、すごい、恥ずかしい!?
なるほど。
中も広げて見てみると。
最初の方は、例のゴスロリドレスの、特集みたいな感じで、写真もいっぱい使われてる!
中ほども、ゴスロリドレス以外の普通のファッションの紹介で、ここもあたしとレイちゃんの写真が使われてる。
後半はカタログっぽく、商品だけの写真がほとんどみたい。
裏表紙は、表紙のポーズで、背中側から撮った、後ろ姿。
なかなか、お洒落な感じ。
「レイちゃん、こんなの送られてきた」
冊子の写真を撮って、レイちゃんにメッセージを送ってみる。
しばらくして。
『うんうん届いてる届いてるわたしも今見てたとこ』
「なんか恥ずかしいね」
『うん、ちょっと恥ずかしいかなーでもでもなんかうれしいねー』
「うん!」
『通話よい?』
「いいよー」
なんて。
ふたりで、送られてきた冊子を見ながら盛り上がっちゃいまして。
晩御飯の準備が遅れて、お母さんに怒られそうになったけど。
お母さんにもその冊子を見せたらおとなしくなったので、その隙にささっと晩御飯の準備。
夕食後には、お母さんとも一緒に盛り上がったよ。
そして、さらに数日後……。