第120話:夏のアルバイトを終えて
「それじゃ、ふたりとも、今日はホントにありがとう。いい写真が撮れたよ」
「こちらこそ、ありがとうございました。楽しかったですし、それに、こんなに頂いちゃって……」
雪人さん、と、言うか、雪枝さんの会社で、ドレスや洋服の写真を撮り終えて。
お給金も頂いたんだけど、その額に驚き。
時間は四時間くらいだったので、時給に換算すると……高校生のアルバイト代の相場を、はるかに上回る。
「それに、お土産までもらっちゃって……わたしはブラとかまでもらっちゃったし」
レイちゃんが『YUKI』ブランドの紙袋を掲げて告げる。
そう。あたしもレイちゃんも、気に入った衣装を持って帰って良いってことで、一着づつ。
さらにレイちゃんは今回の撮影用として、ブラジャーと中身の上げ底も『支給』されている。
そんなあたし達に、雪人さんは。
「あはは。今後ともよろしく、って、事で?」
「えっ!」
「次があるんですか!?」
「うん。今回は一発モノの企画と冬物の撮影だったけど、季節毎にカタログ……小冊子を作ってる、からね」
なるほど……。
「なるほど……じゃ、じゃあ、また次回、やらせてもらえますか?」
レイちゃん、前のめり。
「うん、こちらからお願いするよ……えっと、真綾ちゃんも、よろしく、ね?」
へ?
「あ、は、はい」
今、なんか、違和感があったような?
「えっと、また許可が降りれば、ですけど」
学校でアルバイトが禁止されてるから。
今回、なんか、裏で意図的な糸が引かれてたみたいだけど。
毎回、と、なると、どうなんだろう。
申請書とかって、あるのかな?
エリ先生に訊いてみよう……。
「そこは多分、ボクの母親が何とかする、はず」
苦笑気味の、雪人さん。
「あはは……」
あたしも、同じく、苦笑。
「?」
横でキョトンとしている、レイちゃん。
いや、ほんと、雪枝さんって、一体……?
「じゃあ、気を付けて帰ってね」
「はい、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
レイちゃんとふたり、雪人さんにお辞儀して、ご挨拶。
最後は、フレンドリーに、バイバイ、と、手を振って、雪枝さんの会社を後にする。
「でも、これで色々と揃えられる、ね」
「うん。真綾ちゃんのおかげだよー」
あはは。
と。
笑い合い、帰路。
帰り道。
何を買おうかー?
一緒に下着屋さんに行って、現物見ながら探そうか?
とか。
お母さんとネットショップで通販してみて思ったのは。
やっぱり、手にとって、肌触りとかも確認したいな、って。
写真を見ただけ、説明文章を読んだだけでは、解らない部分も、多々。
特に、下着の肌触り、感触は、本当に触れてみるまで、わかんないから、ね。
実際、通販で買った下着で、イマイチだったのも、あるし。
「お店によっては、実際に試着もできるし、ね」
「ふむふむ、それはいい、と、言うか、必要そうね」
「でしょ?」
なぁんて。
「そうそう、今日の撮影の時も思ったけど……」
「ん?」
何かしら? レイちゃん。
「真綾ちゃんって、ほんと、わたしよりずぅっと、女の子らしい、よね~」
!?
そ!?
「そう……かな?」
「うんうん。見習うところ、いっぱい。いろいろ教えて、ね?」
いやいや、いやいや。
女子歴なら、レイちゃんの方がずっと先輩、の、はず。
なのにぃいいいいい。