第116話:ブラのホックは背中で留められる?
雪人さんのお母さんの会社。
ビルのフロアの、一室に通された、あたしとレイちゃん。
部屋の中に置かれた、二体のマネキンが着ている、服。
ふたつ並べられた、衣装。
左側は、ほぼ、真っ白。
右側は、黒だけど、白いレースがちりばめられていて。
よく見ると、左右の白と黒のドレスのデザイン自体は同じで、色違いみたい。
「ふゎゎゎゎぁ……カワイイ……」
レイちゃんの、ふと、零れたような、感想。
同意見、です、って言うか、これって……。
「……ゴスロリ?」
しかも、何か見覚えが、あるんだけど……。
「あぁ、いろいろ呼ばれるけど、まぁ、そうだね」
雪人さんが答えてくれる。
「ささ、時間もったいないから、準備しようか先ずはメイクねこっち来て」
と、部屋に居た女性に招かれて、いや、せかされて、部屋の奥へ。
部屋の奥には、鏡の置かれたテーブルと、椅子がふた組。
その椅子に座っていたふたりの女性が立ち上がり。
「ここに座って、ね。メイクはわたし達がするから、じっとしてればいいからね」
自分でメイクしてた部分を一度メイク落としで落とされて。
下地から、改めて。
トントン拍子、と言うか、テキパキ、って、感じ?
あっと言う間に。
「うぁあ、やっぱり専門家のメイク、違いますね……」
レイちゃんの、率直な感想に、でも、メイクしてくれた女性は。
「専門家、ではないんだけどね普段は営業やってるし」
「あたしも、普段は経理やってる」
ほぉ。
「内製化、ってやつよ。外注すると高いからねぇ」
なるほど……。
「ちなみに、ボクも情報システムとショップの兼任で、二足ワラジ」
雪人さんも、そうなのね。
大変そうだ。
でも。
今、メイクしてくれたふたりも。
ノリノリで、楽しそう。
趣味?
特技を活かして、ってところもあるんだろうなぁ……。
特技……。
あたしの特技って、何かあるかしら?
とか、思ってたら。
「んじゃ、脱ぎ脱ぎしましょうねー」
あぎゃ!?
ひぃいい。
トントン拍子なテキパキの続きで、着ていたものを脱がされて、あっと言う間に、下着姿。
「下着はこれに着替えてね。お姉さんたちは外に出てるから、着替え終わったら呼んでね」
ぽん、と、渡される下着。
そそくさと部屋を出る、お姉さんたち。
ええええ。
「これ、ドロワーズ、だっけ?」
レイちゃんが渡された下着を広げて見ている。
いわゆるショーツではなく、大きく広い、パンツ。
「うん、確か、そう。中身にまでこだわる感じ、なのね……」
ゴスロリのドレスに、合わせてあるんだろうけど。
写真には映らないはずなのに。
でも。
「ブラもすごく可愛い」
レイちゃんが広げて見せるブラジャー。
あたしも、自分に渡されたブラジャーを手に、確認してみる。
レースの細かさ、刺繍の細かさ、肌触り。
「一体、いくらするんだろう……」
下世話ながら、真っ先に思い付いた感想と言うか、疑問が、お値段。
「あはは。コレを買うわけじゃないんだから」
「そうだね。とりあえず、着よう」
レイちゃんと、お互いに背を向け合って。
上げ底をブラジャーの中から取り出して、着けていたブラを外して。
渡されたブラジャーを、装着。
背中でホックを留めると、ぴったり。
あぁ……雪人さんにはサイズ、バレてるしなぁ。
上げ底も収めて。
「そうだ、真綾ちゃん。真綾ちゃんはブラのホックって、背中で留められるの?」
あうっ……。