表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

比較的最近更新した短編のまとめ場所

優しい嘘と救世主

作者: リィズ・ブランディシュカ




 私はあの人に嘘を吐かれていた。


 あの人は私を騙していたらしい。


 だけど、私はあの人を恨んだりはしない。


 なぜならその嘘は優しい嘘で。


 いつだって思いやりにあふれていたのだから。





 私の人生をひとことで表すとすると、それは、


 剣を極めようとした人生だった。


 強くなりたかった。


 強くなれたら、どんな脅威にも立ち向かえると思っていたから。


 あの頃の私には怖いものがたくさんあって。


 その怖いものから、身を守らなければと思っていたからだ。


 だから私は、一生懸命剣を振り続けた。


 それで、自分の命だけを守っていれば、話は簡単だっただろう。


 しかし、私は手を広げすぎた。


 あれも、これも守りたいと思うようになったのだ。


 だから、それで。


 私は壊れてしまったのだと思う。


 嘘がなければ生きていけないほど。





 壊れて、今にも消えてしまいそうな。


 そんな私を支えてくれたあの人は、


 あの人もきっと私と似たところのある人だったのだろう。


 たくさん頑張って、たくさんのものを守ろうとした。


 けれど、きっとその努力は実らなかったのだ。


 そんなあの人を嫌いになれるわけがない。


 私に嘘をついているあの人を、嫌いになれるわけが。


 私は、きっと、嘘に騙されながら生きていくのだろう。


 この先も、ずっと。


 あの人もずっと、優しい嘘を吐き続けていくのだろう。


 それが正しい関係でないとしても。






「救世主は魔王に負けて、世界を守れませんでした」


「世界は滅びて、たくさんの人たちが死にました」


「私は剣を、膝を折って、その光景に絶望した」


「そして、心を壊してしまった」


「そんな私に、平和な世界はここにあると嘘を吐き続けてくれたあの人がいてくれたから」


「私は、生きていられるし、本当の孤独に身を落とさずにすんでいる」





 この何もかもが死に絶えた世界で、たった二人生き残ったのが、人類の救世主と、人類の仇敵である魔王だったなんて、なんて皮肉なのだろう。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ