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22話

 すると、次葉は焦った顔で椅子から立ち上がった。


「力づくで見せてもらうのは申し訳ないからな。こういう手段を取らせてもらった」


 私が立ち上げたのはリモートデスクトップというソフト。ネットワーク経由で自身の持つ他のパソコンを操作できる優れモノだ。


 普段は外出先で自身の仕事の進捗を見せるときに使っているのだが、今回は覗き見に使用させてもらった。


「さて、別に何を描こうが次葉の自由ではあるのだが、せめて正直に話すか自分の家で見えないようにやってくれ」


 描かれていたのは身長が高く美人なアルラウネがやたらと肌色面積の大きな恰好をした少年を包み込んで色んな意味で捕食しようとしている絵だった。


 顔に関しては次葉の画風もあるだろうからあえて触れることは無いが、体格差はどう考えても私たちだし、包み込んでいる構図は先ほど無言で私を抱きしめてきた時のものに酷似している。


 私は人の趣味嗜好に口を出すような無粋なことはしない。多種多様な趣味嗜好があるからこそ、世界には素晴らしい人間が数多く居るのだから。


 だが、これはゾーニングという別の問題である。


 R-18絵の元ネタになった人にその作品を見せるな。


 今回は私が見に行ったこちらも悪いが、もう少し考えてくれ。せめて私の家で描くな。自分の家で描け。


「思いついたものは早く描いてしまわないと旬が過ぎるって優斗君が言ってたでしょ」


「そんなに賞味期限は早くない。数時間程度なら何も問題ない」


 じゃなきゃ外で思いついたネタは全て旬を過ぎているということになるだろうが。


「……はーい」


「それでいい」


「で、正直に言ってくれれば問題ないんだよね?というわけで参考資料になってもらえるかな?」


「……」


 というわけで私は次葉の気が済むまで絵の参考資料にさせられた。



 後日、その絵は一般公開ではなく『メルヘンソード』の有料会員限定コンテンツで公表されたらしいのだが、大きな反響を呼び、その絵目的で有料会員になろうとする人が大量に表れたというのはまた別のお話。



 その翌日、私は大学の研究室に訪れた。


 最近は色々とあって来れていなかったため、久々の研究室だ。


 といっても最近まで教授が意見交換会でしばらく大学に居なかったので他のメンバーも割と久々らしいのだが。


「お疲れ様です」


「おおっ!お疲れ!!」


「久しぶり!!」


「全員居るのめずらしいですね」


 2限の開始時刻に来たので、半分居たら奇跡だと思っていたのだが今日は6人中5人がそろっていた。


 残りの一人はそもそも来ることが稀なので実質全員が揃っているという状態だ。


「いやあああああ、相変わらず可愛いねえ可愛いねえ」


 私が研究室の扉を閉めた途端、ものすごい勢いで近づいてきて私の頭をなで始めたのは4年生の野崎若菜先輩。


 一応彼氏が居るらしいのでここまで激しいスキンシップは色々と問題ではないかと思うのだが、彼氏曰く私に対しての行為は大丈夫とのこと。


 そんなお墨付きをもらってしまっている上、二個上の先輩なので無下にすることも出来ず、毎回なされるがままとなっている。


「はい、今日のプレゼント」


 現在進行形でなでられ続けている私に対し、子供が食べていそうな棒のついた飴を渡してきたのは3年生の林原夏美先輩。


「私をいくつだと思っているんだ」


「そりゃあ見た目通りの年齢だよ。だから渡しているんじゃん」


「誰が19歳にこのタイプの飴を渡すんだ」


 飴を常備していると噂の大阪のおばちゃんもこの手の飴は渡してこないぞ。


「飛び級で大学生になった優秀な12歳じゃなかったっけ?」


「日本に飛び級制度は無い。そして私の事を誰がどう見ても12歳はないだろ」


 低身長だからって若く見える限度にも限界があるだろ。頑張っても高校1年生が関の山だろ。別に私は男の娘というわけじゃないんだから。


「ち、違うの!?本当に19歳!?」


「毎回毎回わざとらしい演技をするのはやめろ」


 心底驚いたような表情をする林原先輩だが、この人は私に出会う度に同じくだりをやってくる。


「優斗、後で男だけの真剣な話をするぞ」


 そんな話をしている私の肩を強い力で握りしめているのが同じく3年の加藤啓介先輩だ。


「考えすぎだ。わざわざ話し合う必要はないと思うが?」


「必要だ。私にとっては死活問題なんだ」


「分かった。後でゆっくり話を聞く」


「よし。今日の夜だ」


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