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歪んだ絆 KIZUNA

Mくんが家に来た。


何度も300万円だと言っているのに「300円くらいで悩むなよ」なんて言ってくる。


こいつは昔からそうだった。


300円じゃ流石に悩まないだろ!と笑顔で諭さなければならなかった。


今思えば彼は「真バカ」だったのだろう。


そんなMくんを舎弟みたいにして面倒みるような態度とっていた私も真バカだった。


次に大阪行の特急に乗ったら修学旅行の貸し切り車両になっていた。


ガイドのおじさんのハナシが面白かったのでカセット式の「キオークメン」で録音した。

再生だけでなく録音もできる優れものだ。


Mチンがいた。

「ダビングしてやるよ」と言うと喜んでいたがその分の「カセット」はもしかして私の負担?

彼といるといつもそんな流れになる。


大阪駅で乗り換えるがホームがわからない。

Tがいた。

こいつは本隊グループでハブられると私のところに来て親友ズラしていた。

一緒にホームを探したが見つかるとさっさと私を捨てて本隊に帰っていった。


目が覚めた。


「友達たち」の夢を見た。


MくんもMチンもTもあまり会いたくないがふと会ってみたい気になることもある。


会っても仕方ないのだが。


電車の中で反社団体が仲間割れを始めた。

「環状で割れるか」という声が周囲から聞こえた。

割れるとは分裂のことだろう。


気がつくと「絆コミュニケーション」の原田代表と歩いていた。

友達ではないので離れて歩くのだが方角が同じなので信号待ちで合流してしまう。

コソコソと遠慮するのもシャクだった。


思えばこの人も同年代、昭和を生きた者同士ということか。


原田は広域反社団の若頭を務めていた。

だが最近、反社組織の分裂騒動で独立したとニュースで聞いた。

自らの組「絆コミュニケーション」を立ち上げて独立したが反社ではなくまっとうな企業として再出発したいとの希望を述べていた。

(それで組ではなくコミュニケーションというわけか。)

今どきの若者の反応を気にしているとしたら、なんだか微笑ましいじゃないか。


原田が振り返ってなにか話しかけてきた。

そしてニッと笑った。

親分になるような人はとにかく笑顔が爽やかだ。


その子分と一緒に私も反社組織の地下拠点に連れ込まれた。

関係ないのに……!単に行きあわせて笑顔をもらっただけでこれだ。

反社は全く害悪以外ありえない。


そこでまたその反社同士が仲間割れをして何かの火が引火して爆発が起こった。

ここが勝負!反社どもを突き飛ばして逃げ出してきた。

火薬を無造作に詰んでいたのだろう。心底バカな奴らだ。


階段を駆け上がって表に出ると大通りの向かいのビルで新たな大爆発が起こった。


そこが秘密の本拠地だったらしい。


原田代表がいた。

「必死で隠しとったのに自分らで壊してしもうたか……!」


反社の虚しさをこの人も理解はしているようだ。


「でも復活してほしいよな」


更生という意味で言っているのか?


「なぁ?」と同意を求めてきたのでひとまず頷いておいた。


さっさと立ち去りたいが子分のことが少し気になっていた。


少しは気になったが友達でもなんでもない。


義理もなにもないので放置してきた。


彼だってきっとそうしたはずだ。


そう思いながらも煙を上げるビルから目を離せずにいた。


原田は私のそんな情緒を感じたのだろうか?

「ジブンももう帰りや」と言うので「お疲れ様です」と会釈して去ろうとすると原田は折り目正しく姿勢を正し「お疲れ様でした!」と頭を下げてくれた。


道すがらに無事に逃げ出してきたらしい子分がいた。


目が合ってしまったので「お疲れサン」というと「お疲れ様です」と返してきた。


これだけ迷惑かけられたのに挨拶だけで済まされてはたまらない。


パトカーや消防車がサイレンを鳴らしながら駆け抜けていく。


こういう場合使用者責任は誰に対して問えば良いのか?


絆コミュニケーションと対立組織、その双方に請求できるべきだがその賠償金もまた反社金である切なさ。


反社が資産不足だったら実際に支払わせることは難しくなる。


見上げると空は何事もなかったように今日もただ青い。


私達の少年時代のような歪んだ依存関係以上のいびつな絆とはよくいったものだ。


もともと原田が所属していた広域反社団体、山内組は小嶋組という造り酒屋の三男坊だとかの人が不良仲間を集めて作った反社組織の二次団体だった。


利権を巡って破門された初代山内春久が独立して三代目の田端一真の時代に謎の力で全国一の反社団にのし上がっていった。


組を割って飛び出した独立団体は通常ならば潰される。


それがわずか25年のうちに日本一の反社団体と成り上がったのだ。


田端の自伝はとても信じられない眉唾モノの武勇伝で彩られているが誰もこれに異議をとなえることはできない。「ツッコミ」を入れることなどできない。昭和裏面史の本物のタブーだ。


金持ちならではの様々な悪趣味があるが当時の成金社長のその一つに反社団を飼うというものがあった。


大企業も「闇の軍団」として反社団を利用していた。


「世界の〇〇」と呼ばれるような、創業者が卓越した先見性と強運で、と言われているような立志伝の背後にも闇の力がある。


だけどもみんな根本的には寂しいのだ。

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