エピローグ
趣味として書いていた小説を、友人のススメで載せてみました。学生なので、投稿頻度は遅めですが、ぼちぼち書いていこうと思います
暗黒が、物語の始まりに映ったものだった。
何も見えない。聞こえない。感じない。
そんな状態でも、不思議と不安さえも感じなかった。
地面があるのかどうかも分からないような不安定さ。息を吸おうとしても、肺に何も入ってこない息苦しさ。自分の手のひらすら見えず、その存在さえも疑わしい。
まるで、魂だけが取り残されたようだ。
だが、脳裏にはただ一つの光景が何故か焼き付いており、離れない。
眩し過ぎず、それでいて温もりを感じられる太陽。
その下には、傾斜の緩やかな小さな丘。背の低い黄緑の草が生い茂り、小さく揺れている。
丘の一番高いところには、翡翠色と群青色の葉が混ざった、見たこともない、神秘的な木が一本立っている。その付近には何故か、小さな雪の結晶がハラハラと舞っていた。
木の下に、二人の男がいた。かなりの高身長のスラリとした男と、それを半回り程小さくしたような男だった。
男らの顔の部分が淡く光っていて、モザイクでもかかっているかのように、顔立ちが分からない。向き合い、何かを話している。
ーー……ダメ……前…で……ろ…れる…
ーー……でも……なけ…ば…何……らない…
これも、ハッキリとは聞こえない。
だが、最後の言葉ーー高身長の男の言葉だけ、全て聞き取れた。
ーー二つの民を、王を……俺を、救ってくれ。
その瞬間、記憶と視界の両方が白く輝きだした。それは、あっという間に広がり、自分という存在の全てを包んだ。
ゆっくりと、目を開ける。
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ーー戻ってきたぜ
刹那、声が響いた。気がした。