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とある渓谷の竜を殺したことで名を上げた魔術師、ラルクは神聖王国軍の戦術魔術師だ。
竜殺しの実績を買われて軍属してからは、隣国の自由共和国との戦争において多くの戦果を挙げた。
彼の訪れた戦場には虹が架かる。そこから付けられた二つ名は『虹架け』。王国のなかでも名の知れた人間だ。そして、ラルクは今、所属となった砦へと向かっていた。
「ここが最前線の砦…。俺はここでやっていけるのだろうか…。」
所々補修の跡が見えるこの砦は、俺が配属された砦だ。自由共和国との戦争において現在の最前線を誇る場所でもあり、日夜激戦が繰り広げられている。俺は戦線の押上げを目的として組み込まれた存在なのだ。
「彼は新しくここに配属された兵たちの代表。魔術師の虹架け殿だ。この地で共に戦う仲間として共に頑張っていこう。」
と話したのはこの砦の兵士長だ。
「ご紹介に預かりました、虹架けです。名はラルクと言います。王国のため、共に戦いましょう!」
パチパチ、と少しばかり拍手が起こった。
基本的に戦術魔術師は一般兵と仲が良くない。それは闘いの場に原因がある。広域に魔術を展開する魔術師は、前線に留まる兵士を敵兵諸共押しつぶす扱い方も多い。魔術兵と一般兵では一人における単価が雲泥の差なのだ。
次に、ここの指揮官が話をする。
「君たちはいつ死ぬかわからないこの地で、国のために戦うことになった。だが、悲しむ事はない。
故郷の家族、君たちを待つ恋人、そして、この砦の仲間が君たちを支えてくれる。
国のため、命を懸けてほしい。」
少し腹の出た中年だが、ここに配属されてから大敗の無い優秀な男…らしい。
「それでは君たちを宿舎に案内する。各自荷物を持って付いてくるように。」
1人の兵士が俺たち新配属を連れ立って歩き始める。外から見ると補修も多く、頼りない見た目だったが、中からだと破壊痕はない。確かに最前線として素晴らしい戦果を挙げているのだろう。
宛がわれた部屋は廊下の奥。戦術魔術師の待遇は良いようで、一人部屋だ。
最も、初めから戦術級なので、他がどうなのかはあまり知らないのだが。
ここの前の配属場所は酷かった。魔術兵は一般兵を見下し、指揮官は無能だった。
それに比べ、日々戦いの緊張に晒されるこの砦は良い環境であると思う。それもまだ解らないが、戦闘が始まれば嫌でもわかるだろう。
願わくば、神のために戦うこの場所が良き場所でありますように。
俺、ラルクがこの砦に来てから一週間と数日、ついに自由共和国の軍が動く。
書くのは難しいですね…。