雲の向こう
いつか見た景色を君と塗りつぶす
第三雲【雲の向こう】
マルコは、ラルカとインマージュ2人を相手に戦っていた。
「さっさとくたばってよ!!」
「お前さえいなくなれば!!」
「ああ?俺さえいなくなれば?何言ってんだ、てめぇらは」
すでにツェ―ンヂェンの兵士たちはそのほとんどが戦える状況ではないというのに、マルコはそんなことお構いなしだ。
むしろ、まるで訓練をしている時のように楽しそうにしている。
一旦マルコから離れると、インマージュが舌打ちをする。
「さすがだな。普通に戦ってたんじゃ、お前には敵わない」
「あれ、今俺のこと褒めた?照れる」
「だから、こういうものを用意しておいた」
そう言ってインマージュが取り出したのは、何かのスイッチだった。
察するに爆弾か何かのものなのだろうが、それをマルコとオルウェスに見せながら、インマージュは勝ち誇ったように笑う。
「この城に潜入してる間に爆弾を設置しておいた。このスイッチ1つで、この城はめちゃくちゃになる。生き埋めになりたくないなら、その男をこっちに渡せ」
スイッチに親指を置いた状態で、ニッと笑いながらそう言うインマージュ。
「ば、爆弾!?そんな危険なもん、城に設置したのか!?馬鹿かお前!?」
「最悪の事態に備えておいたんだ。そうやら正解だったな」
「インマージュ、やるじゃない」
なんてことだと、マルコはラルカとインマージュに向けていた刃をひっこめる。
だからといって、オルウェスを渡すことも出来ず、ただ睨み合う。
「そんなことしたら、てめぇらだって生き埋めだぞ?」
「わかってる。それでインヴィズィル様が喜ぶなら本望だ!!僕1人犠牲になってこの国を潰せるなら、安いもんだ!!!」
「国のために命を懸けて戦うのが兵士よ。あたしたちは、ずっとそうやって国を守ってきたの。他の国が滅ぼうが人が死のうが、小さいことよ」
「・・・全てはお国のためにってか。狂ってるぞ、それ」
「だからオルウェス様、ここで死んでください」
ずっとマルコの背中に隠れていたオルウェスは、ゆっくりと前に出てきた。
前にとは言っても、マルコのすぐ傍だ。
「ラルカ、インマージュ」
名前を呼ばれ、2人は警戒する。
「2人が慕う国王は、そういう人たち、なのか?」
「え?」
「僕には、分からない。兵士だからって、死んでもいいってわけじゃない。戦争をしてまでこの国の領土が欲しいなら、そんなものあげます」
「オルウェス・・・」
「僕は、広い領土も、必要以上のお金も、権力も、そんなものはいらない。ただ、家族と一緒に暮らす、建物1つあればそれでいい。それ以上があっても、余ってしまうから」
「・・・・・・」
一国の王、それはとても大事なことだ。
国を守る、地位を守る、権力を守る、財力を守る、国民を守る、沢山のものの幸せを守っていかなければいけない。
そんな重荷を背負うなんて、まだ幼いオルウェスにとっては酷なことだ。
それでも、小さい頃から見てきた沢山の背中は、国王とはいかなるものか、この国はどうあるべきかを教えてくれていた。
急に一人ぼっちになってしまって、孤独を感じたことも確かだ。
「犠牲の上に成り立つものは、それが例え平和であっても幸せであってもならない。犠牲がなければ手に入れられないものなら、それは無い方がいい。僕は、この国の王として、これ以上犠牲を作ることはしたくない」
「・・・へえ。一丁前のこと言ってくれるな。それは、お前が首を差し出す、ってことでいいのかな?」
「ご立派な演説ね、国王様」
オルウェスの言葉に、ラルカとインマージュは同時に笑みを深める。
ただ1人、険しい顔をしているマルコの方を振り向くと、オルウェスはマルコに近づき、その幼い顔で笑った。
「僕はいなくなるけど、マルコたちがいれば大丈夫」
「・・・・・・」
「今までありがとう、マルコ。みんなのことは忘れないよ」
目を細めるマルコに背を向け、オルウェスは歩きだした。
これでようやく長年の潜入が報われる、とラルカとインマージュは安堵の表情を浮かべる。
ぐい、と、オルウェスの腕を掴んだ。
「ちょっと、何してるのよ」
「その手を離せ、マルコ」
「・・・・・・」
「聞いてるの!?」
「俺からも一言、いいか?」
「なんだ?最期の挨拶か?別にいいが、あんまり待てないからな。さっさと済ませろよ」
「悪いな」
オルウェスはマルコの方を見ると、マルコはなんとも言えぬ表情をしていた。
それは悲しいとか、辛いとか、寂しいとか負の感情ではなく、かといって、嬉しいとか楽しいとか、そういった感情のものでもなかった。
どれが一番近いかというと、悩んでいる、といったところだろうか。
どうしてマルコがそんな顔を今しているのか、オルウェスは全く理解できずにいた。
「前国王から言われていたことがある」
「え?」
「俺の他には、数人しか知らないことだ。それほどまでに厳重に機密事項としてされてきた」
「マルコ?何を言って」
「命令してくれ」
「な、何を・・・?」
「『国を守れ』と。そうすれば、何十年、それ以上守り継がれてきた、ツェ―ンヂェンの存続の秘密は公になり、また零からのスタートになる。だが、今それをしなければ、これまで守り続けてきた国が無くなってしまう」
「・・・・・・」
一体何のことを言っているのか、オルウェスにはまだ分からない。
それでも、マルコの瞳を見つめているうちに、それに懸けるしかないと思った。
父親がマルコたちに何を言ったのかは分からないが、それでも、何もせずに終わりにするわけにはいかなかった。
「マルコ」
「お前等、さっきから何の話をして・・・」
「国を、守ってくれ」
そう言うと、マルコは優しく微笑み、オルウェスを自分の後ろに引っ張った。
空気が変わったことは、その場にいたラルカとインマージュにも伝わり、スイッチを握ったままのインマージュは、スイッチをぐいっと出して距離を取る。
マルコはにっと笑うと、胸あたりについていた小さなブローチのようなものに口を近づけ、こう叫ぶ。
「国王からの命令だ。国を守れってよ」
そのマルコの行動に、一同はぽかんとする。
「一体、誰に言って・・・」
瞬間、マルコの姿が見えなくなったかと思うと、インマージュの下に入りこみ、顎から強烈な蹴りを入れていた。
その衝撃に、インマージュは爆弾のスイッチを落としてしまい、身体は勢いに任せて後ろの壁へとめり込んだ。
「なっ・・・」
「読みが甘ぇんだよ。同盟?んなもん、痛くも痒くもねぇっての。てか、てめぇらが同盟組んで、さらにはゴルウディスまで巻きこもうとしてたことくらい、知ってるからよ」
「ど、どうして・・・」
「どうして?そりゃあ・・・」
「ラルカからの報告はまだか。いつまで待たせる心算だ?先にこいつを殺すか?」
「モーツェル様、もうしばし待たれては?」
「俺ぁ待つのは苦手なんだよ」
「なら暇つぶしに、この男で遊びます?」
モーツェルがラルカからの報告がないことに痺れを切らしていた。
「シルクとエドローはどうした?」
「出荷の件で話をしているそうです」
その時、廊下の方から何か叫び声のようなものが聞こえてきた。
その声は一瞬で消えてしまったため、部屋にいたモーツェルたちは気のせいかと思っていたのだが、またすぐに声が聞こえた。
「エズ―」
「は、ただいま確認します」
モーツェルに名前を呼ばれ、すぐさまエズ―は廊下に出て事態の確認を急ぐ。
どうせまた兵士たちが喧嘩をしているとか、誰かが酒に呑まれて暴れているとか、そういうことだろうと思っていた。
だが、廊下に出てみると、すぐに目に入った。
そこには、タンダロスの兵士たちが倒れているではないか。
何が起こったのか聞こうとしても、皆気絶させられており、エズ―は無線でシルクとエドローに連絡を取ることにした。
「シルク、エドロー、聞こえるか?」
『え、エズ―?助け・・・』
「エドロー!?どうした!何があった!?」
『国王からの命令が下った』
「え?」
無線の向こうから聞こえてくるはずのエドローの声が、すぐ傍で聞こえた。
ふと後ろを見ると、そこにはいつものようにニコニコと笑っているエドローが立っていた。
「国王からの命令とは何だ?モーツェル様が何か?」
「シルクもやられた。とにかく、部屋に戻ろう」
すぐそこのモーツェルがいる部屋を開ければ、モーツェルがこちらに気付いて何かあったのかと聞いてきた。
それに答えたのは、エドローだ。
「それが、残念なことに」
「残念?何がだ?」
モーツェルに一歩近づいたとき、その近くにいたロマンドがエドローの前に立ちはだかり剣を抜いた。
ひゅん、とエドローが何かを投げたかと思うと、ロープで縛りつけていたボルゴが解放される。
「エドロー、お前、裏切るのか?」
いつも以上に低い声、モーツェルは眉を潜ませてエドローを睨む。
エズ―も後ろからエドローに剣を向けるが、ボルゴが自由の身になってしまったため、そちらに切っ先を変えた。
「裏切る・・・?人聞きが悪いことを言わないでいただけますか?モーツェル様」
「裏切っているのではないとすると、なんだと言うのだ。明らかな裏切り行為だ。ここで殺されても文句は言えないぞ」
「兵士たちもやられていました」
「エドロー、お前には失望させられたよ。拷問攻めにしても物足りないくらいな」
ピクピクと頬を引き攣らせながら言うモーツェルに対し、エドローは至って普通に、笑みを崩さずに答えた。
「だから、俺は裏切ってなんかいませんって」
「どの口がそんなことを!!」
「だって俺、初めっからツェ―ンヂェンの兵士ですもん」
「は?」
「ジョーザン、打たれ強い男だな。お前みたいなやつ、俺は嫌いじゃない。これで素直に頷いてくれるなら、尚のこといい」
あれから少しして、再びジョーザンのもとへきたインヴィズィルは、性懲りもなくジョーザンをスカウトしていた。
それでも全く首を縦に振ろうとしないジョーザンに、インヴィズィルはいい加減イライラの最高潮に達していた。
「そうか。なら、残念だが、ここで殺すことにしよう」
すう、と剣を抜いたインヴィズィルは、ジョーザンの首に剣を触れさせ、死への恐怖を煽るが、ジョーザンは一向に表情を変えない。
「インヴィズィル様、お召し物が汚れてしまいますので、始末するなら俺がしましょう」
「僕がします。この男の目、気に入らないので」
「俺がするんだ。お前等は引っ込んでろ」
わけのわからない取り合いをしていると、強めにノックする音が聞こえてきた。
こんな時に誰だと、ヴィルタが扉を開けると、いきなり誰かが凭れかかってきて、思わず受け止める。
それが戦場へ行っていたリーザだと分かるのはすぐだった。
「どうした!?」
リーザは血だらけになっており、身体にも複数の傷があった。
呼吸も浅く、何かあったことは明らかだ。
「や、奴が・・・」
「奴?誰のことだ?」
「い、インヴィズィル様・・・お、お逃げ・・・お逃げくださ・・・」
「リーザ!!」
がくん、と力尽きてしまったのか、リーザはその場に倒れてしまった。
まだ呼吸をしていることから、死んでいないことは分かったのだが、どうなっているのかと、まだ戦場にいるかもしれないレンダに無線で連絡をする。
しかし、レンダはなかなか出ない。
「ヴィルタ、何があった」
「わかりません。レンダとも連絡が取れない状態です」
「まさか、兵士共がやられたわけじゃあるまいな?あの数だ。奴らにやられるはずがないが・・・」
「ソージュ、すぐに出てくれ。状況を知りたい」
「わかった」
すぐさま飛びだしたソージュは、そこで立ち止まってしまう。
「あ・・・」
「ソージュ、急げ!!」
「ヴィルタ、コレ・・・」
ソージュの様子がおかしかったため、ヴィルタは廊下を覗く。
すると、ヴィルタも驚いたような表情をしていたため、インヴィズィルも気になったのか、廊下を見に行く。
そこには、倒れた兵士たち。
一体誰がこんなことを、と思っていると、物音が聞こえてきたため、部屋の中に視線を戻す。
するとそこには、ロープを脱いだジョーザンが立っていた。
「お前・・・どうやって!!」
「・・・おい、いつまでそうやってる心算だ」
「・・・へへ、バレた?」
「なっ・・・リーザ!?一体、どういうことだ!?どうなってる!?」
倒れていたはずのリーザは、何事もなかったかのように立ち上がると、自分につけていた血を拭く。
すると、それはリーザのものではなく、誰かの血であることがすぐに分かった。
当の本人は至って笑顔で、ポンポンと服についた汚れや埃を払えば、怪我ひとつしていないのだ。
すう、と目を細めたインヴィズィルは、自分の腰におさめていて、抜くことはないだろうと思っていたその剣を抜いた。
「返答次第じゃ、お前も殺すぞ」
「リーザ、どうしてこんなことを」
「理由なんてどうでもいい。こいつは俺を裏切った。馬鹿にしやがったんだ。絶対に赦さねえ」
ふう、と一息吐いたリーザは、後頭部をかきながら困ったように笑った。
「世話になりましたね。曾祖父よりも前からだから、もう1世紀以上、この国にいたんですね」
「思い出話なんてどうでもいい」
インヴィズィルがひゅっと剣をリーザに突きつけると、リーザはその剣を掴む。
そこから血が少し出てくるが、インヴィズィルが動かそうとしても動かせないため、顔を歪ませてリーザを睨む。
「俺も、12になるまで知りませんでしたよ。親父に聞かされたときは、驚いたのを覚えています」
ソージュもゆっくり剣を抜くと、リーザに向けた。
「俺はツェ―ンヂェンの兵士、ギ―ス。国王の命により、本来の仕事に移らせていただきます」
「ギ―スだと!?俺のことをコケにしやがって!!!」
カキン、とリーザ、いや、ギ―スが握っていた剣が折れた、というよりも折った。
それを床に放り投げると、ギ―スだけでなく、ジョーザンも剣を抜く。
「死ぬかと思ったよ」
「生きてたろ?」
ニッと笑えば、ジョーザンは呆れたように笑った。
「初めから、ツェ―ンヂェンの兵士、だと?何を言ってるんだ?」
「その言葉のまんまー」
「お前の家は、半世紀以上前の時代からずっとタンダロスにいる!!ツェ―ンヂェンの兵士なわけがない!!」
「だからー、あー、面倒臭ぇ。どうすりゃいいわけ、ボルゴ?」
「倒せばいい」
「成程な」
ああ、ちなみに、と付け足すと、エドローは剣を抜きながらこう言った。
「俺は特攻が得意なツェ―ンヂェンの兵士、ブランディ。よろしく」
「ブランディだと!?どうなってる!?」
「そんなこと考えなくていいんだよ。俺達は敵同士になった。ただそれだけだ」
「なら、僕たちに殺されても文句言えないってことでいいね、ブランディ」
「ああ。互いにな」
タンダロスもガイツシュペルも、突如として訪れた危機に抵抗している中、ツェ―ンヂェンの城でも、抵抗を試みている者がいた。
「ラルカ、もう諦めろ」
「嫌よ!!絶対に諦めない。このスイッチを押せば、みんな死ぬ!それでいいの!!モーツェル様のために、あたしはここまで生きてきたんだから!!」
「・・・・・・」
ふう、と息を吐いたマルコは、剣をしまって銃を取りだした。
それにはラルカは勿論、オルウェスも驚いてしまって、マルコにそんなものしまう様にと言ったが、マルコはただちらっとオルウェスを見ただけだった。
「飛び道具なんか出して!!恥ずかしくないの!!男のくせに!!」
「男だろうが何だろうが、敵に容赦はしねぇんだよ」
「そ、そんなものであたしがスイッチを押さないとでも思ってるの!?迷いなんかないんだから!!あんたが銃を撃つ前に、押してやるわ!!」
「・・・・・・別に押してもいいぜ」
「は?」
「だから、そのスイッチ、押してもいいぜ?」
「!!!馬鹿にして!!!」
怒りが頂点に達し、ラルカは手に持っていた爆弾のスイッチを押す。
カチ、と小さな音がすると同時に、ラルカは思い切り強く目を瞑っていた。
しかし、どうにもこうにも爆発しない。
「ど、どうして?」
「ククク・・・。ほんと、爪が甘ぇよ」
「な、何よ・・・!!」
「爆弾なんて、とっくに取り外してあるよ」
「!!!」
ラルカとインマージュの2人で、どこに仕掛ければ効率よく城が崩れるかを計算した上で、爆弾を設置してきた。
バレているはずがないし、何処に設置されているかなんて、分かるわけがない。
そう思っていただけに、ラルカは何度も何度もスイッチを押してみるが、やはり全く反応しない。
「タンダロスとガイツシュペルがツェ―ンヂェンにスパイを送り込んだ。だがそれよりもずっと前に、俺達はそっちにスパイを潜りこませてたんだ」
「嘘よ・・・。ここ数十年の間、スパイを警戒して、新人は兵士であってもなくても、くまなく身辺調査が行われていたはず。そんな人はいなかったわ!!」
「新人、ねぇ。最初から国にいたら、どうだ?」
「最初から?どういうこと?」
マルコはニヤリと笑うと、後ろにいるオルウェスにも視線を送りながら説明をする。
「ツェ―ンヂェンがこれほどまでに長く国を守っていられたのは、どこよりも長けた情報量の多さだ。その情報はどこから入ってくるかっていやぁ、もちろん、自国を狙う敵国からだ。だが、敵がそう素直に情報をくれるわけがない。そこで、当時の国王は考えた」
―疑われずに情報を得ればいい。
「つまり、何世代にも渡って、ずっとスパイとなる家族を潜りこませていたってわけだ。生まれた子供は一定の歳になるとそのことを教えられる。まあ、スパイなのにその国に情を持たれても困るからな」
一時のスパイでは疑われてしまうことでも、何十年も国に仕えている者であれば、そう疑われることはない。
家族と言う事はつまり、伴侶となる人がいるわけだが、その人物は国の人でもそれ以外の人でも構わない。
思想が違う人だとしても、良いとされている。
だが、この秘密が明かされることはない。
例えば、父親がスパイだとすれば、母親はこのことを知らない。
生まれた子供に秘密を打ち明けるが、そのことを子供は母親にも話せない。
逆もまた然りということだ。
つまり、ツェ―ンヂェンは秘密を厳守するために、最低限の人物にしか秘密を明かさないという徹底的な秘密主義を行ってきた。
勿論、その中には秘密を話してしまう子供や、たまたま聞いてしまった人物もいるとされているが、その際は、理解があろうとなかろうと、すぐに国を出るように言われている。
そうしなければ、どこから情報が漏れてしまうか分からないのだ。
「オルウェス、お前の父親も、お前に話そうとしてた。だが、その前に亡くなってしまった」
「そんなことが・・・」
「俺とボルゴ、それからジョーザンは知ってた。まあ、それがどんな奴かは知らなかったけどな。名前だけ聞いてたが、スパイのそいつらは偽名だったしな」
「秘密主義のわりに、どうしてあんたたちには教えたの?あたしたちには言わなかったのに」
「そりゃ、俺達が信頼されてた、としか言いようがねえよ。こいつがまだガキで、理解でも出来ねえだろうと判断して、国王の心眼で選ばれた、ってとこかな。こういういざってとき、誰も知らねえとか1人だけ知ってるじゃ、話しが進まねえからな」
「・・・・・・」
ラルカは悔しそうに唇を噛みしめる。
爆弾のスイッチを棄てると、剣を抜いてマルコに襲いかかってくる。
マルコは対等に剣を、ではなく、向けていた銃を一発撃つと、銃弾はラルカに当たってラルカは倒れてしまった。
「マルコ!」
「安心しろ。死んでねぇよ」
「え?」
「人殺しなんて、国王が赦さねえだろ?」
ただの麻酔銃だよ、とにんまり笑いながら言うマルコにホッとし、オルウェスはその場に座り込んだ。
「休んでる暇はねえぞ」
「あ、ごめん」
「こいつら縛りあげて、返さねえとな」
「死ね!!ブランディ!!」
「俺にそんなに恨みでもある?結構尽くしてきたと思ってるんだけどなぁ」
「ああ、そうだな。忠実で賢い男だったよ」
「俺も嫌いじゃねえよ。だが、やってることがやってることだからな」
モーツェルは剣を我武者羅にブランディに向けていた。
それをひょいひょいと避けているブランディの後ろで、エズ―とロマンドの相手をしているボルゴがいた。
「なあボルゴ、折角だから、共闘しねぇ?」
「当たり前だ。特攻が得意なら、さっさと突っ込んで行け」
「酷ェな。ま、行くけどよ」
そう言うと、自分の剣を鞘におさめ、ブランディは一瞬にしてエズ―の間合に入りこみ、手首を掴んでエズ―の剣を床に落とす。
肘で顎を強く打撃すると、そのままの勢いで喉仏を狙ってエルボーを繰り出す。
エズ―が苦しそうに咳こんだところで、ロマンドが剣で向かってきたため、エズ―のマントを視界に広げる。
マントを払いのけると、すでにブランディはロマンドの背後に回っており、エズ―の後頭部を持ったまま、ロマンドの腹を蹴り飛ばす。
後頭部を掴んでいるエズ―を床に放り投げ、床に着地する前に首裏を叩いて気絶させる。
立ち上がろうとしたロマンドに近づくと、ブランディは遠慮なしに一発。
ずるずると倒れ込んでしまったロマンドを床に寝かせると、コキコキと首を動かす。
「少し寝ててもらうか」
「・・・なぜ殺さない」
「国王様が、それを望まないからだ」
「なんだと?」
「ほら、他所見してると」
「え?」
ボルゴが、他所見をしているモーツェルに、無表情のまま気絶させた。
「何怒ってんだ?」
「別に。ほら、さっさと帰るよ。どうせもうここにはいられないだろ」
「まあね。そういや、ボルゴって料理上手いって聞いたぜ。おやつ作ってくれ」
「・・・世話の焼ける奴が増えた」
「ギ―ス!!!」
「ジョーザン、そっち頼むよ」
「ん」
す、とギ―スが剣を抜くのを見て、ヴィルタは目を細める。
「お前は剣が苦手だったはず。なのにどうして剣を抜く?」
「え?苦手?何のことだ?」
「ずっとお前を見てきた俺には分かる。剣が苦手だというのに嘘偽りはないはずだ」
「へえ?そうなんだ?」
そう言うと、ギ―スは剣をひゅっと、ただ、誰を狙ったわけでもなく一振りした。
すると、剣が触れていないはずの離れた場所にあるベッドの柱が一本、真っ二つに斬れてしまった。
「剣を握ると加減ってものが出来なくなるから、握るのはちょっと、拒んじまうよ」
「腕が鈍ったと言っていたのは」
「嘘じゃない。確実に腕は鈍ってしまったから」
「・・・・・・」
先程のを見せられて、腕が鈍ったなどと言われると、どれだけの隠し事をしてきたのかと、ふつふつとわき上がるものがある。
ヴィルタがギ―スに剣を向けると、怒りが一向に収まらないインヴィズィルは、隠し持っていた銃を取り出す。
「お前等、全員死ねよ!!俺の思い通りにならないなら、いらねえ!!!」
「インヴィズィル様、落ち着いてください」
「これが落ち着いていられるか!!大失態だ!!スパイを潜りこませていたと思ってたら、逆にそれ以上のネズミが入りこんでたなんてな!!お笑いだ!!」
銃口をギ―スに向けると、まだその耳に残っている、ガイツシュペルの兵士がつけているそのピアスが光る。
生まれた時からこの国に、この城にいるが、情が全くないのかと言われたら、そんなことはない。
確かにやっていることは人道から反しているが、1人1人が嫌な奴かと言われれば、決してそうではない。
親の世代で動いたかもしれないし、自分の世代で動くかもしれない、いや、もっと先なのかもしれないと、渦巻くものは多かった。
「後悔はしていませんよ」
「後悔させてやるよ!!!」
背後からソージュが剣を振りかぶってきたが、ギ―スはその剣を素手で握りしめると、剣を握ったままソージュを投げ飛ばす。
ソージュはすぐに体勢を立て直して剣を向けるが、その切っ先はすでに折れていて、使い物にはならなかった。
それでも膝を立てて立とうとするソージュの首元には、冷たい何かが当てられる。
目線だけを横に向ければ、そこにはジョーザンが立っていて、手には折れた自分の剣の先があった。
「あいつにけじめをつけさせてやりたい」
「けじめだと・・・!?ふざけたことを」
「あいつだって、本来はお前らと同じ、この国を守る兵士だったんだ。それが、お前等がけしかけてきた戦争で崩された。ただ、それだけのことだ」
インヴィズィルが銃を、ヴィルタが剣を向けている中、ギ―スは持っている剣を一度鞘におさめる。
それを見て、インヴィズィルは口角をあげて笑う。
「跪け!!その生意気な面、二度と見ないようにぐちゃぐちゃにしてやるよ!!」
「・・・・・・」
「・・・!!無視してんじゃねえぞ!!」
引き金に指をかけたインヴィズィルのことを見ることもなく、ギ―スは少し俯いて黙ってしまった。
銃弾が飛んでくるその一瞬前、ギ―スは剣を抜いた。
「なっ・・・!?」
インヴィズィルが放った銃弾は二つに斬られており、床に転がっていた。
こんなこと出来るなんて、知らない。
こんな男、知らない。
その一発を引き金に、インヴィズィルはギ―スに向かって、特に狙いを定めているのかも分からないほどに乱射し始めた。
それはギ―スの頬を掠めもしたが、ギ―スは悲しそうに笑うと、剣の刃を逆向きにし、インヴィズィルの腹に強く押しこんだ。
「ぐ・・・あっ・・・」
崩れ落ちるインヴィズィルの身体を受け止めると、静かに床に寝かせる。
「ヴィルタ」
「・・・なんだ」
「そんなに、弟が憎いか」
「・・・・・・」
ゆっくりとした動作でこちらを向くギ―スは、同じ人物のはずなのに、まるで別人のように感じる。
何が違うのかと聞かれると、分からないが。
「俺には弟などいない」
「ヴィルタ、お前は」
「弟など、この世に存在しない。親は金と引き替えに俺を養子に出した。俺を売った親も、俺を買った親も、どっちも赦さない。親なんて思わない」
「・・・そうか」
再び鞘に剣をおさめると、ギ―スとヴィルタは向かい合う。
じりじりと間合手前で相手の様子を窺う。
ふわ、と風が吹いたとき、2人は一斉に剣を交えた。
「・・・・・・」
空気が止まった、そんな気がする。
この場所だけ時間が止まってしまったのかと思うほど、静寂が支配していた。
カラン、と無機質な音が聞こえてきたかと思うと、まるで催眠術が解けたように、は、となる。
剣を鞘におさめると、ギ―スは口を開く。
「俺の勝ちだ。これ以上、剣を抜かせるなよ」
「・・・嘲笑っていたのか。俺たちじゃお前に敵わないと分かっていて、剣を抜かなかったのか」
「笑っちゃいないさ。お前等と一緒にいるのは、個人的に、好きだったからな」
「ふっ。さすがは、難攻不落の国、だな」
ギ―スとジョーザンは城と国を出ると、ツェ―ンヂェンへと向かう。
「タンダロスとガイツシュペルが負けた?どういうことだ?」
その頃、ゴルウディスにも勝敗がわかったと報告が入った。
しかし、聞いた結果は思っていたソレとは違っていて、一番にそれを聞いたデオールはもちろんのこと、マハーヌも驚いていた。
自分達が裏切ったことを知っているだろうから、きっとこちらに何かしら要求をしてくるかもしれないと、覚悟していた。
マハーヌは武器を作っていた手を止めると、自室を目指す。
「はあ・・・」
もう、武器など作るのを止めるべきなのか。
しかし、武器製造を止めたことが他国に知れれば、用済みとなったこの小さな国など、簡単に潰されてしまう。
そうなれば、ここにいる国民や職人たちはどうなってしまうだろう。
良くて奴隷のように働かされてしまい、最悪の場合は殺されてしまう。
傾いている陽を眺めていると、そこへモーズが入ってきた。
「マハーヌ様」
「どうかしたか」
「それが・・・」
扉をぎい、と開ければ、そこから見覚えのある2人の女性が。
思わず目を丸くするマハーヌは、何が起こっているのかまるで分からない。
「お兄様・・・!!」
「チェルモ!ミル―ド!」
チェルモとミル―ドはマハーヌに抱きつくと、マハーヌも同じように強く2人を抱きしめる。
顔をぐしゃぐしゃにして涙を沢山流しているその顔は、国王と呼ぶにはあまりに頼りないが、何よりも人間らしい。
「どうして・・・」
「話をつけてくださったの」
「?誰が・・・」
そう言うと、さらに奥から男が入ってきた。
そこには、自分よりも幼いだろう緑の髪の少年と、後ろからは背の高い金髪の男がいた。
「ツェ―ンヂェンの国王のオルウェス様です」
「ツェ―ンヂェンの・・・」
「オルウェス、です」
「私はマルコと申します。この度の件ですが・・・」
「申し訳ありませんでした」
「・・・・・・」
まだ言い終っていないというのに、マハーヌはいきなり頭を下げた。
モーズはマハーヌに近寄り、肩を支える。
「マハーヌ様」
「どうか、頭をおあげください」
「しかし、私は同盟を組んだあなた方を裏切り、武器を敵に回したのです。どのような処罰でも受けます。ですが、私1人の命で赦していただきたい」
「・・・お兄様」
頭をあげようとしないマハーヌに、オルウェスはそっと一歩近づき、同じように頭を下げる。
それにはマルコも目を見開き、口を開けてしまったが、すぐに顔を戻す。
「こちらこそ、申し訳ありませんでした」
「へ?」
「戦争などに巻き込んでしまって、申し訳ありません」
オルウェスの言葉に、つい頭をあげてしまったマハーヌ。
ゆっくりと顔をあげるオルウェスの顔はやはり自分よりも幼くて、未だに少し震えているのが分かる。
すると、後ろにいたマルコがオルウェスよりも一歩前に出て、マハーヌに向かって笑みを浮かべる。
「何か勘違いされているようですね」
「え・・・勘違い?」
「ええ。別に私共は、あなた方を取って煮て食おうなどと思ってはいません。戦争は終わったのです」
「では、どういう・・・」
「タンダロスとガイツシュペルの国王、モーツェル様とイヴィズィル様に話しをしてきました。これまで行っていた人肉のための成育や売買を止めることと、2人のお嬢様を解放するようにと」
気絶していたそれぞれの国王たちを縛りあげておいて、目を覚ましたのを確認して、ある書類にサインと朱印を貰って来た。
かばいの制札のような、誓いの文書だ。
兵士たちの中には、そんなものに応じなくても次ことは勝つ、と言ってもう一度戦争をしようと言う者も少なくなかったようだが、それを止めたのは国王ではなく、エズ―やレンダといった、国王の側近たちだった。
国王の器の違いが、今回の戦争の結果として出たというところか。
「その代わり、他の野菜とか魚とかを供給出来るように手配しました。それに、今時、政略結婚なんて流行りませんからね」
「あ、ありがとうございます。私たちでお役に立てることがあれば、なんでもします。武器でもなんでも・・・!!」
「有り難い話ですが、生憎、私共の国王は、見返りを求める様なお方ではありません。ねえ?」
急にマルコに話しをふられ、オルウェスは「え」と驚いたような声を出すが、マハーヌを見て小さく笑う。
「せっかく国というものから解放されたんですから、止めましょう。ですが、困ったことがあれば、助けます。私達も、あなた方を頼りにしています」
「・・・この国は、とても小さい。ですが、あまりに優秀な職人たちが揃ってしまったんです。利益よりも、己の技を試したい方が多いのです。それ故、日々新しい武器が作られてしまう」
武器を作ったところで、使う人間がいない。
それを知っているからこそ、あちこちの国からその武器を売ってくれと言われる。
それが国の資金源ともなっているから、何ともいえない。
職人たちは己を磨くために、武器を作る。
それが罪だと言われても、職人たちのその手を咎めることなど出来ない。
「なら、必要としてるところに売ったらいいんじゃないですか?」
「え?」
「要するに、剣や銃なんかの“武器”として作ってるから、ごたごたに巻き込まれるんだから、なら、武器じゃないものを作って、売ればいいんですよ」
「?」
にんまりと笑みを作ったマルコが出した提案は、剣などのものではなく、包丁や小刀、鎌や鍋に農具などを作るというものだった。
剣や銃、砲弾などを作る技術があるのだから、日常的に使うそれらに作り替えれば、戦争に利用されることもなく、必要としている人達は世界中にいる。
「職人たちが何と言うか・・・」
「自分の腕を磨きたいなら、人殺しの道具より、人の役に立つものを。それはきっと、国王のあなたから仰れば、みな納得するはずですよ」
「そうでしょうか・・・」
「この国もまた、国王によって守られてきた国ですから。あなたが武器を作りたくないと言えば、武器だけを作りたい奴は出て行くでしょう。あなたに着いていくという人は残る。それだけのことです」
「・・・・・・」
「まあ、それはあなたが決めることです。この国は、あなたの国ですから」
国民をどう動かすかもあなた自身、と言われ、マハーヌははっとする。
「さてオルウェス様、そろそろ戻りましょう」
「うん。では、失礼します」
部屋から出て廊下を歩いていると、向こうから黒髪の男が歩いてきた。
すれ違う際、マルコはニッと笑う。
「頼んだぞ、ルーアン」
「・・・ああ」
男が扉を開けて部屋に入ると、マハーヌが妹たちと再会している場面だったため、傍にいたモーズに話しかける。
「こうしてると、普通の兄妹だな」
「アル―、何処にいったのかと思ってたよ。それより、マハーヌ様が職人たちに話しがあるそうだから、広間に集めておいてくれ。もちろん、俺達も」
「あいよ。任せておきな」
それから、ゴルウディスが武器を作ることは無くなり、職人たちはその洗練された技を使い、役立つ物を作ることになった。
チェルモとミル―ドもまた、職人たちに混じって腕を磨くのだった。
タンダロスに成育するための赤子や子供、時には大人をも送り込んでいた国も摘発されることになり、タンダロスとガイツシュペルはツェ―ンヂェンの監視下に置かれることになった。
「そういえば、マルコに聞きたい事があったんだ」
「あ?なんだ?」
ごろごろと日向ぼっこをしていたマルコとブランディ。
ボルゴがおやつを作ってくれると言っていたから、ここでこうしてのんびりと待っているわけだが、少し離れた場所では、ジョーザンが鍛錬をしている。
「なんでお前って、オルウェス様にタメ口なわけ?普通ならもう首ねぇだろ」
「ああ、それな。実は・・・」
「実は?」
「・・・慣れねえんだよな。敬語が」
「はあ?」
そよそよと吹いている気持ち良いくらいの風が、2人の髪を躍らせる。
「前の国王が、まあ、あいつの親父だけどよ」
義理の兄が来てすぐに生まれたオルウェスだが、その兄はすぐにいなくなってしまった。
甘やかしていた心算はないが、とにかく引っ込み思案で大人しくて、優柔不断で決断1つ出来ないオルウェスを見て、こう思ったらしい。
『兄がいれば違うかもしれない』
「で、たまたま俺が選ばれて、あいつの兄貴役として接してくれって言われて」
「普通なら、畏れ多くて敬語が抜けねえとこだな」
「そう。それが俺の良いとこ。敬語がすぐに抜けたんだよ。でも今度はタメ口が抜けなくなっちまって。かといって、第三者がいる前でそんな口聞いてたら、あいつの立場ってもんがねえから、出来るだけ敬語にはしてる心算だ」
「へー」
「お前、聞いておいて興味なさそうにするなよ」
「あ、いい匂い」
「あ、今日はガト―ショコラだな」
クンクンと漂ってくる良い匂いを嗅いでいると、ボルゴとギ―スがおやつを持ってきた。
すでに残り少ないところを見ると、ここに来るまでに色んな場所を回って、オルウェスにも兵士たちにも、みなに配ってきたのだろう。
どうしてここが最後なのかと聞けば、ボルゴは当然のように答える。
「ここに最初に持ってきたら、全部喰っちまうだろ」
「てめ、マルコ!でっかいやつ取りやがったな!!!」
「早い者勝ちだろ。けちけちしてんじゃねえよ」
「はあ。聞いてないな」
「ジョーザン、こっち来なよ」
ギ―スに呼ばれ、ジョーザンは汗を拭きながらこちらに向かって来て、その中の1つを手に取り口に頬張った。
隣ではまだ大きいだの小さいだのと言い争いをしているマルコとブランディがいたが、放っておいた。
その様子を、オルウェスが覗いているとも知らず、子供のような喧嘩をするのだ。
「・・・・・・」
オルウェスも、ボルゴが作ったケーキを食べながら、今日も平和だな、と思うのだ。
そして、外から聞こえてくる2つの叫び声に、眉をハの字にして笑う。
「じゃんけんで勝負だ!!」
「望むところだ!!」
「てめ!今後出ししたろ!」
「してねぇよ!!ケツの穴の小せぇ男め!」
「てめぇの方が小せぇよ!!」
「お前の方がもっと小せぇよ!!」
「いい加減にしろ、お前ら・・・」
マルコとブランディの間にある残ったケーキは、2人の喧嘩をにこにこしながら見ていたギ―スのお腹におさまるのは、このすぐ後のこと。




