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1話 これだから三次元って嫌いなの。



桜が咲き乱れ春風が吹くこの頃、新しい制服に身を包みながら歩く歩道は生徒で溢れかえっていた。ヒラヒラと桜の花弁が落ちてくるの掴み、心をドギマギさせながら目の前にある門を潜ろう思う。


まだ入ったことのないその中はどうなっているのだろうか?好奇心と興奮がウズウズと心をくすぐられ、早く早くと急かす気持ちが強くなる。


此処まで聞いたのならわかると思うが、この4月から私は、



ーーー高校生になったのだ。





...っていうセリフって少女漫画には必須だよね。


そう、私は確かにこの4月高校生になった。

だがしかし、冒頭の言葉は全て私の頭の中の茶番に過ぎない。まぁ今目の前にある新しい学校の門の前で立っているのは事実だけど。


じゃあ、なんでとっとと中に入らないかって?



...聞くけどさ、もしその門の前で喧嘩してる2人の男子生徒とそれを傍観してる大勢の人がいたら堂々と通れると思う?はい、無理だよね。

で、ここに10分近く突っ立っているが、そろそろ入学式が迫ってる。


みなさんわかるかな、この焦りと怒り。

いや、誰しも入学初日から遅刻なんてしたくないはずだ。無論、私もしたくない。なのに、どう見てもその喧嘩してる人も傍観してる人も私と一緒の新入生にしか見えない。


はぁ、もう何でこういう事になるわけ?私はただオタクの道を突き進みあわよくば男同士の恋愛を生で見る生活を送ろうと思っていだけなのに...。それもある意味問題ではあるが腐女子故、仕方のないことだ。



てか、いい加減とっとと道開けろよこのクソ野郎共。


口が悪いのは謝る、でも高校生にもなってこんな馬鹿なことをしてる方がよっぽどタチが悪い。私以外にも通れなくて困ってる人がいるじゃないか。


本当、馬鹿な男って嫌いなんだから。



「ねぇ、あんた達。」

「あぁ”、なんだよ?なんか用か?」



耐えきれなくなった私は周囲が囲むその輪の中に身を投げ出した。


そして、またお互いを殴りかかろうとした見た瞬間ほとんど反射的に一方の肩を掴んでこっちに顔を向けさせた、のだが...なんだこれは?


眉を潜めたのはなにも顔中痣だらけだったり血があったからではない。ただ単純に彼の容姿に驚いたのだ。サラサラとした黒髪を斜めに垂れ流すように分けてキリッとした眉と目が上手い具合に位置が合わさり、そして綺麗に伸びた鼻筋と赤くてぷっくり膨れた唇。

まるで彫刻かのようなその顔形に思わず唖然とガン見してしまった。この世界のどのイケメンでも二次元には勝てないと思っていたが、これは絶対に勝てる。いやそれ以上に二次元と比べるなんて彼に申し訳ない。この喧嘩を見てる人たちの大半は多分この顔を少しでも長く見ていたくて留まっているのだろう。


ぽぉーと彼をずっと見つめていたら肩に置いていた手を振り払われてしまった。パンっと音をと共に腕をぶらんと下がったおかげで本来の目的を思い出すことができた。



「ちょっ、待って!話があるの、貴方二人に。」

「だーかーらー、なんだって言ってんだよ!今いいところなんだから邪魔すんじゃねぇ!」

「わ、わかったから怒鳴らないでよ!」


「政宗の言う通り、早く要件言わなきゃ殴られるのは僕じゃなくてお姉さんの方だよ?」



新たな声が前方から聞こえてきた。首を声のした方に向けば、そこにはまた随分と大層な容姿を持った男子生徒がいた。ショートに切られた髪はハニーブラウンでこっちの生徒とは反対に茶色の目をクリクリと丸くさせ、どちらかと言うと高校生にしては幼さの残ったような童顔である。


またもや驚いたが、最初よりは耐性がついたのかすぐに正気戻ってあの人の言葉を解読した。彼は私が早く言わなきゃ今目の前にいる人に殴られる、と言った。うん、解読する必要もなかったよ。


けどちょっとだけ意味がわからない言葉があるなー、みんなわかるよね?


んー?どこの部分だって?

それはね、あいつが私のことお姉さんって呼んだことだ!



「...私、貴方達と同い年だと思うんだけど。」

「同い年?そんなの嘘でしょ。だってお姉さんの顔、年相応にしか見えないよ。見た感じ3年生かそれ以上かな〜。」


「はぁ、もうどうでもいいから早く何の用か言えよ。」

「...」



こいつら私に言葉を返す隙も与えないつもり?自分の容姿にはあまり自信がないし、まぁ確かに大人っぽい顔してると思うが、そこまでだとは思わなかった。ていうか、ここまではっきり言われたことがない。


それよりも政宗、だったっけ?これ絶対ヤンキーだよね、私ヤバイ人に声をかけたかもしれない...。


悩みに悩む私を見ていた2人の目は初めは嫌悪感だったが、次第に呆れるような顔をしながら私を待ってる。律儀に待ってるあたり悪い人ではないのだろう。でもね、これとそれは関係ないと思う。



「あのさ、こんな所で喧嘩されると学校に入れないの。それがどれだけ迷惑かわかる?喧嘩するんだったら別の場所にしてくれない?」



正当なことを言ったはず。なのになんで私は今、胸倉を掴まれているのだろうか。


えっ怖い、ナニコレ凄い怖い。

足ちょっとだけ浮いてるんだけど、てかどんだけ力持ちなんだよ。やっぱりヤンキーに正々堂々突っかからなきゃよかった。周りにいる人に目線をあわせようにも皆んな逸らすし明らかに私と関わりたくないという顔をしてる。こいつと喧嘩してた相手も興味なさそうにこっちを見てるし私、死んだわ。



「てめぇの考えてることなんて心底どうでもいいんだよ。俺は自分のしたいようにするし、誰かの命令に従うつもりなんてさらさらねぇ。キモいからとっとと失せろ!」



...これは、思いの外ボロクソ言われたな。しかも最後の言葉と共に私を地面に投げつけたし。殴られなかったのはよかったけど、あそこまで人から拒絶されるのは初めてで少し複雑な気持ちになってしまった。


でも、なんとなく彼が哀れに感じた。ここまで人に対して拒否反応起こすなんて、ただの反抗期かヤンキーかしらないけど、可哀想だなって思う。


まぁだからって突き飛ばしたことに関してはムカつかないわけじゃないがな。



「ねぇ、1つ聞きたいんだけど。」

ふらりと立ち上がり制服についた砂をパパッと手で払う。見据えた目を保ちながら目の前にいる、政宗君に私は静かに微笑む。


「な、なんだよ。」

そんな様子を見て少し不気味に思えたのだろう。引き攣った口元を貼り付けながら私に問いただす。






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