新生救済屋
ジリリリン。
音が鳴る。電話の音。けたたましく、人によってはイライラしてしまうこともあるかもしれない。
無機質なそれは時、場所、状況によって大きく意味を変える。
この場所、救済屋ヴァスティオンの家においてはこのコールは仕事。依頼が来たことを示していた。
朝食を食べている途中だったが、依頼によっては緊急性を伴う場合もある。
「…………」
めんどくさい。という気持ちにはならないといえば嘘になる。しかし、そうも言ってられない。
他人からみたら軽い足取りでも、本人にしたら重いものをひきずっている気分で歩く。仕事というのはそういうものを指す。
「はい。救済屋ヴァスティオンです。」
いつも言っている、お決まりの仕事言葉ででる。
これが救済屋アダン・エウレス・ヴァスティオンのあれから十年間の毎日の流れ。一日の始まりだった。
依頼の内容はシンプル。と言いたいところだが意味はわかるが中身を捉えきれないものだった。
塔が周りの命を吸っている。危険なこの塔をなんとかしてほしい。
簡単に要約するとこの内容。詳細は行ってから聞くことになるだろうし、とりあえず、ピンチ。救済屋の助け求む。ということが伝わってきたし、それでいいや。
そう判断したアダンはさっそく準備をする。
あれから時が十年もたっただけあり、アダンは十八歳の少女相応に身長は伸び、髪は肩より少し下くらいまで長くそれでいて、その黒髪が映える誰もが美しいと言ってしまいたくなるほどの容姿をしていた。
そんな美少女がこんな仕事をしているだなんて誰も思うまい。
しかし、準備をしている姿を見るだけでも十年以上仕事をやっただけあり、その様は美しさと相まって絵になっていた。
転移石に始まる道具の準備。大剣ヴァスティオン、そして、あの時、「扱ってほしいのはあなた」と生き残った者達から強く言われ、以降使っている、ヴァスティオンと同じ相棒。二丁拳銃、アーク&ブルグ。最後にフード付きの黒コートを纏い、準備完了。
後は転移石で転移するだけ。
詳細に。とはいかないまでも具体的に転移できるこの魔法石は相変わらず便利だなと思う。さすが魔法。なんでもありだ。
なんて思いながら依頼場所に転移するのだった。
そこは村だった。一見なんの変哲もない、村。
その奥にある、巨大な塔を見なければそう思うだろう。
光を遮るようにたったその巨大な塔のせいで村は巨大な影に隠れるような形になる。
遠くからみたら普通の村に見えるのだろうが近づけばその異様さがわかる。
枯れているのだ。なにもかも。地面、家、畑、木々、そして
村を見回すと痩せ細った人が畑を耕しているのが見えた。
人までも。
近くにいき、その人に声をかける。
「依頼を受け、参りました。救済屋のアダン・エウレス・ヴァスティオンです。依頼された方、テルクスさんをご存知でしょうか?」
すると、やせ細った手であるひとつの家を指差してくれた。
礼をいい、その家に向かう。
近くに行くとそこもまた枯れているのがわかった。
強い風が吹けば簡単に吹き飛されてしまいそうな。
そんな感想を抱きながらコンコンとドアをノックする。
「救済屋、アダン・エウレス・ヴァスティオンと申します。テルクス・エーターさんはおられますか?」
すぐにガチャッと音がなり人がでてきた。
「はい。俺がテルクスです。」
返事をしながらでてきたのは若い男。周りは枯れているがその男はやつれているくらいで痩せ細ってはいない。
アダンを見ると少し驚いた様子で話しかけてくる。
「え?女性の方…なんですか?」
その言葉を聞いて、少し戯けたように返すアダン。
「そうですよ?ご不満ですか?」
「いえいえ!そういう訳では…!てっきり男の方が来られると思ってましたから。まさかこんなに美人な女性の方とは…。それに綺麗なその声…受付の方の声と同じ…ということは同じ人なんですか?」
「はい。救済屋の稼業は人手不足でして。私が受付と仕事、両方こなしてるんです。」
「成る程。大変ですね。」
「いえ。……大変なのはこの村もそうでしょう。」
そう言うと顔つきが変わり、真剣な顔になるテルクス。
「何があったのか。依頼内容の方、聞かせていただきます。」
「…すいません。玄関でいつまでも立ち話を。どうぞ。中へ。そこで詳しい内容を話させていただきます。とは言っても、ある意味まだ外のほうがいいかもしれませんが。」
家内に通され、廊下を通る。しかし、テルクスの言う通り、原型をとどめてないほどに廊下が枯れていた。靴で上がってくれと言われ入ったが。確かに靴がなければ通れないような道だった。
部屋に通されるとそこもまた枯れていた。いや、正確には腐っているというべきか。
座らずに立ったまま話をはじめる。
「…さて、お話させていただきます。見ての通りこの村は枯れていますが、これには理由が当然あります。電話でも話ましたが…あの塔です。この村の近くあるあの塔が原因でこんな様相の村になってしまいました。」
「いつ頃からあの塔があったのですか?」
「わかりません。俺が産まれた時には既に…。ですが親がよく言ってました。昔は太陽の光がよくあたる、活気のある、明るい村だったと。」
「…そうですか。あの塔にはなにが?」
「名前はヴィルネンス。辺りの魔力を奪い成長していく塔です。村の方々も、俺が物心ついた頃にはまだ元気だったのに。今の俺みたいでしたけど。けど、それすら、その片鱗すらない。俺みたいな若い奴らが外にでて食料とってきて皆に食べさせてる毎日です。」
「…外で…枯れた畑を耕している人を見ましたが…。」
「元気はなくても諦めてはいないのです。もしかしたら、 という可能性にかけている人が多い。最初は、俺もさっさとこの村から出たほうがいいといいましたが…。皆、諦めてませんでした。その姿を見て、この村をでることをやめました。それがあなたに依頼した理由の一つです。」
「ということはまだ理由が?」
「はい。あの塔には…俺の…大切な人がいます。小さい頃、会って以来、仲良くしててずっと大切な人が」
「よければどういう人なのか聞かせてもらえないでしょうか?」
「はい。…アダンさんは………「創始者」という存在をご存知ですか?」
テルクスは小さい頃、親と一緒に森に食べれるものがないか探している途中、子供だからだろう。しばらく遊んでしまっていた。気づくと親とはぐれてしまい、迷子になったのだという。そこでかの人、ミレルという少女にあったらしい。
フルネームはミレル・ヴィルネンス。
肩まである綺麗なプラチナの髪が似合う儚い雰囲気をした少女。
話していくうちに仲良くなり、しばらく一緒に遊んだ後、夢中になっていて気づかなかったのか、親とはぐれていたことを思い出す。そこでミレルに、親を知らないかきくと、知らないが分かると言ったそうだ。
当然疑問符がわくテルクスだが、その事を察したのかミレルは自分のことについて説明してくれた。
自分は人間ではない存在。「創始者」で、あの塔を管理している者。外について知らないから興味があってでてきたこと。そして、テルクスのおかげで外は楽しいということをしれたこと。
「お礼にテルクスの親の場所に魔法で転移させるね。」
ミレルは手をかざし、そこに魔力が込められていくのがわかったから、テルクスは言った。
また会おう。これくらいの時間にまたここに来るから。だからこの場所に来る道を教えてほしい。と。
ミレルはクスッと笑って。約束してくれたらしい。
それから定期的にミレルと遊んだ。そんな中で小さな約束をしていた。もし、ミレルになにかあったら辛いことがあったら…その時は自分が何があっても助けると。お礼…といってはなんだし、ミレルくらいの魔力ある娘を力なんかない自分が守るなんておかしいけども…でも。それでもミレルは嬉しそうにして笑ってくれた。それがテルクスにとっても凄く嬉しくて。言葉だけにならないようにしようと強く強く決心した。
しかし、そんな楽しい時は長くは続かなかった。
いつものようにミレルと遊んでいると二十代後半くらいの男がでてきた。無精髭が特徴的な普通の体格をした男。
その男は言った。ミレルは自分の娘だと。決まりを守らず勝手に家からでて遊んでいる悪い子。だから帰らなければならない。
テルクスはミレルを守るように立った。
何故ならその男がでてきた時、テルクスは気味悪いものを感じたから。笑みを浮かべていたがその笑みが気味悪い笑みものだった。なにより、ミレルが怯えていたから。
気合いや、根性、勇気は良くても実力はない。すぐにその男によって気絶させられた。
瞼がとじる瞬間見えた。テルクスの姿を見て泣いているミレルが連れて行かれるなか、男は言った。二度と近付くな。弱いのだから。弱いということは価値がない。価値がないということはこの子にとっては毒にしかならないと。
それからテルクスは鍛えた。あんなに怯えていたのだ。信じらないほどに。しかも周りの生命力を吸うような塔、ヴィルネンスで過ごしていて、いいことなんて絶対ない。なによりも約束したのだから。その一心で。毎日毎日。身体を。武術を。魔法を。
時が過ぎ、青年と呼べる歳になっていたテルクスは村近くにいる主と呼ばれる魔物を倒すほどの実力になっていた。
しかし、そこでテルクスは考えた。ここで挑み命を失ってしまう可能性が高いのはこの塔の異質さからわかる。何が待ち構えているかわからない中、確実性が薄いものに考えもなしに飛び込んではならないと。
徐々に魔力という生命力をヴィルネンスに奪われるなか、ミレルを助けれるには時間がなかった。後一年すぎたらもう戦う気力すらないだろう。
だから村のみんなはヴィルネンスに一斉に突撃してなんとかするような考えが浮かばなかったのだ。
何人かそういうことをする人もいたが帰ってこなかった人達もいる。
そんななか、救済屋という存在がいることを知った。そこで協力してもらうしかないと思い、依頼をしたのだという。
「成る程ね。」
そう言ったアダンに改めて頭を下げるテルクス。
「お願いします!この村を…ミレルを助けるのを。手伝ってください!」
アダンは二つ返事で了承した。
持ってきた荷物をテルクスの家に置いたアダンはテルクスに着いていく。
ヴィルネンスに近づく内、ひとつの疑問がとけた。
何故、この塔のせいで魔力が、周りの生命力が奪われていったと理解したのか。
理由は単純だった。ヴィルネンスに近づく道に入る前からあった異質な瘴気が近づくたび、濃くなっていく。そして身体に軽い倦怠感。一番の理由は、その瘴気を辿ると…。
塔の入り口に着く。改めて塔をみると塔から瘴気がでていることがわかった。
「んじゃ、行きますか。」
アダンが歩きだすがテルクスがついてきてない。
振り返るとテルクスが目をつむり精神統一をし魔力をためている。
しばらき待っているとテルクスが気づき、
「すいません。お待たせしました。行きましょう。」
と言った。それと同時に歩きだす。
塔の中は巨大なフロアでコンクリートの床。全体的に無機質なデザインをしている。
それを確認すると同時。轟音が響いた。巨大な生物が大声をあげたのがわかりやすい音。
みると、三つの頭があり、ひとつひとつが蛇のようにのび、左がライオン、真ん中が蛇、右が狼、身体が牛といった様相をした巨大な魔物がいた。
異様なその形状から普通の魔物とは違うことがわかる。
「魔法で合成したキマイラか…。」
アダンはそう言いヴィルネンスの異質さを改めて理解する。
キマイラが入ってすぐいるということはコイツは、番人のような存在なのだろう。
成る程。こんなのがいればヴィルネンスに入り、なんとかしようにも無理があるだろう。
テルクスはグッと拳に力を込め、キマイラを睨んだ。
「侵入者か…。しばらくそういうのが来なかったから暇をしていたのだ。」
と、キマイラが喋った。頭を交互に器用に言葉を紡いで喋る。
テルクスは油断なく睨みつつアダンに話しかける。
「アダンさん。よろしくお願いします。」
「おう。任せとけ。」
言ってアダンはキマイラの前に行き、シャドウボクシングをする。
「きな。その面白い身体してる奴。お前みたい身体じゃ、宴会は盛り上げれても戦いじゃなんにもならん。…圧倒してやるよ。」
人差し指をチョイチョイと動かし、来な、とジャスチャーする。
それを見たキマイラは思いっきり腕をかざし、物凄いスピードで叩きつけた。
「ぐおぉぉぉ!」
モロに当たったアダンはそのまま叩きつけられ、床に穴が開いた。
落ちた。と理解するのに、テルクスは時間がかかった。
頭を整理し、何が起きたか理解した時、
「え?」
と呟くことしかできなかった。
「…あっけない。次は貴様だ。」
キマイラはアダンが落ちたことを確認すると再び腕を振るい、テルクスを狙う。
「っ!」
瞬時に身体強化し、止める。
身体強化魔法は魔法の基本。特に魔力が弱い男はこの身体強化を使うことが自然、力仕事などで使うため多くなる。
ヴァスティオンのような超強化レベルは無理だが修行を長年しただけあり、普通の身体強化より遥かに強い、少なくとも戦いができるというレベルにまでなっていた。
止めただけで終わるわけがなく、トカゲのような尻尾がテルクスを襲う。
魔法陣による盾をだし、その動きを防ぐ。
キマイラは三つ首それぞれに炎、氷、雷の魔力エネルギーを集中し、息をはくようにそれを放つ。
「ハァ!!!」
拳を固め、魔力エネルギーを集中し、放つ。
すると拳状の魔力がキマイラが放った魔力エネルギーを吹き飛ばした。
吹き飛ばされた結果、霧状に魔力が拡散されるなか、それを利用し、キマイラがこちらを確認できなくさせるよう霧に魔力を込め、どの位置に自分がいるかをわからなくさせる。
キマイラの眼は魔力を込められていたため、視覚的誤魔化しによるステルスは不可能と判断した。そこでのこの策だ。
魔力を霧に込めることで視覚的、魔力的、両方のステルス効果を高める。
そして、足に強化をかけ、高くジャンプする。
それを見たキマイラは再び三つ首に魔力のエネルギーを込め放つ。
テルクスは空中に魔力陣の足場を作り、踏むことで勢いをつけ、キマイラの足元に行く。
「な⁉︎」
キマイラは首を追うように下に振り、魔力エネルギーを当てようとするが先程の霧に魔力が込められており、何処にいるかわからない。
「ハァァァ!」
拳に魔力を込め、思いっきり振り上げる。
すると拳状の魔力がその動きをなぞるように上がり、キマイラを空中に浮かばずほどの一撃を与えた。
ズゥンと重いものが落ちる音がすると共にテルクス放つ拳を握る。
強くなっている。もしかしたらじゃない。助けられる。ミレルを。
そう確信したテルクスは一歩一歩歩き、フロアにある階段を登る。
アダンが心配でこそあるもののあの人なら大丈夫だろう。そんな感覚に何故か覆われそれに従いながら。
落ちた先は大量の水があり、そこから泳いで、なんとか広い場所を見つけ、身体を水から解放させるアダン。
と、言ってもこの水、魔力でできており、身体を水から解放させても濡れびたしになることはなかった。
「…うん。まあ、こういうこともあるよね。」
言い訳がましくそういい、前を見る。
地下。しかもこの大量の魔力水。ここもまた異常。恐らくこの魔力水からあの霧になっているのだろう。
魔力水自体はただの魔力できた水。
飲んだら魔力回復と喉に潤いをあたえることができるくらいの…。
魔力を水という形にすることであえて他の何かの形に変質させやすくしている。
多目的に扱うために。目的は霧にして魔力を奪うだけじゃない。
この水を見てそう判断したアダン。
他になんの目的があるのか。「この先にいるやつ」に聞くかな。
アダンはただ考えなしにここにいるわけじゃない。
分担というのを塔に入った瞬間に考えた。明らかに下になにかある。いずれどっちにしろ別れなければならないと思った。
ミレルが上にいるのはその「創始者」という特殊な人間による、普通とは違う魔力が感じとれたから理解した。テルクスも同じだろう。
それにテルクスはミレルを助けるのが目的。テルクスならあの程度の奴らには負けないという確信を見たときからしていたし、ミレルを助けるにおいて邪魔をしてくるだけでなく大きな脅威となるであろう存在がこの下、地下にいることもわかったからだ。
アダンは歩き出し、広間を抜け、廊下を抜け、やがて巨大な水槽がドームのようになっている場所にでた。
「こんなにあんのか…。魔力水。で?これ、何が目的?」
と、声をだすと空間に響くように反響する。
前にはアダンからドームの直径くらいの距離をとった位置に一人の存在があった。
元はローブだったのだろうが動きやすいようにした結果デザインが全然違う、動きやすい服装にしたと言わんばかりのものを着ていた。
背中を向けたまま、視線はアダンを向く。
「侵入者がいるというのはわかっていた。が、まさか自分から出向いてくれるとはな。」
「それゃ、あんたのような「同じ存在」放っておけるわけないしなぁ。」
「…やはりか。まさかいるのはわかっていたが会うことになるとは。これも、決まっている…娯楽のうちなのか?」
「……さあね。わからん。まあ、とりあえずそれは置いとこう。聞きたいのはどうして人間に加担してんのかってこと。多分、その魔力水やら、塔やらのこともまとめて聞き出せそうだし、答えてくんないかな?」
「それはこちらのセリフだ。何故わざわざ関わる?不干渉。ルールでこそないがそれをしないと、暇潰しがなくなるぞ。」
「…「私」は、そうだね。人間が凄いって思っちゃったからかなぁ。そう思わせてくれるような人達にあったから。」
「…私は、十八年前にこの場所に、拾われたからだ。そこにいた人間達に、育てられ、そして私の実力を知るとこの塔の番人の内の一人に、いや、最強の番人として番人、ヴィルネンス、魔力水やらの管理を来るべき日に備え、任せられた。」
「あら、素直。でも、魔力水やらの詳しくは答えてくれないのね。」
「当たり前だろう。使命をおびている以上、そう簡単に応えるものではない。」
「そう…。じゃあ、聞きたいんだけど、どうしてそんな役目をやることにしたんだ?」
「?逆に聞くがどうしてそんなことを聞く。答えなど知れているだろう。暇潰しだ。我々はこの娯楽のなさすぎる場所で暇で狂う前になんとかしなければならんのだからな。そして、責を負った以上やりきることこそ、最大の暇潰しだろう。」
「…やっぱりね。なに、確認がしたかっただけさ。せっかく同胞に会えたのに、倒さなきゃならん。ってのはなるべく避けたいからな。」
「仕方があるまい。我々は…」
そう言ってアダンの方に向く。美人な女性だった。歳はアダンと同じくらい、紫の肩口よりやや下ほどの長さはある髪は美という言葉ですら陳腐に思うほどの美しさを備えており、見た目との調和をありえないと呟いてしまいそうなほどにとっていた。
「そういう存在なのだから。」
手を目の前にかざし、その手に薙刀がでてきてとる。
構え、アダンを見据え、呟いた。
「私の名前はディラル・ヴィルネンス。貴様の名前は?」
アダンも背負っていた細身の大剣、ヴァスティオンをとり突き出しながら答えた。
「アダン・ヴァスティオン。救済屋だ。」
それが戦いの合図。お互い同時に走りだし、剣を交える。
そのまま、一太刀、一太刀、連続でお互い振り、そのたびに軽くつせばりあう。
ディラルが振りかぶった瞬間、下からすくい上げるようにアダンが剣を振る。
反射的に攻撃をやめ、ガードし、空中に浮く。
瞬間、アダンは剣を投げ2丁銃アークとブルグをだし、連続で撃つ。
ディラルは流麗という表現が似合うほどの綺麗な動きでその銃弾を全てさばく。
しかし、魔力でできた銃弾は斬れることなく壁、床を跳弾し、結果、投げられ、回転している剣に向かう。
気付いたディラルは回転している剣から同じように跳弾した銃弾を全て片手でとり、握ることで魔力の光が散る。
着地し、アダンの方を向く。
「面白い戦法だな。その人間とやらから習ったのか?」
「…いやいや。まあ、そうなんすけど…。さすが同胞。んな戦法じゃ、簡単に効かねーか…」
と言いつつ、片方の銃をうつ。
再び弾丸を片手でとったディラルにアダンは接近し、剣を振る。
薙刀で応戦するディラル。
剣と薙刀がぶつかりつせばりあいが起こる。そうなりながらアダンは足払いをする。
それを軽くジャンプすることで避けた瞬間アダンも高くジャンプする。
ディラルの目の前に無数の銃弾があった。片方の銃を撃ったと見せかけ、身体で隠しつつ、もう一方を片方と音を合わせながら撃つことで気付かせることなく、壁を跳弾しその弾がディラルに来たのだ。
落下しながら剣を振るアダン。
ディラルは片手で先程とった銃弾をアダンに向けて放つ。
それをアダンがガードし、防ぐなか、ディラルは薙刀を回転させ、盾のようにし、全ての銃弾を薙刀に集める。
その薙刀を叩きつけるように振り、先程集めた弾丸がバラバラに壁や床を跳弾しながらアダンに向かう。
剣を身体ごと回転するように振ることで銃弾と接近していたディラルをさばく。
ディラルとアダンは再び着地し、お互いを見る。
「拉致があかないな。」
いいながら笑うディラル。そしてアダンを見据え、
「なら、こうするか。」
言った瞬間空間が歪みだした。
「え?お前…!」
グニャグニャと歪み、足元がふらつき、動くのが難しくなるアダン。
それが治った時にはアダンは薙刀に貫かれ、そのまま空中に浮かばされていた。
「悪いな。楽しく、いい暇潰しだったがあくまで私の使命はこの塔の管理。それを邪魔するのであれば即刻なにものであろうと倒すのみだ。」
そのままたたきつけられることで衝撃で地面に穴が開くと同時、アダンは再び落ちていくのだった。




