平和“リィル”
それから3ヶ月近くたった。
アロンは王に定期報告をしていた。
そこでアロンは、事情を知っている皆が思っていることを口にした。
「不気味…ですね。なにもしてこない。」
「うむ。暗殺などといったのはしてこない可能性は考えてはいた。しかし、あの銀行強盗の後は本当になにもない。あの布告は嘘ではないかと思うほどに。グリル…といったか。大魔導師がここまでなにもしてないというのは…」
「周辺の国や、地域にもなにもないとなれば…あの強盗の事件の時に、ほぼ、攻めるための魔法兵器は完成したと考えていいでしょう。魔導師というのはちょっとしたものを大規模なものに変えるのが得意。生活に使われるような安全な火さえも街一つを簡単に焼滅させるものに変えます。来たる戦争の時は信じられないものを見ることになるのは間違いないでしょう。」
「そう…なるだろうな。わかっておる。だからこそ兵の訓練は対魔法戦を想定したものになっておる。今まで何度かしていたがそれは上級にまであがった兵にしかやらせてこらんかったからな…ここまで大規模な対魔法戦訓練ははじめてだ。ゆえに訓練内容が安定してなかったり難しすぎたりと苦戦しているという報告がきておる。」
「そうですか…それも仕方ないといえば仕方ないですね。魔法を使って戦うなんてのは極少数。才あるものだけの特権。自然、それに相対するのは比例して少ない。対魔法戦訓練なんて普段やっていなければ付け焼き刃もいいところでしょう。」
「そう…か…やはり…しかし、このままなにもしないのは…む。そうだ。」
「?なんでしょう?」
「救済屋よ。確か…お主、対魔法に関しても訓練を積んでおるそうだな。」
「はい。確かにそうですが…」
「ならば兵達の訓練に参加し、教練してくれないか。」
「え⁉︎私が…ですか?しかし、お言葉ですがそれではユリス姫の護衛が難しくなります。」
「ふむ。それは教練の間、他の者にその警護の任につかせよう。そしてアロン殿がいる場所から見える位置にユリスがおるようにする。それになにかあれば短距離ワープがある。元々訓練をしているアロン殿だ。教練だけでもありがたい。時間はあまり割かんでいい。もちろん報酬は追加する。」
「…わかりました。そのご依頼承ります。よろしくお願いします。」
アロンが報告に行ってる間はユリスとアロンは離れている。
報告以外にもいろいろと話さねばならないこともあり、ユリスを連れて話して、ユリスを不安がらせることもないように。ということ、ユリスを狙い監視している者がいた場合の可能性などを鑑みてのことだ。
しかし、危険は危険なためその間は別の場所、具体的には兵、メイドの休憩室にいた。
ここは訓練や、戦闘で負傷した際に使われる部屋でもある。訓練が終わったら、最後に体調のチェックや、マッサージなどのケアを行うために使われることがよくあるため、休憩室と呼ばれているのもあるのだが…ちゃんとした休憩室も別にしっかりとある。
そこでユリスはアロンを待つ。
退屈はしない。兵やメイド達が話し相手になってくれるから。今日もニコニコ…いやニヤニヤしながら話しをものすごく興味深げに聞いていた。
「それでね、アロンがね、任せろとか、自身満々だったのに、魔法キャッチャー失敗したの!あ、でもその後スポーツセンターでカッコよくてねー!景品いっぱいもらっちゃった!ふふふ…今日も楽しかっなぁ…。」
「ふふ…そうですか。」
そんなことを話しながら浮かべるユリスの笑顔は本当に楽しそうで、聞いているだけで楽しさが伝わってくるほどだった。
「それにしても…姫様はアロン様の話をする時本当に嬉しそうに、楽しそうに、話しますね。」
とメイドの一人がその様子を微笑ましくみながら話す。
「え?そうみえる?あんまり意識してないからわからないけど…」
「そういうもんですよ。ですが…姫様…もしかしてですけど…」
と、兵の一人がニヤニヤしながらその一言を口にした。
「アロン殿のこと…好きなのですか?」
その瞬間、周りの兵や、メイドが興味津々と言わんばかりにニヤニヤしながらも静かになる。
「…へ?」
が、帰ってきたのは素っ頓狂な返事。今の今まで考えたことすらないことがその返事から伺える。
「私が…?ふふふ…。ないですよ〜。そんなこと〜。」
言いながら笑うユリス。が、兵や、メイドはならばあんなに楽しそうに嬉しそうにアロンのことを話すユリスはありえない。それほどの笑顔だったと考え、
「そうですか…。ならばききたいことが…。アロン様のいいところ、姫様、よろければ言ってもらえますか?」
「うん!いいよ!ん~とね。優しいところでしょー、心が強くて芯がしっかりあって面白くて、普段は…ふふ、あんなだけど…しっかりしてるときはホント凄くて…戦うときなんて動き凄いんだよ!剣投げたとおもったらもう、相手の近くにいてねー!それがホントかっこよくて…!あ、あとね!あとね!………」
「ふふ…もういいですよ。わかりましたから。ありがとうございます。さて…姫様…。間違いありません。あなたは…ズバリ!恋をしています!」
「えぇー!ってだから違うってー!」
その反応に周りははぁ。とため息をついた。
「む!なにそのため息ー!」
「いえ…ならば姫様ご自身はアロン殿のことどう思っていらっしゃるのですか?」
「かっこい…い…よ……」
と、最初間髪入れず喋りだしたのも束の間途中なにかに気づいたように顔を赤くして尻すぼみに声が小さくなっていく。
それをニヤニヤしながら見る周りの兵や、メイド。
「ほら、わかってるんじゃないですか?」
「…違うもん…」
ユリスは、顔を真っ赤にしながらそう言って子供のように頬をふくらました。
報告が終わったアロンはユリスを迎えに行った後、ユリスの部屋に戻った。
が、迎えに行った時からユリスの様子がおかしかった。
アロンの顔を見るなり、顔を赤くしたと思ったらすぐにうつむかせ、顔を見て話さないどころか、話しかけても上の空。それに加え、アロンの顔をたびたびチラチラと見てくるのだ。
「えっと…何かあったのか?」
「え⁉︎なななななな何にもないよ!…うん!何にもない!」
疑問符が頭に浮かんだものの、姫様が何にもないといっているのだ。無理に詮索するのも失礼にあたると思い、それ以上は聞かないことにした。
それからしばらく部屋でいつものように他愛のない話を…とはいかずしばらくき無言のままきまずい空気が流れる。チラチラとその間も変わらずしていたが。
「よし、それじゃそろそろ寝るか。」
長く王と話をしていたため、すぐに就寝の時間がきた。時間に救われた。こういう無言の空気はあまり好きではない。が、アロンの心中にあったのは、いつも無言の時に感じるようなそういった感情ではなく、ユリスと話すあの楽しい瞬間がこないことによる寂しさだった。
翌日。
ユリスは目を覚ました。
あまり寝れなかった。理由はわかっている。昨日休憩部屋で話したこと。
私が…
「うぅ…ち…違うもん。」
きっと顔真っ赤。なんて自分でわかってて。それでも言っている。なんなんだろう。これ。恋愛なんてしたことなかったから、わからない。そんな考えからおこる矛盾。
チラっとアロンが寝てる方を見るがいない。もう起きているようだ。
…昨日はあまり話せなかった。そのことが凄く寂しい。変に思われちゃったよね。
こんなことじゃ駄目。しっかりしないと。
ぐるぐるいろんな考えがユリスの頭の中で回っているとガチャとドアが開き、アロンがいつものように2人分の食事をもって部屋に入ってきた。
「お。起きたようだな。」
アロンがそういい、机の上に朝食を置く。
「あ…」
考え事をしている時にいきなり来られたため頭の中は軽いパニックに。
「お…おはひょう!」
「おう。おはよう。」
噛んだ!っていうか無理!全然駄目!しっかりとか冷静とかそう簡単にできるわけない!
そんな胸中が表にでていたのだろう。パニックがちなユリスをアロンが心配そうにみる。
「…大丈夫か?昨日から様子が変だぞ。気分でも悪いのか?」
「え…えーっと…う…うん!実はそうでねー。あ…あははは。バレましたかー」
「…そうか…なら今日は寝とけ。それで倒れられたら…皆心配するぞ。」
「は…はい。そうですね…そうします…。」
食事もすることなくベッドに再び横になるユリス。アロンの前では食事も喉に通らない。
それからまた昨日の夜のような喋らない居心地の悪い沈黙した空間が作られる。
喋ろうとしても話題が思いつかないし、第一気分悪いとかいいながら喋り出すのもなんか変。
そう結論づけてその沈黙に従う。
そんなことを考えている間静かに食事を終わらせたアロンは食器を持って立ち上がりユリスに話しかけてくる。
「薬なんかないか聞いてくる。だから症状どんな感じか聞いときたいんだが…」
「風邪…かなぁ。」
「了解。んじゃ行ってくる。」
ドアを閉める音と共に再び沈黙が訪れる。
「はあ。」
そんな中、ユリスはただ自己嫌悪していた。
部屋を出たアロンはメイド達がいる場所に向かった。
食器を返すのと薬…それと…
「朝食美味しかったです。ごちそうさまでした。後すいません。風邪薬何処にあります?ユリスが気分悪いと言っていて。」
「ええ⁉︎大丈夫なんですか⁉︎昨日あんなに元気だったのに…!」
「ああ、いえ、多分大丈夫かと。一応です。」
「そ…そうなんですか?心配です…」
メイド皆一応に本当に心配そうな顔をする。好かれてるんだなと改めて思うと同時、あんな優しい子ならそれゃそうかという納得もある。
薬を貰い、その後ここにきたもう一つの目的を口にする。
「あの…昨日自分がエチャード王に報告している間会っていると思うんですけど…その時なにかありましたか?」
その質問をした時、メイド達は成る程、納得という反応をした。
同時に心配そうにしていた顔からニヤニヤとした楽しそうな顔に変わる。
「?」
そんな反応に疑問符がわくアロン。
「やっぱり、なにか知っているんですか?」
「ああ、はい。そうなんですけど…ここでそれを言うのは…」
「無粋というかなんというか…」
「だよねー!」
と急にキャッキャッしだすメイド達。
さらに深まっていくアロンの疑問。
そこでメイドの一人が
「あの…アロン様はユリス姫様のことどう思われてます?」
と聞いてきた。
「え?な…なんです?急に。」
「いいから。いいから。ちょっとした質問ですよ。」
そこでしばらく答えようか迷ったがメイド達が爛々と目を輝せてこちらを見るものだから答えるしかないか…という考えに行き着いた。
「そうですね…可愛いです。それと笑顔が素敵ですね。こっちまで自然に笑顔になってて…楽しくなってくるというか…そんな笑顔で。後話してて楽しい。あんなに心の底から楽しいと思って話したことないです。なにより一緒にいて落ち着きます。優しいだけじゃなく綺麗でそんな雰囲気が自分を包んでくれるようで…いうのまにか仕事というのを忘れて楽しく過ごしてしまうこともしばしば…はは。最近そういう気分になること多くて気合入れ直さなければ!って思うんですけど。気づいたら無意識のうちに…あ、それに…」
「あ、もういいです。ごちそうさまでした。」
「ええ⁉︎」
そう言った後メイド達が集まりアロンに聞こえないよう話しだす。
まあ、それはもう、楽しそうにニヤニヤ話していた。
話し終えたのかアロンのほうを向き、メイドの一人がアロンに話しだした。
「えー。コホン。アロン様。アロン様が持っているそのユリス姫に対する気持ちを自分で湧き出していけば自然その質問の解がわかっていくと思います。いや、解というより…きっかけですけど。私達から言えるアドバイスは以上です。」
「は…はあ。わかりました。ありがとうございます。」
なんて言ったもののよくわからない。薬を持ってその場から離れユリスの部屋に戻る。
昨日王と話した時の対魔法教練が今日から始まる。気にはなるし、もう少しききたかったが…時間も迫っている。気合を入れ直さなければ。
そう考えながらユリスの部屋に行き、
「薬持ってきた。水もあるから飲んどいて。俺、ちょっと仕事があって…あーっでもユリスそれじゃ動けないかな?うーん…」
とりあえず王に魔法石を使っての念波で報告をする。
王からの返事は
「ふむ…わかった。訓練内容のメニューは作ってもらっておる。それを元にやってもらうよう指示する。どちらにせよアロン殿がおらずとも訓練できるようにしなければならぬのだ。やってもらって自分達がわからない、難しいといったところを掴むのも今後においては大事だ。あえて直接的な訓練内容の指示をださず、訓練してもらおう。ユリスの看病兼護衛任せたぞ。」
ときたので今日はユリスに付きっきりの看病をすることに。
「ということで今日は俺、ユリスの看病させてもらうな。なんか気分悪かったり、欲しいものあるか?」
「あ…あり…ありましぇん!」
「ん。そうか。わかった。」
そこでまた沈黙。ユリスは混乱してどう喋ればいいか、アロンは先程のメイド達が言っていた意味を考え、かつユリスは病人だからあまり話さないほうがいいだろうと考えたから。
それからどれくらいたった頃だろうか。
ユリスは一応嘘とはいえ、病人だといってしまった以上、寝おうと努力したがアロンがいたため、緊張してなかなか寝れず、アロンはユリスの様子をみつつ度々ユリスのおでこにおいているタオルを変える。
しかしいつまでもこのままではいけない。何か喋りかけることでそれをきっかけにまたいつものように話しかけれるようになれば…!
そう考えたユリスは大分体調が治ったという体でアロンに話しかけようとした。
その時、何か重たいものが落ちたような音と共に地響きがした。
「なんだ⁉︎」
と驚き、窓の外を見るアロン。
そこにいたのは城ほどの大きさをしたゴーレムだった。
ゴーレム。魔力で形成された物質でできた生物。それを形成した魔術師の言うことをきく魔道生物。色は形成した魔術師の魔力色で変わる。形は様々。人型だったり動物型だったり、そして質も多様。粘土のようだったり硬い石のようだったり。
このゴーレムの色は…黒、形は人型。質は粘土。その大きさは城並。
そんなものが突然でてきたのだ。一瞬、アロンは提出した対魔法訓練のメニューの中にゴーレムを使う、または魔力物質を使ったものを入れていたかを考えたがあまり魔法戦をこなしていない兵に最初からそういうゴーレム戦や、魔力物質を使ったものをやろうとは考えていなかった。そしていくら事故ってもこれほど大きなゴーレムは普通作れない。何よりゴーレムはそれを形成した魔術師の言うことをきく。
ゴーレムは腕を「ユリス」に向かって振るった。
つまりグリルによる奇襲。というほかない。
アロンは持っていた魔法石で盾を形成し、ユリスを自分の背後に置くことでその攻撃からユリスを守る。
が、いかんせんサイズが大きい。とても防ぎきれるものではなくその一撃の威力の元城の外に吹っ飛ばされた。
その際ユリスを全身で覆うことで守ることには成功した。
しかし、アロンはその一撃をほぼモロにくらってしまった。いくら魔力で身体を強化していても限度がある。骨折や、傷をおうことはなくても身体がしばらく動けないほどのダメージをおった。
「あ…アロン…!い…いや!アロン!アロン!」
目を動かすことくらいはできる。ユリスの方を見ると真っ赤にした瞳からポロポロと綺麗な涙が落ちていた。
「嫌だ!アロン!死んだら嫌だよ!!!絶対許さない!!!だから起きて!動いて!!」
はは…泣いてる姿も可愛いな。なんてこんな状況でも考えられる自分に驚く。そして気づく。メイド達が言っていたことの意味が。自分が一体ユリスをどう思っているか。だから…動かなければ。
大切な。
グッと腕に力をいれ無理矢理動かないはずの身体を動かす。
何よりも綺麗で。一緒にいて落ち着く。
正直動けるとは思っていなかったのだろう。驚きつつも涙を浮かべながら喜ぶユリスを尻目に足にも力をいれゆっくりと確実に立ち上がる。
笑顔が最高でめちゃくちゃ可愛い。
そしてフラフラとした足取りでも地面に立ち、ユリスの前に立つ。
今すぐ言いたいが喋るのは難しかった。そう。ユリスが大好きだという気持ちを。アロンは気づいたのだ。
失わない。失わせるわけにはいかない。あの時命を大事にしろって言われたけど無理だ。ユリスを失うくらいなら死ぬ方を選ぶ!
そしてそれ以上は動かない身体でしっかりとゴーレムからユリスを守ろうと立ち塞がり、ゴーレムを睨む。
ゴーレムは腕を再び振おうとした。
兵達は間に合わない。ユリスは王家の極秘魔法アークを使ってしまったため、王からお叱りをうけ、そして戦わせたくないという思いからしばらく魔法を使えなくされていた。
つまり状況は絶望的。
せめて…ユリスにこの気持ちを伝えたかったな。
という考えがよぎった瞬間。
ゴーレムの振おうとしていた腕が斬れて落ちた。その腕が落ちながら魔力光となり消えていく。
「「え?」」
二人の疑問が重なった時はすでに、その斬られたときの勢いのままゴーレムはバラバラになっていた。
「あーはっはっは!救済屋アダン・ヴァスティオン!見・参!!!最強とは俺のことよ!!!」
バラバラになったゴーレムの破片が落ち、魔力光として消える中そんな大声が響くと同時アダンがポーズを決めながら現れた。
その後、すぐにかけつけたアダンによって医者まで運ばれたアロン。
いろいろ言いたいことはあったがダメージで喋れなかったため、話すことすらできなかった。
ユリスも無事。アロン以外の誰かが怪我をすることなく事態は無事収束。
治療室に運ばれ、治療されてる間。ずっとユリスは泣いていた。
心配事があるとするなら。泣いているユリスが心配で。すぐに泣くのをやめさせて、笑顔にしてあげたかった。
それから一週間後。魔力で身体強化していただけあって、ダメージは大きくとも治療にはあまり時間はとらなかった。
このまま安静にしていれば三日後には治っているとのことだ。
大分身体も回復し、動けるようにはなった。
ベットに横になっているアロンは上半身を起こし、チラッとベットの左側を見る。
そこには静かに吐息をたてながら寝ているユリスの姿があった。
寝ている姿も綺麗で、それでいて可愛いらしい。
あー。最近ずっとそういうことしか考えてない。ホント自分はユリスが好きなんだなと。思う毎日だ。
…頭、ちょっと撫でるくらいいいよな。
そう思い、手をユリスの頭にゆっくり近づけていたろいきなりドン!っと病室のドアが開いた。
ビクッとしてすぐに腕を引っ込め、ドアのほうを見る。
「うぃっす。元気か?」
とアダンが入ってきた。改めて思うと随分と久しぶりに見る。自分がいない間、仕事でいろいろあったのだろう。その分をバネにし、逞しくなっていることがゴーレムとの戦いと、そして今見て再確認する。
「ああ。おかげさまで。そういやドタバタしててお礼言えてなかったな。ありがとう。助かったよ。」
「いやいや、お気になさらず。一緒に仕事してた時、結構助けてたしねー。改めてお礼言われるようなことでも。」
「はは。そうだっかな。覚えてないなぁ。ってかお前大分変わったな。実力的にも雰囲気も。見た目はそれゃまず変わんねーけど。一番は性格かな。」
「え?そう?自分じゃわからん。けどまあ、そうかもな。うん。ホント…いろいろあったんで…」
と遠くを見、黄昏るアダン。
「こういう仕事だしな。仕方ない。」
それを見て自分の昔のことを思い出し、軽く笑いながら返す。
そんなやりとりを近くでしてしまったからか、ユリスが目を覚ましてしまった。
「ん…あ、アロン。おはよう。」
眠たそうな顔で挨拶してくるユリス。
あまりにも可愛らしすぎるんでアロンは反射的に抱きつきそうになってしまったがアダンもいるし、何よりいきなりそうしたら困らせそうだし、そんな関係じゃないしで我慢した。
「アダンさんもおはようございます。」
「はい。おはようございます。ユリス姫。」
その様子を見て自分が寝込んでいる間、当然、アダンとユリスは話していたのだろうなと理解する。
ユリスは姫。そしてアダンはここにいるということは…そう考えアロンは口を開く。
「アダン。そういや、なんでここにきたのか聞いてなかったな。まあ、まず仕事なのは間違いないだろうが…」
「え?何勘違いしてんだ?プライベートだぞ。仕事で疲れた身体を癒しにな。そういや、エウレスにアロン行ってたな。顔でもだすかと思って。そしたらあのどデカイゴーレムさんでございますよ。癒されるどこらか疲れがましたわ。救済屋ってこんなん多いなぁ。何?血筋か何か?」
「え⁉︎そうなの⁉︎」
「嘘だよ。お察しの通り仕事っす。」
「………」
そんなやりとりをするアロンとアダンを見てフフッと楽しそうに笑うユリス。
寝込んでたのもあって、アロンはユリスの笑顔を久しぶりに見ることができた。
その可愛さも相まって自然ニヤニヤしてしまう。
その様子のアロンに向かってアダンが一言。
「?どしたし?アロン。キモいぞ。」
「いや…どストレートだなオイ。それは置いといて話は戻すぞ。」
「へーい。つっても身体も大分治ってんだろ?それならいずれ。っても近いうち、話されるだろ。そん時にな。今は身体治すの専念しな。」
「別に今言ってもよくね?…まあいいや。んじゃそん時に。」
「おう。それじゃ俺、王と話があるから。ここで。ユリス姫。それでは。」
と深々とユリスにお辞儀し、病室から出て行くアダン。
部屋から出て行くのを見送り、
「相変わらずと言えば相変わらずだな。あいつ。」
とアロンは言った。
ユリスの方を見ると今だにアダンが出て行ったドアのほうを見続けていた。
「?ユリス。どうした?」
アロンが話しかけることで今ずっとドアを見ていたことに気づいたというような反応をする。
「え?あっ…。その…。アダンさんって…昔っから…「ああなの?」」
と聞いてきたので自然身構えるアロン。
「…まあな。赤ん坊の頃から見てたが、世話をする必要がなかった。それどころかトイレには行かなくていいし、諸事情でしばらく飯食べらすことができなかった事もあったが、「全く問題はなかった。」」
「………女の子…なのはわかるんだけど。綺麗なのは間違いないの。凄い美人。けど…なんていうのかな。そうだね。あの子を見たとき、思ったのは…美人という感覚よりも…」
「絶景。景色を見ているような感覚だった。だろ。俺もそうだった。」
「…うん。…あの人は…ひ…」
「これ以上この話はやめよう。」
そう即座に言うアロン。
その様子を見てユリスも深探りをしないほうがいいと悟る。
「わかった…でも!」
と、途端、プクッと頬を膨らまして怒っていると表現するユリス。
「え⁉︎な…なに⁉︎どしたの?突然⁉︎」
「私、知らなかったな〜。アロンにあんな可愛いお弟子さんがいたなんてねー。」
「あ…ああ。そういや、話したことなかったな。」
「そうだよ。私の話しかしてない。アロンの話聞いたことないよ。…アロンの話…聞きたいなぁ。」
上目遣いにそう要求するユリス。
可愛い!という反応を全力で隠し、それに応じるアロン。
「はは。わかった。動けないし、話すには丁度いい機会かな。ご静聴お願いいたします。」
「うん!えへへー。楽しみー。」
それからアロンは話す。自分が今まで引き受けてきた仕事や、救済屋のこと、両親のこと。アダンとの出会い。
自分が知ってることを余すことなく、ユニークに。ユリスを楽しませたいという思いと自分のことを知ってほしいという思いを全力で込めて。
それは、久しぶりの楽しい会話。きずけば二人共、笑顔でこの純粋に楽しく他愛のない時間を過ごしていたのだった。
それから無事一週間が過ぎ、アロンは何事もなく退院した。
その時、すでにアロンはあることを決意していた。
退院したということを聞いてアダンが迎えにきた。
「うし。さっそくで悪いけど仕事がある。と、いうより、いよいよってやつだろうな。俺はこれが理由で呼ばれたんだ。」
そう言ってきたアダンについていき、王の間に入る。
そこにはエチャード王とユリスがいた。
エチャード王はアロンとアダンが入ってきたのを見て、きたか…と言わんばかりの顔をした。
アロンは改めて背を伸ばし、キッチリした態度でエチャード王に向く。
エチャード王はそれを確認すると魔法石を使って映像をだした。
その映像にはローブを被った男がいた。恐らく…いや、映像からもわかるほどの魔力の質。間違いない。グリル・エクステインだ。
それを見たアロンは決意を固くするように拳を握り締める。
「今から1年後…このエウレスセレスという王国は終わる。その時、ユリス姫の命。貰いに参ろう。」
内容はただこの一言の非常にシンプルなもの。それでいて、執念のようなものを感じ取れる。不安感を煽られるには十分なものだった。
終わると同時にエチャード王が口を開く。
「この魔法石は…実はアロン殿に対魔法戦の訓練をしてくれないかと頼んだ日にきていたものだ。」
「え⁉︎ならば何故知らせてくださらなかったのですか⁉︎」
「それは…アロン殿とユリスが…楽しそうだったからだ。」
「は?」
王に対して無礼とわかっていながらも素っ頓狂な声をつい発してしまった。
「それは…どういう…」
「今や、戦争が絶えない世の中だ。何処に行っても戦争、戦争。その話題ばかり。しかし、アロン殿。お主がきてからは違ってきた。街の人、城に住む者、兵やメイド、同盟の国の方達すら、アロン殿とユリスを見て微笑んでくださるのだ。正に、平和を。皆が望んでいるものがそこにあるかのように。そして話題もアロン殿とユリスについての方が多くなってきた。そんな平和に、戦争の類のものを、今そのものである、アロン殿が話してくれた、その発端のグリル関係のものを近づけたくなかったのだ…。」
「…そうでしたか…………。エチャード王。お話があります。」
そんな事を周りの皆は思ってくれてたのかと嬉しくなると同時、退院した時から抱いていた決意が王が言ってくれた言葉でより一層強くなり、気づいたら王に向かって口にしていた。
「娘さんを、ユリス姫を私にください。」
「え?」
「ええ⁉︎」
そのアロンの一言にまず反応を示したのがエチャード王。アロンの時と同じように素っ頓狂な声を発する。次いでユリス。こちらは驚いていることがわかりやすい反応だ。ユリスは驚いた後アロンに向かって話しかける。
「あ…アロン…それって…どういう…」
「まんまの意味だよ。俺はユリスが好きなんだ。」
「い…いやでもこんな時だし…」
「こんな時だからだろ。さっきエチャード王も仰ってくれた。俺たちは平和みたいなんもんだって。ならむしろその平和大きくしてやろうぜ。国を潰す、命貰うって脅されたからって暗くなったり沈んでちゃ負けてんのと一緒だ。ってそれよりも…ユリスは…どう思ってくれてるんだ?俺のこと…」
「そ…それは…」
ジッとアロンに見つめられる。そうだ。わかってはいた。わかっていたけど気づかないフリをしていたに過ぎないのだ。本当に好きじゃないなら周りに何言われたってあんなに緊張しない。あんなに話してて楽しくならない。あんなに…ドキドキしない。だから…
「うん…そうだね。私も…好きだよ。大好きです。アロンのこと。」
それからあの流れで王からの反対はあり、しばらく子供のように文句を言ったがユリスの説得で渋々了承していた。
しかし、
「改めて…娘をよろしくお願いします。」
最後にそう言ってくれた王の顔は信頼と希望に満ちており、それを見たアロンは安心と、嬉しさと共に、より一層ユリスを大事にする気持ちが強くなった。
それから王国総出での結婚式。
指輪は当然買おうと思っていたが、王から
「これはかつて我が妻がつけていたもの。だからこそこの世に二つとてない、ユリスにぴったりの指輪だろう。渡してやってくれ。」
と小さいが綺麗な宝石が入った指輪を渡された。幸運の加護の宝石と呼ばれる、今は滅んだ国の遺産。それが埋め込まれた指輪。
それを結婚式でユリスに渡す。誓いの言葉を言って純白のウェンディングドレスに身を包んだ、綺麗なユリスに誓いの口付け。
そして国の皆からの祝福。平和にして幸せが国に広がり、世界の様相とは異なる、しかし確かなものが今この瞬間できていた。




