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一緒にいるから

 理事長室。そこで秋葉達は報告をしていた。

 「そんなことが…。」

 天雲理事長は最初こそ驚き、考え込むように静かになったが、秋葉達の瞳が不安そうに揺れているのがわかり、気をとり直すように両手を合わせ、音を出した。

 「考え込んでいても仕方がありませんね。結局、その「存在」とやらも、管理局のことにしろ、直接聞かないことにはわからない類いのものでしょうから。それに…。せっかく皆、無事に帰ってこれたのです。そんな不安そうな顔でいるより、帰ってこれたことに喜び、笑顔でいるほうがいいに決まってます。」

 その言葉を聞き、秋葉達の表情が和らぐ。

 天雲は、それらの表情を笑顔で眺め、椅子から立ち上がり。

 「今日は私が奢りましょう。帰ってきてくれたささやかなお礼として。」

 一言。言うと同時、秋葉達の顔が華やかになる。

 こんなに可愛い生徒達が無事に戻ってきてくれたことに天雲は心から喜んだ。




 「え…っと…。皆で。…。無事に帰ってこれたことを祝しまして…えと…その…か…乾杯!」

「「「かんぱーい!!!」」

 何処かに食べにいく…ということはせず、見知った部室で見知った仲間と祝したいということで、魔能対策部の部室で豪勢な食事を机の上に取り揃え、パーティーを開くことになった。

 そこで秋葉が開幕の挨拶をしたのだが…。

生徒会長として集会等でよく、壇上で話をしているだけあってこういう挨拶とかには慣れている…かと思ったが、予想の斜め上をいく初々しい挨拶になった。

グビッと軽く一口、ジュースを飲んだティードはそこを疑問に思い、口にした。

 「え…えー。リーダー、何その慣れてない感じ…。よく集会で挨拶とかしてるのに…。」

「し…仕方ないじゃない…。慣れてないのよ…。見知った、親しい人達だけの前でこういうことするのは…。」

ティードの言葉に戸惑いを交えながら返す秋葉。そんな秋葉にアーミーは、不思議そうな顔をしながら聞いてくる。

「ふーん…。違うものなの?」

 「結構…。普段はやわらかく接してるから、改めて固い感じで接するのがなんか…こう…。違うのよ。」

 「そんなもんなの?」

「ええ…。」

アーミーはジュースを一口飲んだ後、机にグラスを置き、ターキーばりの肉を切り、皿にとる。

 「ま、経験したことないことだし、わかんないでFAだわ。私は楽しく食事させて…。」

「マスターーーーー!!!」

 言いながら、先程とった肉を食べようと口に近付けた瞬間、身体に何か柔らかいものがぶつかってきた。

 鬱陶しそうな顔でぶつかってきたものを見るとそこにはリスのようは耳がちょこんとはえた女の子がいた。

 その娘は楽しそうにアーミーの身体に抱きついたままテンション高く話しかけてくる。

 「あそこにあるお肉、美味しかったですよ!マスターも食べてみてください!」

「あー。はいはい。後でね。」

なあなあな言葉とは裏腹に優しそうな表情で頭を撫でる。

 そんなアーミーに皆が抱いた疑問をヴェルクが代表して投げ掛けた。

 「帰ってくる時から気になってたんだが…。そのリス耳の娘は…誰なんだ?」

アーミーは一瞬、キョトンとした顔になり、後、すぐに「あぁ~。そっか。」と言うと同時に納得した顔になり、説明をしてくれた。

 「そういや、言うのを忘れてたわね。この娘は…。あれよ。あのリスもどきの。テンドゥよ。」

「「「「「え…。えぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!?………ってやっぱりかい!!!」」」」」

 「なんだ。やっぱりわかってたんじゃない。」

皆のそのわかってましたという反応に「だから言わなかったのよ。」と言わんばかりにあからさまな呆れ顔をしながら溜め息をする。

 「いや、まぁ…。わかってたというより、そうなんじゃないかなって思ってたというか…。」

「え…ええ。そうですね。帰るときにはテンドゥが見当たらなくて…。変わりに彼女がいましたから…。でも…いや、まさかな…って考えもありまして…。にわかには信じられなかったんですよ…。」

 ティードと谷徳がそう言うとアーミーは納得し、呆れ顔を解いた。

 「まぁ、それもそうね…。私も最初驚いたし…。なんでも、転体させてた魔力元のデルクを倒したから魔力元が切れることで元に戻れたのだとか。」

「はい!そうです!それもこれもマスターのお陰です!!!ありがとうございます!」

アーミーの腕にくっつき、ハートが今にも浮き上がってきそうなほど、甘えているテンドゥ。

 「…最初会ったときは激しいツッコミを入れてきてたのに、今は見る影もないわね…。」

そう言いながらもアーミーはテンドゥの頭を撫で、優しい表情になる。

 入りにくい雰囲気の二人にエクスは皆が聞きたいことを言ってくれた。

 「ま、人間の姿になった理由はわかったけど…。なんでリス耳とかあんの?転体がとけきってないってことか?」

 「ん?いや、そういうことじゃなくてね…。」

 アーミーはテンドゥを見て、それからエクスの方に視線を移して言った。

 「元々、この娘はこういう見た目らしいわ。獣人って言うんだったわね。だから、転体が解けても、このリス耳がまだはえてるのよ。」

テンドゥのリス耳を優しく撫でながら、アーミーは説明する。

 「ふにゅぅ~。」

気持ち良さそうになされるがままのテンドゥを見て、真澄が近づいてきた。そして、耳をアーミーと同じように撫でだした。

 「な…なに?…」

「………可愛い……。」

ポツリと一言呟きながら、一心不乱に撫で続ける。その様子を谷徳は微笑ましく見ながら同じように近付く。

 「確かにな。あのリスみたいな姿より全然、遥かに可愛いよな。」

「ほ…ホント?」

「…うん…。凄く…。」

「なぁー。」

「ねぇー。」

お互いにその事を確認しあい、クスクスとなかむつまじく笑う真澄と谷徳。

 その二人をこれもまた入りづらい雰囲気だなと思いながら、皆が見ていると、ヴェルクがマイクを取りだし、叫んだ。

 「よし!!!これからお前達に俺が溜めに溜めた一発芸を披露してやろう!!!」

 「「「突然、どうした!?」」」

 「ふん!…何。今までこういう芸を披露する時がなかったからな。ちょうどいい機会だと思ったまでのことだ。」

「披露したかったのか…。って成る程な。この部室、音響設備とかなかったはずなのに、なんかデカイスピーカーとかあるなって思ってたんだが…。お前が犯人だな。その一発芸とやらを披露するために用意したな。そこまでして披露したいもの…ってことは相当期待しても良さそうだな。」

「ああ。構わん。」

ティードはヴェルクの一発芸に懸ける思いを理解し、促す。

 「なら、見せてもらおうか。ヴェルクの…その一発芸とやらを。」

「ああ。見ていろ!これが俺の十年かけて作り上げた一発芸だ!!!」

ヴェルクは今まで以上に力がこもった動きでその芸を披露する。

 その姿は。このときだけは。世界で一番輝いているのはヴェルクかもしれないと本気で思ったほどだった。

 どんな芸だったのか。それは言わないでおこう。ただ、あれをこの場でした勇気だけは、きっと意味があって。何よりも尊いものだと。言い切れるものだったのは間違いない。現実が、厳しかっただけなのだ。




それからもてんやわんやと大騒ぎな「宴会」を楽しみ、その途中で秋葉がいないことに気付く。

 ちょうど少し休憩しようと思っていたのもありティードはその騒ぎから離れ、秋葉を探すことにする。

 部室には入り口以外の扉がもうひとつあり、その扉を開けると、バルコニーがある。

 開けると、心地よい夜風と同時に街の明かりと真っ黒ななかでも点々と光る星々がある夜空が迎えてくれる。

 そこにそんな絶景の中でも変わらず、色褪せない美しさがある、美人が一人。なかなか絵になる風景だ。 

 手すりに両手を置き、部室内の馬鹿騒ぎとは対称的に静かに外を見ている秋葉。

 声をかけるとその名作に波紋を生じさせてしまうことになる。一瞬、そんな考えがよぎるほどの綺麗な絵に介入するのははばかれるが…秋葉を探していたのだ。声をかけないのはそれはそれでおかしいか。と決論づけ、絵を壊してしまうことの躊躇と絵を見れなくなる名残惜しさを感じつつも声をかけた。

 「お。やっぱここにいたのか。」

秋葉はその声に反応し、ゆっくりと振り返ってくる。

 「あ。ティード…。」

どうやら声をかけただけで絵が崩れると思っていたのはティードの勘違いだったらしい。

 満天の星々を背景に。髪がなびくのを手で抑えながらティードを見ている秋葉。

 煌々爛々と輝いている星々に勝るとも劣らない美しい瞳。一本一本が真珠のような美しい光沢を放つ髪が夜空をなぞるようになびき、「絵」をより綺麗なものにしていた。

 「どうしたの?なんか盛り上がっているみたいだけど…中にいなくていいの?」

「ん?何、ちょっと休憩しようと思って。リーダーもいなかったし、探すのもかねてね。」

「…そう…。」

 秋葉は返事をしたあと、再び、外を見る。その横顔は何かを憂いているように見える。

 何で憂いているのかは聞かなくてもわかる。ティードはわかっているからこそ、口に出さないという選択をしなかった。

 「………タールのことか?」

「……ええ…。」

 やっぱりか。そう思いながら考える。ティードは秋葉ならタールのことで落ち込んでしまうのでないかと思っていたが…案の定予想通りの状況に溜め息がでる。

 例え、タールがどうなろうと、秋葉の友達を殺し、秋葉を追い詰め、苦しめた事実は変わらない。何より、捕まえたらタールにとって辛い未来になるなんて誰でもわかることだろう。

 それでも秋葉はタールの身を案じている。相反する感情でもあるため憂いに繋がっているのだろう。優しい彼女らしいと言えばらしいが、そのお人好しっぷりに、思わず呆れの溜め息が出てしまった。

 そんなティードに秋葉はジト目を向ける。

 「…なんで溜め息なんてついているのかな?」

「なんでって…そりゃ、溜め息つくのは当たり前だろうよ。まさか、リーダーを苦しめた敵さんを、心配しているなんて思わないからな。。」

「む…。そりゃ、おかしいことかもしれないけど…。それでも…。心配にはなるじゃない。あんな連れ去られ方されたら…。」

「まぁ…。それもそっかな。」

敵とはいえ、元友人。その友人が利用され、要らなくなったから捨てられているという言い方ができる扱われ方をされたのを目の前で見てしまったのだ。気になってしまうのも仕方がないかもしれない。

 「管理局の奴等も…正直何を考えているのかよくわかんなかったよな。利用している側のくせして、連れていっている時のあいつらは…いやいややっているというよりは、仕方なくやっている…。もっというなら…諦めているのかな。そんな感じだった。」

 「そうね…。何かに怯えている…という言い方もできると思ったわ。」

 「怯えている…ね…。確かに、言われてみればそんな感じでもあったよな…。でも…「何」に?何に怯えているんだ?何に会ったら、あんなに…死んだようになっちまうんだ?」

 「それは…わからないけど…。でも…得体の知れない…とんでもないのが管理局にはいるってのは確かなのは間違いないわね。タールは…そんな「何か」がいる場所に…連れていかれて…」

「死刑になる。か。まぁ、やったことがやったことだし、妥当と言えば妥当。だけど…その得体の知れないのが関わっているってのが不安になっている理由ってとこかな。」

秋葉は静かに頷く。

 自分を苦しめた存在を心配している。そんな相反する感情をおかしいと自覚はしているのだろう。それでも心配にはなる。少なくともあの、管理局局員の反応はこの感情に至るには十分すぎる要素となっていた。

 秋葉は拳を強く握り、悔しそうにして外を見る。

 ひとつひとつの家々の小さな光が暗闇に彩りを加え、輝いている。そんな景色の中、秋葉はあの強い、どんなことをしても消えないだろう瞳の輝きを灯らせ、言った。

 「管理局について、詳しく調べてみる。タールに死刑の判決が下されることは仕方ないとは思っているわ。けど、利用して捨てるってやり方はやっぱり気にくわないし…。何より管理局にいる「何か」が、気になるの。その存在がいずれ想像もできないほどのことを起こしそうで…。いや…想像もできないことが起こりそうっていうべきなのかな。…とにかく、「何か」が何なのかを知りたいの。」

 「………リーダー………。」

 強い娘だ。改めてティードはそう思った。

 秋葉は管理局員のあの生きていながらに死んでいるような様子を直接その目で見ている。そして、管理局員をそんな状態にしているのが得体の知れない何かがいるからだと考えた。

 その「何か」を、探ろうと言っている。怖いはずだ。誰だってそんな得体の知れない何かになんて会いたくない。それでもその言葉がでたのだ。

 だが、再びあの不安が襲ってくる。タールと戦う前にもあった、秋葉が無理をしすぎてしまうんじゃないかという、不安。

 案の定、これは的中し、秋葉はフラフラな状態になっても。それでもティード達を守るために一人で戦っていた。

 戦いが終わり、全員無事に帰ってくることでその不安は拭いきれていたのだが…。再び、不安がティードを包み込もうとしていた。

 だから不安を杞憂にするためにも、何よりも秋葉が心配だからこそ、ティードは口を開いた。

 「私も手伝うよ。「何か」ってのを探るだけでも、管理局にふれることになるんだ。もしかしたら管理局が敵にまわる展開もあるかもしれない…。そうなったらキツいだろうしな。」

「………ホント?……」

「ええ。ホント。」

言いながら秋葉を見ると、震えていることがわかった。そこでティードは察し、溜め息が再び漏れた。

 一人で管理局の得体の知れないのを調べようだなんて、それがどれだけ危険な行動なのか秋葉だって理解しているはずだ。本当は誰かと一緒にいた方がいいとは思っているのだろう。けれど危険なことに…。それも想像すらできほどの危険なことに巻き込んでしまうことになる。だから秋葉は皆の前でこの話をしなかった。

 だが、誰か一人だけでも事情を知っていればもしもの時には自分に変わって魔能対策部をまとめてくれるはずという狙いも見える。だからたまたま一対一で話したティードに教えてくれたのだ。

 しかしそれで、はい、そうですか。頑張ってくださいと言って秋葉一人に戦わせるなんてできるわけがなかった。

 ティードは震えている秋葉の手をとり、ギュッと力強く握った。

 「大丈夫だ。何があっても私がリーダーを守るよ。それに、協力するのは何も私だけじゃない。魔能対策部の皆も頼めば一緒に戦ってくれる。危険だから巻き込まれたくないなんて思うもんか。」

 「………でも………」

言い切っているのにそれでもまだ不安が拭いきれていないのか、秋葉は納得をしない。

 だからティードは秋葉を身体ごと自分の方に向かせて、改めて力強く言った。

 「でもじゃない。大丈夫だっていってるだろ。少しは仲間を信用しろ。」

「…ティード………。」

「少なくとも私は何があっても絶対にリーダーのもとから離れないよ。一人で戦わせたりなんかしない。一緒にいてやる。だから…信頼してくれ。」

その言葉を聞いた秋葉の瞳には綺麗な雫が込もっていた。その雫を瞳から流しながら秋葉は応える。

 「…うん。」

ただその返事だけでよかった。ティードはやっと納得してくれた秋葉に喜びを覚えつつ、思わず頭を撫でてしまった。

 何かしらの文句を言われるかなと思ったが、大した抵抗もなく、静かにされるがままの秋葉と一緒に、しばらく夜景を眺めているのだった。




 「…そういうことだから。その…できれば…皆に手伝ってもらえたらなって。」

「「「……………」」」

翌日。秋葉は魔能対策部の皆に管理局についてを詳しく調べていこうと思っているという胸の内を吐露し、頭を下げた。

 魔能対策部の皆はそれは最初驚いた顔をしていたが、すぐに怒ったような顔に変わった。

 「水くさいわね。そんなの、手伝うに決まってるでしょ。わざわざ頭下げなくたって、手伝うわよ。」

アーミーのその一言に対策部の皆が一様に頷く。

 「だな。」

「さすがマスター!かっこいいです!しびれます!」

「次の目標…ってやつですね。」

「目標がある方がやる気が出て良いってもんよ!」

「うん…。皆で…頑張ろう…。」

それからひとりひとりが賛同する旨の言葉を言ってくれる。

 秋葉は皆の反応に笑顔になる。

 「な。だから言ったろ。皆協力してくれるって。」

ティードが秋葉の近くに来て言う。

 そうだ。こんなに頼りになる仲間がいるのだ。何を恐れることがあるんだろうか。

 「皆…ありがとう。」

 その頼りになる仲間に送る言葉はただこの一言だけ。だけど、皆には通じている。秋葉がこの言葉にどれだけの思いを込めているのかが。

 だから皆は改めて秋葉についていくことを心に誓った。

 これからどんなことがあろうと、秋葉を守り、そして、一緒に戦っていくことを。





 

 



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