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掴める未来と掴めぬ未来

 拳がぶつかりあうことで辺りに波動と風がほとばしった。

 すかさず、二発目をさっき振るったのとは逆の腕でお互い放ち、拳同士がぶつかる。

 それが右、左と交互に繰り返されることで何度も殴りあい、お互いにダメージを負いながらも繰り返す。

 拳を潰さんと言わんばかりの殴りあいはタールが脚に波動を纏い、地面を蹴ることで終わる事になった。

 途端、地面が盛り上がる。何度もやられてきたタールの基本戦術である、足元崩しだ。

 「……っと!」

 突然、足元が崩れたせいでバランスがとれず、身体がふらついてしまったティードを、タールが見逃すはずはなかった。

 一瞬で近付き、振るってきたタールの波動が纏ってある拳に風を纏った拳で返すことで直接、ダメージをくらわされるのは避けることができたが、波動によって、地面に叩きつけられた。

 タールも風によって吹き飛ばされ、ティードと距離ができる。ティードの方を見ると、立ち上がろうとしているのが見えた。それを見たタールは即座に「秋葉の元」に向かって高速で迫った。

 「………え?」

高速で迫る速度そのままに右腕に波動によるドリルを形成し驚いている秋葉の身体めがけ、突いた。

 しかし、波動のドリルは秋葉を貫くことはなかった。ティードが秋葉を守るように立ち、その身体が貫かれることで秋葉に届かなかったからだ。

 「ティード…!!!」

「ククク…アハハハハハ!!!仲良しこよしはただの重りだって何回言ったら分かるんだ!?実力差ってのはなぁ。所詮飾りよ。情があるかないか。それで勝ち負けは決まると言っても過言じゃない!勿論、情なんぞ、ないほうが強いってことだがなぁ!!!」

ひとしきり楽しそうに笑ったタールは腕を抜こうと力を入れた。が、ピクリとも動かない。何度力を入れても、一向に抜くどころか腕が動く様子がなく…。ティードを睨むように見たとき、気づいた。

 血が。ティードの身体を貫いたにも関わらず、血が出ていないのだ。本来なら出血多量になるほど血が出て当たり前だろうに…だ。

 そう考えると途端、違和感がじわじわと自分のなかで広がっていった。

 身体を貫いたのは間違いないが、感覚が…感触が…おかしい。肉という、重みの中に柔らかさがあるあの独特な感じがしない。まるで…一塊になった風に抵抗されるような…そんな感触だった。

 恐怖が胸の内に考えれば考えるほど大きくなっていく。いつの間にか震えていた身体に気付きながらゆっくり恐る恐るティードを見た。

 「お前………一体…なんなんだよ………。」

 ティードは身体に穴が開くほど貫かれているにも関わらず痛みで苦しむどころか辛そうな素振りすらなく、まるで何事もなかったかのように波動によるドリルによって、貫かれたままその場に立っていた。

 「お前の野望の前じゃ私が何者であろうと意味はない…じゃなかったっけ?」

 そのおちゃらけたような返しにタールはイラつきと共に手をティードの身体から抜きながら舌打ちをすることで返す。

 後、後方に跳ぶことでティードと距離をとり、様子を見ることに徹する。

 震える身体をなんとか叱咤させながらも、タールは構えをとり、そして、思考する。

 (ティードの身体は…いや、恐らく存在そのものが異質なんだ。この世界の…違うな。「この世の全てとは違うもの」なのだろう。…恐ろしいのはこれは決して経験や知識から得た答えではなく、本能的直感であるということだ。…だからこそ普通ではないことがわかる。確信できる。しかし、勝てないというわけでは決してないだろう。あいつの存在そのものがそうであるなら。何らかの能力が発動してそうなっているというわけでないのなら。そうだ。あいつは、転体中の俺の攻撃を喰らっている。…この事から理由はわからないが何らかの事情で、完全に力を出すことはできないと推測できる。そして転体中の俺の攻撃を喰らった。…ならばあいつを消す方法は一つ…。)

タールは構えたまま、右腕に全ての魔力を込めた。身体中に流し、開放していたありったけの魔力を更に一点に集中させる。

 「…!!!ティード…!!!あれは…いくらティードが凄くても…!!!」

「っぽいな。あれゃ喰らえば私も終わるな。膨大な魔力をぶつけることができれば私にダメージを与えることができるって気付いたんだろ。賢いやつだなぁ。リーダーでも手こずるわけだ。」

ティード身体は明らかに貫かれていたはずなのに無事だった。そんな異質なものを見て。貫いたタールが手を抜いた後、身体に開いていた穴が再生するように埋まった…ことはなく、まるで本当に何事もなかったかのように身体に穴が開けられたという事実、事態が起こっていなかったと言わんばかりに身体には何も起こっていなかった。…そんな異質な光景も見て、呆然とティードを見ていた秋葉だったが膨大な魔力エネルギーを溜めているタールの魔力を感じ、我に帰ると共にティードに声をかけた。

 ティードもわかっているようで、危機的状況というのを理解し構えをとりつつ、答えた。

 タールは魔力を溜めきったと同時、腰を深く落とし、右腕を引き、構えをとった。

 対するように、ティードも腕を引きつつ、腰を深く落とす。

 タールが今から放とうとしているのは一直線上の波動。細く、鋭く魔力を凝縮することで威力をあげ、確実にティードを仕留めようとしている。そう、わかりきってはいる。つまり、避けること事態は、簡単なのだ。

 しかし、それはできない。タールの狙いはティードではなく、秋葉だからだ。そうすることで、ダメージで動けない秋葉を狙うことで、ティードの「避ける」という、選択肢を潰している。

 これはあくまで予測にすぎない。それでも、間違いないと確信できる。今までのやり取りから。戦いから。奴はそういう男だと。確実に、ティードを倒すために。

 これが…最後の一撃になる。決着はこれでつく。

 この場にいる全員が、それを理解し、場には緊張感が覆われ、静かに、「その時」を待った。

 瞬間、タールが左足を踏み出し、その勢いのまま腰を入れ、右腕を突いた。

 細く、鋭く、魔力を込めていたのがわかっていたが、それでも、その螺旋状の波動の大きさは人間一人を優に飲み込むほどのもので、タールの後方にも波動を放った際の衝撃波が散り、辺りを吹き飛ばした。

 対し、ティードも右腕に風を渦巻かせ、突くことで波動と相対する。

 膨大なエネルギーがぶつかりあい、辺りを風と波動が切り裂いていく。

 「はぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

咆哮にも似た声が波動と風がぶつかり合う轟音を越えて響き、より、一層風と波動の威力が増す。

 風と波動がぶつかり合っている地点の地面はめり込み、辺りの岩々と地面は切り裂かれることで削れる。

 そんな激しいぶつかり合いは弾け飛ぶような音と共に風と波動が魔力爆発を起こすことで終わった。

 膨大なエネルギーがお互いを飲み込もうと相殺しあった結果、敵にぶつかるはずの魔力が一定地点で止まったせいで内部で溜まりあい、魔力爆発を起こしたのだ。

 風による壁をすぐさま展開することで自分と後ろにいる秋葉達を爆発から守る。

 そうしながら五感を研ぎ澄まし、魔力感知にも集中し、タールの状況と様子を捉え、次はどうでてくるのかを考えようとしたとき、理解した。

 魔力爆発による視界の悪状況。更に聴覚までもが爆発による轟音が起こっているせいで働かない。そして膨大なエネルギー同士がぶつかった結果、魔力爆発が起こったせいで広範囲に及んで魔力が飛び散っている。こんな状況では魔力感知は人の魔力を巨大な魔力が覆ってしまうことになるため、なかなか働かなくなってしまう。

 これらの悪状況かつ、タールが戦術であるとはいえ、執拗な迄に秋葉を狙っていること。この悪状況でも負傷で動けないため、秋葉を狙うのは容易なこと。

 これらから導き出される答えは…。

 「リーダー!!!」

ティードはすぐさま、後ろを振り向き、秋葉の様子を確認した。そこで見えた。タールが秋葉の後方から迫り、右腕に波動をドリルのように纏っているのが。

 それを見た瞬間、盾になるように秋葉の後方に立ち、タールの攻撃から秋葉を守るように立ち塞がった。

 状況はさっき、秋葉を守った時と同じ状況。何よりも大きな違いは、弱点を見抜かれた今、あの時と同じようにタールの攻撃を防ぐことはできないということ。

 あと少しでタールの攻撃が、秋葉に当たる。そんな状況で、風による防御壁を間に合わすのは難しく、仮に間に合っても、急いで出した防御壁など、簡単に壊されるだろう。盾になって攻撃を防ぐ。これ以外の策がない。

 そして、これらの状況を作り出し、秋葉を狙うことで自由に動けるティードの選択肢を盾になって攻撃を防ぐこと一択にし、確実にティードに一撃を与えることができる状況を作る。これらは全てタールの計画なのだろう。

 わかってはいても、こうすることしかできなかった。

 「全く…天晴れだよ。ホント。」

気付いたら、ティードの身体は宙に浮き、何度も地面をバウンドしながら吹き飛ばされていた。やがて、その勢いが収まっていき、しばらくして、動きが止まった。うつ伏せのまま、動かなくなる。

 「ティー…ド…。」

呆然としてティードが飛んだ方向を見ている秋葉を尻目に、タールは笑う。

 「アハハハハハ!!!よし!よし!喰らった!喰らった!得たいの知れない化け物なのは確かだが…。死ねば所詮、それまでよ!ククク…アハハハハハ!」

「あ…な…た…!!!」

「お次は…当然…お前だよ…。やっと殺せる…!お前を…!秋葉を…!」

 残り少ない魔力で波動を腕に纏いながら秋葉にゆっくり近づいていく。今度こそ確実に。秋葉を倒すために…。

 「お前は…。お前は生きてちゃいけないんだよ…。秋葉。お前を生かしておくと、後々、脅威になりかねんからな…。俺にとっても…「全て」にとっても…!」

 秋葉に一撃与えるために、既に近付いていたのもあり、数歩歩けば、魔力が少ないせいでどんなに足元がふらついても容易に近付くことが出来た。

 「それは…どういう…」

「……………消えてくれってことだよ。秋葉。」

タールは波動が纏ってある腕をゆっくり引き…その一言と共に、突いた。




 人、一人を貫いたのだ。身体を、肉を貫くあの感覚。柔らかさの中にある、異物達。臓器を共々貫きながら、最後には硬く、それでいて厚みもある骨を砕き、そうして貫通しきった後は、苦しみもがき、死んでいく。

 俺が最もこの世で好きなものはそれだ。苦しんで死んでいく姿を一瞬にして、貫いている感覚的には永遠に。そんな時間的矛盾を自分のなかでつくり出しながら、相手を殺す。この一瞬のために生きているといっても、他ならない。

 大財閥に産まれ、大した苦労もなく生きてきて、そんな自分を周りからも疎まれ、憎まれ。生きてきて。そういう毎日が続いたからこそ、知れたのだ。生物を貫くあの感覚を。快感を。

 遺伝系の魔法である魔力波動を覚え、試しに魔物狩りに出て。そして、知った。

 あの裕福である種何もなかった家で生きてきた自分にとって、これほど楽しいことはなかった。

 やがて魔物や、動物では我慢できなくなっていった。試したくなってしまった。…人を。貫いてみたいと。だから思わずいつも近くにいた執事を貫いてしまったのだ。そしてそれは…。その快感は、麻薬の如く身体全体に広がり、中毒に近い…いや、中毒という言葉では生ぬるいほどに。どうしようもなく。貫くだけでは満足できなくなってしまって。

 気付けば家は燃えていた。大量のバラバラ死体が所々にあった。自分は外に出ていた。何処からか通報があったのだろう。家が燃えていると。駆けつけた大全管理局員によって助けられていたのだ。

 自分は哀れな被害者として扱われる…とその時は思ったが、流石管理局とでもいうべきかこれをしたのはタールだと。すぐにわかったようだった。

 当時、ガキだったこともあり、快楽に従って本能に近く行動してしまったのもあり、この大財閥一家自分以外全滅という規模が大きすぎたのもあり。隠しきれるわけがなく。数多くの、証言、証拠を突き付けられ、最早知らぬ存ぜぬではただの時間の問題かと考えたその時に。会ったのだ。「あれ」に。あの「異常」に。

 そこからはよく覚えていない。恐怖で頭が一杯になり、頭がおかしくなりそうだった。そう、十分狂っていると、自覚をしていたのにだ。そんな自分がまともに思ってしまうほどの異常に会ったのだ。

 だから何が、どうしてそうなったのかは覚えていないが。俺は管理局の「裏」で働くことになった。その際、俺の経歴は全て、なかったことにされた。らしい。意味がわからなかったが、考えなかった。俺が管理局に入れた理由も考えなかった。考えたらどうにかなりそうだったから。

 そこからは毎日、楽しいものだった。「バランス」のために善、悪問わず多くの人を殺し、貫き、バラバラにする毎日。理想の生活。

 そして、ある日にいつもの依頼として、俺に下った命令。それが…。天鼓財閥の一人娘。「天鼓秋葉」を殺すこと。

 天鼓家と言えば、超有名な大全の中でも五本の指にはいるほどの大財閥。俺の家が急にショボく感じるほどの。何度か大全間の財閥によるパーティーでも会ったことがある。

 その一人娘を殺す…だ。驚いたのを覚えている。何せ天鼓は管理局に出資をしてくれているスポンサーだ。きりたくなっても安易にきることすらできないほどの。そんな大財閥の娘を殺す。バレたらお仕舞いどころの騒ぎではない。

 何でそんな…と考えようとしたがやめた。そこで理解する。ああ。これは、「あれ」の命令かと。だから考える気が起きないのだと。

 そんな依頼。断ることもできなければ、断る気もない。引き受け、もちろん、一人ではなく、多くの仲間と。そして、同じように依頼をうけた、デルクと楊拳と共に、世界、アージェに訪れ、そして…。




 今になる。

 タールは、もしかしたら、走馬灯を見たのかもしれない。

 拳は呆気なく、「ティード」の左手の掌に止められ、瞬間、波動は弾け飛ぶようにして消え去り、風を纏った右腕によって殴り飛ばされた。

 拳が止められたとき、

 「「私」にとっては「必要」だ。」

そう言ったティードに。恐怖を感じた。瞬間、この感覚は何かに似てると思って、考えて、そして、気付いた。

 この感覚は。「あれ」に限りなく近いと。あの「異常」に。

 大全管理局の長。「総天高」に。

 タールは。気付くと同時に。宙に浮き、仰向けに倒れた。




 動かなくなったタールを見て、ティードは一息つき、地面に腰を降ろした。

 「ティード…!」

名前を呼びながら近寄ってくる秋葉に笑顔で返し、大丈夫だという事を伝える。

 「本当に?もし、痛いの我慢してるなら…」

「大丈夫だって。心配性だね。リーダーは。」

目を潤ましながら、本当に心配そうに見てくる秋葉が満身創痍な姿も相まって普段とは違って弱々しく見えた。それのせいなのか。思わずなでなでとしてしまいがらも秋葉を安心させようと、優しく声をかけた。

 「けど、あれだね。今日はホントに、何度も私の名前呼んでくれるね。そんなに心配してくれてるんだなって。なんか嬉しくなるよ。」

その一言に秋葉は心外そうに頬を膨らまし、抗議するかのように言ってくる。

 「心配するに決まってるじゃない。…仲間なんだから。」

 「仲間」…シンプルに信頼を寄せてくれていることがわかり、それでいて、自分の事を受け入れてくれている何よりの言葉に笑みが漏れ、「ありがとう」と一言だけの言葉にありったけの感謝を込め、返した。

 後、タールを見る。変わらず空を見るように倒れたまま、動かない。それでも、気絶している訳ではないだろうと、確信できた。

 理由は簡単。戦って拳を交えたからこそわかる。タールはあの一撃で倒すことはできても、意識を奪うことはできないだろうということが。

 「タール…。」

秋葉も同じようにタールを見てポツリと名前を呟いた。

 「俺の名前もよく呼んでくれるよな。…ってことは俺も秋葉の仲間って考えていいのかね。だとしたら嬉しいねぇ。酷いことをしたのに仲間だなんて。友情に咽び泣いてしまうぜ。」

 「やっぱ気絶はしてないか。タフな奴だ。」

予想はしていたが、やはりとでも言うべきか。意識はしっかりとあるようで、そのタフさに呆れつつ、ティードはタールに話しかけた。

 軽く一笑いし、タールはそれに返してくる。

 「お前も大概だろ。どんな一撃与えたら倒れてくれるんだよって不安に思いながら戦ったのは初めてだ。そんな不安に苛まれながら戦ったもんだから案の定負けちまったしな。」

 そう言っているタールはしかし悔しそうには見えずむしろ清々しそうに充足感に溢れた顔をしていた。

 「お前…。野望が破られたってのに…よくそんな顔してられるな。」

 「………なに。お前みたいな奴を…「存在」を。俺は知ってるからな…。いや、「何も知らない」のか。…ま、そんな「何か」に負けたんだ。負けて当たり前だろ。そんなの。」

 「………。」

タールの曖昧で不明瞭なその言葉に、ティードは何も返さない。

 タールが言う「存在」とやらをティードは間違いなく知っている。…何故、そう思いきれるのかはわからない。だが、確信できる。

 ティードはその「存在」に近いか、もしくは…「存在」そのものか。…どちらにせよ、ティードは何も言う気がないようだ。だから秋葉は詮索しない。いつか言ってくれるかもしれないし、言いたくないことなのかもしれない。そして、何よりも…「聞いてはならない」事のような気がしてならないのだ。

 「………ククク…。お前みたいな「存在」って…一体どれだけいやがるんだか…。ホント、嫌になるぜ。全く…。」

「…タール………あなたは…」

秋葉がタールに言おうとした言葉はしかし吐き出すことができなかった。

 突然、空間が歪曲したと思うと白いコートを着た大全管理局の局員達が流れるように出てきてタールを囲んだからだ。

 「まさか…!!!」

そこで秋葉は気づく。これは、前回と同じ。タールを捕らえようとしたら管理局の者達が現れタールを連れていくことで捕らえることができなかった。あの時と。

 タールと管理局は協力している。当然の展開言えば当然なのだが。ここで再び連れてかれてしまえばたまったものではない。

 「まっ………「ご協力していただき、ありがとうございました!」

 焦り、制止の声を出そうとしたとき管理局の者が一人、秋葉の前に出てきてそう叫んだ。

 「…え?」

予想外の言葉。しかし、これは何らかの意図があるのかもしれない。そう考え、警戒を解かず、接した秋葉だが…。

 「本当に助かりました。この者は他世界でも多くの重罪を犯していたため、管理局でも最重要警戒対象として捜索をし、捕らえようとしていたのですが、なかなか尻尾が掴めず…。苦労していたのです。ですが、大きな魔力反応を感知し、これがタールのものであることがわかり、居場所がわかっただけではなく、足止め、ついには行動不能な状態にまで追い詰めてくれているではありませんか!感謝しきりですよ!本当にありがとうございます!」

聞いてもいないのに、ペラペラと喋るその様子には秋葉達を騙そうとしている風には見えない。

 何が狙いなのだろうか。話を聞きながらも、思考の渦中に入り、管理局の目的を探る。

 だが、これといったものがうかばず、それでも思考を続けていると知った声が自分の名前を呼ぶのが聞こえた。

 その声に振り向くと、逆水と谷徳、アーミーと…誰かはわからないが、リスの耳がちょこんとはえているショートカットの女の子がいた。

 「あなた達!良かった…!無事で!」

 詳しくいうと、無事…とは言いきれない。激戦だったことがボロボロの身体を見るだけで伝わってくる。けれど、間違いなく生きている。その事が確認できたことが嬉しくて、秋葉は反射的に声をあげたのだ。

 「無事を喜びあうのは後で!これは一体どういうこと…!?何があったの!?」

アーミー達が秋葉の元に駆け寄りながら、状況を聞いてくる。管理局員が、倒れているタールを囲み、魔力錠で捕獲している…。

 手を組んでいるというわりには異様すぎる光景だ。

 「わからないわ。私も。前も追い詰めたときに管理局員が出てきて、タールを捕まえることができなかったけど…。あの時とは様子が違うの。まるで本当に…局員として行動しているだけにも見える。」

 「え?じゃ…つまり…」

「あなた方にも感謝しております。よもやタールだけではなく、楊拳にデルクまで行動不能にしてくれているとは…!」

 白いコートの隊長格の局員が言うと同時、別の局員が気絶しているデルクを連れて来た。

 「な…!それじゃ、さっき突然出てきてそいつを連れていったのは…!」

「私達です。すいませんね。連れていったのは新人なもので。挨拶をするのを忘れていたようです。しっかりと言っておきますので許してくださると。」

「そんなことを言いたいんじゃない!大体、何で消えた楊拳のことを知っているんだ!?あいつは死人なんだぞ…!その存在を一局員が知っているのかよ!生き返らせるなんて事をしでかしておいて、存在は秘匿していないのかよ!?」

谷徳が叫ぶと局員達は静かになり、後、タールを立たせ、背を向き、連れていこうとした。

 「待って…!その人達は…タール達は…どうなるの!?」

そのまま何処かに連れてかれそうになるを防ぐように秋葉は聞く。

 局員は背を向けたまま、答えた。

 「死刑になります。」

「………え?」

またもや、予想の外の言葉で返され、どうすればいいのかわかたなくなる。

 手を組んでいたのではなかったのか。仲間なのではないのか。いろいろな疑問がない交ぜになり、ぐるぐると思考が回っているとタールが笑いだした。

 「アハハハハ!当たり前だろう。それだけのことをしてきたんだ。揉み消すためにも、誰だってそうするだろう。覚悟していたことだ。そしてこれが…上のやることだ。」

 「それでいいの!?あなただけじゃない!あなた達局員全員!いらなければ消す。そんな場所で生きてても!」

その言葉を聞いた、白いコートの隊長格の局員がピタリと足を止め、振り替えってくる。

 局員の目を見てゾッとした。闇といっても過表現ではないほど、虚ろな目をしており、一言だけ言った。

 「仕事ですので。」

 それからは何も言うことができず、ただ、目の前から消え行くのを見ていることしかできなかった。



 

 

 

 

  

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