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救済屋

あれから7年経った…赤ん坊はアダンという名前を与えられ成長し、綺麗な背の半分もある黒髪が映える美少女になっていた。トイレに行かなくてもよかったりご飯も食べなくてもよかったり…と異常なところも多かったが気にならなかった…これもまた異常だが。

ヴァスティオンはすでに先代からあるため有名であったがアロンという一個人をしめす名前も多くの人に知られており、有名人として世界に知れ渡っていた。

「おはよう」

と、目を覚ましやや眠たげにリビングに向かったアロンより先にリビングにいたアダンが挨拶をする。

ここは救済屋の家。ヴァスティオン家で代々引き継いだ者はここで依頼を受けたり暮らしたりする。いちいち場所が変わるというのも…という理由で決まっている。

「………」

今でもびっくりするくらいの美人。年齢的に美少女と表現すべきだが美人という表現のほうがあっていると誰しもが思うほどの。しかし人間だから表現はそれしかないのだが…もっと上…まるで…景色を見ているような…そう、絶景を見ている…そんな気分に見るたびになるのだった。

「アロン?」

ボーッとして見ていたため、アダンが不思議そうに見返してくる。

「あ…いや、なんでもない。…おはよう。」

ため息をつきながらアダンは返す。

「いいよ。毎度のことだしね。」

朝食であるフレンチトーストを食べながら気にしてないふうに答える。

ご飯は別に食べなくてもいいらしいのに…だ。これはアダンいわく、食べなくてもよくても気分的には食べたい。「合わせたい」んだ。らしい。

アロンもアダンが用意してくれたのだろう朝食を食べながら作業…魔力で動くミシンを使い、服、アロンと同じ黒コートを作っていた。

最近の救済屋の仕事はアダンも手伝ってくれたりしている。

育てる過程で、技術、知識などといった救済屋になるための修業をしていた。これはアロンに妻がいない以上、子供…後継者が生まれる可能性がないため、というのと…そうしなければならないという義務感があったからだ。

このコートは救済屋であるとわかりやすくするためのもの。時には様々な都合で脱ぐこともあるがこの服を着ていることで、見た瞬間依頼者達には安心感、相手には威圧を与える効果がある。

「黒?…えぇー。俺違う色がいいって言ったじゃん。後飯食いながら…ってできんの?」

「ムズイ。そんなことより…黒の良さがわからんとは、嘆かわしいな。黒のかっこよさがわからんとは…あの全ての一色の中で何ものにも囚われない孤独!あれはまさに輝きすら纏いし、至極!漆黒の統一感を出しながらかつ…」

「それは何度もきいたしいいよ。ホント何度もね。はあ。もういいかな。諦めるしかないのかね…。」

「妥協…ありえんな…!至極を妥協する。ならば…」

そこで家に設置されてある魔導電話がなった。魔力を電波の変わりにした電話である。これ幸いとアダンは促す。

「わかった。わかったから…電話なってるよ。多分依頼だろうし出た方がいいんじゃない?」

「救われたな。この話は今度また…」

「いや、いいから早くでて。」

そのままブツブツいいながら電話にでるアロン。

「はい、救済屋です…はい…はい。わかりました。すぐに。」

電話の後アダンの方に向く。その顔は先程までの眠そうな顔ではなく、真剣な目をしているものだった。


「依頼内容はわかりやすく言うと強盗に襲われた村を救う…ってことね。了解。しかしいくら最近国とか金あったりする場所は警備厳重だからって、村を襲う奴らがいる…ってことは相当現状がヤバいってことかね…」

仕事のための準備をしながら依頼内容を聞かされたアダンはため息をつきながら内容の復唱と確認をする。

準備と言ってもこういう緊急依頼があったりすることもある。すぐにできるようにある程度のことはしてはあるためすぐに終わった。

「そうだな。ま、仕方ないといえば仕方ない。今日生きるのに必死なんだろうしな…。それをなんとかすんのが俺らの仕事さ。」

黒コートを着て、ジッパーをおろしきり、身の丈はある細身の大剣…ヴァスティオン家が代々使ってきた特殊な魔法物質でできた、大剣「ヴァスティオン」を背負いながらそれに返す。

アダンはコートがまだできてないがお下がりの小さいのを着ている。見習いと言わんばかりに青の色をしていたが…(アダンは気に入っている)元々今作っているのは正式に継がれた時、またアダンが大きくなった時ように作られているものだから今着てもサイズが合わない。別に着たいわけでもない。

それに7歳の女の子相応の大きさを持つ、2本の剣を腰にあて、服から魔力によって位置を記録し、そこにとぶことができる転移石をとりだした。

「んじゃ行きますか。先手…」

「必勝でな。」

と言い終わると同時に転移し、村の中心部分にとぶ。

村では魔力で精製された弾を放つ魔力銃を持った覆面の人達があちこちにおり、特にある家の周りには重点的に守るように展開していた。

それを見た二人はそこめがけ一直線に向かう。

アロンが背負った剣を横回転させるように投げる。と、同時にアダンがとぶ。

「な!」

それに気づきギリギリで腰を低くすることで避けるがとんでいたアダンがヴァスティオンをとり、剣の刀身ではない部分で一人を叩き、気絶させる、すぐさま剣を上に放り、アロンがとぶことでそれをとる、その様子に気をとられていた強盗をアダンが腰にある二本の剣でもって先程と同じ容量で気絶させる。

扉の前にいた強盗はそれに反応し、銃口をアダンに向けるがそれが一瞬で真っ二つになり驚いた次の瞬間には全員アロンの攻撃で気絶していた。

「さて…」

アロンは堂々と民家の玄関扉をあけ中に入る。すると中に5人ほどいた強盗が一斉にこちらを向いた。

2階だての家の中では一階で村長らしき人を捕らえ強盗のリーダーらしき男が銃を向けていた…金目のものでも要求していたのだろう。

「えーと…そういうのいけないと思うなぁ…なんて軽々しく言えないからあれだけど…とりあえずやめてもらえませんかね?大人しく捕まってくださると…」

「お前が…噂にきく救済屋か…。」

リーダー格の男がアロンに応じる。

「ええ。そうっすよ。」

その様子にリーダーの男がピクリと眉を揺らしアロンを油断なく見ながら口を開く。

「随分と余裕だな。こっちは人質がいるうえ数の差があり魔法銃を全員がもち俺には切り札もある…まあ、ここに入ってこれたということは表にいた連中を倒してきたのだろうが…2階にも金目のものをあさらせている仲間がいるし、くわえて狭い家内だ。簡単に動き回れるわけでもないんだぜ?」

「余裕ってのはありすぎると慢心だが多少は相手になにかあるんじゃないか?って焦らすのと自分に自信を持たし緊張感をややほぐしつつ適度にもつ効果があるってね…教えられたもんで。」

「…それは相手に教えてもいいって教わったのか?」

「いや〜、それ言ったら効果は薄れるって教わったわ〜………しまった!」

「馬鹿だろお前。」

と言い終わると同時に男が合図をし、周りの強盗が銃を向け撃ってくる。

それを剣で薙ぎはらうことで吹き飛ばす。

「成る程。表の仲間倒されてる時点でわかっちゃいたができるな。どいてろ。」

周りの強盗達がその様子を察し離れる。村長には銃が向けられたまま。

てっきり行動したら人質を撃ち殺すくらいのことをすると思ってたアロンは悟られないよう驚いていた。そうならないようアダンにはタイミング見計らって入ってもらうつもりだった。よほど「切り札」に自信があるのだろう。

男が指にはめていた指輪の石が光るとそのまま手をかざしそこから氷の塊が放たれた。

「おおっ!」

それを避けるアロン。避けた結果後ろの壁が氷の塊によって吹き飛んだ。

「はー。やっぱ威力スゲーな。魔法って。」

吹き飛ばされた壁を見ながら言うアロン。

「これが切り札だ。魔法。才能と限りなき修練によって会得する奇跡だ。次は…避けきれるかな?」

そう言うと周りの強盗達が銃を向ける。同時撃ちするつもりだろう。魔法ならばさきほどのように薙ぎはらってのけるのも難しい。

とそこで2階の強盗達が悲鳴をあげながら落ちてきた。

「なに!?」

と上からアダンが床を壊すことで村長の元に行き銃を村長に向けていた強盗の銃を斬る。そしてすぐさま強盗を気絶させた。

「救済屋はガキ含んだ二人組だったのか…!」

リーダー格の男が驚いている間にアロンも動く。

「ぐ!…クソ!吹き飛べ!」

再度手のひらをアロンに向け氷の塊をとばすが周りの強盗はアダンの奇襲によって混乱し、その間にアダンによって気絶させられた。

よって魔法だけならさきほどと同じように難なく避ける。

そのまま近くまで迫ったアロンによって気絶させられるのだった…。


「ふぃー。終わった終わった。」

パンパンと手を払い合わせながら捕らえた強盗達を見る。

村という自分達の把握しきっている隠れ場所で連絡してくれた依頼人達や、他のところで集めて捕らえられていた村人、村長含む全員を無事安全なところまで念のため避難させておき、魔力で編まれた縄で捕らえた強盗達をまとめて村長の家、さっきまで戦っていた家に集めていた。近くの国の警察の人達に連絡し、後は到着を待つだけである。

近くの国の警察にこういった状況で助けを求めるという選択はないに等しい。理由は、戦争が起こっているから。内国の事で精一杯な状況で近くの村に助けを求められたから行くなどというのは難しい。だから救済屋に頼む。捕らえたという状況さえつくれれば警察はとりにくる、または引き渡せばいいのだから動きやすくなる。

「なあ。警察の方々来る前にちょい聞いときたいことあるんだが…。」

アロンが強盗のリーダーの男に向かい疑問に思っていたことを口にしようとする。

「………魔法銃と、この魔法石の入った指輪をどこで手に入れたのかってことだろ?」

「あれゃ、言わなくてもわかるか?ま、どうしてこんなことしたかなんて今のご時世じゃ理由なんていくらでも思いつくしな。ここで生じる疑問なんてすぐわかるか。んじゃ、聞かせてくれるか?」

少し逡巡していたがやがて強盗のリーダーの男は語りだした。

戦争のせいで居場所を失った者達で集まり金がないなりに全員で協力し、また精神的にも一人でいるよりはマシな気分だったがしかし、やはり限界がきたこと。そしてその時に一人の男がきて「限界がきたのなら奪えばいい」といって魔法銃と魔法石の入った指輪を渡してきたこと。

「そいつが首謀者ってやつだな。」

黙ってきいていたアダンが言う。

「俺らが単に利用されただけだ。こんなものをくれても金はないと言ったら奴は自分が作った魔法兵器の実験がしたいだけだから金はいらないとな。…生活はもう限界はきていたが強力な魔法という力を手に入れられたんだ。これしか方法はなかったんだ…。」

「魔法の武器は訓練をした警備とか国の兵とかしか持てないもの。まあ、そんくらいの力はあるもんだし、持てば強盗くらいできるって気分になっちゃうかもね。とはいえその魔法石。それがその実験とやらのメインだったんだろうが、まさか、修練とか才能とか無視して誰でもそんな強力な魔法が放てる

なんてな。日用魔法品を改造して…みたいなんもいたが大して威力ないし、一回使えば終わりだったけどそれは見た限り連続で放てるっぽいし…ヤバいもん作ってんなそいつ。そんなんあったらますます戦争がひどくなってくな…。」

それを聞いてアダンが応える。

「それが目的…なんだろうな。そいつ武器商人かなんかか?戦争激しくなってきゃより売れるようになるし…でもそのレベルの魔法武器作れるほどの魔導師なんてこの世界に数えるほどしかいないからなぁ。ってことは相当強いな。まず間違いなく大魔導師クラスの実力はある。」

「だな…。」

それにアダンが頷き、リーダーの男に向かって言った。

「そいつ…名前なんて言ってた?」

「…グリル・エクステインと言っていた。」

その名前を聞いたアロンは動揺を隠しきれない様子で口を開いた。

「え?………グリル…エクス…テイン…!?…嘘だろ?」


目が覚める。家のベットの上で上体を起こし考えごとをする。あの後警察が来て強盗が連れて行かれるところまでしっかり見届けて報酬をもらい、帰ったのだが…あまり寝付けなかった。原因はわかっている。

「グリル…か…。」

そう。その大魔導師の名前を聞いてから落ち着くことができないでいたのだ。

ヴァスティオン家の記録でその名前を見たことがあったが…しかし…それを見たのは…

「ただの魔導師じゃないのはわかってたんだけどな〜。大ってつくくらいだし。」

ため息混じりの独り言を吐き、ベットから降りる。とりあえず飯っと考えたからだ。

自分の部屋からでてリビングに向かう。そこでは部屋着のアダンが目玉焼き、トーストといった朝食らしい朝食を食べていた。

「おはよう」

とりあえずアロンの方から挨拶する。

「おはよう。大丈夫?ぐっすり寝れた?」

「いや、お察しの通り寝れてないよ。」

「やっぱりか。すげぇ動揺してたもんな。」

「…まあな。」

と返したアロンにアダンは不思議がる。

「るっせぇみたいな感じで返してこないのな。これゃよっぽどだ…で、どういう奴なんだ?グリルってのは。」

「ああ。やっぱ話とかなきゃな。別に秘密にしてたわけでもないし…。グリルは…この「千年戦争」が起こったきっかけだ。」


話を聞き終えたアダンは口を開く。

「成る程ねぇ。つまりグリルが戦争起こしてそれが飛び火しまくったと。グリルって大魔導師様は頭イカれてんのとそれだけのことを起こせる力もってたってわけね。」

「めっちゃまとめられた…まあ、そういうことだ。」

「しかしそんくらい、知識として教えてくれてもいいじゃん。」

「グリルの情報がある書物…つまりこのヴァスティオン家の記録は正式に受け継いだ時見てもらうもんだし、後短い時間でなるべく強くなってもらわにゃいかんのにいちいち千年前に戦争起こした奴のことなんて教えるかって。ましてや生きてたか復活なのか…どちらにしろ今も生きてるなんて思うか。」

「それもそうだな…」

と納得したところでタイミングよく電話がなる。仕事の依頼だろう。

「と、考え切り替えていくか。とりあえず今は仕事、仕事。」

「それでいいの?」

「臨機応変マジ大事」

いいながら電話をとったアロンは事務的な挨拶を交わした後、依頼をきき、言葉を返すのをしばらく忘れ茫然としてしまった。

慌てて引き受ける旨のことばを伝え、電話をきる。

「どうした?」

やはり疑問に思ったのだろうアダンが聞いてくる。

「えっと…この世界の中心国家って知ってる?」

「それゃ普通に…エウレスセレスだろ?…まさか…!」

「そっから依頼あったでやんす。」

「キャラおかしくなってるぞ‼︎大丈夫か!?」

「だ…大丈夫だ…。」

「まあ、そんな場所から依頼されちゃそうもなるか。で、どんな依頼だったんだ?」

「……………ユリス・セウレス姫の…護衛だ……。」

「…マジ?」

「……マジだ…。緊急性を伴う依頼だから詳しいことはあちらで話せられるらしい。それと専属護衛だから滞在することになる。恐らくしばらくここには戻ってこれないだろうな…」

「え?ってことは、俺が…」

「ああ。しばらく救済屋のヴァスティオン家代表だな。…今まで協力して依頼をこなしてく内アダンの動き、こなしかた…当然見ていたが…大丈夫。まだ7歳だが任せられるさ。」

「…そうか。おし!わかった。任せとけ。」

「よし!つっても調子のんなよ?それは正に仮の席!ヴァスティオン家の今の家主はこの俺よ!」

「ふん。どうかね?戻ってきた時…その席はすでになくなってもかもしれんぞ?」

「な…て…てめえ…なに企んでやがる…!?」

「フフッ。まあそんくらいの気持ちでいてくれ。いつ乗っ取られてもおかしくないくらいの仕事っぷりでこの救済屋の看板は保つさ。だから安心して行ってこい。」

「…おう。……ってなんで俺が励まされてるみたいになってんだ。まあ、いいか。」

そう行って荷物をまとめに自分の部屋に行くアロン。戻ってきた時には既に黒コートを着て背中に大剣「ヴァスティオン」を背負っていた。着替えなどが入ったバックを手に持ち玄関に向かう。

「んじゃ、頼んだぜ。救済屋仮代表。行ってきます。」

「ああ。任せといてくれ。そっちも気ぃつけてな。」

心配がないと言えば嘘になるがしかし、言った言葉は本心。信頼し、今は任せきることに決める。

大丈夫。アダンは強い子だ。内から溢れるその気持ちに背を押されるような気分になり、そのまま背中を向けつつ手を振り転移石をだし、依頼場所、エウレスセレスに向かうのだった。

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