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メンバー勧誘~愉快な仲間達~

 「はぁ。成る程です…。」

 ツインテールが特徴的な彼女アーミーは、リスに見た目が似ているリスもどきと一緒に秋葉からこの部活はどういうことをするのか詳しい話を聞いていた。

 「つまり、その能力やらなんやらで人を苦しめたり、困らせたりするやつらを倒そうとする部だと。」

(そして、本来の目的はそのタールって男を倒すこと…ですね。)

詳細を説明するにおいて、このリス…テンドゥの存在はかなり大きかった。

 どうやら別世界の住人のようだが…。そのおかげか、テレパシーを使っていても他者は干渉することができないのだ。テンドゥいわく、そういうのに特化した生物…らしいが、詳しいことは話してくれなかった。

 いや、話そうとはしてくれていた。が、言いにくそうに躊躇っていた時、しびれをきらしたように、アーミーが遮ったのだ。

 アーミーとテンドゥは契約というので魔力パスが通っているらしい。その、契約とやらをするとき、契約できるかどうかはテレパシーが通じるか通じないかがひとつの基準点…らしいのだがこの通り周りともテレパシーが通じている。

 そこでアーミーが他の人ともテレパシーできるなら私じゃなくてよかったじゃない。と言ったのだが、

 (契約のおかげで君を通してテレパシーをしているにすぎない)

 とテンドゥが返すことで話は終わった。

 とはいえ、これでいちいち、公園に移動する必要もなく、詳細な話ができた。

 「大まかにはそういう部活だって理解してくれるといいかな。それで…どう?ぜひ仲間になってくれると嬉しいんだけど…。」

 このテレパシーだけでもありがたいが、アーミーの存在も大きい。S級の魔力持ちなだけでなくそれを、身体強化とはいえ、使いこなせているのだ。是非ともメンバー入りしてほしいと強く願っていると…。

 「いいですよ。」

答えはあっさりと。それでいて快諾したものだった。

 「え!?ほ…本当!?ありがとう!」

 嬉しそうに笑顔になり、アーミーに抱きつく秋葉。

 そんなことされると思っていなかったのだろう。アーミーは顔が真っ赤になりながら

 「いえ、別にそんな…」

と、返しとはいえない返しをしたのだった。




 活動開始は明日から。ということで家に帰り、くつろいでいた。

 部活に入った以上、こんなゆったりした放課後はもう来ないかもしれない…。そんな感傷に浸っていると、テンドゥが疑問を口にした。

 (まさか姉さん、了承するとは思いませんでしたよ。どうしてですか?)

するとアーミーはダルそうにしながらそれに答えた。

 (あんたのせいで日常はもう十分崩れたのよ…。それなら早く元の日常に戻る方法を模索すべきでしょ。だからああいうのに関わってた方がいいのよ。能力やらで人を苦しめる奴らをなんとかするってあんたの敵にも当てはまることでしょ。)

 (あ。…姉…さん…)

 まさかの答えだった。あんなに言われてたから嫌われているのかと思ったが、どうやら自分のことも考えてくれていたらしい。

 テンドゥが少し嬉しくなっているとアーミーは突然鬼のような形相になり

 (単純に毒食わば皿まで精神もあるがな!もう、ここまで崩れたのならとことん崩らせればいい!日常に戻れぬならばあえて日常ではないものに飛び込むのも一興だろう!)

(姉…さん…!)

 キャラまた変わってる…そう思いながらアーミーを見る。契約者にして自分のマスターを。

 秋葉と話している時に言いにくいことがあったら、別の話に持っていってくれたりとどんな理由であれ、助けてくれたりもするのだ。

 (改めて…よろしくお願いします…。マスター。)

いまはただ、信じようと思った。彼女を…。荒れがちではあるけども…優しい彼女を。





 翌日の昼休み、秋葉はアーミーとティードの二人を携帯で呼び、魔能対策部の部室で昼飯を食べながらメンバー勧誘の作戦会議を開いた。

 アーミーとティードは今回が初顔合わせになる。

 ティードには昨日、やってほしいことがあったため、それを、お願いしていたのだ。

 その結果を話してもらうと共に、アーミーを紹介しておこうと、二人を呼んだのだ。

 アーミーとティードは一通りの軽い挨拶を済ませる。と、言うより、この部室に来るまでに、同じクラスだったのもあり同じ教室から来たので、そこで話したのだと言う。

 「さて、ということで、昨日、生徒会長、我らがリーダー、秋葉様から仰せ付かったご依頼の結界発表でございます。」

「え、なに?そんな感じなの?この部は。」

「ううん。違う。」

ティードの言葉にそんな感じで秋葉と接しなければならないのかとアーミーが引いていたので即座に秋葉は否定する。そんな感じの部活にするつもりは欠片もない。

 「優秀な我が教室に秋葉様の白羽矢が刺さっている人物が私、ティードとアーミーを含め実はもう一人いるのです。」

「普通に話して。」

 「…そのもう一人とは…」

 ティードのテンションがやや落ちながらもティードが調べた新しい仲間候補の発表をする。

 



 ティード達の教室の扉からそっと、中を見る秋葉達三人。

 秋葉の存在のみならず、三人の美少女が教室を覗いている状況なため、こそこそ行動しても逆に目立ってしまい、注目を集めてしまっている。

 しかし、教室がざわついても一人だけ冷静に何ら動じることなく本を集中して読み続けているか弱そうな女の子がいた。

 目元が前髪でやや見えづらいが、青色のショートカットがよく似合う綺麗な娘だった。

 秋葉は目立ってしまっているこの状況に溜め息をつきながら、その娘をみる。

 「彼女ね…。」

 そう、彼女こそ新たな仲間候補。特異な魔法を持っているという、情報を耳にいれた秋葉はティードに調べておいてくれとお願いしたのだ。

 とはいってもストーカーもどきの密着して、探るといったことはもちろんしない。

 授業中、魔法使った時の様子を見て、それが本当に特異的な力か、何処が特異的なのかの判断とと共にお願いしたにすぎない。

 結果はビンゴ。間違いなくその能力は特異魔法だった。地味で気付きにくい仕様のためか、事実かどうかを抜きにして、噂として広まっていたのはそれが理由のようだった。

 彼女の事を耳にし、一応、家系くらいの簡単なことは調べている。結果、彼女の家は由緒ある家、逆水家だと知った。

 逆水家は昔から存在する歴史ある家。魔法の研究にも余念がなく、独自の魔法技術を手に入れたと聞いたことがある。

 その家系と、特異魔法を繋ぐと遺伝性のものであることがわかる。

 つまり、彼女の力は、家系遺伝性の、逆水家にしか存在しない、遺伝性特異魔法…ということだ。

 長い時間をかけ、魔法の特異性を気付きにくくしていくよう、研究することで、簡易なようで複雑な魔法…周りからみたら普通のように見えるが実際には凄い魔法というのを作り上げたのだ。

 実際、判断するにはパッと見では気付きにくく、特異かの判断は秋葉が渡した、特異性把握するための感知に特化した魔力結晶。普通とは違う魔力反応があれば変色するというものを使うことでやっとわかったという。

 「大人しい娘ね…。」

 パッと見の印象を口にするアーミー。

 本当にその通りで、誰もが第一印象で、大人しいと言いそうなくらい、静かで落ち着きがあった。彼女の周りを綺麗に切り取れば、一枚の絵になるほどに。

 そんな娘がはたして私達の部に入ってくれるだろうか…。そんな秋葉の不安をよそにソワソワしだすティードとアーミー。

 「昼休みの時間、そろそろ終わっちゃうわよ。」

どうしたの?と聞くよりも早くアーミーが理由を語る。

 ハッとして時計を見ると確かにあと少しで昼休みが終わる時間にまで迫っていた。どうやら彼女、「逆水真澄」の様子を見すぎたらしい。

「声かけなきゃなにも始まんないし…っつーことで私が声かけてくるよ。」

言って、ティードが教室に入り、逆水の席に近づき声をかけた。

 「こんにちは。逆水さん。何の本を読んでるの?」

 対し、逆水は

 「………。」

無言で本を読み続ける。

 ティードは秋葉の元に戻り、泣いた。

 「無視された…。」

 「その程度で泣かないでよ…メンタルどんだけショボいのよ。」

「せやな。」

アーミーに言われコロッと泣き止むティード。

 感情豊かな娘だ…と秋葉は思っているとティードは気をとりなおすように口を開いた。

 「どうやら本に集中してるみたいだ…。だからまずは意識を本からをコチラに向けさせよう。」

「そうみたいね…でもどうする?本から意識をコチラに向けさせるって言ってもあの集中力。意識を向けるどころか目線を本からそらすことすらなかなか難しそうよ…。」

「大丈夫。私に考えがある。」

ティードは再び逆水に近づくと、今度は喋りかけることなく、…反復横跳びをしだした。

 「逆水さん…逆水さん…」

しばらく喋りかけるが応答がない。なんて集中力だ!と驚くがしかし大事なのは泣くことじゃない…。めげないこと!ということをついさっき学んだばかりだ。

 その学習をいかし、ティードは諦め、泣くことはなく、反復横跳びのスピードをあげた。

 それだけではない。反復横跳びを席の周りを円を描くように回りだした。

 これならさすがの逆水さんも、集中できないはず…!と思い

 「逆水さん…逆水さん…」

と語りかけるが

 「………。」

気持ちいいくらい反応がなかった。

 これでもダメか!なら…!とさらにスピードをあげる!

 そのスピードはあまりにも速く、ティードの姿をもはや視認するのが難しいほどだった。

 速い!このスピードなら反復横跳びの世界一位…いや!全一位すら狙えるだろう!ティードのその様子を見ていた周りの人達も喋るのをやめ、気付いたら手に汗を握りながら、そう思っているとティードは逆水に再び話しかけた!

 「ハァ…ハァ…さ…さか…逆水さ…っ…ハァ…ハァ…逆水さん…!」

「………。」

はい、無視、無反応、応答なし。ティードは反復横跳びをやめ、秋葉の元に戻った。

 「駄目だったよ…。努力しても無理なことはこの世にはたくさんあるってことかな…。」

 「あなた、結構な馬鹿ね。」

 「な…!言うね…。アーミーさん。ならあなたなら…どうするのかな。」

「ふん…。まぁ、見てなさいな。これが…」

 アーミーは逆水の席にティードと同じように近づき、腰を落とし、構え、足腰に力を込める。

 「真の反復横跳びよ!」

「………!!!」

ティードは驚いた。アーミーの反復横跳びはティードのそれを遥かに凌ぐスピードだったからだ。しかもそれだけではない。それだけのスピードをだしながらも決してフォームが崩れることはなく、流麗な、それでいて華麗な円を逆水を中心にして描いていた。まさにそれは教室に咲く一輪の花。

 美…というのは作品、風景、人…それだけではないありとあらゆるものにも当てはまり、美しいと感じれば使われるものだ。

 そしてその表し方もさまざまだ。いろいろなものが合わさることで奇跡と表現されたり、絵のような風景と言われたり。

 この美もまた、ただの美と表現するのは適切ではなく…。それは人に使うべき言葉ではないだろう。場合によっては激昂を買ってもおかしくない。しかし、それでもそうだとしても。これにはこの言葉こそ適切だと思った。

 そう、これは…人と人が作り出した…「作品」だ。

 本を読んでるだけなのに、その風景を切り取れば絵になる、逆水さんを中心にアーミーが周りを円を描くように反復横跳びをすることで花そのものがそこに咲いたように見える。

 この作品の名は…「花読謡」。美しくも、淡い。見た人にしかわからない美がそこにはあった。

 気付いたらティードの目には涙が溢れていた。

 「これが…反復横跳び…。いや!作品というべき美か…。」

「ただの反復横跳びでしょ。」

 秋葉のビックリするほど冷たいツッコミが終わると同時に昼休み終了のチャイムがなった。

 結局、逆水の意識をコチラに向けさせることができなかったどころかアホだこの娘達…と気付きたくなかった事実を前に片手で頭を抱える秋葉とは対照的に爽やかな笑顔で自分の席に戻っていくティード達。

 とりあえず、前途多難ということだけは理解した秋葉だった。




 放課後。秋葉はティード達と再び、逆水に会いに教室に来ていた。

 逆水はなんの部活にも入っていない。そう、聞いていたため、放課後は本を読んだりせずすぐ帰るだろうと予測していた。

 教室を覗くと…そう、うまくはいかないか。と理解した。

 教室には相変わらず本を読んでいる逆水がいたからだ。

 続きが気になったのか、いつものことなのかはわからないが…、夕暮れ時の教室に一人、集中して本を読んでいるさまは昼に見たときよりも美しく絵になっていた。

 そのあまりにも絵になっている美しい光景に感嘆の息がもれると共に、こんな綺麗な光景を毎日、見れたかもしれしれないのに、なんで気付かなかったんだろう。…。と後悔がわいてくるほどだった。

 その「絵」に見とれていると一人の男子生徒が逆水に近づいているのが見えた。

 「相変わらずだな。逆水は。本が好きすぎて仕方がない。」

男は逆水に声をかけているが、昼間に見たときと同じように逆水は反応しなかった。

 「話しかけたって反応しない。無理に決まってるだろうに。なにせ私達の反復横跳びですら、反応しないほどの集中力なんだから。」

ティードがそういうとアーミーも首を縦に「うんうん。その通り」といわんばかりに振る。 

 秋葉は確かに。とは思った。なにせあの勢いで。…なんでかはわからないが、反復横跳びを自分の席の周りをグルグル回りながらやったのだ。鬱陶しいことこのうえないだろう。大抵の人ならまず間違いなく集中が切れる。にもかかわらず彼女は気にすることなく、本を読み続けたのだ。並大抵のことではその集中力を切ることはできないだろう。

 男も、その事がわかっているのか、その後は何も喋ることなく、黙って逆水の近くの席に座り、本を一冊出して読み始めた。

 しばらく静かな時間が流れた。静か…とはいってもそれはとても落ち着くもので。心地好い静寂が教室に訪れていた。

 どうせ、今、喋りかけても反応がないだろうし、逆水に話しかけた男が一体何者なのかが気になったのもあって、秋葉達もその静寂に身をやつし、しばらく様子を見ることにした。

 十分くらいたったころだろうか。逆水が栞を本に挟み閉じてゆっくり立ち上がった。

 すると、それにならうように、男も栞を本に挟み閉じた後立ち上がった。

 「あ…。谷徳君…。いたんだ…。」

男が立ち上がったのが視界に入ったのだろう。分かりにくいが逆水は少し驚いたように声を出す。その時、秋葉ははじめて逆水の声を聞いた。

 小さい声ではあるが、芯がある、綺麗な声だ。そんな印象を秋葉が抱いていると男がおどけるようにそれに返した。

「ええ。そうですよ。話しかけても相っ変わらず、反応してくれませんね。」

 「…ごめん。本が…面白くて…。」

「いつものことじゃないですか。気にしてませんよ。さ。帰りましょうか。」

男…谷徳がそういうと、逆水はコクンと小さく頷き、谷徳の後ろについていき教室を出ようとする。

 秋葉はこのチャンスを逃すまいと声をかけた。

 「逆水…真澄さん…ですね。」

秋葉が確認するように逆水に話しかけると谷徳が反応する。

 「何のご用でしょうか。急いでいるのですぐ終わるものであるならばありがたいのですが。」

 いきなり敵意丸出しでぶつけられた。

 谷徳は逆水を守るように秋葉と逆水を遮るように、逆水の前に出た。

 「あ…そうなんですか…。えっとでもすいません、お時間いただければ嬉しいのですが…難しいですかね?」

 と、粘りながらどうする?と、仲間とアイコンタクトをとろうと、チラッとティード達の方に向くと…

 すやすやと教室の扉にもたれ掛かるようにして二人とも寝ていた。

 「いやいや!何寝てるのよ…。」

 慌ててティード達の元にかけより起こそうと体を揺らすが…。

 「………。」

 駄目だ!起きない!とりあえず一人で何とかするしか…!

 秋葉がそう判断をして、再び逆水達に声をかけようとしたとき、

 (二人とも…起きてください…。)

頭の中に声が響いた。

 「「うわぁ!」」

 ティード達はすぐに驚きながら起き上がった。

 「ビ…ビックリした…。」

「あんなに頭に声が響くものなのね…。というかあんたの存在すっかり忘れてたわ。何も喋らないし。」

(マスターの性格を考えると喋りすぎるとうるさいとか言われそうで静かにしてましたけど…。これは喋りかけるしかないなと思いましてね。こんなんじゃ今後も喋りかけた方が良さそうだと判断しましたので今後は静かにしません。)

「おお。私、体験するのはじめて。これがデリカシー?)

(テレパシー)

「テレカシー?」

(テレパシー)

「照れ隠しか。成る程な。仲間なんだから照れる必要とかないって。気にせず話しかけてきていいんだよ。」

(何、あんたの中で言葉の進化とげさせてんだよ!テレパシーや!っつってるやろ!)

「あなたうるさいわよ。静かにして。」

 (え?これ僕が悪いの?)

テンドゥのおかげで二人の目が覚めたのはいいが…一気に賑やかになった。

 秋葉は溜め息をついたあとハッとして逆水達の方に向く。

 急いでいると言っていたし、もう行ってしまったんじゃないかと思い、焦るがその焦りは徒労に終わった。

 見ると、逆水が谷徳の制服に裾を持って二人ともその場にいてくれた。

 「急いでいるのにこんな…」

 「大丈夫です…。」

秋葉は申し訳ない気持ちで話しかけるとすぐに逆水が返してきた。

 「急いでいるというのは谷徳君の嘘なので…。」

 え?と思いながら谷徳を見ると別の方向を向いて不満そうな苛立だしげな顔をしていた。

 それを逆水も見たのだろう。ムッと頬を膨らまして谷徳を見る。

 それを見た谷徳は、ハァと溜め息をひとついれて秋葉達の方向に向いた。

 「先程は失礼な態度をとってしまい、申し訳ありませんでした。」

言って谷徳は頭を下げた。

 「あ、いえ全然…!気にしないで…。」

 言いながら秋葉はどうして態度を改めたのだろうかと疑問がわいた。

 そんな秋葉を逆水がじっと見つめてきた。

 「なんの…用事でしょうか。」

 秋葉は逆水の隣にいる谷徳に目を向けると、谷徳は不満げではあるものの何も言ってこないようだった。

 「ここで立ち話もなんですからついてきてくれませんか?」

もう一押しと提案する。ここで乗ってくれれば少なくとも話はまともに聞いてくれそうだと思ったからだ。

 「わかりました。ですが…。」

逆水はすぐに了承してくれた。が、視線をあげ、自分より身長が高い谷徳を見たあと、こちらを見て

 「谷徳君も一緒についてきても大丈夫なら…という条件がありますが…」

と言ってきた。

 数ではコチラに分があり、上級生からの呼び出しみたいな形になったにも関わらず、微動だにするどころか、真っ直ぐ秋葉の目を見て話しかけてくる。

 予想を遥かに越える芯の強さに驚くと同時、頼もしさを感じた。同時、その提案を二つ返事で了承する。

 秋葉は逆水達を部室に連れていきながら確信していることがあった。谷徳は恐らく、いや、間違いなく逆水家と繋がりがある者だと。

 そしてそれは探しているメンバーの内の一人の特徴なのだ。




 「…説明は以上です。そこであなた達にお願いがあります。」

 一通りの説明をテンドゥのテレパシーを交え、目的を伝えるのも含め終え改めてお願いをしようとしたとき、谷徳が遮るように言った。

「そんな危険なことに逆水を巻き込めませんね。この話はなかったことに…」

「是非…入部させてください。」

「え!?」

今度は逆水が谷徳の言葉を遮った。

 その逆水の言葉は意外だったのか谷徳は驚き、言葉につまっていたが、すぐに疑問を逆水にぶつけた。

 「どうしてだ逆水…。お前は…」

「私は。この力で何かの役にたたないかって…ずっと考えていたの。あの家みたいに、力を隠すことばかり考えるのは…うんざりだから…」

「…けど…逆水…」

「そんなに心配なら谷徳君…私と一緒にこの部に入って。…そしたら私も安心できる…から。」

「………俺は………」

きっと彼なりの考えがあるのだろう。だから、今一踏ん切れないでいるのだ。

 逆水と素で…敬語で話していたのに途中からそれを忘れて…。いや恐らくこれがいつもの昔からの逆水と谷徳のやり取りなのだろう。本来敬語を使うほどの距離はなかったのだろう。

 そんな素が思わず出てしまうほど逆水を思っている。

 先程の確信がより強固になるのを感じた。間違いなく逆水家と関係が深い家の者だ。

 そして秘匿性に重りを置くあの家柄状、帰ろうとしたときも一緒だったりするほどに逆水に接近できる家の者は…吉寺の者だけだ。

 吉寺谷徳…この男は探していたメンバーの一人だ。探るのを後回しにしていたこともあり、なかなか掴みにくかったが。見つけることができた。

 「私からも…お願いしていいかな。吉寺谷徳君…。」

谷徳の力も特異なものと聞いたことがある。だから探していたのだが、これほどまでに逆水を思う気持ちがあるのなら人間的に悪いものではないのだろう。頼りになることもきっと多い。

 できるならメンバーの内に入ってほしい。そんな心の底からの思いでお願いする。

 「…っ!?俺の家を…なんで…!」

一瞬そうきいてきたが、吉寺はすぐその疑問をおさめる。逆水のことを知っているなら、自分のことも知っていてもおかしくないかと気付いたのだ。

 谷徳は逆水と秋葉の目を見る。

 どちらとも強い目だ。こんなに頼まれて断るとかできそうもない。

 「俺は吉寺の者。吉寺は逆水を守るためにできた家だ…。だから…。…だから逆水についていきます。」

ありがたいほどに十分な言葉と共に、仲間がまた増えたのだった。

 

 

 

 


 

 



 




 




 


 





 


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