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メンバー勧誘始動

リーブド魔法学院。その校内の一室には魔能対策部の部室がある。

 部室内は長机、椅子、ホワイトボードと簡素に物が置いてある。

 そのホワイトボードにマジックペンで文字が刻まれていた。

 [メンバー勧誘]

シンプルでわかりやすい、現状のやるべきことだ。

 「とはいってもリーダー。メンバーの目処はたってるんですよね?」

 「えぇ。もちろん。最初に言ったけど後五人いるわ。」

 「じゃあ、確認するとその五人をこの魔能対策部に勧誘することこそが今、やること。前みたいな仕事はしばらくない。ってことですか?リーダー。」

 「そうね。この前のはたまたま探知できたからちょうどいいと思ったのもあるの。だからあのタイミングで声をかけた。他の人にも同じような展開が理想なんだけど。そう、うまくはいかないから。とりあえず勧誘して、詳細をあの公園でするって感じになるかな。」

「その…タール…だっけ?は結界壊されたとか気づいて、壊したやつを探ったり、もう一度結界張るとかしないんですか?」

「しないわね。あの男は。あの結界自体は管理局のだからね。管理局が張って逐一タールに報告をする。あいつ一人じゃ、いや、ほとんどの人はまずひとつの地域を監視できるほどの結界設置なんて魔力的に無理。仮にできてもすぐ魔力が切れて結界は消えるし、集中しなければならないから監視だけで他はなにもできないと非効率。そこでバックの管理局ってわけ。一気に一地域を覆う結界を張れば意識が拡散的になるけど複数を場所ごとにわけて張ることで魔力節約と監視の両立を可能にしてる。しかも世界警察や、国営警察にばれても管理局がやっているといえば納得せざるをえない。管理局様様ね。」

 「結界判断は管理局に委ねているから、タールの独自判断じゃ張れない。複数張ってるからひとつ壊された程度じゃ動かないってことだ。」

「おかしなところに張ってあるから。いろんな理由でしかも脆いから壊される可能性ぐらいは視野にいれてる。その油断は利用できる。とりあえず、大丈夫だと理解してくれたのなら十分よ。」

 「わかりました。私達が今やることはメンバー勧誘。しばらくそこに集中すればOKってころですね。リーダー!」

秋葉はそこで今まで言いたくて仕方なかったと言わんばかりに聞いてきた。

 「その通りなんだけど…リーダーってなに?私のことを言ってるのはわかるけどその…、あの、まぁ、いいっちゃいいのよ。けど…え?何?リーダー?」

秋葉は自分を指差しながら言ってきたため、コクンと首を動かすことで肯定を示した。

 「リーダー」

ついでに秋葉を見ながら一言加えたりもした。

 「部長とか会長とか先輩とかならわかるけど…リーダー?」

「リーダー」

納得いかないのか秋葉はそのあとも何度もティードに「なんでリーダー?」ときいてきたのだった。




 ダルい。いつも思っていることを今日も隠しもせず態度にとっていた。

 ピンクのツインテールが特徴的な彼女…アーミー・マクメストはダルそうに、重そうに家に帰っていた。

 周りを見ると楽しそうなに帰りながら、学校であったことを話している。

 何が楽しいんだか…なんて思いながら帰路についていると声がした。

 正しく言うなら頭に声が響いているような…そんな…。

 呼ばれているということがわかった。正直めんどくさいけど、無視してはいけない気がした。

 ダルそうな足取りはそのままに声がした方向に足を傾けると…茂みの中に変な小動物がいた。

 (あぁ…お姉さん。声が…もしかして僕の声が聞こえているんですか?聞こえているならお願いします…助けてください…。)

 どうやらこのハムスターとリスを合わせたような…そんな生物が話しかけてきていたようだ。

 (いや、ハムスターとリスって結構似とるやろ!!!)

「………」

突然、ついさっきまでの弱々しい雰囲気がなくなり、頭に声が響いた。

(ぁ…その……あ…あぁぁぁ…その……………ここは魔法学術世界のアージェですか?)

と思ったらまた弱々しくなって質問してきた。

 (そうだけど…なんなのあなた。)

(テレパシーで返してきた!喋るんじゃなくて!?なんて適応能力だ!)

うるさ…やっぱ無視しとけばよかった。いや、無視しよう。そうすればいい。見なかったことにしよう。

 そう判断したアーミーは踵を返し戻ろうとする。

 (待って!ごめんなさい!待って!お願い!)

うざったらしい弱々しさをなくし、必死に声をかけてくるリスもどき。

 (リスになった…。)

(はぁ。なんなのあなた。キモいんだけど)

(初対面で罵詈雑言やな!この愛くるしい生物にそんな声かけてくるとかなかなかないぞ!)

(小動物自体は別にいいけど喋るとやっぱキモいってみんな思うでしょ)

(極論だわ!)

 謝ったくせにうざさが消えないリスもどきをいよいよ見捨てる覚悟をしたとき、気になることを言い出した。

 (助けてくれれば僕があなたに力を与えます…。絶対的な、凄い力を。)

目線をリスもどきに向ける。

 (僕の名前はテンドゥ。助けてほしい。いや、助けると思って契約をしてほしいんだ。)

 (契約?…うさんくさ。)

そんなありきたりな魔法少女ものみたいな展開、望んでない。

 (そんなこと言わないで。テレパシー…というより僕の声が聞こえたということは君には素質がある。僕の契約の力を君に与えることができるんだ。)

(いや、いらんし。そもそも素質って…私、成績、下の中くらいよ。あるわけないじゃない。素質なんて。第一、力とかいらんし。)

(下の中…なんで少し見栄はったの…。それ、もう下の下と大差ないし…。二回もいらんと言うとか地味に傷付くし…)

(大体、助けてくれってなによ。何からあなたを助ければいいの?…怪我してるって訳でもなさそうだし、いよいよもってわからないわ。)

(…それもそうだよね…。ごめん。説明するよ。僕は別の世界からきた。世界の名はアージェント。)

(名前が似てるわね。この世界のと。)

(それもそうだよ。この世界からコピーして創られた実験世界だもの。)

(…はぁ?)

なんだそれ。誰が何のために…って実験が目的なのは実験世界とか言ってる時点でわかるけど…いや、それでも、どうして?

(疑問はもっともだけど…ごめん。今は説明を一旦止めるよ。とにかく急いで契約して欲しい。)

 (いやいや。なんでよ。大体、話しかけてなくてもちょくちょく心の奥覗いて発言されるし、デリカシー皆無なこ…)

 (追っ手が来るんだ。もう、話してる時間がない。それに逃げない方がいいと思う。力に自信がないと言うなら尚更。)

 (…なんで?)

(僕と接触した時点で僕と契約してしまった可能性があるということで君も追っ手の対象に入ってしまったんだ。だからこの状況を打破するには契約しかない。)

こいつ…!という怒りの感情が沸き上がるが、冷静に考えてみる。

 こいつは契約に必死だ。ということは契約させるために嘘をついている可能性がある。

 つまりその追っ手とやらがこいつが仕組んだ演出、もしくはただの飼い主で話せばわかるような………え?

 思っていると、急にリスもどきが跳んできて、アーミーの身体を押し倒した。

 いや、正しく言うなら、急に、リスもどきの身体が大きくなったと思ったら、押し倒されていた。

 と、驚きもつかの間、すぐに自分の身体が立ってあった場所にエネルギー体が飛んできて、爆発した。

 (………話せばわかると思うかい?)

呆然としているとリスもどきが話しかけてきた。

 さっきまで人間のような大きさになっていたような…気のせいか?

 いや!今はそんなこと考えている場合じゃない!

 (な…なんなの!?なん…)

テレパシーで伝えることもできず、再びエネルギー体が上空で光っているように見えた。

 (っ!)

間一髪で避けることに成功する。リスもどきもアーミーの身体にしがみつくことでなんとか避けれたようだ。

 そのまま全力ダッシュでその場から逃げる。

(け…警察!!!警察ならなんとか!)

(…無理だね。強固な、僕の世界オリジナルの結界がもうすでに張られているっぽいし。警察じゃ気付けない。)

(じゃ………じゃあ!管理局!!!管理局なら!!!)

(無理だね。)

即答だった。驚きつつもなんで?と聞くようにアーミーの肩に乗っているリスもどきを見る。

 (管理局とあれらは協力しているからだ。)

「…は?」

思わず口に出してしまった。いや…だって…。そんな…。

 真っ先に可能性として浮上したのは…。

 (あなた…まさか…)

「なにもしてないよ!!!」

そう、このリスもどきが何らかの悪事を働いたという可能性だ。そっちの方がよっぽど説得力がある。

 しかし、予想以上に強く。大きな声で。口に出して即答されてしまった。

 疑う気持ちが薄れるには十分なものだった。

 (じゃあ、なによこの状況は。管理局が根回ししたの!?あれは…)

後ろをチラリとみる。

 さっき避ける瞬間にも見えていたが気にしないように必死だった。

 それは翼のようなものが生えた奇々怪々な生物だった。

 蟹が人の形をしているとしか表現のしようがない。そんな生物が手をこちらにかざし、エネルギー体を飛ばしてきている。

 それも複数。訳がわからないのも当然だった。

 (…ごめん…)

(謝るくらいなら最初から巻き込まないで!って…)

足下にエネルギー体が当たり、爆発。

 これまた間一髪で避けることに成功する。が、こけて、そのまましばらく転がる。

 「いったぁ…」

 膝に擦り傷を負い痛みが走るが、そんなことを気にしている場合ではない。

 得体の知れないものが私達を狙って迫ってきている。逃げなければ…。

 そこまで考えたところで、アーミーは急にイライラしてきた。

 何故かいきなりこんな訳もわからない状況に巻き込まれ、訳のわからない敵におわれ、そのせいで傷を負っている。

 この状況に。アーミーは怒りがわいてくるのを自覚した。

 「………っ!フフフ…ハハハハハ!」

一周まわって怒りが笑いに変わる。もうどうでもいい!こんなワケわからん状況で死ぬくらいなら、デリカシーないうさんくさいリスもどきと契約した方がマシだ!

 「ね…姉さん…?」

急に笑いだしたアーミーを心配するように声をかけてくるリスもどき。

 そんなリスもどきに射殺すような目線を向けるアーミー。

 「ひっ!」

怯えるリスもどきにアーミーは言う。

 「契約するわ。だから…力を…ちょうだい。」

 声でそれがもはや頼みではなく命令であることがわかった。

 「は………はい!」

その命令に従い、呪文を唱え、アーミーとの契約を魔力パスを通して行う。

 瞬間辺りに眩しい光が生じる。

 「あなたと僕の魔力がパスを通してつながりました!契約最終段階に入ります!」

「あの店で出てきたら速攻訴えるレベルの気持ち悪い蟹がもう近くまで来てるわ!早く!」

「わかっています!………よし!呪文が出てきた!今から僕が喋る言葉を復唱してください!それであなたに契約の力が渡されます!」

「わかったわ!」

人型の蟹の手…ハサミにエネルギーが集まり今、放たれようとしていた。

 「いきます!…キュン☆キュン☆キラキラ☆マックスドリームゥ☆フェスティバル☆キュン☆」

「キュ……って舐めてんのかてめえぇぇぇぇぇ!!!コラァァァ!!!」

放たれていたエネルギー波をブリッジをして避ける。

 その際のあまりにも恐ろしいアーミーの形相と怒気を含んだ声に再び怯えながらも応じる。

 「いえ…あ…あの…決して…舐めている訳ではなく…これが…その…呪文…なんですけど…。」

「はぁぁぁぁぁ!?今のがか!?高校生にもなってその発言を躊躇なくできたら頭のネジ何本か飛んでるとしか思えないでしょ!!!」

そんな怒り心頭のアーミーに怯えながら、しかし、決して引かず、強く言ってきた。

 「お願いします!この呪文さえ、唱えれば力があなたに渡され、この状況をなんとかすることができるんです!逆に唱えることができなければここでおしまいです!あなたは命を失うことと、この呪文を唱えて生きること、どっちがマシだと思いますか!?」

 「そんな恥ずかしい呪文唱えるくらいなら死んだ方がマシよ!」

「マジか!!!?」

 何度も執拗にアーミー達を狙ってきた、人型の蟹がまたエネルギーを灯した。

 一瞬、テンドゥは諦めの気持ちがわいた。しかし、すぐさま首を振り、自分を震い立たせた。

 まだだ。まだ何かあるはず。この状況を打破する何かが。

 自分の用いる限りの知力を尽くし、思考するがなにも浮かばない。

 それでも、考える。死ぬその瞬間まで諦める気はない。

 そんなテンドゥをよそにアーミーは溜め息をついて言った。

 「って思ってたけど気が変わったわ。呪文、強烈過ぎたから覚えてるし、唱えるわね。」

「え!?」

 自分一人なら、打破する条件がそんなふざけたものとわかれば諦めていただろう。

 元よりそこまでして生きたいと思わない。もちろん、死は怖いし、可能な限り逃げるが、逃げたらなんとかできるという状況ならまだしも、これはそうじゃない。

 惰性で生きている。そんな自分だ。ここが諦め時。そう思ってたけれど。

 このリスもどきは最後まで生きようと必死だった。端から見てもちょっとしか接してなくてもわかるほどに。

 そんな奴が自分のせいで死んでしまったとなったら…気分が悪いじゃないか!死んでも死にきれない!

 そんな思いと共に、彼女は、アーミーは呪文を唱える!

 「キュン☆キュン☆キラキラ☆マックスドリームゥ☆フェスティバル☆キュン☆!!!」

(いや、かっこつかないにもほどがあるでしょ!)

 唱えながら、早くも胸の内が後悔で一杯になったがもう遅い。

 契約成立という言葉が頭に響いたかと思うと、自分の身体が光に包まれ、服装が変わっていく。

 やがて光が淡く消えていくと、アーミーの服装が変化し、制服のものからフリフリのピンクの衣装になり、手には魔法のステッキと言わんばかりのものを握ってた。わかりやすくまとめるなら…魔法少女という表現が一番合う姿になっていた。

 「…マジか…。」

恥ずかしい。恥ずかしすぎる。まさか、呪文だけでなく、服装まで恥ずかしいものとは。しかもなんだこのステッキ…。

 そんな感想を抱き、みるみるうちに後悔のゲージが上がっていくのを感じた。

 ふと、気づくとリスもどきがアーミーを見つめ…いや、頬の赤みから見とれていることがわかった。

 「…なによ。」

 「あ!いえ…その…口調や、気だるげな感じで気づかなかったですけど…その…」

 煮え切らない感じだ。なんだろう。似合ってないならないで早く、スパッと言って欲しい。似合ってない自覚はしているのだから。だから尚更恥ずかしいのだ。

 「め…メチャクチャ似合ってます…。可愛いです…その…凄く。」

 「………」

 アーミーは顔が赤くなるのが自分でわかった。

 「な…こんな時に何を言って…!」

 と言ったところでふと気づいた。

 人型の蟹がエネルギーを灯しているのを確認してからしばらくたつ。しかしそのエネルギーの衝撃がまだ来ていない。

 そして危機的状況にも関わらず、このリスもどきの見とれているなんて余裕な反応。

 どうして…。純粋な疑問がわき、人型の蟹がいる砲口を向くとエネルギーの灯りが消えたハサミをこちらに向けていた。

 それを確認したところでテンドゥは言った。

 「大丈夫です。変身中はダメージをくらうことがないよう、S級の魔力防壁が張られていますから。そしてそのS級の魔力が今、あなたの力になっています。」

 「え…S級のって…!?大魔導クラスじゃない!」

驚くのも無理はない。S級の魔法ランクになるには努力では不可能な領域。たぐいまれなる才を持つ者達からさらに厳選し、死ぬほどの努力をしても無理なのではと言われるほど。

 S級なんて創始者と呼ばれる超存在と肩を並べるほどの幻の都市伝説みたいなものだ。

 その事を考えると半ば信じられず、呆然としていると、エネルギー波が効かないと思ったのか人型の蟹が高速でせまり、ハサミを振り、アーミーを切り裂こうとした。

 ヤバい!咄嗟にそう思ったが

 「大丈夫です!今のあなたには力がある!ステッキを!そのステッキを振ってください!」

はっとする。そうだ。今の私にはS級…大魔導クラスの力がある。今までの鬱憤を晴らすには十分すぎるほどの力が。

 どんな魔法がでるのだろう。この危機的状況に、むしろワクワクする。なにせ、自分では扱ったことがない、扱えるはずがない力が振るえるのだ。どんなに才がないからとか、力なんかいらないとか言っていてもやはり手に入れば嬉しいのだ。

 「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

くたばれ!偽バ○タン!そんな思いで今までの鬱憤を晴らすように、ステッキを振るうと…ステッキがあたると同時に鈍い音がなり、人型の蟹は空の彼方まで飛んでいった。

 「…………………は?」

やだ…イメージと全然違う…。そう思いながらチラリとテンドゥの方を見る。

 目があったテンドゥはニコッと柔らかい笑みを浮かべる。

 どうです?その力は。素晴らしいでしょう。

 テレパシーをされていなくてもテンドゥの今考えていることが伝わってくる。それほどの笑みだ。

 ニコッとアーミーも笑みを返しつつ言う。

 「ちょっとこっち来いや。」

 テンドゥはえ?なんで?と言わんばかりの表情をしてアーミーに近寄る。

まだ、敵は残っている。依然として危機的状況には変わりない。しかし、それでも。そうだとしても。どうしても。どうしても聞きたいことがあったのだ。それを近寄ってきたテンドゥに言った。

 「おかしくない?」

 「え?なにがです?」

さっき浮かべていた表情のまんま、口にして来たテンドゥに、にこやかな笑みで返す。

 「女の子なの。私。」

「もちろん、わかってますよ。こんなに可愛らしいんです。言わなくても女の子だってわかります。」

「ふーん…。じゃ、聞きたいんだけど私の力ってなんなの?」

 「身体強化ですね。」

「おかしいでしょ!!!!!筋力強化って…おま…要するに、身体強化の類いじゃない!見てよこのステッキ!…へし折れてるわよ!明らかに説明に『人に向かって振るってはいけません』とか書かれてるやつでしょ!」

「な…なにをそんな怒って…。この契約はあなたの最も素質があるものを限界突破して引き出せるんです。その結果があなたは身体強化魔法だったってだけで…。」

「なにその悲しい事実!身体強化って…魔法の才がない、男がよく使う魔法…基本魔法のひとつで…言っててさらに悲しくなってきたわ…。」

「あの…なんかすいません…」

「いいわよ…もう。私こそカッカしちゃってごめんなさいね…。あなたは悪くないわ…。才がない私が…悪いの…」

おもむろにステッキを地面に叩きつけ、

 「そしてこの状況にした貴様らも大概だ!吹き飛ばすと共に存在すら視認できないほどの塵芥にしてくれよう!!!」

「姉さん、キャラ変わってます!」

まだ、十体はいる人型の蟹の集団に突撃し、怒りのまま、暴れた。

 さすがS級とでも言うべきか…。アーミーが突撃して五分もたたぬうちに結界ごと人型の蟹全てを吹き飛ばし、消し飛ばしたのだった…。




 けたたましいアラームの音と共にアーミーは目が覚めた。

 ガバッと思いっきり起き上がると共に現実を認識し…安心した。

 「なぁんだ…ただの夢か…。」

 (おはようございます。お姉さん。)

 おかしいとは思っていただのだ。いきなりあんな状況になって、わけわからん蟹に襲われてS級の身体強化とか女の子らしくない力が手に入ったり、魔法少女みたいな恥ずかしい格好をしたり、キモいリスもどきとあったり…意味不明なことだらけだったが…

 「夢なら納得ね。そりゃわけわからんわ…。」

(あの…姉さん?おはよう…)

クスッと小さく笑い、気をとりなおす。

 「さてと。いつまでも変な夢に囚われてちゃいけないわね。これから超がつくほどダルい学校が待っているのだから…気合いいれないと。」

 (おーい。姉さーん。)

 いつもなら重い足取りもあの夢に比べたらマシな現実のお陰でちょっとだけとはいえ…軽く感じる。

こんな気分ははじめてだ。全く…たまには夢も役にたつじゃないか。なにせあの夢のお陰でなんの変哲もない代わり映えしない退屈な日常に幸せを感じるのだから。

 こんなことなかなかない。ある種、貴重な経験をしたと言える。

 いつも通りの朝。準備をして、学校に向かう。

 「いってきます。」

 (待って。姉さん…!)

 玄関の扉を開けると驚くほど眩しい朝日がで迎えてくれた。

 いや、きっとこれは毎日あったことなのだろう。今まで日常というのにダルさを感じ、あらゆるものに興味を示さなかったから。気づかなかったのだ。

 そうだ…!世界って言うのは…ちょっとしたことでこんなにも明るく感じることができるんだ…!

 一歩一歩歩くのを噛みしめ、楽しい気分で学校に向かう。今日は良いことがありそうだと…希望を感じながら。




 「リーブド魔法学院高等科二年アーミー・マクメストさん。あなたにお願いがあります。」

 放課後。学校のとある一室で。ホワイトボードには「魔能対策部」と大きく書いてある。そこで、学園のアイドル的存在、生徒会長の天鼓秋葉に呼び出され、一枚の写真を見せられる。

 その写真はピンクのヒラヒラ、フリフリの可愛らしい、魔法少女のようじゃ姿をした人が複数の人型の蟹をボコボコにしているものだった。

 「この力を、この部に…魔能対策部に貸していただけませんでしょうか?」

そのあとも秋葉はいろいろ言ってきたが…その話の内容よりも事実を強制的に突きつけられたことで頭が一杯だった。

 頭の中の自分はただ一言だけこの事実を前にして口にした。

 「うん…知ってた…。」

 



 



 






 

 




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