人間ではないものとの邂逅
何もない…といってもおかしくはない、そんな平野で身の丈はある細身の大剣を背負った黒のフード付きのコートを着た十八歳くらいの男が歩いていた。
周りを見渡しながら歩いていたがふとその足が止まった。
目の前にこの世のありとあらゆる色を凝縮し、虹のような色彩にして球体にしたものがあったからだ。
いや、この世全ての色だけではなく世界には存在しないと断言できるそんな色すら含んである。
奇妙。そんな感情はでてこない。それを見つけた時中からでてくるものを待たなければならない。という義務感が胸に広がりただそれに従う。
この球体の色名は現色という名前であることも何故かわかる。何故かと形容はしても何故かということに疑問など一切おきない。
やがて亀裂が球体に生じそこから人間の赤ん坊としか思えない存在がでてくる。球体はそのまま霧散して消えていく…
その赤ん坊の体はブランケットに覆われていた。
これは人間ではない。そう確信できたがこの子を育てなければならないという義務感が生まれ再びそれに従った。
こんなところにいたのは依頼されたから。
救済屋という助けることを主とする仕事をしているアロン・ヴァスティオンの元に戦争によって居場所を失った人達から戦争跡地に行って人がいないか…また物などあって使えそうなものがあれば回収してほしいというもの。
戦争跡地とはいえまだ魔法兵がいてもおかしくはない。アロンはそれを引き受けこの荒野にきた。
この荒野は戦争がある前は大都市と呼ばれるほど栄えた都市だった。しかし戦争によって何もないという表現をせざるをえないほどの有様になってしまっていた。
その元都市に住んでいた人々の集まっている場所にアロンは報告に戻る。
テントがいたるところにはってあるその場所で皆の代表として依頼した依頼主を探しだし結果を言う。
「依頼された行方不明者の捜索ですが…この赤ん坊以外は何も…」
こういう報告は未だ戦争が終わっていない今、頻繁に依頼され、そのたびに口にすることになる結果。
この戦争がおこり千年…いくらなんでもおかしいほど続いているこの戦争は終わる気配が全くない。
アロンの家系ヴァスティオンは代々救済屋という仕事をやっているがこの千年は戦争に関するものがほとんど…記録されている仕事履歴にはそういうのばかりであり、戦争がはじまる前までのある種微笑ましさすらあったような依頼は…平和そのもののようなものは全く見られなかった。
「そう…ですか…ありがとうございます……………ところで…その赤ん坊は…?」
依頼主は弱々しく感謝の言葉とやがて驚きに満ちた表情で疑問を口にする。
わかるからだ。見ただけでこの赤ん坊が人間ではない何かだと。人間の形をしているにすぎないものだと…。誰もが自分の子ではないと調べるまでもなく答えることも…。だからこその疑問だった。
「この子は…依頼指定場所で見つけた子で…自分が育てようと決めた子です。」
その答えはキャンプ場を静かにするには充分すぎるものだった…




