表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

チーター

勢い任せに初投稿。後悔していない。

吾輩はチーターである。


どこにでもある学校の、とあるクラスがある日まるごと異世界召喚に巻き込まれた。

日本ではわりとよくある話。主に創作の中で。

神を名乗る爺さんに「今から剣と魔法のファンタジーな異世界に転生してもらいます」って言われて、

泣いたり笑ったり、ガッツポーズ決めたりとクラスメートの反応は様々で。


自分がどうだったのかは思い出せない。

無理やり地球の暦に合わせるなら、転生してから少なくとも5年。

意識が覚醒するまでにどれだけかかったのかは不明。

少なくない時間の経過のせいか、記憶があいまいになっている。


ちなみに、転生の際に特典、すなわちチートを自由に選ばせてくれたり~という展開はなかった。

現地人よりかなり強いはずなので、遠からず訪れる侵略者――邪神群――から世界を守ってほしいとか何とか。

基礎的な身体能力と現代知識チートで頑張れ、ということなのだ、と解釈した。

あと、転生者は特殊なスキルに目覚めやすいらしいから、現地人から見ればやはり破格なのだろう。


兎にも角にも自分が生まれ変わったこの世界は、神様の言葉どおり、とてもファンタジーだ。

現代日本の暮らしに慣れた自分にとっては、なかなかに生きづらい世の中である。

ついぞ日本ではお目にかかれないような大森林に住まい、見たこともない獣や草を口にして飢えをしのぐ。

転生したクラスメートたちは無事にやっているだろうか、などと、

空に浮かぶ紅い月を眺めて思いに耽る夜もある。



吾輩はチーターである。名前はまだない。

チーターと言っても、チートに目覚めたからチーターなのではない。

文字どおりの意味で……チーターに転生してしまったのだ。ネコ科である。

趣味は爪とぎ。あ、あと足とか速いで。チョー速い。木登りもバッチリや。

……って、おかしーやろ、これ、責任者出てこんかい!!



現地人より強い? 魔法が使える?

それがどないしてん! 現地人なんかおらへんがな。

魔物を現地人とか言うの止めーや。詐欺やで、これは。

魔法? がおーとしか言われへんわ。チーター舐めんな。


三歩も歩けば魔物に当たる。どいつもこいつもめちゃめちゃ強い。

ワイの爪とか牙とか、まるで歯が立たんのや。牙やけど。

んで、動物を諦めて草を食ったら、これがまた超マズイ。さらに臭い。毒草的や。

シャレちゃうねんで、これ。そこらに生えてる雑草までガチで殺しにかかってきよる。


ドラゴンに丸焼きにされかけたり、木の上で眠ろうとして樹のバケモンに襲われたり、

水場見っけたと思たら、どえらい大きさの魚に丸呑みにされかけて、

泣く泣くトンズラこいたのも一度や二度やない。

ファンタジー言うといたら何でもありとか思っとんのか、ワレ!


そうそう、山みたいになっとるとこに登ってみたことがあってん。

どうやって登ったんかは堪忍な。思い出しとうない。

でも、ほら、自分が置かれた状況を把握すんのは、こういう展開やと重要やろ。

情報を制する者は世界を制す、ってな。


なあ、どんな気持ちやと思う?

見渡す限り森、森、森。海どころか地面が見えへんのよ。

森と空がつながっとるって、めちゃめちゃ広いやんけ、ここ!

そんな魔境のど真ん中に生れ落ちて、ワイにどないせいっちゅうねん。


あれ見てつくづく思たな。こんな世界、滅びてしもたらええねん、って。

森から脱出できたらチャンスあるんとちゃうかって期待しとったけど、心折れたわ。

多分やけど、ワイはこの世の誰よりも邪神さんに降臨してほしいって思とる。

お祈りかて毎日欠かしてへんで。まあ、お供えもんは堪忍な。

自分のおまんまだけで精一杯や。

……邪教徒どころかほかの人間に遭うたことはないけど。

なあ、邪神さんや。ちよいと早めに降臨してくれてもええんよ?


……ほかの連中、どないしとるんやろ?

ワイよりひどい状態から始まっとると、生きてられへんと思うんやが。

邪神なんかと戦わせるゆーんやったら、もちょっとこう、気ぃ利かせてくれんと、

本番前にみんな死んでしまうで? わかっとんのかいな、神さん。


なんか愚痴になってしもたな、すまんかった。

最近ほかの魔物の食べ残しとかしか食うてへんし、

これじゃハイエナや、チーターやない。

はて、ワイは一体誰としゃべっとるんやろう?

……寂しいんよ。生まれてこの方、誰とも話せてへんのや。 


……なあ、神様、最期に一つ教えてくれやしまへんか?

この森、自分以外にネコ科の生き物がおらんのやけど、

ワイはどうやって生まれてきたんや?

いくらなんでもこの転生はあんまりやで。手ぇ抜きすぎや……


もう疲れたわ……ハラ減った……おとん、おかん、かんにんや、で……

おやすみなさい……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ