表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

2.地団駄踏男の解放


「仕方ない」と決め込むのはまだ早い。


地団駄踏男(じたんだふみお)は目が覚めると、牢獄に居た。


「確か俺……死んだよな」


トイレの爆発に巻き込まれて、何者かに爆殺されたのだ。肉片が飛び散り、引き裂かれる様な痛みが全身を襲ったので、鮮明に覚えている。


「そうか」


踏男は気づいてしまった。自分が世紀の大発見をした事を……。


「あの世か」


天国か地獄は分からない。ただ、自分はあの世にいるのだと悟った。現世でこの体験を本に書けば、大ベストセラー作家として大儲け出来るだろうと踏男は思った。


ただ、目の前の鉄格子を見る限り、天国では無いという事が容易に想像が出来る。


「そうだよなー」


現世で散々法律を違反したのだ。地獄に来て当然だと思う踏男であった。


その時だった。看守が鉄格子の鍵を開けて、牢屋の中に入って来たのだ。


「やっとお前も出所か」


「へ?」


「20年間も拷問に耐えたのはお前だけだよ」


「社会という名の拷問でありますか?」


「何を言っとるのだ。さっさと外に出ろ」


手錠を外され、訳が分からないまま牢屋から放り出された踏男。


「もう殺人なんかするなよ」


看守の奇妙な物言いに寒気がした踏男は、取り合えず街の散策に乗り出した。


中世ヨーロッパに近い街並であるが、それにしては文化が発達しすぎている。


そして、魔法使いとおぼしき人物が至る所にいた。彼らは、フードを深く被り、背丈ほどのある杖を持って移動している。


今風に例えると『いかにも系魔法使い』だ。


「ファンタジーだな」


どうやら自分は魔法の世界に迷い込んだらしい。そう思った踏男は、宿屋を探した。ファンタジーには宿屋が付き物だと言う事は、無知の踏男でも分かるのだ。


しばらく歩いていると、『宿屋ザンドール』という看板を発見。踏男は木製のドアを開けて、宿屋の中に入って行った。


「いらっしゃい」


踏男は、厳ついゲルマン系の髭親父に声をかけられた。


「あのー」


おそるおそる口を開いた踏男。


「どうかしたかい?」


「つかぬことをお聞きしますが、ここは何処ですか?」


「宿屋だよ」


「そうじゃなくて……この街は?」


「あんた頭でも打ったのかい?」


「はい。そんな感じです」


「じゃあ、教えてやるよ。ここはゼフィランサスという街だ」


ゼフィランサス。少なくとも、踏男には聞き覚えの無い街だった。


「………………」


「用件はそれだけかい?」


「はい、ありがとうございました」


踏男は店を後にした。


名前も知らない街で不安になる一方、全てから解放されて第2の人生を歩む充実感もある踏男であった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ