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第六章 泣くしかなかった夜
それからの僕は、強くなんてなれなかった。
夜になると、理由もなく涙が出た。眠れず、食べられず、ただ時間だけが過ぎていく。
職場では平静を装いながら、帰り道では心が折れていた。
そして僕は、酒に逃げるようになった。
酔えば少しは楽になれる気がした。考えなくて済む気がした。だが現実は逆だった。
酔うほどに心はむき出しになり、自暴自棄になっていった。
「もうどうでもいい」
そんな言葉を、何度も心の中で繰り返していた。
自分の体も、未来も、大切にする気力がなくなっていた。
毎日、泣いていた。
楽しかった思い出を思い出しては泣いた。
嬉しかった記憶を辿っては泣いた。
辛かった場面を思い出して泣いた。
悲しかった出来事を思い出して、また泣いた。
僕の中にあった家族の記憶――喜びも、苦しみも、愛しさも、後悔も――そのすべてが、涙になってあふれ出てきた。
止めようとしても止まらなかった。
泣くことでしか、自分を保てなかったのだと思う。
「生きていく自信がなくなった」
そんな言葉が、自然に浮かぶほど、心は疲れ切っていた。




