表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の物語― それでも、前へ ―  作者: シロイルカ
第三幕 ネバーエンディングストーリー
23/25

第四章 初めての涙

その日は朝から憂鬱だった。

数日前から気持ちが落ち込み、毎晩のように飲みに出ていた。

仕事をしている最中、突然、涙が溢れてきた。

ぽろぽろとこぼれ落ちる。

自分でも止めることができなかった。

すすり泣くわけでも、嗚咽するわけでもない。

表情は変わらないまま、ただ目から涙だけが流れていた。

近くの同僚が心配そうに声をかけてくれた。

僕はろくに返事もできず、

「今日は、ちょっと辛い日みたいです」

そう答えるだけで精一杯だった。

薬を飲み、しばらくすると気持ちは少し落ち着いた。

気分は最悪だったが、仕事は何とか続けられそうだった。

仕事を終えて家に帰る頃には、僕はひどく弱気になっていた。

もう家族には会えないかもしれない。

そんな思いが、心を覆っていた。

だからだろう。

担当してもらっている弁護士にメールを送った。

いつもお世話になっています。

最近少し弱気になっていまして、家族に会えるのかという不安が大きく、辛い状態にあります。

先生から見て、僕が子供に会えなくなる可能性はあり得そうなのか、お聞きしたくて連絡しました。

お手すきの時にお返事いただければ幸いです。

返事はきっと明日くらいに来るだろう。

そして内容も、励ましてくれるようなものだろう。

そんな軽い気持ちで送ったメールだった。

しかし、返ってきたのは意外な内容だった。

「会える可能性は高いです。」

理由も書かれていた。

その日、裁判所の調査官から電話があったという。

通常は調停の前に連絡が来ることはないらしい。

しかし今回は状況が特殊で、異例の対応だったようだ。

裁判所は、妻が精神的に不安定で働けていない状況の中、本当に三人の子供を育てていけるのかを心配しているらしかった。

そのため、双方の担当弁護士に確認を取っているとのことだった。

僕の担当弁護士は、こう伝えてくれたという。

妻は精神的に不安定で、鬱の状態に近かったこと。

僕が積極的に育児に参加してきたこと。

僕の支えがなければ育児は難しかったこと。

誰かの助けなしでは子育ては困難だということ。

そして僕が、子供たちがきちんと学校や幼稚園に通えているかを心配していること。

何よりも、早く面会交流をしたいと願っていること。

その結果、調査官も

僕と子供たちの縁を切らせてはいけないという思いを持っているようだ

という話だった。

だから、子供に会える可能性は高い。

そう書かれていた。

僕はそれを読んで、声を出して泣いた。

今までの我慢も、苦しさも、全部吐き出すように。

抑え込んできた感情が、一気に溢れ出した。

声を上げて泣いた。

泣いていたけれど、その時の感情は悲しみではなかった。

嬉しさだった。

初めてだった。

嬉しくて涙を流したのは。

子供たちが生まれた時は、感動や妻への感謝の気持ちの方が大きかった。

けれどこの時は違った。

子供に会えるかもしれない。

その希望が、胸を覆っていた暗闇を押しのけていくのを感じた。

歓喜だった。

感情が爆発したように、僕は泣き続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ