第三章 変化
その日からだったのかもしれない。
僕は、少し変わってしまった。
これまでの僕は、職場では明るく振る舞ってきた。
冗談を言い、空気を和ませ、
どんなときでも前向きな顔をしていた。
職場にいる時間だけは、
家のことを考えなくて済む。
それが、唯一の救いだった。
だが、今の僕は違う。
明らかに元気が出ない。
仕事はこなしている。
ミスもしていない。
求められたことは、きちんとやっている。
それでも、どこか空っぽだった。
笑おうとしても、笑いきれない。
言葉が少し遅れる。
リアクションが半拍ずれる。
自分でも分かるほど、
僕は変わっていた。
どんなときも、家族のことを考えてしまう。
会えない子ども。
届かない想い。
進まない話し合い。
仕事中でも、移動中でも、
ふとした瞬間に胸が締めつけられる。
「今、何をしているだろう」
「元気だろうか」
「僕のことを覚えているだろうか」
考えないようにしても、
思考は勝手にそちらへ向かう。
以前は、仕事が僕を守ってくれていた。
今は、その盾が薄くなった。
無理に明るく振る舞うことを、
どこかでやめたのかもしれない。
強がることに、疲れたのだと思う。
変わったのは、環境ではない。
周囲でもない。
変わったのは、僕の内側だった。
前を向いている“つもり”で、
実は立ち止まっている自分。
それを、はっきりと自覚した。
これが、僕の中で起きていた小さな変化だった。
明るかったはずの僕は、どこかへ消えていた。
この時はとても苦しくて辛くて悲しかった




