第二章 停滞
前回の一件以降、弁護士からの連絡に進展はなかった。
向こうに話し合う意思があるとは、とても思えない。
そんな手応えだけが残っていた。
担当弁護士は言った。
「なるべく繋がりを持たせる手立ては考えます」と。
だが、その“繋がり”は、
写真のやり取りや、手紙の交換といったものだった。
画面越しの笑顔。
紙の上の文字。
それは確かに、ゼロではない。
だが、父親として求めているものとはあまりにも違った。
子どもに会えない。
その事実が、じわじわと僕を覆い隠していった。
子どもに会えない。
かすかに見えていた希望の光が、音もなく消えかけていく。
もう、真っ暗だった。
子どもに会えない。
その言葉を心の中で何度も繰り返すたび、
生きていく自信が削られていく。
もう沢山だ、と思った。
僕は十分に頑張ってきたはずだ。
理不尽を受け入れ、
感情を抑え、
法律に委ね、
冷静であろうとしてきた。
それでも、何も動かない。
辛い。
あまりにも辛い。
その日は、仕事も手につかなかった。
返事はどこか上の空で、
何をしていても思考がまとまらない。
目の前の資料を見ているのに、
頭の中では別の言葉が何度も反芻される。
「子どもに会えない」
同僚や上司も、きっと気づいていただろう。
覇気のない返事。
焦点の合わない視線。
心配してくれていたと思う。
だが、その思いに応える余裕すら、
その日の僕には残っていなかった。
何も進まない。
何も動かない。
時間だけが過ぎていく。
それが、いちばん残酷だった。
これが、停滞という名の闇だった。




