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第五章 吐露
弁護士との打ち合わせを終え、数日が過ぎた。
現実は淡々と進んでいるのに、僕の心だけが取り残されているようだった。
気がつけば、考えているのはいつも子どもたちのことだった。
初めて生まれてきた日のこと。
小さな体を抱いた瞬間の、あの震えるような感覚。
初めて歩いた日の、誇らしげな顔。
夜泣きで眠れなかった日々。
寝かしつけるために、おんぶ紐で背中に乗せ、夜の静かな道を歩いた時間。
入園式の日。
卒園式の日。
入学式の日。
参観日。
親子遠足。
どれも幸せで、かけがえのない思い出だった。
しかし――
どれも、もう過去形だ。
リビングに飾られた家族写真を見るたび、胸の奥が重く沈む。
笑っている自分。
隣で笑う妻。
無邪気に並ぶ子どもたち。
あの一枚の中には、まだ壊れていない世界がある。
写真の中では、僕は父親でいられる。
だが現実では、その場所に立てない。
いくら自分に言い聞かせても、
いくら強がっても、
いくら「仕方がない」と飲み込もうとしても、
現実は変わらない。
気を抜いた瞬間、孤独は静かに襲ってくる。
抗える日もある。
打ち勝てる日もある。
だが、いつもではない。
夜になると、部屋の静けさがやけに広がる。
時計の音だけが響く。
孤独だ。
家族に会いたい。
日常に戻りたい。
ただいまと言える家に帰りたい。




