第一章 ごく普通という名の始まり
はじめに
人の人生は、順風満帆な時よりも、むしろ傷ついた時にこそ、その人らしさが現れる。
この本は、僕という一人の人間が、愛し、信じ、裏切られ、それでもなお生きようとした記録である。誇れる過去ばかりではない。迷い、怒り、涙し、立ち止まった時間も、すべて含めてここに残す。
これは成功談ではない。
「壊れたあと、どうやって立ち上がろうとしたか」――その物語だ。
僕は、ごく普通の家庭に生まれた。特別でもなく、恵まれすぎてもいない、本当に平凡な家だったと思う。
幼少期の自分を一言で表すなら、「元気で活発、そして勉強嫌いな普通の子ども」だった。
外で走り回るのは好きだったが、机に向かうのは苦手だった。何かに必死で打ち込んだ記憶もあまりない。夢中になれるものを探すより、その日その日を感覚で生きていたように思う。
それでも不思議と大きな問題は起こさず、流れに乗るように成長していった。
高校受験も、必死に努力したというより、気がつけば入学できていたという感覚に近い。壁にぶつかった記憶もなく、良くも悪くも「普通」のまま高校生になった。
高校では部活動に打ち込む中で、今の仕事につながる分野に興味を持つようになった。最初から深く考えていたわけではない。ただ「これなら自分にもできそうだ」と感じたのが正直な理由だったと思う。
そして卒業後、そのまま就職した。
就職してからは人並みに努力もしたし、任された仕事はそれなりにこなしてきたつもりだ。ただ、当時の自分には“生きがい”と呼べるものはなかった。
働いて、給料をもらって、生活する。それだけの毎日で、「何のために生きているのか」を深く考えることはなかった。
そんな僕に本当の意味での転機が訪れたのは、結婚してからだった。
家庭を持ち、子どもが生まれたとき、初めて人生の意味がはっきりと見えた。
守るものができた瞬間、仕事の意味も、毎日生きる理由も変わった。
家族の存在が、僕に“生きがい”というものを教えてくれたのだ。




