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第66話 チョコ交換

 食事を終え、キッチンで洗い物をしていた透子の背後から、柚月の声が飛んできた。


「チョコレート食べましょ。コーヒーもお願いします」


「かしこまりました」


 洗い物の手を止めて、透子は丁寧に手を拭き、コーヒーの準備を始める。その間に柚月が小さなテーブルの上を整え、チョコレートを広げる準備をしていた。


 湯気の立つコーヒーを2人分入れてリビングへ戻ると、柚月はわくわくした表情で待っていた。


「それじゃあ、交換しましょうか」


 まず透子が取り出したのは、袋に入ったチョコレートビスケットのファミリーサイズ。


「こちらが私のおすすめ、アル〇ォートです。ミルクチョコの定番のほかに、ファミリーサイズにはリッチミルク味が入ってるんです。私はこのリッチミルクが特に好きで」


「えっ、それ知らなかった! 普通のは食べたことあるけど、リッチミルクって……まずは普通のから!」


 柚月が勢いよく袋を開け、通常のチョコを手に取ってぱくり。


「うん、やっぱり間違いない。安心の味!」


 次にリッチミルクを一口食べた瞬間、目を見開いて声を上げる。


「ん〜! これ、すっごい美味しい! こっちのほうが甘くて好みかも!」


「気に入ってもらえてよかったです」


「こっちだけのも出してくれたらいいのに」


「でも、なぜかこればっかり続けて食べてると、普通のも食べたくなってくるんです」


「なるほど、交互に食べるのが最強?」


「私はそうやって食べてます」


 笑い合いながら、チョコとコーヒーを交互に口へ運ぶ。


「じゃあ、私の番!」


 柚月が差し出してきたのは、誰もが知るキャラクターが描かれた小さな箱のパッケージ。


「チョ〇ボールです。実は金のエンゼル狙いでずっと買ってるんですけど、まだ一度も当たったことなくて」


「それはなかなか根気がいりますね」


「でも美味しいので全然苦じゃないんです。むしろ毎回ちょっとワクワクできて楽しくて」


 透子もひと粒つまんで口に入れる。


「やっぱり美味しいですね。高級なチョコにはないチープさと、あのエンゼルのワクワク感がいいですよね」


「そうそう! 私、新しい味が出たらつい買っちゃうんですけど、結局このピーナッツが一番おいしくて」


「手軽にどこでも買えるのに、こんなにおいしいなんて恵まれてますね」


「ほんとですよ。ありがたい……」


 しばらく、二人はチョコをつまみながらのんびりとした時間を過ごした。


 やがて小休止のタイミングを見て、透子が立ち上がる。


「では、そろそろお仕事に戻りますね」


「え〜、もっと話しましょうよ」


「これ以上はさすがに……」


「お約束で言っちゃいました。お願いします!」


 柚月が笑顔で手を振る。透子は名残惜しそうに頷きながら、後片付けに向かう。


 その背に、柚月の声が再び届いた。


「春野さん、次のお題ありますか?」


「本当はピーナッツチョコにしようと思ってたんですが、今日出ちゃったので……」


「じゃあ次は、ギャンブル回! 美味しそうだけど食べたことのないチョコにしましょうよ。これを機に新しいの開拓!」


「気になってたけど食べてなかったチョコを選べばいいんですね。わかりました」


 そんな会話を交わしながら、また一歩ふたりの距離が縮まった。


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