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第48話 大会の余韻

 一試合見終えただけで、透子は思わずタブレットを伏せた。


(疲労感がすごい……これを五試合も見るの、なかなか大変かも)


 実況の盛り上がり、画面の情報量、目まぐるしく動くカメラワーク――。どれもが新鮮だったが、向き不向きがあるのも事実。透子にはFPS観戦は少しハードだった。


 でも、頑張っているみんなを応援したいという気持ちは変わらない。


 彼女はタブレットを横に置き、音量だけを大きめにして配信を流しつつ、掃除を始めることにした。配信画面はリビングの端にある棚の上に設置し、目に入らないように工夫する。柚月のチームに関する話題が出たときだけ、ちらりと画面に目をやる。


 掃除をしながらも耳は実況に集中していると、たびたびTeam YMKの名前が呼ばれた。いい動きをしているようだった。


「Team YMK、今日も落ち着いた立ち回りですね」

「スクリムより確実に連携がよくなってる!」


 そんな言葉を聞いては、透子は思わず口元を緩める。


(うん、ちゃんと努力が実ってるんだ……)


 キッチンの片付けを終え、洗濯物を畳みながらふと視線を画面に向けると、ちょうど第五試合が始まる所だった。


「さあ、最終戦が始まりました。ここまで中堅チームとして粘りを見せてきたTeam YMKですが、ここで大きく順位を上げることができるか!」


 実況の声が高まる。透子もこの試合だけはしっかり見届けようと、作業の手を止めて画面に目を向けた。


 試合開始直後、Team YMKはいつものように安定した場所に降下し、装備を整えていた。しかし、予想外の方向から敵チームが接近してきた。


「ちょっと待って、これ……囲まれてますね」

「左右両方から来てます、これは厳しい……!」


 実況の緊迫した声とともに、画面上では激しい撃ち合いが繰り広げられる。三人は連携を取りながら必死に応戦するが、相手チームの猛攻に押し切られ、序盤で敗退してしまう。


 透子は息をのんだまま、画面を見つめていた。


(……運が悪かった。でも、最後まで頑張ってた)


 Team YMKは最終戦で善戦するも、結果は総合十位。


 賞金や景品のある入賞ラインには届かなかったが、それでも透子はその結果に落胆はしていなかった。


 配信を柚葉のチャンネルに切り替えると、すでに三人は反省会をしながらも穏やかに会話をしていた。


「悔しい気持ちはあるけど……でも、後悔はないかな」


「この三人で最後まで戦えて、本当に良かった」


「次があるなら、今度こそもっと上を目指せるって思える」


 疲労困憊ながらも楽しそうに話す三人の姿に、透子の胸がじんわりと温かくなる。


 その中で、天音カレンが提案を口にする。


「せっかくだからさ、この三人の思い出、形に残さない?」


「……って、どういうこと?」と柚葉。


「たとえば、コラボの歌ってみたとか。大会頑張った記念に!」


「えっ、わたし、歌ってみたって出したことないし……」と戸惑う柚葉。


 だが、少し間を置いてから、微笑んだ。


「でも……思い出にするの、いいかも。やってみようかな」


「じゃあ決まり! 曲、どうする?」


 三人で笑い合いながら、雑談が続いていく。


 結局、曲はその場では決まらず、お楽しみにという形で締められたが、それでも画面越しに伝わってくる充実感は本物だった。


(十位っていう結果が、報われたかどうかは人それぞれかもしれないけど……)


 透子は静かに画面を見つめながら、そっと思った。


(でも、最後の三人の話を聞いていたら、きっと報われたんだって思える)


 タブレットを閉じたあとも、耳に残るのは三人の笑い声と、「また一緒にやりたいね」という優しい言葉。


(きっと火曜日の訪問時は、片付けがまた大変だろうな)


 それでも――。


(全力で、支えよう。柚葉が思いきり好きなことを頑張れるように)


 透子は静かに、背筋を伸ばした。


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