第41話 支える手とプロの誇り
透子は食器を片付け終えた後、すぐに洗濯機に向かった。まずは山のように積まれた洗濯物を素早く仕分け、下着やデリケートな衣類を避けながら一回目の洗濯を開始する。乾燥まで自動で行う機能を設定し、次の作業へ。
洗濯機が回る音を背に、透子は散乱したゴミの山へと向き直った。床にはペットボトル、エナジードリンクの空き缶、スナック菓子の袋、コンビニの弁当容器が無造作に転がっている。
(まさに戦場……でも、やるべきことは決まっている)
ビニール袋を広げ、手際よく可燃ごみと資源ごみに分別していく。
リビングテーブルの上もペットボトルにエナジードリンク、食べかけのスナックにコンビニ弁当と大量に鎮座しており柚月の忙しさが伝わってくる。
掃除機を手に取り、ソファの下やカーペットの隅々まで念入りに吸い取っていく。ごみ箱の中身も取り換え、空間が少しずつ清浄になっていくのを感じる。
一回目の洗濯が終わった音が鳴り、透子はすぐさま衣類を取り出してたたみ始めた。下着類は別にし、シャツやパンツは分類してきれいに積み重ねる。衣装ケースの上に仮置きし、後で柚月が自分で片付けやすいように工夫する。
二回目の洗濯も順調に進み、透子はリビングのクッションやブランケットの整理に取りかかった。散らばっていたクッションは形を整えて配置し、ブランケットはたたんでソファの背に掛ける。細かな埃も丁寧に拭き取りながら、空気清浄機のフィルターも点検していく。
続いて洗面所に移動し、洗面台の周囲に散乱していたコスメやスキンケア用品を整頓。歯ブラシスタンドやコップもきれいに洗い、鏡の水垢もしっかりと拭き取った。使用済みのタオルは洗濯カゴに回し、清潔な替えのタオルを棚に並べる。
リビングでは、テーブルの下に落ちていた髪留め、充電ケーブルなどの小物を丁寧に拾い上げ、使いそうなものと不要なものに分けてトレイにまとめる。クッションの隙間にはお菓子の包み紙が挟まっており、丁寧に取り除きながら溜まった埃も吸い取っていく。
ちらりと時計を確認し、残り時間を逆算しながら、透子は一つひとつの作業を手早く、しかし確実にこなしていった。
息をつく間もなく、透子は時計を見た。残された時間はあとわずかだった。
リビングに戻って仕上げの拭き掃除をし、空気清浄機のスイッチを入れ、全体を見渡す。
整えられた空間に、静かな達成感が胸に広がる。
そのタイミングで柚月がふらりと現れ、部屋を見渡して目を見開く。
「すごい……あの状態から、ここまで……」
「時間は限られていますが、最低限、生活に支障がない程度には整えさせていただきました」
「ありがとうございます、本当に……助かりました」
深く頭を下げる柚月に、透子はやわらかく微笑んで返す。
「こういうときこその家事代行サービスですから。お気になさらず」
その言葉に、柚月は少しホッとしたように微笑む。しかし、次の瞬間にはどこか申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「……あの、まだちょっと仕事のバタバタが続きそうで……次も同じような状態になってしまうかもしれません」
「かしこまりました。お忙しい時期であれば、なおさら無理をなさらないようにしてください」
「再来週には落ち着くと思うので……それまで、どうかよろしくお願いします」
「承知しました」
プロとして。ファンとして。それぞれの気持ちが重なる。
透子は静かに、しかし力強く頷いた。




