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神の血引いた俺、ジジイになるまで戦うってよ  作者: あーちらいおん
第1部「渡川勝己(とがわかつみ)高校生編」その2
9/22

第1部 第8話「賭場」

賭けるのは、りこの心。

そして現れたのは、まさかの“あいつ”。

勝負の行方、どうぞお楽しみに!

2013年 5月31日

第1部 第8話「賭場」



──どうも、渡川勝己とがわかつみです。

ぐすっ……ちくしょう、俺だって、こんな報告したくねぇよ……。

だって、健全をうたってきたこのシリーズで、ついに起きちまったんだ……!

悲しいお知らせがあります!

俺の力でも、どうにもできない“不祥事”が発生しました。

その内容とは──

薄着の未久ねえの隣で、親父が寝ていたという事実!!

しかも、リビングで!!

やめろぉぉぉぉぉおおおおお!!!(読者の脳内にエコー希望)

──現在のリビングの様子をどうぞ:

勝利「んあ、おはよーだな!」

未久「伯父さーん、むにゃむにゃ……」

……いやいやいやいやいや!?

ちょっと待てコラ。

こいつら、何やってくれてんの!?

一応説明しよう。

このどうしようもない親父(渡川勝利)は、未久ねえの伯父にあたる。

つまり──伯父と姪っ子で、コトを起こしたかもしれないんです!!

いやほんと、マジで、やめて!?

俺の家庭のクリーンなイメージが粉々なんだが!?

弁護士のお袋も、おそらく法的にお怒りです。

というか、俺も怒ってます。マジで怒ってます。

……こっちは真面目にラブコメやってるんだよ!!!

勝手に濃厚な昼ドラ始めないでください!お願いだから!

未久「……あれ? なんで私、伯父さんの隣で寝てんのかなぁ!!?」

朝のリビングに響く、未久ねえの困惑ボイス。

その横で、親父がよたよたと立ち上がる。

勝己「親父、昨夜……何やったんだよ?」

勝利「んー? 未久ちゃんと飲んでてだなぁ~」

勝己「……飲んでて?」

(あっ、これ絶対“記憶ねえ”パターンじゃん!)

俺の脳内に警報が鳴る。ピンポンパンポーンってやつ。

勝利「すまん。記憶が……ない」

キターーーーッ!!やっぱりかぁぁぁああ!!

勝己「そりゃそうだわ! へらへら笑いながら2時まで騒いでたもんな!」

勝利「いやー、しゃーねぇだろ? 久々に三連休取れたんだから」

勝己「知るかバカッ!! 連休じゃなくて、人として謹慎しろ!!」

未久ねえはふらふらと立ち上がり、台所へ。

棚からコップを取り出し、水をくいっと飲む。

未久「こくこく……やっぱ東谷の水、おいしいね!」

勝利「取水先の川が、かなり綺麗らしいぞ。じいさん──大五郎の受け売りだけどな」

そう、それは俺の小2の時に亡くなった、じいちゃん・渡川大五郎の言葉だ。

未久「おじいちゃん、そんなこと言ってたんだ~」

ほんわかムードに一瞬だけ浸ったところで、親父がまた余計な一言を放つ。

勝利「そういや美沙都は東谷にいるのに、なんで家に顔出さないんだ?」

未久「うーん……お姉ちゃん、伯父さんのこと、あんまり好きじゃないから?」

──うん、それには俺も同意だ、美沙都さん。

大学で数学の教授やってるっていうのに、家じゃズボラで酒乱で下ネタ大好き。

俺だって、この親父はあんま好きじゃない。

と、そこで親父がタンスから何やら取り出す。

勝利「じゃ、未久ちゃん! このO市の富士マル百貨店で買ってきたスパンコールの服、着ようよ!」

未久「え〜? 私がそれ着たら……お姉ちゃんが伯父さんのこと殺しにくるよ?」

ど正論。

勝己「って、うわもう7時50分!? かなりやべえ!!」

勝利「おう、勉強頑張れ〜!」

いやいやいやいや、のんきかッ!!

やっべー!遅刻だ遅刻!!

弁当は──昨日、スーパーヒトマルで買った“賞味期限ギリ”の弁当があるから何とかなる。

だが!

朝メシ抜きはキツい!致命的!!

勝己「間に合えええええええ!!」

──俺、全力ダッシュ!

でも!

勝己「うわあああああああ!! ダメかあああああああ!!」

──遅刻した。

全部、あの親父と未久ねえのせいだ。

朝っぱらから、変な疑いかけてモタモタしてたせいで……!

くっそ、恨むぞ、あんたら!!




──ホームルーム、開始早々。

宮本「渡川。……お前、最近ちょっと気が緩んでないか?」

太一「ハハハハハハハハッ!!」

うっぜええええええええええ!!!

担任の宮本、マジで説教くさい!

そして俺の後ろの太一、爆笑すんな!!

クラス中、完全に笑いのターゲットは俺じゃねぇか!

つーかさ、そもそもの原因は静華だ。

大門に発信器つけたのはいいとして、そこからの動きがさっぱりなんだよ。

俺だけが取り残されてる感、パネェ。

で、何より――

りこが、震えてる。

メイド喫茶でバイト始めてから、ちょっと様子がおかしい。

やっぱあれか? 可愛いから、変な客に絡まれたりしてるのか?

妄想の中のりこが、俺にささやく。

妄想りこ『ご主人様ぁ、ご奉仕、ご奉仕〜♡』

勝己「ふふ……ふへへへへへ……」

女子「うわ、なに渡川、キモ……」

男子「てか先生、マジで怒ってるからな?」

宮本「渡川ァァァァァ!! お前、今なにを考えたのかは知らんが!!」

勝己「ひぃっ!? すみませんしたぁぁぁあああああああ!!!」

──昼休み。

別に特別なことはない、ただの昼休みだ。

東谷高校ってのは、便利そうに見えて案外不便でさ。

校門前にコンビニがあるわけでもないし、売店もない

隣町のM高校なんか、すぐ近くにルーソンあるんだぜ、格差だろ。

そんな中──スマホに通知が来た。

【静華『勝己、鹿子さん、連れてきなさい。』】

勝己「あ、あー……わーったよ、しずかちゃん」

もはや慣れたけど、静華の指令は突然すぎるんだよな……。

さて、りこはどこだ……りこ……りこー!

頭の中には、あのピンクのショートヘアがふわっと浮かぶ。

お前が浮かぶと脳内に桜が舞うんだよ、知ってたか?

りこ「ねえ、勝己くん」

勝己「図書室行こうぜ。呼んでる人がいる」

りこ「うん。氷室センパイでしょ?」

勝己「……なんだ、りこが言い出しっぺかよ」

りこ「てへへっ」

あざとい。

でも、いい。




──図書室に到着。

静かな空間に、ページをめくる音がポツポツと響いている。

その奥の一角。いつもの席で、静華が待っていた。

静華「それじゃあ……あれからの経緯なんだけども」

勝己「大門のアジト、わかったのか?」

静華はバッグから、折りたたまれた街の地図を取り出し、机に広げた。

静華「東谷中学の方、キンペー川を超えた先に倉庫があるでしょ?」

俺は中学時代の記憶を手繰る。

……あったな。古びた倉庫。

クッソきついマラソンのコースから見えたっけなぁ。

静華「その倉庫のどこか。奴は、このエリアをウロウロしてる。……発信器は昨日、壊れたわ」

勝己「ってことは、もう場所を移動した可能性もあるってことか?」

発信器を壊したってことは、こっちの動きに気づいてるってことだ。

当然、警戒してるだろう。

静華「うん。でも、倉庫の件は美沙都さんにも共有済み。万が一、まだそこにいるなら、動いてもらえると思う」

ふむ……。

とりあえず“奴”の足取りが完全に切れたわけじゃない。

でも、ここから先は少し慎重にいく必要があるな──。

──その頃、キンペー川近くの廃倉庫。

人気のない鉄の扉が、風で軋んだ音を立てている。

ガサリ。

鉄パイプの隙間から、小さな猫が姿を現した。

細身で、白い毛並みの野良猫だ。

猫「きしゃあああああ!!」

その目の前に、何か“異質なもの”がいた。

ゴリリ、ゴリ……

何かが、床を這って近づいてくる。

猫は背中の毛を逆立てて威嚇するが――

ズシャッ!!

“それ”は猫の上に、文字通り覆いかぶさった。

ぐちゃり。

あまりに一瞬。

猫の鳴き声すら、飲み込まれた。

そして──

「フランケンフュージョン!!」

「……猫の力、手に入れたぜ」

闇の中、笑みを浮かべる男。

その目は赤く染まり、腕には――

猫の爪を思わせる異形のパーツが形成されていた。

大門だった。







りこ「……ファギア持ちだと思うんですけど、**“成金セイタ”**って人が、お客で来たの」

勝己「──許さん」

りこ「えっ、まだ何も言ってないよ?」

いや、名前からしてクソ野郎確定じゃん。

“成金”って。何それ、わざと? キャラ名で不快感ぶちかましてくるスタイル?

りこ「……その人、私を“買いたい”とか言ってきたの。もちろん断ったけど……そのあと、急に胸がズキズキって痛くなって……」

その一言で、俺の中の何かがぶちっと切れた。

勝己「りこに精神的苦痛を与えた、不届き者だ。──俺がぶっ倒す!!」

椅子を蹴って立ち上がる俺。

と、そこへ、よりによってあいつが現れた。

才崎「……話は聞かせてもらった。勝己、聞いてる限り、そのファギア持ちは力押しじゃ勝てなさそうだね」

──出たよ、才崎。

以前、俺の貴重な“いとこ系エ●本”をプレゼントしてやったのに、

返ってきたのが“クソみたいなTRPG風の異世界体験”という裏切りをやらかした奴。

勝己「てめぇ、信用してるとでも思ってんのか?」

才崎「フフッ、誤解するなよ? 僕“だけ”でやるなんて言ってない。

 君の力が必要なんだ。……勝己、共闘しよう」

真顔で言ってくる才崎に、少しだけ胸がざわついた。

才崎がライターの炎を吹き消すと、次の瞬間──

ザワッ……!!

世界が、ねじれた。

視界が揺れ、地面が沈む。

気づけば、俺たちは“そこ”に立っていた。

金と黒の煌びやかな空間。

天井にはシャンデリア、フロアにはルーレット台とトランプの模様が散りばめられている。

ここは……まさか──

才崎「ようこそ。ラブ・カジノへ」

才崎が、ゲームマスターの如くステップを踏み、中央へ。

才崎「さあ──ルール説明といこうか!!」

彼の背後に、光の文字が次々と浮かび上がる。

________________________________________

【ラブ・カジノ ルール概要】

ルーレットを回して、出た数字の合計が「100」に先に到達した者の勝利。

才崎はこの勝負の「ゲームマスター」。

ほんの少しだけ、“ルールそのもの”に干渉できる能力を持つ。

金成セイタのファギアは──ロンガー・ローン

才崎が“後ろめたさ”を感じた瞬間、その心の揺らぎをダメージに変えて攻撃できる。

________________________________________

セイタ「ほぉ〜〜ん。こりゃまた派手な舞台だねぇ!」

勝己「……なあ、才崎。お前、ほんとにコレ勝算あるんだよな?」

才崎「あるさ。“君がいれば”ね」

まるで芝居がかった口調で言いやがる。

けど……あいつの目は、本気だった。

セイタ「じゃあ、始めようぜ? 愛を賭けた、男同士の……ラブ・ギャンブル!!」

りこ(えっ、それはちょっと違うような……)

セイタ「では、僕から……」

ルーレットが静かに回り出す。

カラカラと、金属音が響く──。

──そして、止まった数字は「23」。

セイタ「フッ……悪くないな!」

上機嫌な様子のセイタ。

でもさぁ、バーカ。

勝己(こっちはもう、“お前を破産させること”しか頭にねぇからな)

勝己「ほら見ろよ、りこだぞ?」

振り向くと、りこが苦笑いしながらピースしていた。

その笑顔を見て、セイタの鼻がふごっと鳴る。

勝己「“インビンシブル・インビジブル”──」

俺は静かに能力の説明を始めた。

勝己「お前の鼻息が、ルーレット台にあたったとき……

その空気に“35の近くで玉がもたつく”という役割を与えた。」

才崎「……!」

勝己「本当にりこが好きなら、そんな鼻息、荒くなんねぇよな?」

セイタ「ぐ、ぐぬぬ……フー……フー……!」

焦ったセイタの鼻息が荒くなる。

その瞬間──

ピトッ……。

金の玉が、ルーレット台の「35」の上で止まった。

才崎「……35。お前の負けだ、成金セイタ」

セイタ「……バ、バカバカしい! こんな勝負、茶番だ!! やめだやめだッ!!」

逃げるように背を向けるセイタ。

でももう、お前の恋もゲームも、ここで終了だ。

才崎「……つまり、りこちゃんを差し上げますと言ってるんですよ?」

セイタ「はあ!? 第一、彼女がなぜ“景品”なんだ?」

──まあ、そこは突っ込むよな。

でも、お前が一番りこをモノ扱いしてんだよ。

勝己「ハッ、笑わせんなよ。

お前の目つき、言葉、全部が“りこを所有物扱い”してんの、丸わかりだっつの。

いいか──“なりきん”!」

セイタ「だから“なりきん”じゃない! なりかねだッ!! いい加減に間違えるなぁ!!」

いいぞ、ペース乗ってきた。

相手がキレれば、こっちのもんだ。

勝己「っとぉ、すまんすまん! じゃあ……“なりかね”さんよ、これでも喰らえ!!」

俺は、わざと足を滑らせる。

ドシャッと派手に転ぶと同時に、セイタに体当たりをかます!

セイタ「……ふふッ! ロンガー・ローン、発動!!」

金成セイタのファギア──

相手が“後ろめたさ”を感じたとき、その負債(罪)をダメージに変える力。

セイタ「申し訳なさが、お前の負債になる……!」

勝己「──“インビンシブル・インビジブル”……」

(俺の声は、わざと小さく。あいつだけに届くように)

その瞬間、りこがピクリと反応した。

──気づいたな、りこ。

勝己「くそっ、いってええええええええ!!」

りこ「わ、わたしも……痛い! すごく、痛いっ……!!」

セイタ「ハハハハハ!!

払いきれない債務に、苦しむがいいッ!!

ガキが、大人をからかった罰だァ!!」

──まさか、それが“罠”だとも知らずに。

才崎「……銀行が“貸しすぎた”とき、どうなるか知ってますよね?」

セイタ「は? なんの話を──」

才崎「貸し倒れですよ、成金さん」

「僕はこの“ドラマチックライター”で、すでに“破産エンド”のシナリオを組み込んでいた」

「苦しんでいた、勝己くんとりこちゃん。

その“申し訳なさ”があなたに、倍返しで跳ね返るように、ね」

セイタ「な……ファギアに、他人が干渉なんて……できるはずが……!」

才崎「ここは僕が書いた**物語シナリオ**の中。

“ドラマチックライター”が描く限り──ルールすら、書き換え可能です」

勝己「俺の“インビンシブル・インビジブル”で空気に込めたのは、

『りこに申し訳なく思え』っていう“意思”。」

「それが今──りこの心に届いて、真の感情が起動したんだよ!!」

セイタ「そ、そんな馬鹿な……!!」

才崎「“ロンガー・ローン”、貸し倒れ処理、発動」

セイタ「うわあああああああああああああああああああ!!!!」

セイタの身体から、白い紙幣のような光が次々と飛び散る。

彼のファギアが、自らの“負債”を回収しようと暴走する。

セイタ「やだ……やだッ!!破産だけは──」

勝己「──成金破産ッ!!」

バァンッ!!

ルーレットの中心が爆ぜ、金と黒の空間が崩れていく。

りこ「勝己くん……」

才崎「──ラブ・カジノ、ゲームセット。

“勝者”、渡川勝己……そして、鹿子りこ!」

光に包まれ、俺たちは元の世界へと戻っていった。

──戦いの幕は、静かに、そして華やかに、降りた。

才崎「──これで貸し借りはなしだ」

「……また、別のゲームをやろう」

風が、静かに吹き抜ける。

りこ「ふふっ。なんか、スッキリしたぁ〜」

無邪気な笑顔で両手を伸ばすりこ。

その隣で、俺は深く息を吐いた。

勝己「今回に限っては──最高の吟遊だったぜ、才崎」

才崎は、にやりと笑って背を向けた。

ライターを一度チラつかせ、ポケットにしまう。

才崎「じゃあ次は……もっとドラマチックな舞台で、待ってるよ」

その言葉を残し、才崎は風の中へと消えていった。

──幕は下りた。

だけど、次の幕はいずれ降りるだろう。



まさかのカジノ回、いかがでしたか?

ラブとバトルと茶番と――全部乗せです。

ファギアの駆け引きも派手になってきたところで、次回からは第1部も中盤戦へ突入!

引き続き、よろしくお願いします!

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