第1部第7話「融合」
「怒りに任せた拳は、誰のために振るうのか?」
今話は、勝己が初めて**“己の感情と戦う”**回。
バトルは激しく、相手は不気味な“融合体”。
でも本当の敵は、“理性を超えた怒り”だったかもしれない。
静華との距離がほんの少しだけ近づいて、
物語は次なるフェーズへ。
──勝己はまだ知らない。
この夜の出会いが、“長き宿命”の始まりになることを。
2013年 5月24日
第1部第7話「融合」
5月24日
はい、渡川勝己、少年の主張!
みなさん貯金してますか―
お金がたくさんあるといろいろできまーす。
たとえば、近くの市まで彼女とデートとか!
しかし、俺たち地方の高校生というのは
バイトで働く場所がなくて困るんだなぁこれ。
小麦の乾燥施設?夏休み潰してまでやる?それ?
コンビニのレジ打ち?あー、それ女尊男卑になりつつあるからね!
男はお断りってとこマジで多いから。
ま、なんだかんだで俺もバイトを始めました。
行きつけだったスーパー、ヒトマル東谷店でね。
ヒトマル東谷店、レジ──
太一「おい勝己、お前のレジ打ち、**“雑”って言われてんぞ」」
勝己「……っせえよ、こちとらピッて音でモノ言わす職人だわ」
太一「どこがだよ、読み取りミスで怒られてんの見たぞ」
……そう、この口うるせぇ野郎=長居太一と、俺は今同じバイト先にいる。
本当ならな――
**りこと一緒に、人生花色、墓まで一緒!バイトもラブラブコース!**の予定だったのによぉ……
──ここで回想入りまーす。
【回想】
りこ「ごめんね、勝己くん……
メイド喫茶でバイト、決まっちゃったの」
勝己「メイドぉ!?!?!?!?
“萌え萌えキュン♡”とかやんのぉ!?」
りこ「“メイド喫茶キュンキュン”ってお店なの。
ほら……オカマの立花さんいるでしょ?」
(……立花ァ!?)
立花藤吉。通称、“立花”。
俺の親父、渡川勝利の知り合いで、
常にオネエ口調で本質ついてくるヤバい人。
──ここで視点は、りこサイドへ──
立花「あらぁ〜、りこちゃあ〜ん!
アンタ、なかなかイイ線いってるじゃなぁ〜い?」
りこ「え?」
立花「ねえ、うちで働かないぃ?
あなたなら――
エースになぁ〜れるぅ〜わぁ〜✨」
(……なんか勢いがすごい)
──数分後──
メイド服を着せられた私、鹿子りこ。
りこ「わ、わぁ……っ、これけっこう大胆ですね……!」
立花「背がぁ、あまりぃなぁいけどぉ〜、出てるぅ子ぉ用の、スペシャルゥなんさねぇ〜〜〜〜〜〜♡」
(うぅ……すごいフィットする。やば……)
(でも……かわいい……かも)
──勝己の脳内、勝手に上映中。
りこ「可愛かったから、バイトすることにしちゃったっ!」
勝己「そんっっっっなぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!」
──\回想終了/──
\おつかれー/
勝己「あああああああああ!!!
俺、バイトなんて……
すんじゃなかったああああああ!!!!!!」
太一「おいおい。
遊ぶ金、増えるじゃん?」
勝己「ストレスも増えるんじゃん!?!?!?
むしろ赤字じゃねーか、メンタル的に!!」
太一「うっせぇ。ほら、そっち客行ったぞ。
ちゃんと接客、接☆客!!」
勝己「っ……ち、ちくしょう……」
──切り替えるぜ……プロとしてな……
勝己「いらっしゃいませぇええぇぇぇえええ!!!(ヤケクソ)」
──その頃、メイド喫茶キュンキュンでは。
りこ「ど、どう……でしょうか?」
メイドA「くっっっそかわいいいいぃぃぃぃ!!!!」
メイドB「うちら完全に……引き立て役じゃん……(崩れ落ち)」
──その光景を、メガネを構えながら見つめるひとりのオタク。
オタクA「なに……!?“萌え萌え力”が……上昇し続けているだと……!?」
(※持ってる測定器がビービー鳴ってる)
オタクA「これは……測定器の故障か!?!?」
──眼鏡越しにりこを見る。
りこ「ごしゅじんさまぁっ♡」
オタクA「わが生涯に……悔いなし……!!!!!!」
──バタリッ(静かに倒れる)
メイドA「ちょ、どうすんのコレ!?!?」
立花「あぁな〜たたぁ〜ちぃ、急病人にはぁ〜、しっかり〜対応しなさぁ〜い♡」
りこ「はぁ〜いっ」
──その“あどけない仕草”に、さらに撃ち抜かれるオタクたち。
オタクB「これが……オタの夢……オタの望み……オタの業!!」
オタクC「くそぉ……O市じゃなくて、まさか……
東谷に、こんな秘境があるとは……!!!」
──床に倒れていたオタクA、ゆっくりと立ち上がる。
オタクA「……まさに、地上最後の楽園……(カタカタ)」
──メイド喫茶キュンキュンの前──
高級外車が、ヴゥゥンと静かに停車する。
ドアが開き、ギラッギラのスーツに身を包んだ太った男が登場。
短足・肥満体型・金のネックレス──見た目のクセが強すぎる!
成金セイタ「フフッ……僕は成金セイタ。
“萌え”にも、運命を感じるタイプでね……♡」
りこ「な、なんですか……ご、ご主人様ぁ?」
──セイタ、いきなりりこに指輪を差し出す。
成金セイタ「決めたよ。君を買う。
この指輪、受け取ってくれるかな……?」
りこ「え、ええええ!?」
──そこへ、店内から全力で声が飛ぶ。
立花「よくないともぉぉぉおおお!!!!!!!!!」
(某・昼の番組ばりのテンションで)
セイタ「フン……お前、オカマか」
立花「オカマですけど何かァ!?!?!?
アンタねぇ、“お金で女を買う”とか、
ここ東谷じゃ最低の発想なのよォ!!!!!!」
──セイタの目が光る。
成金セイタ「なら……受け取ってくれるといいね。
**僕の“後ろめたさ”を――さ」
──発動:ファギア《ロンガーバンク》
“後ろめたい気持ち”を“貸し付け”、
相手に物理ダメージとして返済を迫るファギア。
りこ「うっ……ぐっ……な、なんで……身体が……痛い……っ」
セイタ「これは“君が僕を拒絶した罪”だよ。
でも……その痛みも、僕の愛と一緒にずっと残してあげるさ♡」
りこ「ご、ご主人様……」
セイタ「それは、つまり……一緒にいたいって意味かい!?」
──ぐいっと腕を伸ばすセイタ。
だが──
立花「ストーーップ!!
りこぉがぁ……困ってるさねぇ!!
これ以上、続けるってんなら――
アタシは黙っちゃいないよぉぉぉお!!!!!!」
セイタ「もう帰る。次までに考えておいてね!チャオ!」
──夜、渡川家。自室にて。
勝己「見たぁぁぁぁぁぁぁい!!!
見たいんだよおおおおおぉぉぉ!!!!!!
りこのメイド服、死ぬほど見てええええ!!!!!」
(畳を転げまわりながら叫ぶ俺)
仕方ねぇだろ!?
だって――“りこ×メイド服”=可愛い×可愛い=無限!
人類未到の可愛さだろアレは!!
……ハァ。見てぇ。
──ふと思い出す。
そういや、俺……静華と連絡先交換してたわ。
勝己「かけるか……」
──ピッ
勝己「し〜ずかちゃ〜ん♡」
静華「あら勝己さん♡」
勝己「寄せるな!寄せるな!
素で話そうやッ!!素でッ!!」
静華「……で、何よ?」
勝己「いやその……一緒に夜の散歩でもどうかな〜って♡」
静華「いいわ、付き合う。」
勝己「え、えっ、あっさり!?!?!?」
静華「……美沙都さんを呼ぶこと、いいわね?」
(なんで“付き合う”のに一番怖ぇの呼ぶんだよおおお!!)
勝己「……お、おう、わかったよ(震)」
──その後、ちゃんと美沙都さんにもメッセージを送っておいた。
断る選択肢など存在しないためである。
美沙都「……で。夜遊びに、私が付き合うと?」
静華「夜遊びじゃないわ。パトロールよ」
──静かな火花を散らす2人。
そこに!ノーアポで!陽キャ爆弾が飛び込む!
未久「おねえちゃ〜〜ん♡」
美沙都「……(やれやれ顔)」
勝己(心の声)
《そりゃそうだ。
未久ねえまで来る必要、1ミリもねぇもんな……!》
未久「こうしてお姉ちゃんと会えるの、うーれしーなー♡」
(あーもう、無邪気にも程があるぜ……)
そして俺は、クールメガネ先輩・氷室静華と、
陽キャたわわ爆弾・未久ねえ、
そして伝説の実力者・美沙都と夜の公園を歩いていた。
勝己(心の声)
《はたから見たら……これ、リア充ハーレムじゃね?》
《……でもなぁ、俺はぜんっぜん嬉しくねえ!!(嫉妬&疲労)》
──その時だった。
ベタァァァ……
勝己「うわあああああああ!?!?!?!?!?」
でっけぇクモの巣に捕まったああああああああ!!!!!
勝己「くそっ……空気に役割を――」
──密着状態、詠唱不可能。
勝己「ッ……完全に……封じられたッ……!」
だが。
スッ……
勝己「……鼻息は!? 鼻息で空気送れるか!?!?」
──スーーーーーッ、フッ!
勝己「……よし……よし!行けるっ!」
俺のファギア、**“詠唱は口じゃなくてもいい”**って誰が決めたよ!?
鼻でもやってやるぜ……!!!!!
──クモの巣からなんとか抜け出した俺。
その目線の先、信じられない光景が広がっていた。
勝己(心の声)
《な、なんだあの怪物……!?》
──口が……クモ!?
さっきのクモの巣、こいつのかよ!!!!!!
静華「っ……くっ!」
ナイフを構えて、クールな氷室先輩が果敢に立ち向かう。
──だが。
ヒュッ……
静華のナイフは、あっけなく宙を舞った。
???「とおっ!!!」
──現れたのは、意味不明なテンションの男。
???「正義の死神ッ!!!
大門勇吾、ただいま、参上ぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!!」
勝己「……は?」
──そして。
静華「サイレントオーダー。」
大門「あっ、耳が聞こえない。
……なんでだぁ?」(爆速ツッコミ)
静華「……じゃあ、これは聞こえるかしら?」
──ドカン!!!
静華が設置していた特製爆弾が、怪物の足元で爆発!!
大門「ぐぅっ……やるじゃねえか……」
──だが、次の瞬間。
大門「フフ……これは、トカゲの力だ。
フランケンフュージョン。」
──ずるり……ずるり……
傷口の皮膚が**“脱皮”するように剥がれ、
その下からまるで新品のような肉体が再生していく!
勝己(心の声)
《なんだ……なんだよ、あれ……
あんなの、もう人間じゃねえ……!
バケモノだ……!!!!!!!!》
勝己(心の声)
《まさか、コイツ……
こいつが“進化生命体”ってやつなのか……!?》
──俺は、必死に空気に“意思”を込める。
勝己「インビンシブルインビジブル――
空気に“糸を切断する役割”を与えた!!」
──ギィッ、ギシッ、ギィィィッ……
俺を絡めとっていたクモの糸が、
音を立てて、少しずつ、確実に切れていく!
勝己(心の声)
《いける……もう少しで……!》
──自由を取り戻した俺は、すぐさま静華のもとへと駆けつける!
だが。
その目の前で、あの化け物が……静華の身体に触れているではないか!!!!!
大門「なんだよ、ヘタレの渡川ァ」
(鼻で笑いながら)
勝己「……あぁ?」
──その一言で、思考がぶっ飛んだ。
勝己「今なんて言ったコラァ!!!!!!」
《ヘタレ》
──俺が……一番、言われたくない言葉だ。
考えられなくなる。
でも──それが逆に、力になるんだ。
勝己「もういっぺん言ってみろや……この化け物がぁ!!!!!!!!!!」
静華「……男って、
たかが“布”に夢を見すぎじゃないかしらね」
──冷静。氷のような視線。
だがその唇には、不快の炎が確かに宿っていた。
大門「照れてんのかよ、氷室センパ〜イ?
ちょっとは悲鳴の一つでも上げたらどうだァ?」
静華「……じゃあ、そのうるさい口を、黙らせるわ。
サイレントオーダー。」
──ズン……
その瞬間、大門の口元が動いても、声が……出てこない!
勝己「ああああああもううるせえ!!!!!!
ぶっとべやああああああああああああ!!!!!!」
静華「やめなさい。──奴は、いったん帰らせる。」
(いつになく、鋭くも落ち着いた口調)
勝己「……は?あいつ、あんたの服破って、身体まで……!
嫌じゃねえのかよ……!?!?」
静華「……」
一瞬の沈黙。
静華「嫌よ。」
(静かに、でも確かに言った)
静華「でも、今倒してはダメ。
──あいつの“イヴィルファング”の本拠地を突き止めないと。」
勝己(心の声)
《……ダメだ、わかってる。わかってるけど……
頭に血がのぼって仕方ねえ……!
いま俺の中にあるのは、“悔しさ”だけだ──!!》
──その時、静華がそっと、俺の前に立った。
静華「やめなさい、勝己。……お願い。」
──真正面から、目を見て言われた。
勝己「……静華」
静華「発信器、取り付けておいた。
今のあいつには“聴覚”がない、気づきはしないわ。」
勝己「……そうか……」
──怒りの熱が、少しだけ落ち着いていくのを感じる。
静華「──あれが、大門勇吾。
怪物よ。」
──夜の公園を、ひんやりとした風が抜けていく。
大門勇吾。
こいつとの因縁を──
俺が、この先ずっと背負うことになるとは、
その時の俺には、まだ……知る由もなかった。
ここまで読んでくれてありがとう!
今回はギャグ控えめ(でもちょいちょい漏れる)で、
**静華と大門、そして勝己の「三者の関係性の核」**に迫るエピソードでした。
静華の冷静な判断。
勝己のどうにも抑えきれない怒り。
そして、全てをかき乱す“異質な男”・大門勇吾。
この3人の関係が、この先どんどん“複雑に”“深く”なっていきます。




