表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

第1部 番外編「風の目覚め」

このエピソードは、勝己が幼少期に“風の力”に目覚めた出来事を描いています。

勝己とりこの関係の原点がより深く伝わるかと思います。

2003年 10月

第1部 番外編「風の目覚め」

おれ、渡川勝己とがわ かつみ、5歳。

東谷あずまや町の保育所に通ってる。

最近さ、なんか変なんだよ。

ドライヤーを使うとさ、

“ブワーッ”って風が出てるのが、うねうねって――見えるんだ。

勝己「うわっ、まただ!この変なの、なんなのさ!」

ドライヤーをじっと見てたら、後ろから父ちゃんが声をかけてきた。

勝利「どうしたぁ? ドライヤーに見とれて。もう髪は乾いただろ?」

勝己「ちがうよ父ちゃん! ドライヤーの“ブワー”が見えるんだってば!おれ!」

勝利「目がいいんだな!」

……父ちゃんは、いつも通り真面目に取り合ってくれない。

***

次の日。

おれは友達のりこちゃんと一緒に、太一の家に遊びに行くことになった。

太一とは気が合うんだ。

おれたち、けっこう仲良し三人組なんだぜ。

太一「勝己! りこちゃん、いらっしゃい!」

りこ「おじゃましまーす」

勝己「おじゃましますっ」

太一のお母さん「あら、二人ともいらっしゃい。太一、ちゃんと仲良くするのよ?」

太一「大丈夫だって! ケンカなんてしないから!」

太一は、自慢げにビー玉のコレクションを見せてくれた。

太一「キレイでしょ? じいちゃんに、この前買ってもらったんだ!」

りこ「わぁ、すっごくキレイだねぇ!」

勝己「この青いの、いいなー!」

太一「一番キレイなのはね、黄色い線が入ったやつなんだけど……あれ? どこ行ったかな?」

太一はソファの下をのぞきこむ。

太一「あー! あった! でも、手が届かない……くそーっ!」

りこちゃんも一緒に手を伸ばしてみるけど、太一よりも手が短い。

りこ「あぁ~、届かないよ~!」

おれもソファの下をのぞき込んだ。

勝己「ビー玉、こっちに転がってこないかなぁ……」

――ふとつぶやく。その気持ちが、空気に乗った気がした。

すると――

風がふわりとビー玉に当たって、ぽろりと転がり出してきた!

太一「えっ!? 転がってきた! なんで!?」

りこ「すごーいっ!」

太一は大喜びだった。

太一「すげえよ勝己!マジで超能力じゃね!?」

勝己(……もしかして、おれがやったのかな?)

りこ「ねぇねぇ、勝己くんが『ビー玉転がってこないかな』って言ったあとに動いたよね?」

勝己「う、うーん……そうかも?」

太一「じゃあさ、勝己ってエスパー!? ちょっと試してみようぜ!」

――ということで、即席の“エスパーごっこ”が始まった。

太一「この紙コップの中に入ってるビー玉、何色か当ててみて!」

勝己「えーっと……わかんないよ」

りこ「じゃあ、わたしの今日の朝ごはん、なーんだ?」

勝己「うーん、ごめん、それもわかんないや……」

ぷ〜〜ん。

あ、蚊の音だ。

りこ「ねぇ、蚊が飛んでるよぉ」

太一「もう秋なのに、変なの〜」

勝己「潰れちゃえ!」

――その瞬間だった。

“潰れちゃえ”って気持ちが、風に乗ったような気がした。

おれは、蚊に向かってふーっと息を吹きかける。

すると――

パチンッ!

手で叩いたみたいに、蚊がその場でぽとりと落ちた。

りこ「え、すごっ……!?」

太一「お前やっぱり超能力持ってんじゃないの!?」

りこ「じゃあじゃあ、勝己くんとわたしが結婚したら、子ども何人いるの〜? 未来わかる?」

勝己「え、りこちゃんと結婚!?」

りこ「だってこの前、約束したもん! お嫁さんにするって!」

太一「そうそう! おれ、勝己に負けたんだぞ〜」

勝己「だからぁ、エスパーじゃないんだってばぁ!」



帰り道。

ふと見ると、おばあちゃんが赤信号を渡ろうとしていた。

勝己「おばあちゃん! 危ないよ!」

――届いて、お願い。この声、届いて!

風に「危ないよ」って気持ちが乗った気がした。

すると、おばあちゃんはふと足を止めた。




その日の晩、弁護士の母ちゃんが帰ってくると聞いた。

勝利「よかったなぁ、母ちゃん、今夜帰ってくるぞー」

勝己「母ちゃんの車、まだかなぁ……」

父ちゃんはテレビを見ながらゲラゲラ笑ってる。

――これじゃあ、母ちゃんの車の音、聞こえないじゃないか。

勝己「母ちゃんの車の音が、聞こえれば……」

そうつぶやいた瞬間だった。

テレビの音は遠くなり、代わりに――車の音だけが、くっきりと耳に届いた。

朱鷺子「――あら。到着がわかっていたみたいじゃないの。

ただいま、勝己」

勝己「母ちゃん!おれ、いい子にしてたよ!」

おれは玄関を駆け出して、母ちゃんを迎えに行った。

勝利「おおっ、朱鷺子ぉ!おかえりー!」

父ちゃんが母ちゃんをギュッと抱きしめる。

朱鷺子「……ふふっ。やっぱり、帰る場所があるっていいわね」

次の日、母ちゃんが英語を教えてくれた。

朱鷺子「今日は、ちょっと似た意味の英単語を教えるわね」

勝己「うん!覚えるよ!」

朱鷺子「まず一つ目は、インビンシブル。“無敵”。とっても強いって意味よ」

勝己「インビンシブル……法廷の母ちゃんみたいだ!」

朱鷺子「ふふっ。ありがとう。もう一つは、インビジブル。“見えない”という意味よ」

勝己「インビジブル……なんか似てるね」

――おれは、この二つの言葉をすごく気に入った。

後に、自分の力にこの名前をつけることになる――

『インビンシブル・インビジブル』ってね。

それが、おれと風の力”との出会いだった。

まだまだ小さかったけど――

この町と、家族と、そして大切な人を守るために。

“風”は、そっと目覚めていたんだ。

──第1部 番外編「風の目覚め」 おわり。





子ども時代の勝己やりこたちの関係、そしてファギアのはじまりを描いてみました。

少しでも彼らの「その後」に想いを馳せていただけたら嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ