第1部第6話「立場」
2013年5月某日――
これは、物語に呑まれかけた高校生が“自分の物語”を取り戻すまでの話だ。
異常な空間、強制されたファンタジー。
仲間の洗脳、NPCとして扱われたヒロイン。
すべては"物語を操る者"によって用意されたものだった。
だが、俺・渡川勝己は負けねぇ。
たとえゲームマスターがどんなに完璧を気取ろうと、
ファギアがあればバグだって起こせる。
見せてやるよ――
「設定だけの世界じゃ、俺たちの心は縛れねぇんだ」ってな!
2013年 5月17日
第1部第6話「立場」
放課後──。
またしても未久ねえが、
朝食を作らずに寝坊という“大人のお姉さん失態”をやらかしたので──
俺は、冷食を買うことにした。
向かったのは、歩いて遠い国道38号沿いのスーパー、ヒトマル。
──ところで、読者諸君。
「1話のあのエ●本、才崎に渡せたのか?」
って夜しか眠れなかっただろ?安心してくれ。
渡せました。あの3日後に。
……いとこものエ●本をな!!!
──さて、ヒトマルの隣には百円ショップがあって、
そこにはO市から運ばれてきた“消費期限2日後”の弁当が置いてある。
見つけた瞬間、俺は閃いた。
(そうか──ここで3日分買えば持つな!)
というわけで、
俺は弁当を3つ購入した。
•一つは今夜の保険
•残り二つは明日と明後日用
冷蔵庫で冷やせば……まぁ、なんとかなるだろ!!
帰り道、
俺はアリアケ公園の水飲み場で水を飲んでいた。
──と。
(あっ……あれは……)
いとこもの大好きマンじゃん。
目の前にいたのは──
TRPGバカであり、変態でもある俺の友人、才崎。
なんか、ライターなんかカチカチしてる。
りこ「勝己く〜ん!」
後ろから声がして振り返ると、
りこが走ってくる。
(はぁぁ〜〜……
走ってくる姿、愛くるしすぎるんだよなコイツ……)
そんな俺の妄想タイムを遮るように──
才崎が話しかけてくる。
才崎「ねぇ勝己、TRPGやろうよ!」
勝己「おいおい、屋外でかよ。
つーか、俺んち今……いろいろ面倒なんだよ。」
(この“いろいろ”ってのはな──
未久ねえがマジでダメすぎるってことだ。)
•居候のくせに、飲み干したビールの缶を片づけない
•洗ってない下着が、リビングに3枚くらい落ちてる
•おまけにパンイチでうろつく日もある
──こんな家に、
りこなんて呼べるわけねぇだろッ!!!
もはや俺は──
未久ねえのお世話役(笑)状態。
──まあ、そんなことは置いておいてだ。
あいつは──
ライターを持っている。
(……なんでこんなところで火つけてんだよ、マジで)
りこ「あ、才崎くんだ。
なにしてるの?」
才崎「──ドラマチック・ライター。」
ライターに、小さな火が灯る。
──次の瞬間。
その火を見た、
ほんの一瞬だけ。
世界が──
真っ白に、飛んだ。
(……ッ!?
意識が──
意識が……!?)
──意識が、ブラックアウトした。
でも、次に目を覚ましたとき──
そこには。
真っ白な部屋が広がっていた。
勝己「……おいおい……
まさか、“白い部屋”とかマジで起こるのかよ……」
──と、そのとき。
才崎「さぁ、ゲームをしよう。」
目の前には──
あの才崎が、スーツ姿で立っていた。
才崎「ロール(役割)はこうだ──
勝己、お前は“ヒーロー”。
りこちゃんは“姫”。」
──視線を向けると。
そこには──
水色のドレスを纏った、りこがいた。
ピンク髪×水色ドレス。
この世で一番、似合ってる。
勝己「お、おい……
俺は制服のままじゃねえか……」
才崎「いいじゃん。
学生だって、ヒーローにはなれるだろ?」
……そう言って、
才崎は指をパッチン、と鳴らした。
──世界が、動き始めた。
(ショータイムってか……!)
才崎「第1の関門──
モンスターを倒せ。」
その声と同時に、
目の前にバカでかいドラゴンが現れた。
(出たッ!王道すぎる展開!)
そして、俺の足元には──
特大サイズの10面ダイスが2つ。
──某お嬢様の挨拶っぽいテレビで、ライオンの着ぐるみが転がしてそうな、アレ。
りこ「た、助けて〜!!」
(くっ……!
めちゃくちゃヒロインしてるッ!
ここで助けなきゃ男がすたるってヤツか……!)
才崎「ファギアの使用もOKだよ。
もちろん、素直にダイスに頼っても──いい。」
勝己「だったら──
こうするに決まってんだろがァ!!」
──バトル開始ッ!!
だが、
俺には最初から“戦うつもり”なんてねえ。
ファギアOKって言ったのは──
そっちだろうがァ!!!
勝己「インビンシブル・インビジブル──
01(クリティカル)を出す役割を空気に与えるッ!!!」
10面ダイスが、
カツン──コロコロ……
表示された数字は──
01。
──クリティカル・ヒットッッ!!!
ドラゴン「ぎ、ぎしゃあああああああああ!!!!」
一撃で爆発四散。
才崎「……ふふ。
さすがは“サマの天才”だ。
君のファギアとは、相性が最悪だね。」
勝己「才崎──
お前、その力……どこで手に入れた?」
才崎は、ニヤッと笑う。
才崎「大門くんがくれたんだ。」
勝己「また大門の野郎かよ……
あいつ、どんだけ配ってんだイヴィルファング!!」
──その瞬間。
空間が、**グワン……ッ!!**と揺れ始める。
りこ「きゃっ、ゆ、揺れすごいね!!」
──そして。
プルン。
(うおおおおおおお!?!?
りこのたわわが物理法則に従ってプルンと!?)
しかし、俺は──
囚われの姫ポジのりこを、遠目にしか見れねぇ。
勝己(……くそ……
俺のファギア、録画非対応なんすよ)
(って、
ハードディスクみてえな説明してる場合じゃねえ!!!!)
──足元が、グラリと変わる。
空間は“橋”になった。
才崎「第2ステージ──
6面ダイスを7回振って、“合計37ぴったり”を出せ。」
勝己「はぁ!?何言ってんだオメー!?
そんなもん、毎回ファギアでいじるに決まってんだろが!!」
才崎「──ただし。
ダイス“そのもの”にかけられる能力は1回までだ。」
(チッ、制限付きってわけか……)
勝己「りこ!
7回目を振ったら、叫べ!!」
りこ「えっ、う、うん!」
勝己「インビンシブル・インビジブル──
“触れたら6が出る”役割を空気に与えるッ!!」
──ダイスを振る。
6。
6。
6。
6。
6。
6。
(合計、36! あと1だ!!)
りこ「で、でも……
1なんて、都合よく出せるの……!?」
勝己「叫べぇぇぇ!!りこぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
才崎「ふふ、さぁ……
運との戦いだね。」
りこ「勝己くぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!!」
勝己「インビンシブル・インビジブル──
“声の振動で物体をひっくり返す”力を空気に持たせる!!」
サイコロが空中でクルンとひっくり返る!
──出た目は、1。
勝己「6の反対面は、1だぜ。」
才崎「……今の。
サイコロに干渉したのでは?」
勝己「は?
俺、**“サイコロ”なんて一言も言ってねぇけどなぁ〜?」
──へへっ。
ざまぁみろ、吟遊野郎。
俺は、小ばかにした顔でヤツをにらみつける。
才崎「最後は──
僕が“魔王”として、君たちと戦おう。」
(出た!TRPGあるある、GMの自己投影ラスボス!!)
勝己「へっ──
ボコボコにしてやるよ、この吟遊野郎ッ!!」
──ルール説明が告げられる。
•勝己ライフ:300
•才崎ライフ:1000
•アクションごとに攻撃数値決定
•才崎はターンごとに**“イベントダイス”1D6を振る**
•10ターン以内に決着がつかなければ、魔王=才崎の勝ち
才崎「さぁ、ヒーローのターンだ」
勝己「おうよ!!」
勝己「インビンシブル・インビジブル──
“てめえを殴る”役割を空気に与える!!!」
──バコォン!!!
空気が炸裂、才崎の身体を吹き飛ばす!!
才崎「ふふ……
残り、850だよ。」
勝己「っし、まぁ──
初撃にしてはイイ感じじゃねえの?」
(いける。
いけるぞ、これは──!)
才崎「──イベントダイス!」
才崎「さぁ……
ダイスの女神は微笑むか、それとも……あざ笑うか?」
──コロコロ……ピタッ。
出目は──4。
才崎「おやおや……
イベント発動──《姫、洗脳》。」
(──な、なんだって……!?)
空から、ふわぁっと──
りこが舞い降りてきた。
(ちっくしょおおおおお!!!
さっき視力に役割与えときゃよかった!!!
ぜってぇ見えてたもん!お得だったもん!!!!)
──だが、
りこの瞳には光がない。
りこ「……才崎さま……」
(し、死んだ目してやがるッ!!)
──しかも次の瞬間。
りこが、才崎の前に跪いた。
(うわああああああああ!!!
これ、“寝取られ”だよな!?
完っ全に、寝取られイベントだよな!?
くそがああああああ!!!!)
才崎「──あ、ちなみに」
才崎「“姫の愛”で、さっきのダメージはチャラだからね。」
才崎「ライフ──1000に戻りました。」
(ざっけんなクソがああああああ!!!!!!)
勝己「……だったら俺は──
直接てめえを殴る!!」
才崎「いいのかい?
それじゃ100ダメージしか出ないよ?」
勝己「ふん、いいぜ。
てめえ、攻撃にファギア使ったら2手番扱いってルール、
使わなきゃ制限ねえんだよなぁ!?」
(へへ、ざまあみろ。ルールの隙間、ブチ抜いてやる)
才崎「……ふふ。
でも僕には“姫の愛”がある。
小さなダメージなら──
なんどでも回復できる。」
勝己「……へぇ。
じゃあ──
その“姫の愛”を逆手に取らせてもらうぜ。」
勝己「インビンシブル・インビジブル──
才崎の発言の“空気振動”を、“いやらしい言葉”に変換する役割を空気に与える!!」
──才崎「愛してくれ」
→りこに届いた言葉:「抱きしめたいなぁ!」
りこ「え?才崎さま……?」
才崎「な、なんだ今のは!?」
→才崎「おい、発動しないじゃないか!」
→りこに届いた言葉:「ドレスなんて脱げよ」
りこ「い、いやああああああああああああ!!!!!!」
──次の瞬間。
りこの目が、光を取り戻した。
(……やった!
“才崎の物語”から、りこを取り戻した!!!)
勝己「インビンシブル・インビジブル──
“姫から俺へのダメージを、GMに移す”役割を空気に与える。」
りこ「えっ……?」
勝己「……ぶってください。
お願いします!!(土下座)」
りこ「こ、この……変態ぃぃぃぃぃ!!!」
──バゴッ!!!
勝己「いってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
(……でも、悪くねえ……ッ!)
才崎「な、なぜだ!?
なぜ攻撃が終わらない!!」
勝己「へっ、バグだよバグ!!
同行NPCの連続行動チェック、怠ったお前のミスだろーがぁ!!」
──りこ「ご、ごめん!!ごめんってば!!」
──バキッ!ドカッ!!
勝己「あ、あぁ……
**見えてる!**ふふ……儲けたぜ!!」
りこ「このッ!変態ッ!!!!!!」
──ズガァァァァァァァァァァン!!!!!!
りこの“変態蹴り”が、才崎=魔王に炸裂した!!
──才崎のライフ、0。
【勝者:渡川 勝己】
才崎「う、うーん……」
──気がつくと、そこはいつものアリアケ公園だった。
勝己「ち……穴だらけだったぜ、欠陥ゲームがよ……」
りこ「でも……
その“穴”がなかったら、私は戻って来れなかったかもね。」
才崎は、静かに立ち上がる。
才崎「──最高に楽しかったよ」
「グッドゲーム。」
サムズアップしてくる。
勝己「二度とやるかぁ!!ふざけんなぁぁぁ!!」
りこ「ふふ、でもまた遊んでくれそうな顔してるよ」
勝己「してねーよ!!してねえからな!!」
──そんな風に、俺たちは、
現実の中で“自分の物語”を歩き始めた──
お疲れ様でした!!!
今回のエピソードは「ジジ戦」でも屈指の名(迷?)バトル編でした!
まさかの物語内TRPG空間バトル。
しかもラスボスがゲームマスターという、厨二心全開の展開!
勝己のバカ正直さとファギアの屁理屈運用が輝いた神回でした!
「りこ洗脳」→「いやらしい声変換」→「変態プレイ反射ダメージ」
という、読者の予想を5周半くらい上回る結末には、
書いてるこちらも笑いと熱さと涙で仕上がりました。
そして才崎くん……
おまえ本当、次回出てきたらもっとヒドい目に遭うからな!!(愛)
次回からはちょっと落ち着いた日常編かな?
でも、勝己の物語はまだまだ終わらない!
引き続き応援よろしくお願いします!
ジジ戦は、まだ始まったばかりだ!




