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神の血引いた俺、ジジイになるまで戦うってよ  作者: あーちらいおん
第1部「渡川勝己(とがわかつみ)高校生編」その2
19/22

第1部第18話「覚醒」

物語は動き出す。

勝己は力の使い方を、りこは守りたい存在と出会う。


【2013年7月1日】


オッス、渡川勝己(とがわかつみ)だ。

──ここは、地下のファギア闘技場。

大門を追って、たどり着いた闇のバトルフィールド。

俺は2勝を挙げて、一時の休憩を与えられた。

控室に足を踏み入れた瞬間──そこに**“異物”**がいた。

男「やぁ、すごい歓声だったねー。

君、すっごい戦いしてたね。──スゴいんだ、キミ?」

──仮面の男だった。



白の陶器のような仮面に、満面の笑顔が張り付いている。

まるで**喜怒哀楽を演じることすら放棄した、“笑顔の死神”**みたいな男だった。

勝己の内心「……関わるとヤベえ。関わらんでおこう」

男「無視かぁ。それも仕方ないか──

だって僕たち、このあと戦うかもしれない敵同士、だもんねぇ」

勝己「……喋るのも、疲れるからなぁ」

──警戒は解かない。

こいつの**“会話のリズム”が明らかに異常**だ。



男「ところで──

“大門くん”って知ってる?」

──警告のベルが、頭の中で鳴った。

笑顔の仮面の男が、ポツリと呟く。

仮面の男「彼──大門くんは、ここで4回も5連勝を成し遂げた男だよ。

つまり、4000万円を手にした勝者さ」

勝己「へぇ、そいつはすげぇな。若ぇのによぉ」

(適当に流しておく。こいつ、妙に情報持ちすぎてる)

仮面の男「彼のお父さんは……北海道でそこそこ名の知れたお菓子会社の親族役員だった。

でもね──借金がその父親に全部のしかかって、家族はバラバラになった」

──仮面の男は、懐から一枚の写真を出してきた。

仮面の男「これが彼の2個下の“妹”だよ。

まぁ、“養女”だから血は繋がってないんだけどね」



──!!

俺は目を疑った。

その写真に映っている少女は──

りこに、そっくりだった。

勝己(……これかよ……

あいつが“りこ”に異様に執着してた理由は──

妹の面影を重ねてたってわけかよ!!)

仮面の男「大門くんは、“ビオ”を信じた。

進化生命体ビオは、死んだものを“蘇らせる力”を持ってる──

そう信じて、力を欲した。

──妹をよみがえらせる力を得るために。」

勝己「……」

仮面の男「最初はさ、ここで“仲間”を見つけようとしてたんだ。

一緒に、ビオに辿り着けるような。

でも──“何か”が彼を狂わせていった」




──“何か”?

こいつ、なんでそんなに詳しいんだ?

勝己(……なんだこいつは?

まるで、全部“見てた”みたいな口ぶりじゃねえか……)

仮面の男の口元が、ゆがんだ笑みを浮かべた。

仮面の男「“ビオ”と名を出した時、君の目がピクリと動いたね……

ならば教えてやろう──

お前は、“フェルト・リバーメイカー”の子孫だ。」



勝己「……は?」

男の声が低くなる。まるで地の底から響いてくるような声だった。

仮面の男「ビオ──“完全なる進化”を目指した存在。

その始まりはひとりの女だった。

フェルト・リバーメイカー。

彼女の血が、ビオの進化のトリガーになったんだ」




勝己「……そいつが……俺の、先祖……?」

仮面の奥、ギラリと血走った瞳が見えた。

仮面の男「そしてその血を受け継ぐ者が、渡川勝己、お前だ!!

お前たちの存在こそが、ビオにとっての“障害”だ。

だから今度こそ──消し去る」

勝己「“今度こそ”って……10年前──」

仮面の男「そうだ。

深山美沙都が、ビオを滅ぼした。

進化の果て、最も完全に近づいたビオを──だ」

──脳裏に、あのとんでもない訓練の日々が蘇る。

勝己(美沙都さん……あれほどの力を持つ理由が、そこにあったのか)

仮面の男「だがな──ビオは“死んでいない”

ビオは最後に“子”を残した。

その子が、今頃この町に**“連れて来られる”**だろう」

勝己「……っ!」

仮面の男「いずれお前たちが対峙する。

その子は、“記憶”も“意思”も持たないかもしれない。

だが──ビオのDNAが脈打っている。

進化は、再び始まるのだ……!」





東谷町の空が、真っ黒に染まりはじめていた。

ぽつ、ぽつと、窓を叩く雨音。

それは、まるで何かの“警鐘”のように響いていた。

りこはカーテンの隙間から、外を見た。



……そこにいた。

街灯に照らされた雨の中、

ただじっと立ち尽くすひとりの少年がいた。

色白で、小さな身体。

表情は……まるで何かを探しているようだった。

りこ「……あの子、ずっと濡れてる……」

いてもたってもいられなかった。

りこは傘を持って外に出ると、

その子の肩にそっと差し出した。



りこ「どうしてこんなところにいたの? 名前、聞かせてくれる?」

少年は、小さく首を振った。

少年「……わかんない……」

その瞬間──ゴロゴロォン!!

雷が夜空を裂く。



少年「……っ!!」

バッと、りこの服の袖を握る。

震えていた。びしょぬれの身体で、小刻みに。

少年「……ママ……?」

りこ「……え?」

少年「……ママ……じゃない……の……?」

その瞳に浮かんだ涙。

声が、震えていた。

りこは一瞬戸惑う──でも、すぐに微笑んだ。

りこ「ううん、ママでいいよ。落ち着いて。大丈夫だから」

少年は、涙をぽろりとこぼした。

その涙は、まるで……人間の“心”を持っている証のようだった。



仮面の男の言葉が、耳にこびりついて離れなかった。

「あの子は“ビオ”そのものだ」

嘘だと思いたかった。

けれど……心のどこかで確信があった。

勝己(やべえ、マジでやべえ……!

今すぐ美沙都さんに伝えねえと……)

地下通路を、駆け足で進む。

と──

風の流れ。

空気の違和感。

──奴がいる。

鼻息のクセ。

歪んだテンション。

大門だ。



案の定、ニヤリと歪んだ顔を仮面の下に潜ませながら、立ち止まった。

大門「へぇ、勝己くんも来たんだ?」

勝己「……その呼び方、やめろ」

大門「次で5戦目だろ?

このままいけば、お前と俺の“最終決戦”ってわけだ」

勝己「……ああ、奇しくも因縁ってやつだな」

大門「オレは5連勝すりゃあ、この街に家が持てる。

“りこと二人暮らし”するための、な」

勝己「……くだらねぇ妄想、語るなよ」

大門「もう“名前”も考えてんだ、一人目の」

勝己「……!」



その瞬間、勝己の中で何かがはじけた。

勝己「わかりたくもねぇし、聞きたくもねえ。

──とっとと、失せろ」

大門「ククッ、楽しみにしてるぜ、ダ・イ・ゴ・ロ・ウ?」

──肩がぶつかる。

すれ違いざま、大門の吐息が背中にかかった気がして、

勝己はぐっと歯を食いしばる。

(ぜってぇ、負けねえ。

こんなクズに、りこも、この街も、渡すもんか……!)




司会「では、3人目の相手は──ッ!」

司会「その身に宿すは超古代のファギア!ティラノマン!!」

闘技場がざわつく。

巨大な体躯。広がる鋭い腕。そして──極太の“しっぽ”。

ティラノマン「ガウッ!」

……なんか雄叫び入れとけば強く見えると思ってんのか。

勝己「能書きはいい、とっとと始めようぜ。

客が待ってるんだろ?」

司会「ゴォング!!」

──瞬間。

ティラノマンの足が跳ねた。

ブオン!!と音を立てて、しっぽが金網を裂くように叩きつけられる!!

勝己「うっ……!?」

ギリギリで回避。

だが空気の感覚が……狂ってる。

ティラノマン「オイ、そろそろ種明かししてやるよ」

「お前の“空気操作”、動き出す瞬間の気圧の乱れでわかんだよ!!」

勝己(こいつ、目が……)

ティラノマン「“目がいい”んじゃねぇ。“空気の乱れ”を、見てるんだよ!!!」

ティラノマン「どうだ、この爪の動き!──これが、**“狩りの動き”**だァッ!!」

金網が切り裂かれるほどの高速スラッシュ。

勝己は身を翻し、なんとか一撃を回避する!

勝己(ちくしょう!避けるので精いっぱいだ……)

巨大な尾が風を巻き、刃のように振り回される。

それに加えて──背中の骨状の「ステゴプレート」が、伸縮している。

勝己(あのステゴ部分、エネルギー制御の調整器……!)

(なるほど、こいつ……大門と同じ、肉体変化型ファギアか!)

ティラノマン「どうした少年!顔色が悪いぜぇ!防戦一方ってやつだぁ!」

勝己「……いーや、違うね」

汗をぬぐい、仮面の下で不敵に笑う。

勝己「博物館見学の時間は終わりだ。」

ティラノマン「なにぃ?」

勝己「──見切った!!」


ティラノマン「なんだその指の動きは!!」

仮面の下、勝己はニヤリと笑う。

勝己「──書き込んでんだよ。コードを、空気に!!」

ティラノマン「ふざけた真似を!!空気ごときに負ける恐竜じゃねえ!!」

だが、勝己は止まらない。





勝利(親父)「1も、小さく見れば“100”と同じように集まっているという考えもできるんだよ。」

その言葉が、ずっと脳裏に残っていた。

今、答えが見えた──

“1つの役割”に縛られてたのは、自分の思い込みだった。

勝己「与えるのは──0.001のパンチ。」

指を突き出し、無数の点に“役割”を書き込む。

勝己「だがな、それを──1000発だ!!」

勝己「サウザンドスマッシュ!!!」

空気の粒がミサイルのようにティラノマンを包囲する!!

ティラノマン「なっ、俺は恐竜の頂点──そんなパンチでっ……!」

ドガガガガガガ!!!

無数の0.001パンチが、一撃ごとに細胞を震わせ、神経を刺激し、筋肉を弾き飛ばす!

ティラノマン「見事だ……お前は……(バタリ)」

司会の実況が熱い!!

「今宵の闘技場はまるで地獄の門!

ダイゴロウ4戦目は対戦相手の棄権により不戦勝!

男と男、女をかけた因縁の戦いがここに!!」

大門フュージョンデーモンがマントを脱ぎ捨て、肉体に宿した複数の動物がうごめく──

観客「おおおおお!!」

司会「一方、対するはこの男!!

空気の魔術師──“ダイゴロウ”!!

このアリーナを変えた革命児ッ!!」

大門「なぁ勝己、お前さぁ、俺の留守中に“俺の女”に何しやがった?」

勝己「ハッ、勘違いも甚だしいな。お前みたいなゲスが、りこに触れる資格なんかねぇよ。」

大門「触れただけじゃねぇ、今夜、最後の一本勝ち取って──

“あいつ”を孕ませてやるよ!!俺の子をな!!」

勝己「……殺す。」

ヤジ1「このチビが調子乗ってんじゃねーぞ!」

ヤジ2「女を盾に勝ち誇る奴に男の価値はねぇぞ!!」

ヤジ3「フュージョンデーモン、地獄見せてやれ!!」

司会「ゴングぅうううう!!!」

大門「お前、試合一つ少ないとはいえ、疲れは溜まってるだろ? 二分間、クモの糸は使わないでおいてやるよ」

余裕ぶった大門の態度が、逆に不気味だった。

だが、そこまで油断してくれるなら──俺のサウザンドスマッシュでぶち抜いてやる!



「跳ね返す力で進化した俺の跳躍。お前が追いつけると思うなよ? 童話なら、ウサギとカメか? だが俺は──油断しねぇウサギなんだわ!」

「だったら、ゴールで待ってるカメの勝ちってことだ!」

煽り返した瞬間、視界から大門が消えた。

──ドスッ!

強烈な蹴りが、俺の腹を撃ち抜く。痛みとともに、息が詰まった。

「司会! 経過時間は!」

「……一分五秒!」

ちっ……! 時間はまだ半分! コードがまとまらねぇ……!

あいつの動き、俺と“軸”が違いすぎる!

まるで二次元と三次元のゲーム。こっちは平面の戦いをしてるのに、奴は空間を自在に飛び回ってやがる……!




~回想~

勝己「りこ、お前もファギアあるんだな」

りこ「てへへ、でもね、わたしのは戦えない力だよ。だって、人の記憶を読み取るくらいしかできないもん。ビジョンも出せないし」

勝己「ふーん……でもさ、それって逆にスゴくね? 強請ったりできんじゃねえの? 俺だったらそう使うけどな」

りこ「……勝己くん、それ、わたしにそんな悪い使い方してほしいって思ってるの?」

勝己「いや、まあ……お前には、隠し事できねーからな」

りこ「ふふっ、そうだよね。……でもね、勝己くんのファギア――《インビンシブルインビジブル》はね。わたし、ずっと思ってたんだ」

勝己「ん?」

りこ「きっとそれは――“誰かを助けるための、夢の演算機”なんだよ」





勝己「そうだ……拳の一発分の威力が0.8でも、800発叩き込めば、あいつには十分だ!」

俺は息を整えながら、自分に言い聞かせる。

勝己「残りの0.2は――お前を掴むために使わせてもらうぜ!」

勝己「大門、てめぇを捕まえる“力”に0.2使う! さあ、キメるぞ!!」

大門「は……? な、なんだ!? 背中が引っ張られるッ……!?」

勝己「ライフは“きっちり”削ればいい。余分はいらねえ!」

勝己「――エイティオー・ホールド・コンボ!!!」

炸裂した一撃に、大門の身体が吹き飛ぶ――!

司会「ダウンッ!! フュージョン・デーモン、敗れる! ダイゴロウ、いや――勝己が! 登場以来、無敗だった男に初の土をつけたぁぁ!!」

アリーナに鳴り響く歓声の中、俺は、賞金の入ったケースを片手に歩き出した。

静かに、そして確かに。

そして――アリーナの出口で、仮面を外す。

俺の名前は、渡川勝己だ。

仮面をつけているのはここまでだな。



あーちらいおんです。遅くなり申し訳ございません。

第1部残りも続けて投稿しますので引き続きよろしくお願いします!

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