第1部第17話「死闘」
宿敵、大門勇吾の後をつけ、公園の怪しげな小屋に入った勝己
その地下ではなんと、ファギア持ちによる超能力の戦いが繰り広げられていた。
──2013年7月1日
第17話「死闘」
朝の東谷高校。
俺は登校してすぐ、職員室へ呼び出された。
勝己(なんだよ、朝からツイてねえな……)
理事長「渡川。
──これ、君か?」
そう言われて、見せられたのは──
昨夜、俺がりこをお姫様抱っこしている写真だった。
勝己(……うそだろ!?)
理事長「しかも時間は、深夜──…これは風紀上、よろしくないな」
──いや、ちょっと待て。
そんな時間に外をうろついて、写真撮ってるそいつの方が問題じゃねえのか!?
──とは思ったが。
結局、俺とりこで“反省文”を書くことになった。
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教室の隅。
りこと並んで、反省文を書く時間。
勝己「……ったくよ」
りこ「ふふっ、でも……
こうやって一緒に罰を受けるのって、なんか青春っぽくない?」
勝己「どんな青春だよ……」
──そのとき、りこがぽつりと呟いた。
りこ「これで、模範生じゃなくなっちゃった。
ねえ、勝己くん──責任、取ってくれる?」
勝己「……っ!?」
思わず手が止まった。
──何気ない一言。
けど、それはあまりにもストレートで。
勝己「……とっとと終わらせようぜ」
俺は顔を逸らしながら、ペンを走らせる。
──このドキドキは、罰のせいじゃない。
きっと、恋のせいだ。
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反省文を提出し、理事長室を後にする俺たち。
その背中には、
ちょっぴりの後悔と、たっぷりのときめきがあった。
──その時だった。
教室の静けさを切り裂くように、
玄関の方から、あの“クソったれ”の声がした。
勝己(……大門!?)
──遠くてよく聞き取れない。
だが、俺にはあるじゃねえか。
勝己「インビンシブルインビジブル、
音を集める役割を空気に与える──」
──周囲の音が、鮮明に聞こえた。
大門「だからよぉ……鹿子のやつ、
渡川と夜遊びしてたんだぜ!」
──……は?
勝己
オタクA「幻滅だわ〜」
オタクB「ねえ、大門くんはバイトの帰りだったの?」
大門「バ、バカ!!
学校で言うんじゃねえよっ!!」
──なるほど。
大門は夜遅くまでバイトしてる。
つまり、深夜に活動しても怪しまれない環境にあるってわけか──
──けどよ。
人の噂を撒き散らすような、
そんな奴に言われる筋合いはねえんだよ。
勝己(……覚悟しとけ、大門)
俺はスマホを取り出し、
美沙都さんに電話をかけた。
プルル……プッ
美沙都「──何の用だ?」
勝己「りこを……無事に、家まで送り届けてほしいんだ。」
電話越しに聞こえる、小さな声。
りこ「──やだ。勝己くんと一緒がいい!!」
俺はりこの瞳を見つめた。
そのまっすぐな願いが、心を揺さぶる。
けど──
勝己「……大門にまた、ヤラれそうになってもいいのか?」
りこ「でも……」
俺は、少し言葉に詰まった。
本当は、ずっと隣にいてほしいに決まってる。
けど、それじゃダメなんだ。
勝己「……お前、可愛いんだからさ。
お前が傷つくなんてことあったら、
俺が俺でいられなくなっちまうよ。」
りこ「……わかったぁ。
でも、ケガはしないでね?
それと、早くおうちに帰ってくること。──わかった?」
勝己「ああ、約束する」
──
玄関前にいた美沙都さんが、時計を見ていた。
無言で、でもしっかりとした目で俺を見つめる。
俺は、静かに頭を下げた。
その瞬間。
りこは、美沙都さんに連れられて、
静かに学校から去っていった。
──この背中を、
二度と後悔で見送らないために。
俺は行く。
「例の超人クラブっすねー」
どこかのオタクがそんな風に呟いていた。
大門「……さて、今日も頑張るぜぇ」
──
アリアケ公園。
あいつの姿が見える。
勝己「インビンシブルインビジブル、
音を静かにさせる役割を“自分からまかれる風”に与える──」
──空気が、俺の周囲をそっと包み込む。
音を断ち、気配を消して、
俺は──“死闘”へ向けて、尾行を開始した。
アリアケ公園、アイスアリーナの裏手──
誰も近寄らない管理小屋の前で、大門の姿が消えた。
勝己(……入ってから、もう10分経った)
気配も音も、ない。
勝己「──内職でもしてんのかよ、クソが」
俺は、扉の前で立ち止まる。
そして──
勝己「インビンシブルインビジブル、
視界をぼやかす役割を、空気に与える」
──そっと、ノックする。
勝己「……もしもーし?」
返事は、ない。
勝己「おやぁ?留守かな?」
──扉を、静かに開く。
中には、
鉄のブロックと、それがハマりそうな複雑なオブジェ。
ただ──
普通の手じゃ、とてもじゃねえが入れられない配置だった。
勝己(つまり、仕掛けってわけだな)
俺は、鉄のブロックを持ち上げ、
その“重さ”を、感覚でしっかりと覚える。
勝己「──インビンシブルインビジブル。
鉄ブロックと同じ重さの役割を、空気に与えて……設置。」
カチリ。
──ビンゴ。
仕掛けが反応し、
壁がギリギリと音を立てて開き──
中から、鉄の扉が現れた。
勝己「なるほどねぇ……こういうの、キライじゃねえよ」
──けど。
俺は“その先”を確認するため、
ある“保険”をかけておく。
勝己「もしこの扉の向こうに呼吸があった場合、
静電気を俺に返す役割を、空気に与える──」
──反応、なし。
勝己「……よし、いない」
静かに、息を整える。
今、風は俺の味方だ。
空気に刻まれた役割が、すべてを導いてくれる。
俺は、
“真実”へと続く鉄の扉を、ゆっくりと開けた。
──鉄の扉を開いた先。
そこは、狭く閉ざされた無機質な空間だった。
勝己「……ん?」
すぐに気づいた。
床が、ゆっくりと沈んでいる──
勝己(エレベーターか!?)
ギィィ……
空間が下へと降りていく音だけが響く。
数十秒。
再び、カコンと鈍い音を立てて停止すると──
扉が、静かに開いた。
その向こうに、仮面をかぶった男が立っていた。
仮面の男「お兄さん新入り?
──テストに合格したってことは同志!仮面、被ってね!」
勝己「……え?」
──何の説明もなく、仮面を手渡される。
でも──
勝己(呻いて外れなくなるとか、針が出て怪物になるとか、
……ないよな?)
恐る恐る、被ってみる。
──ただの仮面。
今のところ、特に異常はない。
仮面の男「んじゃ、こっちねー同志!」
無表情なまま、男が案内する。
その道中──
天井や壁には無数のカメラ。
勝己(まさか……
ここで戦わせて、金持ちが観戦してるとか……
──いやいや、マンガじゃあるまいし)
自分に言い聞かせる。
──だが。
その“まさか”は、すぐに現実になった。
目の前に広がるのは、
円形の石壁に囲まれた「闘技場」だった。
勝己
そこでは、仮面をつけた連中がストレッチをしていた。
──体を慣らし、拳を握り、目を閉じる。
まるで、これから命を懸けて何かに挑む者の姿。
勝己「……まさか、ここで“戦わされる”のか?」
──俺は、
とんでもない“地下の真実”に足を踏み入れてしまったらしい。
筋骨隆々の仮面が、俺を見下ろして笑う。
仮面のムキムキ「なんだ、背も175くらいのチビじゃねえか?」
勝己(うるせぇ、これでもわりと高い方なんだぞ……)
もう一人、今度は肥満気味の仮面が俺をジロジロと見る。
仮面のデブ「変化形の能力っぽいよ。
──ブロック置いてなかったみたいだし」
(チッ、見られてたか)
その時、奥の椅子に座っていた“管理者っぽい仮面”が口を開いた。
仮面(管理)「キミ、名前は?」
一瞬、迷ったが──
俺は、小学2年で亡くなったじいちゃんの名前を思い出す。
勝己「……ダイゴロウだ」
仮面(管理)「おおっとぉ!?
変化形ファギア持ちのニューフェイスがアリーナに登場!
その名も──ダイゴロウ!!」
──
会場がざわついた。
仮面(管理)「そして記念すべき初戦の相手は──
勝率8割を誇るアリーナの名物ファイター!!
破壊と肉体の申し子──“ガルマックス”!!!」
ドオォォン!!!
巨体を揺らしながら、
仮面を被った男──ガルマックスが現れる。
ガルマックス「よぉ、さっきのおチビちゃんかぁ。
五体満足でパパママの元に帰れるといいなぁ!?」
勝己「──ふっ、いいのかよ?そんなデカい口叩いて?
デケぇのは身体だけにしとけや!
ウドの大木野郎がよぉ!」
ガルマックス「……てめぇッ!!」
管理仮面が、手を高く掲げ──
仮面(管理)「──ルールはひとつ!
凶器は“能力”のみ!!
それ以外は、肉弾戦!投げ技!格闘技!なんでもありッ!!!
──さあ、ゴングです!!!!」
──カァァァァァン!!!!!!
ガルマックスの右腕が──
金属の塊に変わり、まるで扇風機のように回転を始めた。
ガルマックス「俺のファギアは《メタリックスレイヤー》!
この金属の身体で、お前の四肢、まとめて切り落としてやるぜ!!」
勝己(なるほど、それで“五体満足”がどうとか言ってたのかよ……)
俺は足元の空気に「跳ね返す」役割を与え、
飛び上がり──闘技場の金網に手をかける。
観客たちのヤジが飛ぶ。
ヤジ1「なんだよ、煽ってたくせに逃げてんのかよ〜!」 ヤジ2「血を見せろ!やっちまえガルマックス!!」
……雑音は切る。
頭の中で、美沙都さんの言葉がよみがえる。
『──敵を見るな。“視ろ”だ。』
勝己(そうか……コイツ、風を放ってるだけじゃねえ。
回転の中心には、“吸い込み”も生じてるはずだ──!)
勝己「──頭上注意だぜ、このスットコドッコイ!!」
煽りと同時に、
ガルマックスが回転アームをこちらに向ける!
ガルマックス「馬鹿め!!叩き落としてやるよ、強風でな!!」
だが──俺はすでに仕込んでいた。
勝己「──さっき、上から“ブロック状の空気”を落としたんだ。」
ガルマックス「ハァ?それがどうしたってんだよ!?」
勝己「そいつは──“砕ける”前提で落とした」
ガルマックス「ガハハ!!小学生の自由研究かよ、おいおい!」
──俺は、仮面の下で笑った。
勝己「──いいか、俺の空気には“ルール”がある」
ガルマックス「ルールぅ?ハッ、どうせ形状変化くらいだろ?」
勝己「──いや、“再付与”できるんだよ。“離れてても”な」
ガルマックス「何言ってんだテメェ、空気がどこに──」
勝己「──お前さぁ、ドライヤーの吹き出し口に手当てたことねぇのか?
……“風を出すとこ”は、“空気を吸ってる”んだよ」
ガルマックス「ハ──」
その時だった。
ズォッッッッ!!!!!!
扇風機のように吸い込まれた、砕けた“空気ブロック”。
──そこには、**“爆発の役割”**がすでに込められていた!!
勝己「ドカンだぜ!!!」
ド ゴォォォォォォン!!!!!!
爆発ッ!!
吹き飛んだガルマックスの巨体が、
金網に叩きつけられ──頭を打ちつけ、沈黙した。
【──勝者、“ダイゴロウ”!!!!】
観客「おおおおおおおおおおお!!!」
勝己「フッ、ウドの大木がよ……
根っこが浅ぇんだよ、お前は。」
──仮面の下、俺はひとつ息を吐いた。
仮面の司会者がマイクを握り、興奮気味に叫んだ。
司会「奇想天外なトリックスター!これぞ期待の新人だぁ!!
変化形ファギア、“ダイゴロウ”の勝利だあああああああ!!!」
観客席から歓声とヤジが飛ぶ!
ヤジ1「ダイゴロウ!!」
ヤジ2「やるなぁマジックショーみてぇだったぜ!!」
ヤジ3「5連勝生き残れよ!!伝説になれよおおお!!」
……5連勝?
勝己「……なんだよ、“5勝”ってのは」
司会「あー、申し訳ない!説明不足でした!!
実はこの《アリーナ》では──
**5連勝達成者に《賞金1000万円》が授与されるのだあああああ!!!!」
勝己「一千万だと……!?
──じゃあガルマックスってヤツは?」
司会「彼は3勝か4勝で、いつも止まってしまうんですよォ……!」
勝己(なるほど……なら、俺が“最初の壁”を超えたってことか)
観客が次々と声を上げる中、司会がマイクをこちらに向けた。
司会「さて、ダイゴロウ!!
──君はその一千万、なにに使いたいッ!?」
勝己「……そうだな」
仮面の下で、俺はあの子の顔を思い出していた。
りこ。
俺を信じてくれて、命をかけて守りたいと思えた子。
──いつか、約束していた気がする。
勝己「──彼女と暮らす家が欲しいかな」
沈黙。
観客「なんだよこの色男!!!」
観客2「なんで仮面なのにキュンキュンすんだよ!!」
司会「こりゃあ、ますます見逃せないッ!!」
勝己「さて──次の相手、早く来いよ」
司会「続いての挑戦者はッ!!
“頭脳明白”!
その大柄な身体に宿るのは、鋭利なる冷徹な知性ッ!!
《知性の巨人──ゴウキ!!!》」
リングの奥から、
肥満体型の仮面ファイターが登場した。
勝己「ああ、さっき俺の能力について何か語ってた──あのデブか」
ゴウキ「……ほほっ。
君の能力、実に面白い。
だがそれも、今日で“おしまい”ですよ?
彼女との家の夢──潰えることになりますから」
勝己「言ってくれるじゃねえか」
司会「さああああああああ!!!!
ゴングです!!!!!!」
──カァァァァァァン!!!!!!
第2戦、開幕──!!!
──リングに、霧が立ち込める。
いや……これは霧じゃない。
**熱を帯びた“水蒸気”**だ!!
勝己(こいつの能力……まさか水系!?)
ゴウキ「フフ……我がファギアの名は──
《ボイル&クーラー》。
水の“熱”を操り、蒸気にして満ちさせ……
そして、それを冷却し“氷の針”と成す!」
シュゥゥゥッッ……!!
空中の水蒸気が凍り、氷の針となって飛来する!
勝己「チッ!」
咄嗟に腕を上げて防御──
──氷の刃が、弾かれた!!
勝己(ギリギリ防げたが……厄介な能力だな!)
──そこで、俺は“ある操作”を思い出す。
勝己(そうだ……蒸気は、上に昇る性質がある)
俺は、口元を吊り上げながら言った。
勝己「……おい、オッサン。一つ忠告しといてやるぜ」
「この先もこの闘技場で戦う気なら、
そのヒラッヒラのマフラーはやめるんだな」
ゴウキ「……なんのことかな?」
勝己「もう“仕込み”は済んでる。
──泡状の空気の膜を浮かせた。
そしてそれは、地面から……お前のマフラーの高さまで漂ってる」
ゴウキ「水滴にして落とせば、消せる!」
勝己「……あーあ、そういうタイプか。
シャワーで湯気に水かけりゃ消えると思ってるクチだな?
“水の温度”を操ってるくせに、熱力学の基本も知らねえのかよ」
ゴウキ「なに!?」
勝己「お前に教えてやるよ──
さっき説明したのは“空気の形状”だけだったよな?」
ゴウキ「形状……だけ?」
勝己「──役割は、まだ言ってねえよな」
ゴウキ「ま、まさか……!」
勝己「答えてやるよ。
てめえのマフラーが揺れて、あの“泡状空気”にぶつかったとき──
その瞬間から、“てめえが気を失うまで”、
マフラーがてめえの首を絞め続けるって役割だ!!!」
ゴウキ「ッ!!?!」
──マフラーがふわりと揺れた。
次の瞬間、
ガクン、とゴウキの身体が崩れ落ちた。
白目を剥き、泡を吹いて失神。
勝者、“ダイゴロウ”!!!
観客「ダイゴロウ!!!」「また戦術勝ちだ!!」「えぐすぎる!!」
司会「お見事!2勝達成ッ!!
なお、ファギアの公平性保持のため──
次の対戦者との戦闘は、観戦・盗聴・干渉、すべて禁止となります!!
ダイゴロウ、休憩室へ!!」
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勝己「ふぅ……なんとか、勝てたな」
仮面の下、俺は小さく息をついた。
──あと、3勝。
彼女と“未来”をつくるには……まだ、終われねぇ。
鮮やかに戦う勝己
次の戦いも華麗に決めることが出来るでしょうか、次回もこうご期待




