第1部 第12話「写真(しゃしん)」
今回はちょっと現代ホラーじみた、静かな恐怖回。
カメラ小僧、調子乗ってたら人生終わるぞって話です。
ファギア同士の戦いも久しぶりにやや濃いめ。
スマホでパシャッと撮る日常の裏に、もし「記憶」が絡んでたら……?
そんなテーマで書きました。
※スカッとする終わり方なのでご安心を。
2013年 6月17日
第1部 第12話「写真」
──最近のスマホのカメラ、マジでヤバい。
解像度もキレイすぎて、
**もうデジカメいらねえんじゃね?**って思ってる今日この頃。
だってさ、
日常の「残したい一瞬」って、
パシャッとやるだけで、すぐ手元に残るんだぜ?
勝己(……ま、俺も“りこフォルダ”ってのを持ってるわけで)
りこフォルダが──火を噴くぜ!!!
◇ ◇ ◇
──ある女子生徒の視点
……あれ?
なんで私、ここにいるの?
教室? 廊下?
なんか、よくわかんない。
……いや、それよりも──
「10分前が、思い出せない」──
さっきまで何をしてたの?
誰と話してた?
どうやってここに来たの?
……なにも、思い出せない。
◇ ◇ ◇
──勝己の視点に戻る。
本「最近、授業に遅れるやつがかなり増えている。気を引き締めろ」
勝己(……うっわー。
今日も今日とて、宮本(担任)の説教タイムかよ)
勝己(あー……ホームルームめんどくせえ。
早く終わんねぇかな〜〜〜……)
──そして、やっと終わった。
生徒たちがザワザワと立ち上がり、
その中で、ひとりの男子が俺の席に近づいてきた。
堀井「よっ、勝己」
カメラ小僧──堀井。
たしか写真部所属、りこの自撮り騒動の時にちょっと関わってた奴だ。
勝己「で、お前さ──
りこの“きわどい写真”とか、持ってたりしねぇの?」
軽く言ってみたつもりだったが──
堀井「……ないけどさ」
堀井「……りこちゃん貸してくんない?」
勝己「──ダメだ。俺は許可しない」
語気が、自然と強くなっていた。
こいつ、スピリッツトレード事件のとき──
りこと身体が入れ替わった駒留を見かけてたって話がある。
そのときの写真を狙ってたのか──
それとも、別の“欲望”なのか。
勝己(どっちにしろ──
りこをモノみたいに扱うやつには、絶対渡さねぇ)
──昼休み。東谷高校の廊下。
りこは、教室からパンを片手に歩いていた。
すると、カメラを磨きながら歩く男子とすれ違う。
堀井「よお。制服ポスターモデルになったんだってね、りこちゃん」
りこ「あっ……知ってたんだ。うん、そうだよ〜」
ニコっと微笑み返す。
──その瞬間。
堀井「《メモリアスナップ》」
──カシャッ。
手に持ったインスタントカメラで、
りこの写真が唐突に撮られる。
りこ「え……なに? ちょっと、やめてよ」
堀井「10分前に……しておくか」
りこ「えっ……?」
──インスタントカメラから、一枚の写真がウィンッと吐き出される。
そこに映っていたのは──
さっきの昼食、ミートボール入りのお弁当を食べているりこの姿。
堀井「……ミートボール入りの、お弁当だったんだね?」
りこ「……うそ、なんで知ってるの?
一緒に食べたわけでもないのに……!」
堀井は、その写真を片手でビリッと破いた。
りこ「っ……あ、あたまが……!」
頭を押さえて、崩れそうになるりこ。
堀井「……もう、これで──
お弁当を食べた記憶は、なくなったよ。りこちゃん。」
──廊下のざわめきは、何事もなかったかのように、流れていた。
──そのとき、
人気のない廊下の片隅で。
堀井は、りこに向けて、
しゃがみ込みながらカメラを構えていた。
かなり──ローアングルな位置から。
堀井「……いいねぇ。
“見えそうで、ギリ見えない”くらいが一番そそるんだよなぁ……」
りこ「や、やめてってば……!」
その声を無視して、
堀井はまた、インスタントカメラを構える。
堀井「《メモリアスナップ》──」
──カシャ。
りこ「っ……!」
堀井「……今回は“2分前”でいっか」
カメラから吐き出された、
さっきの“りこ”が映る写真を、
堀井は無言で、ビリッと破った。
──その瞬間。
りこ「……え? わたし、なにされたの……?」
目を伏せ、混乱するりこ。
その目には、
たった今まで起きていたことの記憶は──
もう、残っていなかった。
堀井「じゃあねー。りこちゃん」
──写真とともに、
記憶も、尊厳も、破り捨てられていった。
──放課後。
俺が校舎裏を通りかかると、
数人の男子が、ヒソヒソと話していた。
男子A「……マジ? 鹿子のローアングル?」
鹿子──つまり、りこのこと。
堀井「そだよ。
3万で手ぇ打とうや。
これ以上は値上げするぜ?」
男子B「マジかよ、お前天才かよ……」
──その声に、俺の中で何かが弾けた。
勝己「……おい。
何の話してやがる?」
堀井「ん? ああ、写真の売買の話」
言いながら、
堀井は慌ててポケットから何かを隠そうとした。
勝己(……あからさまに、やましい動き)
勝己「おい、テメェ──
そのカメラのデータ、今すぐ見せろや」
堀井「……《メモリアスナップ》」
──カシャ。
突然、堀井がインスタントカメラを構え、
俺を撮った。
堀井「……“1分前”で」
ウィン──と吐き出された写真。
そこには、今まさに堀井に詰め寄ろうとしている、俺の姿が映っていた。
……そして。
堀井「ふっ」
ビリッ──
写真は破かれた。
勝己「……あれ?」
気づけば、俺は校舎裏で、
ただ“なんとなく堀井の前に立っている”状態になっていた。
勝己「……俺、なんで堀井の前にいるんだ?」
堀井「……さぁ? 忘れっぽいんじゃない?」
そう言って、
にやりと笑う堀井の目は、
明らかに何かを“知っている”目だった──
勝己(……おかしい。明らかにおかしい)
ここ数日、
りこや俺の周りで“記憶の空白”みたいな違和感が多すぎる。
誰かが──
俺たちの“時間”を、書き換えている。
勝己(……あの堀井、やっぱり何かやってやがる)
俺はスマホを取り出し、
ある人物にメッセージを送った。
勝己《美沙都さん、不自然なことが多い。
“記憶を消すファギア”があるとして……どう対処すればいいですか?》
──すぐに、返信が届く。
美沙都《お前のファギア。
“意志を空気に浮かせる”ことができただろう。
──それを応用しろ》
勝己(意志を……空気に浮かせる……?)
頭の中で、何かが閃いた。
勝己(記憶が消されるなら──
消される前に、空気に“伝言”を残せばいい)
そう、俺のファギア《インビンシブル・インビジブル》は──
“空気に、意思を込めて命令できる”。
だったら、記憶を奪われる前に……
**“この空間に、俺自身のメモを残しておく”**という方法だって──ある。
勝己「……これで、騙されっぱなしの俺じゃねぇって証明してやるよ。堀井」
──放課後の教室。
りこ「え? 写真? うん、撮ってもいいよ〜」
そう無邪気に答えるりこに、
堀井がニヤつきながらカメラを構えた──そのとき。
勝己「──よぉ、いい写真が撮れそうじゃねぇの?」
堀井「……勝己か。
ま、被写体がいいもんな」
明らかに不機嫌そうな堀井の顔。
だが、俺はすでに“構えて”いた。
勝己「《インビンシブル・インビジブル》──ボソ……」
呟きと同時に、空気に“ある命令”を与える。
堀井「そうか、お前も……ファギア持ちか。
……面倒なことになりそうだな」
堀井「──《メモリアスナップ》」
──カシャ。
堀井のインスタントカメラが俺を撮影する。
堀井「“1分前”で」
ウィン、と写真が吐き出される。
堀井は即座に──それを破いた。
だが、俺は──
勝己「……っ!!」
一瞬、意識がぼやける。だが──
勝己「……俺の“空気”が反応した。
つまり、やっぱり……お前、記憶操作してるじゃねぇか」
堀井「な、なに言ってんだよ……!? 証拠でもあるのかよ!?」
勝己「あるさ──」
俺は空気に命じていた。
──“もし俺が記憶を奪われそうになったら、その記憶を俺に思い出させろ”と。
勝己「俺が空気に与えた“役割”は、
“俺が忘れそうになった記憶を、思い出させる”ってことだ!」
堀井「そ、そんな……!?」
勝己「──もう逃げられねぇぞ。堀井。」
りこ「……記憶を、奪う……?」
勝己「ああ。
りこ──そいつの“記憶”、見てみろ!」
一瞬、りこの瞳が鋭く光った。
りこ「……うん」
──りこは堀井の肩に手を添える。
その瞬間──
りこのファギアが発動する。
記憶の断片が、頭の中に流れ込んできた。
カシャ──
しゃがみ込みながら、自分にカメラを向ける堀井。
隠し撮り。
ローアングル。
そして……笑ってる。
りこ「……これ……っ!!」
勝己「……どうやら、言い逃れはできねぇようだな」
堀井「ま、待て! 俺は、別にそんなつもりじゃ──」
勝己「──言い訳、いらねぇ。」
バキッ!!
りこ「変態カメラ小僧は──
被写体に許可を取ってから出直してきなさいっ!!」
ボカッ! ドカッ!
──堀井、コンビでボッコボコ。
数分後。
堀井のスマホ、カメラ、データ、SDカード、すべて初期化&破棄。
印刷された写真も、燃やして完全消去。
勝己「これにて──
変態カメラ小僧、人生終了。」
──スッキリした風が、教室を吹き抜けた。
お読みいただきありがとうございます!
堀井、お前はやりすぎた──そして当然の報いを受けた……。
勝己とりこのコンビプレイ、個人的にもお気に入りのシーンになりました。
ファギアって、単純な力比べだけじゃなく「頭の使い方」でも魅せられるところが好きです。
次回はちょっと熱い恋のお話、引き続きよろしくお願いします!




