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神の血引いた俺、ジジイになるまで戦うってよ  作者: あーちらいおん
第1部「渡川勝己(とがわかつみ)高校生編」その2
12/22

第1部 第11話「継承(けいしょう)」

今回は“修行回”です。

ただの修行じゃありません、山登りからの地獄メニュー付き!


体力、根性、そしてファギアのセンス……全部ぶっ叩き込まれます。


ちなみに、タイトルの「継承」がどこにかかってくるかは、最後まで読んでのお楽しみ。

勝己の“成長”をちょっとだけ感じられる回になってます。

2013年 6月8日

第1部 第11話「継承けいしょう


──俺が、大門からりこを救い出した、あの日のあと。

聞いた話によると、

美沙都さんが、大門と交戦したらしい。

あの人は、10年前の進化生命体事件を終わらせた、伝説の“勝者”。

そのファギア──**《キル・ザ・ブリンガー》**は、無敵とまで言われていた。

けど──


美沙都さんの攻撃を受けても、大門は……仕留めきれなかった。

勝己「マジかよ……あのキル・ザ・ブリンガーでも、ダメだったのかよ……」

ただ、美沙都さん曰く──

「ヤツの“トカゲの再生能力”は、潰した」とのこと。

再生を封じるほどの一撃。

……それだけで、十分すぎるくらい、スゴい。

勝己「マジリスペクトっすわ……」

でもつまり、それでも倒しきれなかったってことは──

──俺が、“次”に進まなきゃいけないってことだ。





──俺が住んでる東谷あずまや町は、自然が豊かな場所だ。

とはいえ、隣のM町方面に向かう途中にある千景ちかげって地域は、

同じ東谷町内でも、なんか“別モン感”がすごい。

中学校も違えば、空気感も違う。

なぜかキャラの濃い連中が多くて、

“あれ?ここ、別の自治体だったっけ?”って錯覚するくらいだ。

まあ、北海道にはよくある話なんだけど。

勝己(だって本町から15kmも離れてんのに、

まだカントリーサイン見てないとか……あ、ここ離れてるんだ!ってやつじゃん)







──そんなこんなで今、俺は列車に揺られていた。

勝己「でさ、美沙都さん。

なんで俺ら、汽車乗ってんの?」

美沙都「千景行きの切符だから。……千景に行くとわかるだろう?」

勝己「だから、“なんで行くのか”を聞いてんだってのぉぉぉ!!」



──列車内、思わずツッコんでしまった。

しかも車内、静かだから反響エグい。

俺、なにこれ? 修行イベント? 転校?

謎が謎を呼ぶ、千景編スタートの車窓から──。

列車はゆっくりと、東谷から千景へ向かって進んでいく。

窓の外に広がるのは、

ただ、ただ、どこまでも続く畑、畑、また畑。

見渡す限り、緑と土のパッチワーク。

勝己(……すっげぇな。

街からたった6km離れただけで、ここまで“田舎感”あるのか)




ふと、窓の向こうに目をやると──

のっそり走るトラクターの姿が見えた。

勝己(うん、これ絶対“修行系の導入”だろ。畑仕事からスタートみたいな──)

未久「今日はね~、サンドイッチ作ったよ~♪」

……は?

勝己(え、ちょ、待って!?)

なにこれ?

このテンション、このメンツ、この空気感──

俺、今から美人いとこ2人とピクニックでも行くの?

楽しい楽しい遠足ですか!?!?

……って油断した瞬間、

だいたい地獄が始まるの、俺もう知ってるんだよな。










──その頃、東谷高校。りこ視点。

りこ「それじゃあ、よろしくお願いします!」

今日は、ちょっと特別な日。

なんと……わたし、制服ポスターのモデルに選ばれちゃいました!

(……えへへ、ちょっと照れるけど、嬉しいなぁ)

校舎の中庭。

制服に身を包んで立つと、カメラマンさんが軽くうなずいた。

カメラマン「硬すぎず、そうそう、うん……いい顔! そのままいこう!」

カシャッ、カシャッ。

シャッター音が、軽やかに響く。

りこ(5枚撮影……かな?)

……どの写真が使われるんだろう。

ちょっと緊張するけど──

楽しみ、かも。







──千景駅。

列車を降りたのは、俺と、深山姉妹。

勝己「……うわ、ここで降りるの、小学校の遠足以来だなぁ……」

懐かしさに、ついぼそりと呟く。

が──その隣で、

美沙都「……フッ。思い出話をしていられるほどの余裕があるのは、“今のうち”だぞ」

勝己「え、なにその言い方!? なに!? 怖いんだけど!!」

なにその含みありすぎる“お姉さんスマイル”!?

地雷踏んだ系!? これからやばいやつ来る系!?!?

未久「勝己く~ん♪ 夕日山まで、歩こうね~」

夕日山──

たしか、千景駅から日高山脈方面へ向かう場所にある山。

しかも駅の案内板に、**“駅から15km”**って書いてあったような……

勝己「……いやだあああああああああ!!!」

美沙都「歩け」

あのトーン、完全に“拒否権なし”のやつだ……。






──大体、登り始めて3時間後。

夕日山の展望台に、ようやく辿り着いた。

勝己(……マジで山じゃん。超のどかじゃん)

でも、周りを見回して気づいた。

勝己(……え、これ一応、車でも来れる場所じゃねえか!?)

なんで歩かせた!!

レンタカー借りろや!!

てか、ここ本当に東谷町なのかよ。

東谷町民でも来たことあるやつ、どれくらいいんだココ!?

“町内なのにほぼ別世界”感すごい!!

勝己(これ……ちょっと遠くに“拉致られた感”あるぞ!?)

未久「着いたね~! あー、空気おいし~♪」

未久ねえはのびのびと、深呼吸。

くそっ……この人だけピクニック気分だ……!





そのとき──

美沙都「勝己。……お前、あまり息を切らしていないな」

勝己「ま、まあ、日頃鍛えてるから……って、え?」

美沙都「5分後に始めるぞ。」

勝己「……え? なにを……?」

お願いだから、そういうことは段取り踏んで伝えて……!!

美沙都「ファギアの訓練だ。」

勝己「いやだああああああああああああああああああああ!!!」






──こうして、“ピクニック(嘘)”は、“地獄の訓練”へと進化するのだった──。

──こうして始まった、美沙都さんによる“ありがた~いファギア訓練”。

……の、はずが。

勝己(……あれ?)

なんで俺、今ストレッチしてんの?

なんか普通に体育の準備運動みたいなことしてんだけど……。

しかも、未久ねえまでとなりで伸びてる。

美沙都「スクワット100回」

勝己「アアアアアアアアアアアア!!?」

美沙都「騒ぐな。無駄に体力を使うな」

勝己(なんで特訓してんだ俺!?!?

いや、まぁ……大門には勝ちたいけどさァ!?)

美沙都「次──うさぎ跳び50メートル」

勝己「うおおおおおおおおおおおお!!!」

跳ねる跳ねる跳ねる……足パンッパン!!

美沙都「お前、黙ってできないのか?」

勝己「はぁ、はぁ……終わったぞ美沙都さん!」

美沙都「2分休憩。──もう1セット」

勝己「鬼軍曹があああああああああああああ!!」





っていうかさぁ!

なんで隣でストレッチしてた未久ねえが、

一切息切れせずピョンピョン跳んでんの!?!?

未久「楽しいね、勝己く~ん♪」

勝己「アンタら姉妹は──

バケモンかあああああああああああ!!」




美沙都「次、縄跳び50回連続」

未久「は〜い♪」

ぴょんぴょん。

勝己(あー、未久ねえが跳んでる〜……かわい〜……ぷるんぷる〜ん……)

──じゃねえッ!!

勝己「……きつい!! キツすぎる!!!」

美沙都「逆立ち、30秒キープ」

勝己「ちょ、待てそれファギアに関係あんの!?」

美沙都「肉体が強いほうが、ファギアも強くなる。……黙ってやれ」

勝己(……体育教師のテンプレやないかい!!)

ゼェゼェと息を切らしながら、

なんとかすべてのメニューを終えた。

美沙都「……よし」

勝己(よし!?)

勝己「やっ……やった……終わった……」

未久「勝己く〜ん、はいっ♪」

未久ねえが、汗をかいた俺にタオルを差し出してくれた。

勝己(……あ、なんか……癒される……)

勝己(未久ねえ、マジママ……!

家ではアレだけど、今だけは……マジでママすぎる……!)

勝己「じゃあ、いよいよ!

本格的なファギア訓練、ですよね!?!?

美沙都「そうだな。身体も温まっただろう」

勝己「……これ、ウォーミングアップだったの!?!?!?!?」




美沙都「いいか。ファギアには、必ずしも“法則性”がある」

勝己「はぁ……」

勝己(ん? なにこれ、急にお勉強会?)

美沙都「中でも多いのが、“呼吸のリズム”などに合わせて発動するタイプ。

私のファギア──《キル・ザ・ブリンガー》も、それに当たる」

勝己「ふーん、なるほどな。つまり呼吸のリズムで──」

ズバァンッ!!!

勝己「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!???」

──俺の目の前に、

**“刃”**が、躊躇なく振り下ろされた。

ギリギリで跳ね退く。

勝己「バカか!! ビジョン型ファギアを、いきなり振り下ろすなぁぁ!!

教科書ドーンじゃねえんだぞぉ!!」

美沙都「実戦は常に突然始まる。お前に本当のリズムを教えてやっている」

勝己「講義形式じゃだめだったのかよ!!!」

美沙都「私は呼吸に“緩急”をつけ、

わざとリズムを乱すことで、相手にペースを読ませないようにしている」

勝己「……(いやマジで読めなかったし殺されかけたんだが!?)」

美沙都「だがそれも──10年以上の訓練の賜物だ」

勝己「うわあああ……先は長ぇ……」





勝己「なあ、美沙都さん。

相手のファギアが“わかりきってない時”って……どうすればいいんだ?」

美沙都「──観察しろ」

勝己「観察……」

美沙都「“見る”じゃない。“視る”だ」

勝己「……はぁ、なるほど……(なんか急に悟り系きたぞ)」

美沙都「ただ目に入れるだけではなく、相手の動作、呼吸、感情、

すべてを“見抜け”。 それが、生き残る方法だ」

勝己(おお……それっぽい……ちょっとカッコいい……)

勝己「……で、具体的にどうやってやんの? 先生!」

美沙都「──先に倒してしまえばいい」

勝己「出たァァァ!!最終的にパワー理論で解決するやつ!!!」

そりゃなぁ!?

**キル・ザ・ブリンガーとかいうAS(アタックスピード特化)型のファギア持ってたら、

先にぶっ飛ばすで正解なんだろうけどさァ!?!?

勝己「結局、脳筋じゃねえかァァァァ!!!」






美沙都「さて……実戦に入ろうか」

勝己「やめてよね、本気でケンカしたら、俺があんたに勝てるわけないだろ……」

完全にやる気失ってる俺を尻目に、

美沙都さんはカバンから、水の入ったペットボトルを取り出した。

勝己「……水?」

美沙都「このペットボトルを、私から奪い、飲んだら勝ちだ」

勝己「なにその修行!?

猫の仙人キャラが弟子にやらせるやつじゃんそれ!!」

美沙都「どんなやり方でも構わん。──始めるぞ」

勝己(おぉ……ガチでその気だ……)

──だが、俺にも策がある。

勝己「どんなことでもいいって言ったよな?」

そう言いながら、

俺はさりげなく、未久ねえの後ろに回り込む。

勝己「とっととペットボトルを寄こしやがれ!

でないと──未久ねえがどうなっても知らねえぞ!?」

未久「……あっ! そういうのダメなんだよ〜!」

美沙都「──キル・ザ・ブリンガー。」

ズドォォォォォン!!!

勝己「ぶふぁあああああああああああああ!!!!」

俺は空中を吹っ飛んだ。

木の枝に引っかかって、

「ドンッ!」って音とともに地面に落ちる。

勝己「く、くそっ……やっぱこの姉妹、

笑顔で殺しにくるタイプのバケモンだぁ……!!」








──ペットボトルを取るための試練、ついに開始!

俺が何度手を伸ばしても、

美沙都さんは、無駄なくすり抜けていく。

ほんのあと一歩──

でもその一歩が、遠すぎるんだよ!

勝己(あ、くそ! なんだよこの動き!?

いったいどんな筋肉してやがる!)

無表情で、すます顔しやがって──

勝己「インビンシブル・インビジブル!

空気に、美沙都さんを転ばせる役割を与える!」

どかーん!

美沙都さん、やっぱり転倒する。

しかし、

すぐにバネのように立ち上がり──

──即、俺に向かって蹴りを返してきた!!

勝己「ぐはぁっ!!」

俺はそのまま後ろに倒れ込む。





勝己(くそっ……反則だろフィジカル強すぎだろこの人!!)

美沙都「お前のファギアには、無限の可能性があるだろう」

勝己(ふ、ふざけんな!!)

勝己「ぜってぇ取る!!俺は諦め悪い方なんだ!」

美沙都「──最後の汽車の時間に、帰れるといいな」

勝己(いや、やっぱりこの人鬼かよ!?)

そのとき、美沙都さんが──

《キル・ザ・ブリンガー》を、攻撃に使ってきた。

何度も俺の方へ、容赦なく振り下ろしてくる。

勝己(こっわ!? てか本気でやってんじゃんこの人……!!)

だが、その動き……どこかで見たことがある。

勝己(……あれ? このパターン……)

──大門の“カマキリの斬撃”に、似てる……!

勝己「……なるほどな。

大門戦を想定した模擬戦ってわけか!!」




俺はすぐにファギアを発動する。

勝己「《インビンシブル・インビジブル》!

“攻撃によって空気が揺れたら、ペットボトルが吹っ飛ぶ”役割だ!」

ズガァァンッ!!

美沙都さんが振り下ろした一撃──

その風圧で、ペットボトルがふわりと宙へ舞い上がる!

美沙都「……チッ」

勝己(よし!今だッ!!)

勝己「もう次の役割も準備できてるぜ!!

《インビンシブル・インビジブル》ッ!!」

宙を舞うペットボトル。

その軌道を──俺は“空気の意志”で操る。

勝己「“落下する空気の流れに沿って、ペットボトルが俺の手元に来る”役割!!」

その瞬間──

ペットボトルがくるりと軌道を変えて、

俺の方へと……スッ、と吸い込まれるように滑ってくる。

ポタ……ポタ……

穴の空いたキャップの隙間から、水が……俺の口に、注がれた。

ゴク……ゴク……

勝己「……ぷはっ。飲んだ!」

美沙都「──見事だ」

勝己(──取った。やっと、取ったんだ……!)

──結局、帰りの汽車には間に合いそうになかった。






……ので。

俺たちは、О市方面から帰ってくる途中だった親父の車に拾ってもらって、

東谷まで帰ることになった。

勝利「まさか夕日山まで迎えに行くとはな〜……

それにしても、久しぶりだなぁ。美沙都」

運転席で、親父が嬉しそうに笑う。

美沙都「……こいつの甘ったれた性格は、間違いなく伯父さん譲りだよ」

勝己「え、そこは譲らないでよ……」

親父は、笑ってごまかすように言った。

勝利「こいつ、昔から根性なしだからなー。

もっと鍛えてもらってもいいぞ〜、だっはっは!」

未久「また行きたいね〜♪ 夕日山!」

勝己「いやもう……修行はコリゴリだあああああああ!!」

そう叫んだあと、

助手席の窓から顔を出すと──

遠く、日高山脈の稜線に、オレンジ色の夕日が沈んでいった。




訓練の疲労と、

その向こうに残る達成感と。

少しだけ成長した自分と、

ちょっとだけ近づけた“未来のヒーロー像”を感じながら──

俺は、目を閉じた。



お読みいただきありがとうございました!


勝己、めちゃくちゃ頑張りました。というか頑張らされました。


美沙都さんはもうちょっと手加減してもいいのでは?と思いつつ、

こういう“無理矢理引き上げてくれる師匠ポジ”、嫌いじゃないです。


……というかあの姉妹、圧倒的すぎる。


次回は一転してちょっと不穏な展開になります。お楽しみに!

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