表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の血引いた俺、ジジイになるまで戦うってよ  作者: あーちらいおん
第1部「渡川勝己(とがわかつみ)高校生編」その2
11/22

第1部 第10話「危険」

前回の“夫婦ごっこ”から一転。

今回訪れるのは──りこ、最大の危機。

怪物の手が彼女に迫るとき、勝己は立ち上がる。

「お前に、りこは絶対渡さねえ」

2013年 6月3日

第1部 第10話「危険」

どうもどうも、渡川勝己とがわかつみです!

前回あんなに甘々でしたよね!?

ハンバーグだのシチューだの、“あなたー♡”だの──

これ、もうゴールイン確定でしょ!?おめでとう俺!!

……とか思っちゃった、そこのあなた。

いやいやいやいやいやいや。

人生、そんなに甘くないんだってば!!

いけるじゃん!すげえじゃん!アゼルバイジャン!じゃねぇんだよ!

いや知らんけどどこの国だよそれ!!

──そう、俺に訪れたのは“愛の実り”なんかじゃなかった。

危機だったのだ……!!


──なんなの、この化け物……!!

混ざってる。

いろんな生き物が……ぐちゃぐちゃに混ざってる人型の怪物が、

私を追いかけてくる。

猫のような静かで素早い動き。

それでいて、カエルみたいにあり得ない跳躍力。

──とにかく、逃げなきゃ。

学校とは逆方向へ、全力で駆け出した。

けど、それが──間違いだったのかもしれない。

気づけば、人の気配がまったくしない林の中。

ざわ……ざわ……木々が不穏に揺れる。

後ろから、あの“なにか”が迫ってくる。

近い……近い、やだ、来ないで──!

そのとき、

りこ「きゃっ!!」

足がもつれた。

バランスを崩して、地面に倒れ込む。

足首に、ねばねばした感触。

おそらく──クモの糸のようなものが絡みついていた。

すると、

大門「へへへ……りこ、可愛いピンクだなァ……」

ぴしり、と背筋が凍った。

大門の視線は、倒れ込んだ私のスカートの中に向いている。

その目は、理性も理屈も何もなかった。

──なんで……なんで、こんなやつに……。

私は震える指でスマホを取り出す。

そして、ただひとつ浮かんだ名前に──

『助けて』

位置情報を添えて、メッセージを送る。

──勝己くん、お願い。気づいて……!




──東谷高校 1年B組、朝の教室。

スマホをなんとなく開いた瞬間──

一通のメッセージが目に飛び込んできた。

『助けて』

送り主:りこ。

……添付された位置情報が、林のほうを指している。

勝己「……っ!!」

一気に血の気が引いた。

これは、ふざけてるんじゃない。

文字から“本気のヤバさ”が伝わってくる。

勝己(まさか……またあの大門の野郎か!?)

テメェ、りこに手ェ出したら、今度こそ──終わりだぞ!!

椅子をガタン!と鳴らして立ち上がる。

太一「おい! 勝己! どこ行くんだよ!」

勝己「悪ぃ──1時間目はズラかるぜ!!」

そのまま、教室のドアをぶち開けて飛び出した。

──これは、授業じゃねぇ。

りこを守るための、戦いだ。



──走る。とにかく、走る。

別に俺は、特段足が速いわけじゃない。

でも今は、そんなの関係ない。

全力で──りこを助けに行く。それだけだ。

この林、覚えてる。

保育所の頃──りことよく遊んだ場所だ。

あのときの笑顔が、脳裏をよぎる。

──そして今。

りこ「勝己くん!!助けて!!」

その叫びが、森の奥から聞こえた。

俺は迷わず、叫びの先へ突っ込んだ。

視界が開ける。

そこには──

大門「なんだぁ? これから楽しいとこだったのによォ……」

──バケモン化した大門が、

押し倒されたりこに跨っていた。

勝己「……大門。てめえ、りこから……離れやがれ!!」

怒りが、全身を駆け巡る。

イメージしろ。

この前、静華が作っていた即席爆弾の爆発──

その衝撃と破壊力を、俺のファギアで再現するんだ!

勝己「“インビンシブル・インビジブル”!!

空気に、“爆発する役割”を与えるッッ!!」

ボンッ!!

空間がうねり、爆風の“気配”が林に走る。

りこ「きゃあっ!!」

──その瞬間。

大門がりこをガシッと抱え、自らの盾にするように引き起こした。

大門「へっへへ……どうするよ? このまま爆発したら、りこが巻き込まれちまうぜ?」

最低すぎる。

でも──今の俺に、選択肢はあるのか……!?

──そのときだった。

大門の腕が変形を始める。

ぐにゅり、と肉がうねり、骨が突き出し、

カマキリの鎌のような刃物に変化していく!

勝己(チクショウ……! でももう、俺は能力を“宣言”してしまってる!)

逃れられない。

そして、次の瞬間──

シャッ!!

大門の鎌が、りこのスカートを斬り裂いた。

ぱさり。

破けた布が宙を舞う。

その一枚一枚が、まるで──俺たちの日常が壊れていく音みたいだった。

りこ「いやあああああああああ!!」

りこの叫び。

その声には、羞恥と怒り、そして恐怖が入り混じっていた。

勝己「ふざけんな……!!」

その長さ、ちょっとでも動けば“見える”レベルじゃねぇか!!

大門「よかったなぁ。もっと可愛くなったぜ? 俺的にはドストライクだ」

勝己「……このクソッタレがああああああああ!!!!」

ボンッ!!!

──その瞬間、俺の“空気に与えた爆発の役割”が、

ちょうど大門の背後に届いた。

ドガァァァァン!!!

煙と爆風が林を揺らす。

勝己(やった……! 巻き込んだッ!!)

──しかし。

大門「ふはは……正義は、負けねェんだよォォォ……!!」

大門の身体が、ぐずり……と脱皮するように形を変える。

勝己「なっ……!」

皮膚が剥がれ、中から傷のない新しい肉体が這い出てくる。

再生した。

まるでトカゲのように──

大門「“フランケンフュージョン”。

今度は“トカゲの力”で再生した。……無限の進化ってやつよ」

──これが、ヤツのファギア。

“フランケンフュージョン”──混ぜて、喰って、融合して、進化する悪夢の能力。

大門「俺はな……“進化生命体”にかなり近い存在なんでね」

──進化生命体。

その言葉に、脳裏に浮かんだのは10年前の記憶。

俺のいとこ、美沙都さんが倒した、伝説的な怪物。

勝己「進化生命体……まさか、テメェ……!」

大門「取り込むのは、必要な行為さ。

あらゆる生物を殺して、融合する──

それが、“フランケンフュージョン”の本質さ」

こいつ……命を、なんだと思ってやがる。

勝己「てめぇ……このゲス野郎。

てめぇのために、何匹の動物が死んでんだよ!!」

大門の口が、ぐにゅりと広がった。

まるでクモの顎のように、気色悪く歪む。

大門「渡川よ……お前、家の中に入ってきた虫を殺した数、覚えてるか?」

勝己「は……?」

大門「なぁ? 覚えてねぇだろ?

それが命ってやつだよ。

殺すか、殺されるか。そんなもん、生存競争の結果にすぎねぇんだよ」

──そう言いながら、

りこにカマキリの刃をピタリと当てたまま、大門は続ける。

大門「俺にとっては、これはもう必要不可欠なことなんだよ」

りこ「ひどい……!!」

震える声で、りこが大門を責める。

……でも、ヤツは――

大門「りこぉ……お前は意見するな。

お前は、俺の子を産む。それだけでいいんだよ」

──その瞬間だった。

何かが、音を立てて、

俺の中で“ぷつん”と、切れた。

りこ「こんな奴! こんな奴やっつけて……勝己くん!」

勝己「ああ……そのあと、一緒に学校行こうな」

──見えてきた。

ヤツ、大門の呼吸が荒い。

さっきからずっと、“吐いてる”んだ。

いろんな生物を取り込んでるせいで、

呼吸機能がめちゃくちゃになってる。

ってことは──空気の出入りが激しい=吸い込みやすいってことだ。

勝己(……チャンス、だ)

勝己「“インビンシブル・インビジブル”──空気に……ボソボソ……」

大門「いつになったら学習すんだよ渡川ァ!!

てめえのチンケな空気じゃ、俺には通じねえんだよォ!!」

──その怒鳴り声、待ってたぜ。

勝己(今、お前は自分の口で、俺の空気を……思いっきり吸い込んだんだよ)

数秒後──

大門の身体が、ぐらりと傾く。

ドサッ!

勝己「──“動物が昏睡する役割”を与えた空気、だよ」

りこ「……え?」

勝己「人間には効かない。

でも、いろんな動物を取り込んで融合してるヤツには──効果バツグンってわけだ」

静かに倒れる大門。

“正義”なんて言葉を名乗る資格、どこにもない化け物。

勝己「眠ってろ、バケモン」

──戦いは、終わった。

  ◇ ◇ ◇

その後、りこは自宅に戻り、

予備の制服スカートに履き替えて登校した。

結局、俺たちが学校に着いたのは、3時間目の途中。

1時間目? 2時間目? 知らん知らん。

今、大事なのは──

勝己(りこが、無事でいること。……それだけで、いい)

──教室に戻ってから、

3時間目の途中、窓際の席で、俺はぽつりとつぶやいた。

勝己「あの野郎をぶっ飛ばす方法……考えねぇとな」

今は、眠らせるので精一杯だった。

本当に“勝った”わけじゃない。

ヤツの能力は、まだ脅威のままだ。

だから──次は。

りこ「……かっこよかったよ、勝己くん」

隣の席で、りこが静かに微笑んでくれる。

その言葉が、胸の奥に、じんわりと染み込んだ。

勝己「……ありがとな」

俺は拳をそっと握った。

──次は、勝つ。

確実に、完全に、あのバケモンを倒すために。

俺はもっと強くなる。

大好きなりこを守るために。

そして、この街の笑顔を、取り戻すために。

──そう、俺は誓う。



勝己とりこ、そして“フランケンフュージョン”という強敵。

絶望の中で生まれた閃き、吹き込まれた“空気”の逆転劇。

でもこれはまだ始まり──

次こそ、本当の“勝利”を掴むために。


読んでくれてありがとう。

この物語は、まだまだ加速していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ