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神の血引いた俺、ジジイになるまで戦うってよ  作者: あーちらいおん
第1部「渡川勝己(とがわかつみ)高校生編」その2
10/22

第1部 第9話「日向(ひなた)」

日曜日の昼下がり、ふたりきりの時間。

やって来たのは、りこおしかけ女房編──!?

料理してくれる彼女、バグる彼氏。青春コメディ全開でお送りします。

2013年 6月2日

第1部 第9話「日向ひなた

6月──この月には、祝日がない。

だから社会人たちは、有給を駆使して**“勝手に祝日”を作る**らしい。

でも、俺たち高校生にはそんな自由はない。

特にこの、5月末〜6月初旬の謎の空白期間……!

俺の住む北海道ではこの時期、

運動会だの体育祭だの、誰が得するんだよって行事をぶち込んでくるんだ。

陽キャが得して、陰キャは泣く。

──この構図は、男と女、光と闇、天と地……いや、それは違うな。

ま、とにかく。

元々のカテゴライズから、青春という名の縮図ができあがってるわけよ。

で、組体操とかあるじゃん?

あれ、もう絆でもなんでもないからね?

ただの体格差別だろ。腕ちぎれるっつーの。

そんなわけで、

「高校生になったし、体育祭なんてもうないだろ~」と油断していた俺。

──東谷高校、6月中ごろに体育祭あるってよ!!

勝己「あ゛あ゛~~もうやだやだ!クラス対抗?走る?団結?知らん!!」

俺はただ、りこといちゃいちゃしていたいだけなんだ!!

りこを愛したいんだ!! ただ、それだけなのに!!

りこぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!

……さて、本編入るぞ。




──俺は、自宅でスマホをいじっていた。

画面の向こう、りこからのメッセが届く。

りこ『またヒトマルの弁当じゃない?朝ごはん!』

うん、まぁ……そうですよ。

りこ『ダメ!そんなのじゃ身体壊しちゃう!』

ツッコミが早い。

だがその通りである。

──仕方ねえだろ?

“自称・面倒見に来ました!”とか言ってた未久ねえが、

最近はもう完全に目的忘れて、親父と家でキャバクラごっこしてんだよ。

思わせぶりな言動は一流だけど、

実働ゼロ。

口だけお姉さん。それが未久ねえ。

と、そこに──りこからまた通知が。

りこ『待ってて。この前の成金さんの件もあるし、お礼も兼ねてご飯作りに行くから』

……きました。

はい、おしかけ女房イベント発生です!!

勝己「え、マジで!? りこ来るの!?

……やべ、見えるとこだけでも掃除しねえと!!」

俺はリビングを、最低限の努力で“それっぽく”整えた。

掃除ってのは、やった感さえ出れば勝ちだからな。

未久「おはよ、勝己くん」

キッチンからふらっと登場。

寝癖、部屋着、そしてなぜか笑顔──

絶対ろくなことがない顔で、未久ねえが現れた。

勝己「ああ……。

未久ねえ、下着、ちゃんと片づけといてくれよ」

未久「あげるよ? 私だと思って、大事にしてねっ♡」

……。

い る か ぁ あ あ あ あ !!!!

いや、でも……ちょっと待て……

本当にいらないのか?

これは、いわば“未久ねえ本体の象徴”……いやいや違う違う!

仮に──仮に持ったとして、だ。

それをりこに見つかったら……?

勝己「……戦争だな」

そう、恋愛どころか核戦争レベルの危機が勃発する。

未久ねえの下着なんて、戦略兵器に匹敵するっつーの!

ふう……とりあえず、

目に入るところは片付けた。たぶん、大丈夫。……たぶん。

部屋は、それなりに片付いた。

完璧じゃないけど、「努力は見える」レベルにはなったと思う。

──ピンポーン♪

チャイムが鳴った。

来た……! 来たぞ……!!

勝己「りこォォォ! いらっしゃ〜い!!」

(※新婚さんの某番組のテンションで)

ドアを開けた、その瞬間。

美沙都「すまない。私だ。……未久は起きているか?」

勝己「……あ!起きてる起きてる、どうぞ廃品回収で!」

未久「お姉ちゃ〜ん!」

美沙都さんの声に反応して、

うちの寄生生物(※未久ねえ)は“びゅんっ”と走っていった。

……つまり、これ、美沙都さんが未久ねえを“お出かけ”に誘ってきたわけで。

ってことは──

りこと俺、二人きり!

日曜日!家!ノープラン!!

なにも起きないはずが──

ないっっっ!!!

これは大事な大事な──

\\ ア・タ・ッ・●・チャ〜〜ンス!! //


深山姉妹が外出してから、すでに数分──

俺の心臓は、さっきからずっとバクバク言ってる。

勝己(やべえ……やべえ……落ち着け俺、深呼吸だ!)

りこ、りこ、りこ……

名前を心の中で連呼してると──

──ピンポーン♪

来た……!!

この控えめで柔らかい押し方……

間違いねぇ、これはりこチャイムだ!!

俺は玄関へ猛ダッシュし、

深呼吸一回だけして、ドアを開ける。

りこ「あれ? 勝利さんは……今日は留守?」

勝己「親父のことなんていいから! ささっ、どうぞどうぞ、こちらへ!」

強引にりこを引き入れる。

※ドアの閉め方が3割くらい早かったのは気のせいではない。

ちなみに、りこの両親は本州で仕事をしている。

そのせいもあって、こうして俺の家に来ること自体、珍しくはなかった。

──でも、

“未久ねえも親父もいない状態”での訪問は、レアだ。

それが、何を意味するかって……

俺の心臓が、誰よりもよく知ってる。

キッチンに立ったりこは、

バッグから、見慣れないチェック柄のエプロンを取り出した。

りこ「えへへ〜、これね、持ってきたんだ〜」

「……よいしょ、っと♪」

するりとエプロンを装着。

まるで**“家庭”って概念の擬人化**みたいな破壊力だった。

そして、振り返りながら――

りこ「あなたー、なに作ってほしい?」

バ グ 発 生 。

思考回路、完全ショートッ!!

勝己(あっ! 理性が死にました!!)

↑誰だ今の実況!?

↑てかお前だろ冷静に突っ込んでるの!!

勝己「……こ、子供!!」

りこ「ッッ!?」

顔を真っ赤にしたりこが、

**バッッッシィィィィン!!**と拳を振るう!

勝己「ぎゃあああ!!」

さらに間髪入れず、

ドゴォッ!!

膝蹴りが俺の腹部にめり込んだ!

勝己「きゃいん!! きゃいん!! いたぁい!! ……でも、なんか、きもちいぃ……(←末期)」

りこ「今日はね……ハンバーグ、作ってあげるね。あと、シチューも!」

勝己「よっしゃ、なんでも食うぜ!」

ふっ……決まったな。

これはもう、完全に胃袋つかみに来てる。

俺、もうすぐ“りこ沼”に沈む未来しか見えない。

キッチンで、

手際よく野菜を刻み、ミンチをこねるりこ。

その後ろ姿が、もう可愛いのなんのって──

勝己(いやマジで、

可愛くて、料理できて、天然で、ちょっと照れ屋で……)

──理想のヒロインじゃねえかッッ!!!

バチバチに決まってんだよ、この子は!!

そして──

りこ「できたっ!」

テーブルの上には、

湯気を立てる大ぶりのハンバーグと、具だくさんのホワイトシチュー。

視覚も嗅覚も、そして心も、

すべてがこの料理に包まれた瞬間だった。

りこ「どうぞ、召し上がれ? 勝己くん」

その声が、なんかもう“奥さん感”ありすぎてダメ。

俺はそっと手を合わせる。

勝己「いただきます!」

まずはシチューから──

スプーンをすくって、口へ運ぶ。

……あっ。

勝己(これ……うまッ!!)

バターのコクと、ほくほくの北海道産じゃがいもが

スープの中で絶妙に溶け合ってる。

もう、口の中が幸せの鍋状態だ。

その様子を、りこはニコニコしながら見ている。

あぁ……この笑顔も調味料なのかもしれん。

お次は、メインのハンバーグ!

ぱくっ……

勝己(……は!?)

粗めに刻まれた玉ねぎの甘みが、

ジューシーなひき肉の旨みを際立たせる……!!

これぞ、愛情ハンバーグの完成形!!

思わず、言葉が出た。

勝己「りこ……お前、いい嫁になるよ」

りこ「え……?」

ぽわっと顔を赤らめるりこ。

うわ、やべ、言っちゃった?俺言っちゃった?

勝己「あ、いや、その……」

一瞬、気まずい空気が流れたかと思ったそのとき──

りこ「なぁに?」

いつもと変わらぬ、優しい声でりこが返してくれた。

勝己「……りこって、さ。結婚したらさ、子供何人くらいとか、そういう夢あんの?」

りこ「そうだね〜……。

私、一人っ子だから……いっぱいかなぁ」

──はい、理性、終了のお知らせです。

勝己(だめだ……この流れ……甘すぎて……もう持たねぇ……!!)

──食事が終わり、二人で並んでキッチンに立つ。

皿を洗いながら、静かに流れる時間。

りこ「このお皿、こっちでいいの?」

勝己「ああ、その棚の上で」

りこが手を伸ばしたその瞬間、

わずかに体のバランスを崩した。

りこ「あっ──!」

とっさに、俺の手が伸びた。

間に合うか……!?

勝己「“インビンシブル・インビジブル”!

支える役割を、空気に与える!!」

──一応、保険をかけた。

すると、りこはふわりとバランスを取り戻し、

そのまま倒れることなく、立て直すことができた。

りこ「……ありがとうね、勝己くん」

そう言って、りこが笑った。

ただの感謝の言葉。

ただの微笑み。

でも──その“ぬくもり”が、心にふわっと差し込んだ。

なんだろう、この感じ。

空気がやわらかくて、

世界が少し、あたたかい気がする。

……まるで、“日向”みたいだ。

そんな、やさしい日曜日だった。



バターの香りと、ほっこりシチュー。そして甘々な“夫婦ごっこ”。

だけど、ふとした瞬間に気づくんだ。

この空気があたたかいのは、きっと──隣に、君がいるから。

次回もどうぞよろしくお願いします!

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