第1部第1話「夢敵(むてき)」
どうも、あーちらいおんです
この作品は、神話の血を引く高校生が、
“ジジイになるまで戦い続ける”っていう物騒でロマンな物語です。
第1話は、日常、笑い、謎、そして喪失――
全ての始まりが詰まってます。
異能「ファギア(概念力)」、神話の血「フェルト」、進化生命体「ビオ」……
世界の秘密は、ここから開いていきます。
でもまずは、ドタバタの勝己と元気なりこ、
そして“謎の美女”美沙都との出会いをお楽しみください!
すまねぇ、まずはちょっと舞台設定から話させてくれ。
ここは北海道・東谷町。
十勝地方の入り口、峠のふもとにある小さな町だ。
んで、俺の名前は渡川勝己。
タイトルでファンタジー想像してた読者諸君、悪いな。
異世界?──ねぇよ。んなもん。
俺は、東谷高校に通う高校1年。
入学式から1週間、そろそろクラスの空気にも慣れてきたところだ。
そして今、俺に勢いよく後ろから話しかけてくる女子がいる!
──覚えておいてくれ。
こいつがヒロインだ!!
「勝己くん! おはよっ!」
元気な声の主は、鹿子りこ。
保育所の頃からの幼馴染で、顔を合わせない日はないってくらいの仲だ。
身長150センチ。ピンク色の髪に、
……そしてその背丈に似合わぬ、たわわな──素晴らしい胸!!
(※重要なので2回言うが、ヒロインである。)
勝己「なんかなぁ、今日は落ち着かねえな……」
りこ「勝己くん、あのさ。紙コップが“パタン”ってなるやつ、今度やってよ」
──紙コップが、パタン?
りこが言う、“紙コップがパタンってなるやつ”。
……読者諸君、なんだそれって思ったろ?
俺だってそう思う。謎だよ。
でもそんなことは後回しだ!
今は何より──
美少女幼なじみと! 屋根の下で! 二人きり!!
ぐふふ……(←やかましい)
放課後、りこが俺の家にやってくる。
よし、確認──誰もいねぇ。
母親の渡川朱鷺子は弁護士。
忙しすぎてほぼ不在だ。
親父の勝利は、O市にあるO大学の数学教授。
毎日帰りが遅い。
つまり……!
紙コップパタンどころの騒ぎじゃねえよ!!
りこ「お邪魔しまーす! 紙コップパタン、見せてよー!」
勝己「お邪魔されまーす」
──俺は軽口で返す。
ま、全然お邪魔なんかじゃないよ!?
むしろウェルカムだよ!? スーパーウェルカム!!!!
(わかるか?この時点で俺の理性ゲージは残り7%)
そんな俺のテンションを知らずに(知っててかも)、
りこがポカポカと俺を叩いてくる。
りこ「あー、邪魔扱いするんだー? わたしのことー?」
……あー、幸せ。
なにこの癒し。尊すぎて無理。
さて──
ここらで、**りこご所望の“紙コップパタン”**とやらをお見せしますか。
勝己「──インビンシブル・インビジブル!」
勝己「俺の息がかかると、紙コップを倒す“役割”を与えた!」
へへーん、どうだこれが俺の能力よ!!
俺は空気に向かって、ふーっと息を吹きかける。
その風が、机の上の紙コップに当たって──
パタン。
……倒れた!
やったぜ、大成功!!
──この能力の名は、「インビンシブル・インビジブル」。
俺が5歳の頃から使える、特殊能力だ。
りこ「ね、ね? どうやってるの、それ?」
勝己「……企業秘密だ!」
りこがウルウルした目で俺を見てくる。
か、可愛い。
ずるいぞその顔、りこ。
……だが、実を言うと──
なんで使えるのかは、俺にもわからん!!
企業秘密どころか、
俺自身が“秘密にされてる”レベルで謎なんだよ!!
覚えてない。教わってない。
なのに気づいたら、口から勝手に出てたんだ。
「インビンシブル・インビジブル」──
気づいたら、テテテン♪って感じで覚えてた!!
なんかもう……そういう感じ!!(説明雑)
勝己「そうだ、駅まで行かねーと。」
勝己「TRPG好きの才崎に、渡さなきゃいけねー“ブツ”があるんだった!」
りこ「なら、わたしもついてくよ!」
……あーーーーーーー!!!
強制加入イベントやめて!!!
キャンセル!キャンセルさせてくれマジで!!
いや、まずいって……
これ、“いとこもの”のエ●本だからな!?
結構業が深いぞ!?
※ジャンル的にも、倫理的にも。
りこが隣にいるこの状況で、
よりにもよってそれをカバンに入れてる俺……
もう負け戦確定だよね!?!?
東谷駅の前に着いた。
……と。
目に入ったのは、白いコートに白い帽子を被った女の人。
え、なにあれ──本気の入ったコスプレイヤーか?
背は……170くらいか? 高ぇな。
キョロキョロと周囲を見渡してる。
そして──
こっちを見た。
うわっ……!!
やめて!!関わりたくねぇ!!
今、完全に脳内で──
\エンカウントォ!!/(バトル開始SE)
鳴ったわ!絶対に今、確実に!
女性「なぁ、“渡川”という家を知らないか?」
──
来た。ガチなやつ。
勝己「と、渡川なら……俺ん家っすけど?」
女性は、キリッとした凛々しい表情で俺を見つめる。
うひゃあ……
カッコいい……ッ!!
日焼けした肌もセクシーで、まるで戦場から来た女って感じ!!
女性「私は──深山 美沙都。」
美沙都「おまえが……渡川勝己だな?」
……え?
なんで俺の名前知ってんのぉぉぉ!?!?
初対面で名乗ってきて、
その流れで「お前が○○だな」って──
完全に敵ムーブじゃねぇか!!この人、ボス戦前のイベントキャラじゃん!!
勝己「は、はい、そうっすけど……何かぁ〜?」
↑あくまでフレンドリーに!
↑フレンドリーに行け俺ッ!!
↑ここでヘタに構えたら本当にバトル入るぞ!!
こういうときに必要なのは──世渡りスキル!!!
……いやでもこの人──
背は高いけど、スレンダーでしなやかで……
それでいて完成された芸術品のようにクールだ。
ヤバい、なんかもう既に好き。
美沙都「私とお前には、共通の祖父──大五郎がいる。」
……おいおいおいおい!!
俺が小2のときに死んだじいさんの名前、ここで出す!?
なんだコレ、新手の──
親せき商法ってやつぅぅぅ!?!?
美沙都「つまりは、いとこだ。」
──いとこ!?
あの“いとこものエ●本”に描かれていた、素晴らしき関係ッ!!
……って、ちょっと待て。
“深山”って姓でピンと来た。
俺の記憶にある、あの人の名前。
勝己「ん?……未久ねえの言ってた“美沙都さん”って、あんたのことか。」
美沙都「そうか、お前……未久を知っているのか。」
──未久ねえ。
俺のいとこで、5歳年上。
俺が小4から小6の3年間、一緒に暮らしていた人だ。
あの頃は──
たわわ発展途上国、からの……たわわ先進国へ!!
俺はその成長をこの目で見届けた!!(誇らしげ)
つまり──
深山美沙都=未久ねえの姉。
この人、親族。リアル親族ッ!!!
りこ「きゃあっ!! 痴漢やめてぇ!!」
……なんだと!?
ふざけんじゃねぇ……
許さねぇぞクソ野郎!!!!
りこが、男に背後から身体を密着されていた!
不審者「はぁ……はぁ……小っちゃくて……可愛い……」
てめぇ……
“気持ち悪い”のフルコンボじゃねぇか!!
俺はヤツの呼吸にあたるように、空気にふーっと吹きかける。
風に乗せた俺の“意思”が、空間を這って男の鼻先へ向かう──
勝己「──インビンシブル・インビジブル!!」
勝己「ヤツの鼻息に触れた空気に、“ヤツだけ吹っ飛ばす役割”を与えた!!」
次の瞬間──
ズガァアアァ!!
空気が弾け、男の身体が後ろに吹っ飛ぶ!!!
──俺には、空気の流れが“見える”。
そしてその流れに、“意味”を与えることができるんだ。
美沙都「なにっ……!? ファギア!?」
……え?
美沙都さん?
ちょっと待って、
“ファギア”ってなんザマス?!?
いきなり専門用語投げてくんなやッ!!
りこは吹っ飛ばされず、不審者だけが見事に吹っ飛んでいった。
不審者「ぐへぇ……な、なんだぁ今の……」
──ガクシ。
男はアスファルトに沈んだ。
美沙都「勝己。お前、その力……いつから使える?」
美沙都さんが、落ち着いた声で俺に話しかけてくる。
勝己「んー、そうだな……5歳くらいから、かな?」
美沙都「その力……“ファギア”は、私たち一族の力だ。」
──なんだよおおおおおおお!!!
なにそれ!? 聞いてねぇ!!
俺だけがチート持ちの特別ポジかと思ってたのに……
一族パターン!? なんだよそれ、バトル物テンプレじゃねぇか!!
りこ「立ち話もなんですし、喫茶店行きませんか? いとこのお姉さん♪」
……あっ!!
幼なじみヒロインと、いとこヒロイン候補が──喫茶店!?
これ……
イベントスチル発生確定でしょ!!!!
俺とりこは、りこの祖父が経営している喫茶店へ向かった。
入店すると、カウンターの奥からマスターが出迎えてくれる。
アキラ「いらっしゃい。……お、りこと勝己くんじゃないか。
そちらの方は?」
美沙都「渡川勝己のいとこ、深山美沙都。アイスコーヒー、ひとつ。」
勝己「俺とりこはホットでお願いします、アキラさん。」
アキラさんは変わらぬ笑顔で、柔らかくうなずいた。
アキラ「美沙都さん、ね。覚えておくよ。
今、淹れるから──ちょっと待っててね。」
そう言って、彼はゆっくりとハンドドリップの準備を始める。
コーヒー豆を挽く音。
お湯の注がれる音。
そして──
店内に、ふんわりと漂うコーヒーの香りが広がっていく。
緊張の糸が、少しだけほぐれる。
美沙都「さて……“ファギア”の話だ。」
美沙都「私やお前の力は、“ビオ”と呼ばれる進化生命体──
そしてその進化を導いた血の提供者、フェルト・リバーメイカーとの繋がりによって現れたものだ。」
……ちょっと待てぇい!!!
進化生命体!? 血の提供者!? なんだそのトンチキ設定は!?!
勝己「いきなり情報量が多すぎるんだよ!!
ていうか“ファギア”って結局なんなんだよ!!!」
美沙都「お前が “インビンシブル・インビジブル” と呼んでいる力のことだ。
……フェルトは、我々の先祖だと覚えておけ。」
は、はぁ……
わけわかんねぇけど、マジかよ……。
勝己「あのぉ……俺、東谷高校に通う、あんま頭の出来よくない生徒なんで……」
美沙都「そうか。」
──
なんだよ、そのすました顔ッ!!
なんかこの人と話してると、
情報で殴られて気が参っちまうんだけど!!
ドゴォン!!
突然、ドアが蹴り開けられた!!
チンピラ「鹿子ぉ!! いい加減、権利売る気にならんのかボケェ!!」
いきなり現れたチンピラが、
カウンター奥のアキラさんを怒鳴りつけている!
アキラ「……いやだね。この土地の所有権は、私にある。」
静かに、しかし確かな拒絶。
だが──
チンピラはポケットから何かを取り出し、自分の首元にブスリと刺した。
な、なんだ!? あれ……キバ!?
チンピラの身体がビクンッと震え出す──
チンピラ「俺だってぇ……この“ビオの遺産”──イヴィルファングがあれば、力を得られるんだよぉ!!」
次の瞬間、
アキラさんの身体が、業火に包まれた──!!
アキラ「ぐっ……! に、逃げろ……!!!」
美沙都「勝己。空気に──“鎮火”の役割を与えろ。
こいつは、私が対処する。」
勝己「できるか分かんねぇよッ!!」
美沙都「──早くしろ。死んでしまうぞ!!」
……ッ!!
勝己「……インビンシブル・インビジブルッ!!
空気に、“炎を鎮火させる役割”を与える!!」
風が走る。
炎が、スゥッ……と音もなく消えていく。
──火は鎮まった。
けれど。
アキラさんは──
ぐったりと、椅子にもたれかかるようにうなだれていた。
もともと、心臓が強くなかったのだ。
美沙都「──キル・ザ・ブリンガー」
次の瞬間、
ロボットのような“ビジョン”が空間に現れた。
圧倒的な攻撃の雨。
その両腕が光の軌跡を描き、
チンピラの身体を──連続で八つ裂きにしていく。
美沙都「……言え。
そのキバを、どこで手に入れた?」
チンピラは、歪んだ笑みを浮かべながら、
自らの身体を“内側から”燃やし──息絶えた。
──
場が、静まり返る。
りこ「……見えない……」
勝己「……え?」
りこ「おじいちゃんの“心”が……見えないよ……」
りこが、アキラさんの身体を必死に揺さぶっていた。
勝己「──心肺蘇生の“役割”を……!」
美沙都「……無駄だ。」
美沙都「終わった命は、どんなファギアでも戻すことはできない。」
──りこの祖父、アキラさんは
……命を落とした。
沈黙の中で、美沙都がりこに目を向ける。
美沙都「“りこ”といったか。
……お前にも、力があるんだな。」
りこ「は、はい……っ」
りこは、涙をこぼしながらも答える。
りこ「……人の“心”が読めるんです……」
美沙都「……なるほどな。」
その場に残る、苦い静けさ。
勝己「──美沙都さん。」
勝己「……俺、りこのじいちゃんを守れなかった分……」
言葉は、自然と決まっていた。
勝己「俺、この“ファギア”で──“笑顔”を守ります。」
美沙都「……フッ」
美沙都「お前なら、できるだろうさ。」
彼女はそれだけを残して、
静かにホテルのある方向へ歩き出していった。
──
俺の運命は、この日から──動き出した。
ここまで読んでくれて、ありがとうございました!
あーちらいおんです!
第1話は、
・勝己の“能力の目覚め”
・りこの“涙と心の力”
・美沙都の“過去と血の秘密”
そして──
“守れなかった命”が描かれました。
勝己が異能“ファギア”をどう使っていくのか。
りこが「心を見る力」で、何を背負うのか。
そして、美沙都の言う「一族の宿命」とは──
ここから、ただの高校生たちの毎日が、
じわじわと「神話」に飲まれていきます。
でも、勝己は言いました。
「俺、このファギアで笑顔を守りますよ」
その一言がある限り、
この物語はきっと、あたたかく、激しく、笑って泣ける旅になると信じてます。
次回からもぜひ、
“ジジイになるまで戦う”この男を見届けてやってください。
ではまた、第2話で




