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0006. 剥がれるメッキ





「おおっと……」

「……もしかしてとは思ってはいましたが」

「どうしようかねぇ?」


 三人は文字通り、落胆している。


「でも、転生者の持っているスキルはレベルとは関係なく強力なものを使えますし……」

「そう思って、僕も確認してみたけど『特殊スキル:IT』だってさ。何のことだか見当もつかないから強さがわからないよ」

「確かに聞いたことない言葉だねぇ。えーと、サワラくん? あなたは一体何が出来るの?」


 先ほどとは打って変わって冷たい視線を俺に向け、

 トオルが聞いてくる。さっきまでと同じ人とは思えない。


「お、俺のスキルは対象者にコードを打ちこむことで強制的に命令を出来るモノなんだけど……」


 さっきまでの『ヴァンシュタイン』のロールを忘れ、

 俺は素のままで答えてしまった。


 ロールがなければ俺はただの童貞だ。

 

 ただでさえかわいい子と話すの緊張するのに、

 こんな侮蔑の視線を向けられていたら

 ファビョっても仕方がないだろう!?


「めちゃくちゃ強いじゃん!!」


 レイが目に輝きを戻して言った。

 それを受け、トオルは腕を組んで俺に問う。


「じゃあ、攻撃するなって命令も出来るの??」

「多分それなら『Sleep関数』みたいなの使えば秒数まで指定して動きを止めれると思う」

「最強じゃん!!」


 レイはぴょんぴょん跳ねる。

 この子は天使なのかもしれない。


「ふぅん。もしかしてだけどさ、それって私たちにも使えるんじゃないの?」


 厳しい目で俺を見るトオル。

 そして、トロンが続けた。


「確かに。私たちをその『コード』というもので操って、洗脳するようなこともできると言うことですか?」

「えっ、じゃあ僕たちもう何かされてるってことかい?」


 不安そうな目でレイが俺を見つめる。


「そういえば、道中でレイとトロンの手をにぎっているとき、何か呟いていたねぇ。あれがサワラくんの言う『強制命令』の発動ってことなの?」

「確かに言ってました! レイ下がって! その人から離れて!!」

「う、うん……」


 さっきまでとは全然違う目をしている三人。


 それは『恐れ』『怒り』『侮蔑』。

 これまで何度も向けられ、

 そして俺の心を傷付けてきた視線だ。


「なんとか言ったらどうなんですか!」


 トロンが怒りを乗せ俺に言葉をぶつける。


「す、少なくとも今の俺は出来ない。安心していい」

「じゃあ、誰になら強制命令とやらを出来るのかねぇ?」


 トオルは槍を抜いて言った。

 もう、お終いだ。でも……。

 

「それは……」


 わからないとは言えない。

 それを言ったら本当にポンコツだとバレる。

 ここにおいて置かれるのも困る。どうすれば……。

 

 その様子を見て、トロンは言った。


「……言えないんですか? ……二人とも悪いですけど、こんな人を入れるのはやめましょう。危険です。一度街へ戻って体勢を整えて再挑戦しましょう」


 そう言って、トロンは踵を返した。


「まぁ、待ちなよ。少なくとも転生者であるのは間違いないんだからさぁ。サワラくんには引き続きお願いしようよ。……ただ、私たちは手を出さないけどね??」


 そう言ってニヤリと笑うトオル。


「でも、死んだら私達のせいじゃ?」

「それは私たちの責任じゃないでしょう。最初から私たちは言ってたもの。それについてくるって言ったのはこの人でしょう? 自信があるんだよ。きっとね?」


 そう言って、まるでごみを見るかのような視線で

 トオルは俺をみた。

 

 これは、本当は気づいている。

 俺が本当は何もできないということに。


「んー、せめてレベル上げを僕たちが手伝うってのはどうかな? 来たばかりならスキルの使い方もまだわかってないだろうし!」


 レイ……!

 そうしてくれたら、もしかしたら!


「それで変な能力に目覚められても困りますからね……。そもそも私達がそこまでしてあげる義理はないのでは?」


 だがトロンがそれを許さなかった。

 

「まぁ、本人は言ってたじゃないか。『絶望を知るものを増やしてしまうのも〜』みたいなことをさ。よほど自信がなけりゃあんなことはいえないよねぇ? そうでしょ?」

「いや、あの……その…………」

「トオルの言う通りですね。そうと決まったら急ぎましょうか。時間の無駄ですから。ほら、先頭を行ってください。危ないので私たちは貴方に近づきません」


 トロンがそう言って手で行き先を示す。

 レイも、もう何も言わなくなってしまった。


「安心して。道中の敵はちゃーんと私達が倒してあげるから。サワラくんはボスのことだけ考えてくれたらいいよ」


 終わりだ。絶望だ。

 雑魚敵にさえ勝てる気がしないのに……。

 絶対、絶対死ぬ!!


 どうにか、どうにかここから逃げないと!

 

 だが、俺の心を見透かしたようにトロン達が、

 来た方向側に立って先に進むように促してきた。


「ほら、早く行ってください!」

「前を歩いてくれる? 何するかわからないからねぇサワラくんは」


 トオルはそう言って笑っている。


 ……コイツ、わかってるんだ!

 間違いなく、俺が勝てないと、分かった上で!

 それを楽しもうとしてやがる!


「早く!!」

「はいっ!!」


 もし、走って逃げたとしても、

 トロンのバフと、トオルの速度をもってすれば

 俺はすぐにでも捕まるだろう。


 万が一、俺の能力に注意を払い、

 追ってこなかったとしてもだ。


 今の俺じゃ間違いなくここを出れない。

 来た道は覚えているが、奴らは後ろにいる。


 それに、道中の敵に出くわしたら終わりだ。


 なんで。

 どうしてこんなことに……。


 こうして、俺はダイン鍾乳洞とやらの

 主の元へと進むことになった。






 

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