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0002. すばらしきこの世界に転生を!



 


「俺は、お前を選ぶ!!」

「はい?」

「いや、だから! 俺は青髪女神のお前を、異世界に持っていくものとして選ぶ!!」

「何の話ですか。ちょっと黙っててもらっていいですか?」


 あれ、知ってる展開と違うのだが?


 俺が知ってるパターンだと、

 ここで青髪女神が仲間に入った後に、

 厨二病の爆発ロリ眼帯魔導士。

 そして、ドMな巨乳剣士が仲間に入って

 愉快なハーレム生活を出来るはずだったのだが。


「えと、あの、その……」


 ダメだ。

 思っていた路線と違うとなった瞬間に言葉が出ない。


 よくよく考えたらこんな美人と

 話してたのマジすごい俺。

 お前とか言っちゃってたし、調子乗ったものだ。


「サクッと説明しますね。貴方は死にました。で、新しくこの世界に転生します。転生者にはボーナスとして『特殊スキル』が一つ付与されます」

「なるほど、スキルパターンか。数多なる伝説レジェンドスキルから選べる奴パターンだな」

「黙ってもらってていいですか? 三回目は言いません」


 俺は黙って敬礼で答える。

 はぁ、と呆れた顔をして女神は続けた。


「えーと、それで貴方に与えられるスキルは選べるわけじゃありません。貴方の前世を考慮して、一番優れてた能力をスキルとして引き継ぐだけです。つまり、前の世界で頑張った分は今回頑張らなくても最初から持っているということです。良かったですね」

「えっ」


 一番優れたスキル?

 あったら窓際に座ってはいなかったと思うのだが。


 というか、気づいたことがある。

 この女神、美人なのは良いが態度が悪すぎる。

 ずっと髪の毛をくるくるくるくるいじってるし。


「以上。質問はございますか?」


 事務的な質問確認。

 だが、俺は恐れない。いや、やっぱ怖い。

 けれど確認しないと不安で仕方がない。


「あの〜、自慢じゃないですけど、俺、優れてた能力とかないと思うんだけど」

「本当に何もなかったら、無い中で一番マシなモノって思えば大丈夫です」

「全然大丈夫じゃないのだが?」

「いいんじゃないんですか? 『特殊スキル:歩く』とかで」

「投げやり過ぎないですか!?」

「何の努力もしてないあなたが悪いんですが。まったく、一体何を考えてこんな人を……」

「スミマセンデシタ」


 いや、しかしだ。

 このパターンはまだ抜け道がある!!


「では、女神様。とりあえず、その『特殊スキル』を授けてもらえますか?」

「はい。速やかに」


 そう言って女神は頭上に両手をかかげる。

 

 両の手はまぶしく輝き、

 やがて、虹色の光の球体が生成された。

 これがアニメだったら盛大なBGMもついてるだろう!


 まさにこれこそ幻想世界(ファンタジー)

 正直、この景色だけで死んだ分の採算は取れそうだ。


 こんな鮮明で幻想的な光景、

 たとえVRでも再現できない。


 そして、それは女神の頭上から俺の頭上へと、

 ゆっくりと、ゆっくりと……。


 じゃなくて、ものすっごい勢いで

 女神に叩きつけるようにおろされた。


 いや、パンの生地練る動作やないかい!!!


「……以上です。それではいってらっしゃいませ」

「待ってください! なんか目的とかは!?」

「ありませんが?」

「魔王を倒せとか!!」

「あぁ、結構です。貴方のパーソナルデータは……知能だけは平均より随分高いみたいですが、それ以外はほぼ最低ランクです。生きていくのも困難でしょう。頼むのはかわいそうです」

「かわいそう!? この世界でも底辺!?」

「では、いってらっしゃいませ」

「ちょ、まてよ」


 だが、待ってくれない。

 この世界では木村〇哉が届かなかった。

 女神、壁、天井、床、すべてが消えて落ちていく俺。


「これ空から落ちるパターン!?」


 と思ったが、落ちたのは

 せいぜい1メートルくらいか。


 気づけば、丸く、何もない白い部屋に俺はいた。

 無機質なその空間は実際よりも壁が遠く感じる。


 だが、一通りくるっと視線を回すと、

 何もないわけではなかった。


 白いドアが、一つだけある。


 同じく白なのに、やけに主張が強いドアを俺は開いた。 

 その先は階段。どうやら螺旋階段の様だ。


 階段を下りていくとやがて壁がなくなる。

 細い円柱だけが階段と建物を支えていた。

 途中からは周りの景色が見える。


 見渡す限り、ここは草原。


「この階段の感じ、見たことあるぞ。某ハンター漫画のゲーム編の始まりと一緒だ」


 休載が多すぎて途中で読むのをやめた漫画だ。

 選挙らへんで俺の中では終わっている。


「ブック!」


 何も出ない。そりゃそうか。

 ……ていうか。


「『特殊スキル』ってどうやって確認するの?? ここどこ? 所持品なし?」



 どこへ行けばいいかも、

 何をすればいいのかもわからない俺。


 振り向けば、俺の出てきた螺旋階段の建物もない。


 何も知らないまま俺は何もない草原に

 放り出されたというのが現状と言える。


 だが、ここは異世界。

 少し離れたところに人型生物がいた。 

 俺が暮らしていた世界でいうところの

 『トカゲ』に似ている。


 だが、さっき言った通り『人型』である。

 いわゆるリザードマンという奴だろう。


 この世界の住人なのだろうか。


 俺は恐る恐るではあるが、

 リザードマンさんに近づいてみる。


 立派な槍を持ったリザードマンさんは

 こちらへ振り返るが、襲ってくるわけでもない。

 だが、友好的にも感じない……。


 大丈夫だ。

 いわばここはチュートリアルみたいなものだろ?

 襲ってくるならもう来てるよな?


 顔が怖いだけで、多分いい人なんだよ!多分!

 俺は声をかけてみた。


「ハ、ハロー……」


 日本人じゃないと思ったら

 絶対英語圏ではないと思ったとしても

 とりあえず英語で話してしまう日本人の癖。


 勿論、俺も持ち合わせている。そりゃそうだろ?

 

 対するリザードマンさんの返事は簡潔だった。


「シュル、シャシャシャッシャー」


 一瞬で理解した。

 これは狩る者の目だ。


 友好という言葉を知らなそうなリザードマンさんから

 逃れるように俺は駆け出す!



「おかしいだろ! ファーストコンタクトはスライムじゃないのかよ!! チュートリアルないの!? 俺スキップ選んだつもりはないよ!?」



 当たり前だが俺たちの常識は通用しない。

 この世界はこの世界の常識があるだろうさ。

 

 だけどさ、そうかもしれないけどさ!?




 異世界転生、どうやら前途が多難すぎるのだが?




 

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