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これっくらいのお弁当箱に、獄炎竜を入れたのはこの私です。

作者: 瀧原リュウ

「よしっ、と」


 たった今、私は自宅から()()離れた火山――その中枢に巣食っていた獄炎竜を討伐した。

 流石に現役じゃない分、ちょっとだけ倒すのに時間がかかってしまった。だがまぁ、微々たるものだ。問題は無いだろう。


「家まで()()()()……大剣とこいつの尻尾担いでだと、なんだか長く感じるなぁ……一時間くらいかかっちゃいそう」


 少し億劫になるが、そうも言ってられない。夜明けまでには家に帰って取り掛かりたいし、なにより――――せっかくの新鮮な尻尾の味が落ちてしまうもの。






「……ふふふっ……! 我ながら完璧ね……!」


 私は、自分で作ったとあるものの出来栄えに対し、自画自賛していた。それは――お弁当。




 そう。朝日が昇った今日は、幼稚園に通う息子の初めての遠足。園の近くの大きな公園まで歩いて行くらしいけど……事故に遭ったりしないかなど、正直不安だ。

 けれども、子供にとっての一大イベント。その思い出をより良いものにするためには、やはりお弁当は欠かせないもの。


(おばあちゃんの唐揚げにはまだ負けるけど、それでも今日は自信作……!)


 移動中お弁当が崩れないようにと()()()()念を入れた高耐久軽量の特殊合金製お弁当箱に入った、おにぎりに卵焼き。ウインナーにプチトマト、ブロッコリー。そして、メインの獄炎竜の肉を使った唐揚げ。盛り付け、彩り双方共に見事な仕上がりだ。


「夜なべして獄炎竜の討伐(しょくざいちょうたつ)してきた甲斐があったわね……!」


 再度自分の作ったお弁当を眺め、心地の良い達成感と疲労感、そして眠気が襲ってくる。


「っていけないいけない、気を抜くのはまだ早いぞ私!」


 一通り満足したところで、頭を切り替える。時間は有限……その中でも朝というのは異常なまでに過ぎていくのが早い気がするのは、私だけだろうか?

 そんなことを考えつつ、私は今日もいつもと変わらぬ様子で、愛しの我が子と夫を起こしに寝室へと向かった――――






――――そして、夕方。




「ただいまー!」


 玄関のドアが開く音と共に、無邪気で明るい声が台所まで響いてくる。愛する息子が遠足から帰って来たのだ。


「あら、お帰りなさい! 遠足どうだった?」

「うん! とっても楽しかったよ!」

「それは良かった! ママのお弁当、美味しかった?」

「獄炎竜の魔力の残滓が暴走して、全部黒焦げになっちゃってた! でもみんなに分けてもらったお弁当おいしかったよ!」

「…………」




 弁当箱に念を入れたのは、ある意味正解だったのかもしれない…………

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