砂の王座
秋山はハッとした、自分は父のやり方を踏襲しこんな目にあってるわけだが
父は無事なのだろうかと、それを見透かすかのように神は言った「貴殿の父君と母君は実験用ゴキブリとして頑張ってるよと、厳しいねぇ飢えを凌ぐ為にわかり切った毒餌を食うかそのまま飢えるか・・」
神はニタニタ笑いながら秋山に語りかける
「それじゃ頑張って」
気がつくと秋山は、再び籠の中にいた
目を開けると、再び研究員の太った男の姿が目に入った
秋山の入れられた籠のボスネズミは気の良い奴であった
秋山を新入りだからといって差別せず
パンも快く分けてくれていた
秋山だけでなく全員に対して優しかった
秋山は久しぶりにぬくもりを思い出していた
しかし、幸福な時間程早くすぎる
その時間はある日終わりを告げた
その日研究員の男はテレビを見て、舌打ちをしていた、秋山死後自慢の娘の瑠璃子が首相となり増税を決定したらしい。
その影響はネズミ達にも直ぐに出た
餌が減ったのである、餌をいれながら男は言う「恨むなら自分か神様にしてくれ」とあるゲームの台詞であるが神と邂逅した秋山にはあまりにも刺さる言葉であった
そして、その日から秋山の生活も変わっていった
優しかった、ボスネズミは飢えにより豹変した、自分の体格を武器に威嚇し自分の餌のみを確保するようになり刃向かえば容赦なく食い殺された
(衣食足りて礼節を知る)という言葉がある
人が礼節を知るのは、食事や衣服が足り心が満たされてようやく礼儀を知るのだ
地上で最も優秀な生物である人でさえそれらが欠ければ獣となりうるのに
飢えたネズミが聖人になれるわけもなく
秋山はふと娘がやっていたゲームの一説を思い出した、「人は一枚のパンの為に人を殺す」という言葉を・・・
相変わらず、太った研究員はネズミの抗争を止めようとしない
それどころか「ほらっ給付金だ」といい秋山の籠に鼻くそを丸めて飛ばす
他のネズミも秋山もそれ1粒の鼻くそに群がる全ては生きる為である