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9話:ドレスを買いに行く

 昼間は、剣の修行。夜は、こっそりと魔法の練習を繰り返す事数週間が経った。毎日が楽しくて時間が経つのもあっという間だった。

 そして、とある昼間の時間帯に一通の手紙が届いた。前世の記憶があるから一応文字や簡単な計算は出来るのだが、普通の3歳だと字を書ける者は皆無だ。

 パパもママも例外にもれず、私が字を読めないと思っているらしくパパが手紙の文章を読んでくれた。


 内容を要約するとこうだ。

 王城で第二王女の3歳の誕生日会を開催するから出席するようにと招待状であった。招待メンバーは、パパとママと私の三人だ。

 パパは騎士隊を統べる総隊長で、ママも元魔法近衛隊隊長という身分のため招待されるのは必然的だ。私も二人の娘だから私も行く事は必須になってしまう。

 第二王女様だから、もちろん王様も誕生日会とやらにいるのだろう。開催日は、一週間後だそうだ。今から胃がキリキリと痛くなってきた。

 前世では、ほぼソロの冒険者として活動していたため王族・貴族に触れ合う機会は、ほとんど無かったに等しい。だから、本音で言えば、その誕生日会とやらに行きたくない。

 前世の記憶があるからと言っても粗相を犯したら、どうしようと思ってしまい頭が真っ白になってしまう。下手したら不敬罪として胴体から首が離れるかもしれない。

 そう思うと、一週間後だというのに体が、ブルブルと寒くないのに震えてくる。


「アナタ、ラピスのドレスあったかしら?」

「そういえば、ないな。今から買いに行くか」

「どれしゅでしゅか?」

「そうか、ラピスの初めてのお出掛けになるのか?」

「ラピスったら、そんなに喜んで可愛いわね」


 産まれてから、まだ一歩も庭から外へ出た事がない。初めてのお出掛けという事になる。

 前世の記憶があるから、そこまでワクワクと思っていないはずだったのだが、キラキラと満面な笑顔を浮かべていたらしい。


「はい、嬉しいでしゅ」


 ここは素直に喜んでおこう。

 それにお出掛けするのも情報収集の一環だ。前世にはなかった国なのだから、文化や町並みも前世と違う事だろう。

 それと初めての買い物で、お金を見てみたいというのもある。いくら前世の記憶で、文字や計算が解っても金銭の値が分からないな事には、計算が出来ない。

 唯一救いなのは、文字は前世と同じという事だろう。文法も聞いた限りでは違いは差ほどない。


「ドレスというと、あの店か?」

「あら、アナタも来るの?」

「俺だって、ラピスのドレス姿を見たい」

「今日は、寸法を合わせるだけだから見れないわよ」


 喜びから一気にガーンと暗い表情へと早変わりして、テーブルに突っ伏した。

 そんなに私のドレス姿を見たかったのか!前世の記憶を持っていなかったら素直に喜べられただろうが、中身は男なのだ。よって、ただ単に今のパパは気持ち悪いと思えてしまう。


「では、行きましょうか。ラピス」

「はい、ママ」


 ママと手を繋いで、いざ行かん。

 子供の体だからだろうか?前世の記憶を持っていても初めて庭から外に出て感動した。

 一回外へ出て見ると解る。家の中が、どんだけ小さな世界だったのか思い知らされる。

 初めて見る風景、初めて嗅ぐ匂い、家や庭とは違う地面の感触、パパとママ以外の人の声等々、前世の記憶を持っていても転生してから初めての外に感動するなと言う方が無理だ。

 まだ子供だけど、これで第一歩を踏み込んだ。小さな第一歩だけど、私(俺)は必ず魔法で頂点を取ってやると決意を新たにした。


「ここがドレスを扱う服飾店よ」


 この店に来るまで顔には出さないが驚きの連続であった。まず第一に、獣人やエルフを含め亜人が普通に人間に混ざって行き来してる事に。

 前世では、絶対にあり得なかった。人間の国と亜人の国では戦争が常に繰り広がられた。もちろん、前世の俺も亜人を殺した事がある。殺さないと自分が死ぬ。前世は、そんな世界であった。

 でも、今は平和になってるようだ。戦争のせの字も知らないように活気付き色んな店が、其処らじゅうに並び良い匂いも漂っている。

 前世の俺が死んでから、どれくらいの年月が経ったのかは知らないが、前世よりも発展してる風に見える。


 チャランチャラン

「いらっしゃいませ。これはこれは、アリア様ご来店ありがとうございます。この度は、何をお探しで」


 如何にもセバスチャンと呼びそうになる風貌の老紳士が出迎えてくれた。ママの事は知ってるようで、様付けで呼んでるところを見ると、私のママってもしかして有名人?


「そちらのお嬢様は、もしかして」

「えぇ、ワタシの娘よ。名前は、ラピス。こののドレスを作って欲しいのよ」

「お安い御用でございます。ラピス様、寸法を計りますので店の奥へどうぞ」


 不安がりママの顔を見た。ニッコリと笑顔で微笑むだけで、助けてくれない。このオジサンに私の裸を見られたくない。



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