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7話:剣の特訓

 パパの言う通りにすると言ってしまったため仕方ないと思ってるが、技能スキルである【剣能】があるし前世で剣聖であったため、パパに申し訳ないが退屈だ。

 パパに言う通りに木剣の握り方から始まり、素振りを体力が続く限りやるだけであった。【剣能】を使わなくても素振りは、前世の経験で余裕で出来る。

 そのため魔法の練習として素振りをしながら木剣に魔力を流す練習をしていた。

 魔力というのは生物以外でも物質に流す事は理論上可能であり、物質の強化を行える。ただし、物質によって魔力の流し難さが違う。これを魔力抵抗と言うが、魔力抵抗が高い程に魔力が流し難いのだ。

 鉱石類や金属類は魔力抵抗が最も低く魔力を流し易い。それらで作製された剣や槍等の武器に魔力を流し切れ味を増す程度なら素人から皮を剥けた冒険者レベルだったら出来る。

 まぁ前世での認識だ。今現在のレベルが、どの程度なのかは知らない。

 木剣の場合は、鉱石類や金属類よりも魔力抵抗が高い分魔力を流す練習になる。後で鉄剣に変えた時にスムーズに魔力を流す事が出来る。


「ほぉ、初めてにしちゃ上手いじゃないか」


 ブンブン

「パパ、ありがとーございましゅ」


 そりゃぁ前世が剣聖なのだから上手い。だけど、素直に誉められると、嬉しさ半分照れて恥ずかしさ半分で頬をピンク色に染まる。

 そういえば、前世では数十年人に誉められた事はおろか、まともに人と話す事はなかった。

 剣聖になってから最初の内は尊敬の眼差しを向けられた事が続くが、数年の内に恐怖の念を抱かれる事になり、俺も自然と最低限の挨拶位しか交わしてこなかった。

 つまり前世は、悲しい事にボッチだったのだ。

 だからなのか、些細な事でも誉められる事が素直に嬉しく感じてしまう。まだ体が子供なのだからかもしれないが。


「あら?ラピス、あなたの木剣に魔力が流れてないかしら?」


 家事が一段落着いたのか、庭に見に来たママがそう呟いた。一流の魔導師になると、自分だけでなく他人の魔力の流れを見る事が出来る。


「なに?!ラピス、お前魔法を使えるのか!」

「はいでしゅ」


 元宮廷魔導師であるママに見られたからには、誤魔化しは効かない。低級な魔導師なら兎も角、宮廷魔導師なら間違いはないはずだからだ。


「アナタ、ラピスの木剣から魔力の流れを見て取れますわ。おそらく強化魔法でしょうけど、まだ3才のラピスが木剣に魔力を流す事が出来るなんて天才ですわ」

「そ、そんなに凄い事なのか?」

「凄いですわよ。普通の金属の剣ならいざ知らず、魔力抵抗が高い木剣に魔力を流すなんて、ラピスはどれ程の魔力量を持ってるっていうの!詳しく調べないと分からないですけど、私が見る限り魔力量の底が見えませんわ」


 正確な数値は分からずとも、とんでもない魔力量を持ってる事はママの前ではバレバレのようでラピスは教えられる範囲で白状する。


「ママ、黙っていてごめんなさいでしゅ」

「気付いたのは何時位かしら?」


 魔力があるのと、それを感じ取るのでは同じのようで雲泥の差がある。魔力があるのに中々感じ取れない者は珍しくない。感じ取れずに一生を終える者もいたりする位だ。

 だから、ママは気になったらしい。


「………………怒らないでしゅか?」

「こんな事で怒らないわよ」

「………………まだベッドにいた時からでしゅ」

「そ、そんなに早くから!」

「それは確かに早いな!」


 魔法の知識が皆無なパパも異常だと気付いたらしい。ママと一緒に驚いていた。いや、ママとパパの驚きのニュアンスが少し異なる。

 赤子の時に魔力を自覚出来る事は稀にある。だが、魔力の制御が出来ずに暴走し周囲を大惨事に巻き込むケースがある。


「本当に良かったわ。暴走しなくて」


 へなへなと腰が抜けたように地面に座り込むママ。


「お前、どうしたんだ!」


 パパはどうしてママが座り込んでるのか理解出来てない様子。だけど、ラピスにはどれだけ危険な事をしてたのか理解出来てしまった。


「アナタ、ラピスがどれだけ危険な状態だったのか理解出来てないようね。良い?もしかしたら、ラピスの魔力が暴走してたかもしれないのよ?最悪、この家の周囲が更地となっていたでしょうね」

「……………!な、なんだって!で、今はラピスは大丈夫なのか?」

「今は落ち着いてるわ。スムーズに木剣へ強化魔法を掛けられてるから問題ないと思うわ」

「そ、そうか!俺まで腰が抜ける思いだ」

「詳しい事は、調べてみないと解らないけど……………確か魔力を詳しく測る魔道具があったはずよ」

「それだ!詳しく調べてみよう」


 慌ただしくママとパパは、家の中へと入って行った。相変わらずの馬鹿親ぷりに苦笑いを浮かべるラピスであった。


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