52話:ブラウン伯爵家嫡男と模擬戦
模擬戦のルールは、騎士団で用意した木剣の使用。魔法は禁止。致命傷を負う攻撃は禁止。どちらが降参又は気を失ったら終了。審判が止めに入ったら止めること。
「審判は、騎士団団長である私……………ガイスが努めさせて頂く。両者準備はよろしいか?」
「えぇ何時でも」
「あぁ構わない」
お互いに構える。
始まる前にキールのステータスを【鑑定】で拝見する。抵抗する術がないと、そもそもステータスを覗かれている事にすら気づかない。
・名前:キール・ウォン・ブラウン
・性別:男
・種族:人間
・職業:騎士
・レベル:5
・年齢:10歳
・HP:C
・MP:E
・攻撃:B
・防御:C
・魔攻:F
・魔防:E
・俊敏:B
・運:E
・固有武装:なし
・技能:騎士剣術
・魔法:強化魔法
・称号:ブラウン伯爵家嫡男
・加護:剣神(星2)
おぉ!この年で、剣士の上位職である騎士だとは職業を見れば優秀なのは分かる。
職業選定の儀で上位職を授かるなんて、1000人に1人の割合だったはずだ。だがしかし、勇者や賢者に剣聖が100万人に1人とかと比べると見劣りするが、それでも誇っても良いことだ。
ただし、いくら職業が凄くともそれにかまけては強くはならない。この世界に諺みたいな言葉で『職業に呑み込まれるな』というのがある。
いくら強い職業でも使いこなさなければ、それは宝の持ち腐れで、いずれ思いもよらない事故や大怪我で命を落とし掛けないという揶揄みたいなものだ。
でもまぁステータスだけ見れば、そこんじょそこらの大人なら負けないであろう強さだ。ただし、私(俺)の敵ではない。
「では、初め!」
「やぁぁぁぁ」
キールが大きく振りかぶり、私(俺)に襲い掛かるが余裕で横に移動し躱す。
上位職なだけはあり、キールの剣の速度は申し分はないが剣や技能に振り回されている感がいがめない。
だが、努力は見受けられる。手の平に剣ダコが見受けられる。あれは長年訓練しないと出来ない。
確かブラウン伯爵家は、剣の伯爵と呼ばれ多くの優秀な剣士を排出してる家柄だと耳にした事がある。
それ故に、職業選定の儀をやる前から訓練はしていたのだろう。手の平の剣ダコは、それで出来たに違いない。
ただそれだけに惜しい。訓練だけで実戦は積んで来なかった。実戦経験が皆無なだけに、まだこれから延びるであろうが、ここは勝たせて貰う。
「くそっ、何故当たらない」
「直線的なのです」
当たれば、骨折はしそうな打撃でも命中しなければ問題ない。同年齢であれば、恐らく負けはないだろうが相手が悪かった。
いくら、同年齢でも前世を含めて掻い潜った修羅場の数が段違いに違う。
戦いに置いて大切な事は何か?それは、剛腕といえる攻撃力?否、違う。魔法の規模?それも違う。
ラピスが考える戦い置いて大切な事は、それは第1に防御と俊敏さだ。攻撃や魔法なんて二の次だ。
防御を固めれば、相手の攻撃を防ぎ続け、いずれ相手は疲弊し、ミスを連発して自滅する。
俊敏さを高めれば、相手を翻弄し、攻撃を回避し、攻撃に転じる事も出来る。
RPGでもスピードが遅く、殺られてしまったプレイヤーは少なからずいるのではなかろうか?それと同じだ。
「ハァハァ、俺が怖いのか?攻撃してこいよ」
「そうですか?」
私(俺)が攻撃せずに回避ばかりしてるので、イライラしたのだろう。
私(俺)に攻撃の出番を回して来た。多分だが、私(俺)の回避能力を見て、同じく回避をする腹積もりなのだろう。
「なら、遠慮なくいきます」
口では、こう言ったが本気でやったらキールは間違いなく病院送りになる。
だから、手加減する。それでも気絶は免れないと思うが、それは許して欲しい。
私(俺)は、いくらか後退し木剣を後ろへ引き身体を低くしゃがめ、陸上選手がやるスターティングブロックに足を乗せる様に脚力を高め、キールに突進するように真っ直ぐと突っ込んだ。
キールとの距離が木剣の届く距離になった途端、木剣を前へ突き出した。防具がある胸元に当たるのと同時に木剣は砕け散った。
私(俺)の速度か腕力に耐えられなかったのだろう。当たりはしたが、ほとんど衝撃は無かったはずだ。
だが、キールはあんまりの恐怖に白目を向いたまま気絶している。そして、ズボンが濡れていたが、そこは見て見ぬフリをした。




