50話:万能薬
『勝者ぁぁぁぁぁぁラピスぅぅぅぅぅ』
「やったぁぁぁぁラピスが勝ったぁぁぁぁぁ」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ
観客席から大喝采が響き渡った。ラピスは、観客席に向かって両手を振り、喝采が止まない中でリリに向かい【回復】を使用した。
「うっ………うぅぅん。あっ、ワタシ負けたのね」
「大丈夫ですか?一応、【回復】を掛けましたけど」
「えぇ、ありがと。優しいのね」
ラピスの手を取り起き上がったリリは、喝采が止まない観客に向かい、ラピスと共に手を振った。
この後、ラピスとリリ以外にも剣闘士の模擬戦が5戦程あるらしく、私(俺)とリリは会場を後にした。
「ケガは大丈夫かい?」
「カイト様!」
リリが、パァと笑みを浮かべ、カイトの元へ掛けて行った。口に出さないが、リア充爆発しろと心の中で叫んだ。
「大丈夫よ。ラピスちゃんが【回復】を掛けてくれたから」
「そうか、俺からもお礼を。ありがとう。そうだな、これをあげようか」
ポーションらしき瓶を渡された。本来のポーションよりもキラキラしており、明らかに効力が高そうな事は見て取れる。
「これを私に?良いのですか?」
「あっははは、俺が作った物だから構わないよ。それじゃぁ、リリ行こうか」
「はい、カイト様」
カイトとリリは腕を組みながら去って行った。
この渡されたポーションを【鑑定】したら、とんでもない代物だった。
「これって…………万能薬!」
どんな病気やケガでもたちまち治すと言われてる伝説のポーション。それをポンと渡すというより作ったと仰っていた。
流石は、師匠なだけはある。まだ、カイトには師匠と言ってない。言ったら嫌な顔をされそうだからだ。
「私にも作れるかな?」
『不可能と断言します。万能薬は薬師か錬金術師の到達点の1つとされています』
到達点?それって……………
『職業の到達点、それを成した者は将来永久的に財産や名誉を得るという所業です』
そんな代物をポンと渡して来たの!手で持ってるだけで震えて来た。さっさと【収納魔法】の中へ入れた。
「ラズリ、魔法少女にも職業の到達点はあるんだよね?」
『はい、そのはずですが、なにせ固有なもので不明です』
「到達点を達成したらどうなるの?」
『神様からお告げが来るはずです』
予想だが、魔法少女の到達点は8つに別れたという邪神の再封印か殲滅だろう。
今直ぐという訳ではないが、世界の危機になるならやらないという選択肢はない。
到達点に達した時の財産や名誉には興味はないが、ダンジョン踏破は面白そうだ。
「ラピスぅぅぅぅぅ」
廊下を走って来るのはアテナ。それも止まろうとせず、こちらへ一直線に突っ込んで来る。これが男なら避けてるだろうが、相手はアテナだ。避ける道理がない。
私(俺)は、両手を広げアテナが転ばない様に、その身体をキャッチした。何周かグルグルと周り勢いを殺す。
「ラピス勝ったね。おめでとう」
「アテナありがとう。それより、もしかしてその靴を使いこなしてる?」
私(俺)の視線がアテナが履いてる靴に注がれる。師匠がプレゼントされた靴だ。風属性の魔力が付与されており、元々風属性に適正があるアテナと相性抜群だ。
練習すれば、空を駆け跳ぶ事も出来、今の様に俊敏さを上昇させる事も出来る。
「うん、なんかね。ずっと履いて来たように馴染んでるの。とても使い易いよ」
その言葉に私(俺)よりラズリが驚いていた。
『これは完璧にアテナ様の魔力と波長が完璧に合ってます。これ程に完壁に合わせられる者が存在するとは。このラズリ、驚愕してます』
本人と完璧に魔力の波長を合わす魔道具を作る事は、とある例外を除いて不可能とされる。
『本来なら固有武装のみ魔力の波長が合っておるはずです』
それ以外の魔道具は、100%魔力の波長を合わす事は不可能とされるのが、この世界の常識。だから、ベテランな魔道具職人は、オーダーメイドの注文が入った時、出来るだけ100%に近寄らせる事に重視する。
数少ない神職人と呼ばれる者達は魔力の波長率90%を超えるという。でも、やはり100%の壁は大きい。
つまり、私(俺)とラズリの波長は完璧に合ってるという事になる。そう考えると、何か照れくさい。




